2012年12月31日月曜日

地面がつながっているということは

私の下で地面がつながっている
だから寝返りをうっても安心
地面がつながっているから
下に落ちてしまう心配がない
だから幸せ

地面がつながっているということは
空にとっても安心
覆いつくす雲も胸をなでおろす
雲が裂けても
たとえ さらに空が裂けても
地面が支えてくれるから

地面がつながっいるということは
歩行する動物にとって
安息の地であるということ
歩行にあわせて
息をリズミカルに弾ませることもできる

地面がつながっているということは
空と地面の間にテントを張って
私たちは眠ることができる
地面に縫い目のように覆いかぶさり
眼という膚の裂け目を閉じて
見えるものから解放されて

2012年12月30日日曜日

君を見守る

いま写した君の写真の横に
生まれたばかりの頃に撮られた
君の写真を並べてみる

二枚の写真の間には
君がいままでに生きた時間が
挟まれている

その隙間に
どんなことがあり
どんな人びとがいるのか
君が一番知っているはずだ

君は私が差し出した二枚の写真を
なんともいえぬ表情で見ている
私に気遣ってくれているのが分かる
君はそうして周りの人を気遣ってきた
自分の不器用さも認められるようになった
きょうは君の誕生日だ

君はその命をふる里の地で引き受けてから
その力強さと得体の知れなさに悩まされながら
必死に生きてきた
その姿が人を感動させたこともたくさんあった

いま君はどんな気持ちでいるのかな
目の前にいるのに分からない
二枚の写真の隙間が
私たちを見守っている

窓の外の寒い街並の上空では
無数の星が私たちを見守っている

2012年12月28日金曜日

フェダーの部分だけをはずして

マイクロホンミキサーのフェダーの部分だけをはずして仕舞おうとしていたので
私は文句を言った
そこまで分解すると次回使うときにあちこちを探し回って組み立てなければならない
石庭を通って機材を運び入れている連中は
若い割には皆達者な仕事師ではあるが
たまに意味不明の行動をとる

和風の平屋建築の奥に機材室があり
出張の仕事を終えるとそこに格納することになる

私はその会社の社長をしているが仕舞うことにかけては
右に出るものがいないと自負するほど
手際よく美しく仕舞う

番頭に当たる男はスタッフの中では唯一私より年上の技術者だ
不器用で粗相が絶えないのであまり信望がないが
創業時からの大事な人間なので
悪い見本としながらも重用している

彼には6才の息子がいる

私は高校時代
足を怪我して運動会に出られなかった苦い思い出がある
またほとんど出席しなかった幾つかの授業の教科書を紛失し
単位取得に必要な時間数も計算できないでいた
中には必修科目もあり
卒業も危ぶまれた

石庭は先祖から受け継いだものだが
先祖の影はない
私は小さいころから当主として
この庭と家を守ってきた
父は南米にばかり行き通しで
母は大人しい心配性の女性だったので
ほぼ母屋のリビングとキッチンと寝室で暮らし
仕事にはタッチしなかった

その日
私は期限が来て会社を辞めることになっていた
だが
いつもの同じように
撤収してきた機材が長閑な庭を通って
機材室に運ばれていた
やがて機材室に大きな錠前が掛けられた

縁側に穏やかな日差しが当たっている
猫が鈴を鳴らした
青空の向こうに熱線を放つ爆弾が落ちたのはその時だった

2012年12月27日木曜日

もっていても

もっている人

もっていない人

 

もてる人

もてない人

 

もてなくもない人

もてなくもなくない人

 

もてていなくもない人

もてていなくもなくない人

 

もってくる人

もっていく人

もってこなくもない人

もってこなくもなくもない人

 

もたれている人

もたれていない人

 

もたれていっていない人

もたれていかないでいる人

 

もっているのかいないのか

もっていないのかいるのか

もっているとどうか

もっていないとどうか

もたれてもっていない

もれなくもたれていて

もっていない人

 

もっていない人より

もっている人がいいですか

 

どちらでもいいです

2012年12月26日水曜日

父の署名

死んだあとも
くっきりと在り続ける父の署名は
わだかまりを支えたまま
時の流れを渡って行く

はっきりしないことだらけの世の中を
いつ知ったのか
同じ通学路を何度も歩くうちに
大事なことは結論ではなく過程だと
いつから訳知り顔でいられたのか

冷たい風の後に何がやってくるのかを
予定表に書き込んで
未来の予定も書き込んで
オルゴールのように人生を奏でる

署名は歌わず
世の矛盾の訳を理解せず
佇んでいる

私は誰かに詫びたい気分になり
ペンを手に取るが
名前さえ書く勇気がなく
検索窓に名前を打ち込んで
結果と対峙しない理由を探し始める

2012年12月25日火曜日

それが私の人生さ

隠すことに夢中になって
大事なことは後回し
それが私の人生さ

真剣勝負はなるべく避けて
誤魔化しやりくりしてばかり
それが私の人生さ

気づいたときには手遅れで
それでもそれも知らんぷり
それが私の人生さ

それが私の
つまらぬ人生さ

2012年12月24日月曜日

吹きだまりの星

吹きだまりでやさぐれた心を自ら癒そうとして
煙草に火をつけた
赤い火の玉を燃やし煙を纏う君
クリスマスの音楽と騒ぎ声で溢れるあたりに
人気がなくなったら星屑でも拾いに行ってみるかと君は
頭の端っこで思っているが
疲れに襲われたらいつものように
朝まで夢の中をさまようことになると知っている

幸せの記号がどんなものか知らないまま
それはいつか引っ越してきたお嬢さんが首につけていた
あの光るナニのようなものかと思っていたこともあったが
幸せを掴み損ねた脱落者とつるむようになり
幸せがどんなものなのか考えるセンスも
ヒントさえも忘れてしまった
ご縁がなかったということでごめんなさい
と世界中の天使や神様や悪魔にも言われたような気がしていた

クリスマスツリーは
よく燃えるのかな
飾りをいっぱいつけた巨木はさぞかしよく燃えて
山裾の廃墟の低い窓からもよく見えることだろう

寒さがどんどん増してくるのがわかる
煙はまだその辺を漂っているが
こんな夜に猫は喧嘩して唸っている
沈黙がこわいわけじゃあるまいに

壁の中が透けてみえるのは
マッチ売りの少女の話
あれは本当は娼婦の話だとどこかのバカが言っていた
あの子は幸せになったのか憶えていない
多分なっていないだろう
なっていたとしてもすぐに終わっただろう

人が幸せを感じるのは他人よりマシだと感じた時
あるいは諦めがついた時
あるいはどうでもよくなったとき

吹きだまりの君は煙草を投げ捨てて空中で
スニーカーで蹴り上げた
赤い流れ星に気づいたものはいなかった

風を光に変えます

風を光に変えます
光を言葉に変えます
言葉を風に変えます

ケーキはいかがでしょう 2

2012年12月23日日曜日

自転車があったなら


私は客なのだが成り行き上 床を掃除している

昨日までは社長をやっていた

店員より私のほうが上手いだろう

線路際の食堂は冬には寒々とするほど全面ガラス戸で囲われていて

電車が通るたびに長閑にがたがたいっている

さっきまで私は秘密の女と石段の下の踏み切りのところで

いちゃついていた

秘書に知られたら彼女がかわいそうだと気もそぞろに

その落ち着きのなさに久々の新鮮な快楽を得て

 

しかしこの汚れやすい床は

いくら掃除してもきれいにならない

まるでそれが狙いであるかのように

油汚れを永遠に引きずり回すようだ

それでも

私は掃除が上手だ

 

巷では安部政権が発足するというが

その稼働率が四割ほどになったとき

私の口の中で

液晶表示装置の白い文字が

16ドットのゴシック体で

文字をスクロール表示することになっている

 

八又(やつまた)さんとできちゃった

私の中はそのニュースで持ちきりで

すごく忙しいから

夕方になるのも忘れて床をしごいている

自転車があったなら

すこしは

はかどったかも知れない

ケーキはいかがでしょう

2012年12月22日土曜日

望み

秘密の人ごみ
やわらかな路
暗い気持ちには
居留守をつかい
知らん顔

あったかいブーツを履き
近場へトリップ
あのこはストリートダンサーを
振ったばかり

群馬県の家から
東中野まで
体力勝負で通い
スレンダーな体に
お尻の上までの長い髪を
なびかせて
香りを振りまく

許されるなら
土星の影で
すべてを奪い確かめたい
彼女が何をしたいのかを

2012年12月21日金曜日

20121222

親切そうな男の人が
お金の振込先を教えてくれる
そしてお待たせしたら悪いからと
預かり証を用意して
あとは自分がやるから
もう帰っていいという

小雪が昼下がりの郊外の街の
ビルの谷間に舞い降りる

駅ビルにはちょっと値段が高めの
この国の何処に行ってもある
安心感のあるお店が連なり
客を誘い込んでいる

親切そうな男の人は
預かり証を渡して
さあお帰りくださいと
笑顔で挨拶する

本社は彼の人柄とは関係なく
別のものと繋がっていて
人々の間に根を張って
養分を取り入れている

ニュースでは
戦地で死んで行った
ジャーナリストの特集が流されている
昨日は傭兵のアルバイトの暴露話の番組が流されたばかりだ

グラッとまた震度3の地震

2012年12月20日木曜日

思い出は整理しなくていい

思い出は整理しなくていい
カバンを振り回して
好きなあいつも踏み越えて行け

2012年12月19日水曜日

マツザキヨシユキ

私の名前には
いつも雪が降っている
松の木のこずえに
気障に積もった雪が
私を励ましてくれる

「よし!」と
元気いい声を出して

2012年12月18日火曜日

寒い街並みの向こうに

寒い街並みの向こうに海がある
風にヨットがきしむ
夏の青い海がある

窓辺に立って
私は背後に
ポットのお湯が滾る音を聞いている

山の方角に日が落ちる
明日の朝は爽やかに晴れる気がして

2012年12月17日月曜日

曲がりかどの向こうで

寝入りばなの目覚め際
小鳥のさえずりを聴いたような気がして
陽だまりの中にこころを移してみると
そこに
やはりあなたが後ろ向きで座っていた

胸騒ぎがして近寄り覗き込んでみると
なんのことはない
あなたは独り遊びに興じていて
他人の心配などはどこ吹く風

その独り遊びは
バリアで自分を覆い
外の声は聴こえないらしい

なにか寂しい事件でもあったのだろうか
しゃぼん玉のように疑問は天へとのぼり
青空の震えのせいで
虹を現しては破裂する

そのとき
私の心の中で
音もなく破裂したものは
何だ



----今月誕生日のひとに----

2012年12月16日日曜日

素直に生きていけばいいと

自分のよさに気づける人は
素直に生きていけばいいと
神様から選ばれた人

神様から選ばれても
そのことを信じないでいると
幸せになれない

幸せになれないまま
悩み続けて
ある日やっと素直に生き始める

というのが
婉曲に表現した
私の人生です

私というのは
あなたのことであり
筆者は神様の家来として
これをあなたに伝えるため
このような方法で
ここに書いています

2012年12月15日土曜日

パズル

そこには
日本語のパズルがあって
それをせっせとならべて
ぼくは
たまにうれしくなる

そのパズルを
だれがくれたのか
ぼくはうすうす
気づいているけれど

それをみんなに知らせるのは
なんだか
はしたないことのように思えて

だから
ぼくは黙って
パズルのかけらをただ選びつづける
パズルはしょっちゅう完成するが
決まった答えはないので
いつまでも
やめられない
それに
パズルはどんどん増えていく

その一方
磨り減ってなくなって行くパズルもある

いつのまにか
たくさんのパズルを
ぼくはもっている

詩集のようなパズル
お伽噺のようなパズルもある

ぼくは
自分のパズルも作っている
いつから作りはじめたのだろう

無数の星が
パズルの上でまわって
ぼくは消えていく




きょう、12月15日は、谷川俊太郎さんの誕生日です。

2012年12月14日金曜日

素敵なおじいちゃん

素敵なおじいちゃん
愉快で
おもしろくて
ちょっとだけひねくれていて
人を驚ろかすのが好き

一人っ子の風体を後姿に感じさせながら
わき目も振らず何かに打ち込む
それはいつからの癖?

今までしてきた仕事が
おじいちゃんの信念を裏打ちして
つよく押し出す

おじいちゃんが遠慮なく言うことが
世の中を楽しませることだと感じるから
無用な遠慮もしなければ
させないようにも気を遣う

長い間
いろんなところにでかけて仕事をしてきたから
いまや世界一の物知りだと言っても
否定する人はいない

おじいちゃんは
新しいものを作っては惜しげもなく人々に見せる

おじいちゃんがした仕事は
世界中に広がり
たくさんの人を喜ばせた
そのせいで
おじいちゃんは
たくさんの人から愛されている

おじいちゃんは
年をとった
死ぬのが楽しみだという
おじいちゃんにとっても
死は初体験のことだろうから

その新しい経験が
気分よく
できますように

みんなが願っています
誕生日の日に
あなたのことを目蓋に思い浮かべながら




12月15日は谷川俊太郎さんの誕生日です

 毎年、誕生日のお祝いのつもりで詩を書いています マツザキヨシユキ

 去年の詩はこちらです↓
http://miraisousaku.blogspot.jp/2011/12/blog-post_14.html?spref=twv

2012年12月13日木曜日

雪解けを待つ

私の庭は雪に埋まっている
その下で放射性物質が
身の振り方を考えている

私はあなたの下で
身の振り方を考えている

なにもかも
あきらめて
なにもかも
新しく望む

私は私の庭で
雪解けを待つ

2012年12月12日水曜日

花は立ち止まる

花は立ち止まる
私の前で

世間の風を受けながら闊歩していたけれど
百人の人と
幾千の事象に臨んできたけれど

花は迷いもなく立ち止まる
振り返ることもせず
昨日までの計算高さも忘れて

花は立ち止まって
黙り
凛と立って
無言で視線を私に向けてくる

花を前にした私は
花の来し方行く末を想った
だかそれは
ほんの一瞬のことだった

私は
私の人生を受け入れて生きることに
集中しなければならなかったから
季節の風に身を任せて
花や樹や草や生き物や宇宙の自然を
受け入れて
ただ
なすべきことをしなければならなかったから

2012年12月11日火曜日

細い腕

細い腕が畑に埋まっている
畑から畑が腕伝いに上がってくる
畑と地上はやがて混ざり合い
入れ替わる
私を植えようと企んでいるのは
私の腕だ
だが腕は既に脳みそを混ぜながら
夕飯の用意をしているので
大根は自ら細く切られなければならない
まな板が水と混ざり合い
包丁は既に鍋の中で
味噌と入れ替わっているので
私はあなたのワンピースの袖を掴んで
竈にくべて
火を起こさなければならない
料理がそれを待っている
風呂が先か夕飯が先か
あるいは有る岩がさきか
後片付けが先か
細い腕は一本
大事な些事が掛けられているので
油断できない
油揚げを揚げるために
火を起こさなければならない
細い腕は腕まくりして
お尻とは区別が必要だ
トイレにいくときに
廊下が便器と入れ替わらないためにも

2012年12月10日月曜日

淀んだ風

あのとき殴られた左の頬
長い年月が経ち
いま
殴って欲しい右の頬

あのひとがなぜ殴ったのかは
いまよりも
あのときの自分の方が
きちんとよく知っていた

長いものに巻かれ
夢を忘れることさえ正当化することを覚えた私に
あのときの
あのひとのことはわからない

いま
子どもたちは
殴ってさえもらえない
大人になってから頬に
淀んだ風が中るだけだろう

2012年12月9日日曜日

会ったことのないあの人

会ったことのないあの人だけど
気になる 気になる
会ったことのない人は
私に語りかけてくる
やさしく 激しく

会ったことのない人は
いつまでも
そのままでいるとは限らない
会ったことのない人の
ことばかり 考える
夜に 朝に いつの間にか

会ったことのない人が
私に語りかけてくる
昨日も 今日も 明日もきっと

会ったことのない人は
かけがえがない
あの人は
私の大事な人
いつから?  どうして?

気まずくても 楽しくても
距離感もわからずに
肌のぬくもりも知らぬまま
寒い夜も
暖かい部屋に
一緒にいる

2012年12月8日土曜日

中心のこころ

体にピンを刺すと
痛いけれど
どこが中心かが
わかってくる

ピンを刺した場所と
心が通信していると
そのことをここに書いている自分が
主張し始める

胸に手を当てても
そこに心の気配はしない

頭の中から
心はここにあると
信号が発せられ
また同じ場所に戻ってくる

心にピンを刺すと
そこから血が出て
辺りを浸す

血は乾いて
かぴかぴになり
心を守ろうとする

私は裸の心に
ぶかぶかの服を着せて
外に連れ出そうとする

パンツが落ちると
心は
中心を隠そうとして
心の中心の中心があることに
みんなは気づいてしまう

2012年12月7日金曜日

ネガディブソングス

この世には
上手くいかないことばかり
100回死んでも
まだ足りぬ
あの世にも
上手くいかないことばかり

毎日は
苦しいことの繰り返し
努力をしても
抜けられぬ
いつまでも
苦しい道が続くだけ

あの人は
きょうも恨んでいるばかり
赦(ゆる)しなんぞは
ありゃしない
あの人は
恨みと愚痴で忙しい

その愛は
いつまでたっても後ろ向き
愛しい人を
苦しめる
その愛は
身勝手 意地悪 隙(すき)だらけ


2012年12月6日木曜日

未来のこども

あしたはなにするの?
あしたは今日と同じこと
あさってはなにするの?
あさっては先週と同じこと

先月はなにしてたの?
先月は去年と同じこと
来年はなにするの?
来年はきのうと同じこと

そうして百年目の満月を
未来のこどもが眺めてる

2012年12月5日水曜日

おととしの今日書いた詩

プレゼント

 
2010/12/05

冬の暖かい日差しの中で
夢を見たわ

どこからが夢で
どこまでが空想だったか
わからないの

冬の街を雨が通りすぎ
珍しく虹が掛かったの
そして
いつまでも消えずにいた

白いカーテンの揺れる部屋で
あなたは風がいいねと言って
ほほえみかけてくれた
私は
そう?
とわざとそっけなくした

それからあなたに
プレゼントの箱を手渡したわ
あなたは私の肩を抱き寄せて
いつもの挨拶のキスをした

夜がきて
朝がきて
沢山仕事をした
友達とお酒を飲み
旅行にも行った
ネイルも何度も塗りかさね
それと同じくらい嘘もついた

気づくと
いつもの場所の
古びた椅子にすわっていて
目覚めていたけれど
いつ
眼をあけたのか
もう忘れていたの

しのきすとあのき

けっとんぴー
すきりあふ あぁーまり
きりるまたべ しれそこ

ろぬかせらのさしくみち
しいわありこみそつれいのち

よいこはり はりせしずみちと
くるしいかずごけらくぱく  ぬわいらせす

しにら りけん すうほたろつろけ
みくならたぬふゆうみしれと

けっとんぴー
たむけめそうあま しのて
けりししまいの まちあかり
ぬと やちくそさへ しらまたほ

けっとんぴー
ていてすらりくあ ずんとこし

2012年12月4日火曜日

円形の駐車場

中腹に円形の駐車場があり
自殺者がよく訪れる
やや下にある砂利が敷き詰められている
広大な四角い駐車場は
開業以来満車になったことがない

人々が駐車場を訪れる理由は
四角い駐車場の国道側にできた施設を
訪れるためだが
フェスティバルが行われる日などは
誘導員が数百名も出て
駐車スペースに車を導いている

円形の駐車場への道は
行き違えないほど狭く
看板も立っていない
到着すると外周の道を回りながら
駐車スペースを探すことになるが
その道沿いにあるスペースは限られていて
13台停まるのがやっとだ
この駐車場には13台しか停まれない

ある夜
彼がやってきたときには既に6台が停まっていた
彼は外周を回りながら停車位置を選ぼうとしていた

駐車位置は円形に配置されているので
その内側には駐車できず
ただの芝生の広場になっている
6時の方向から入り右回りにぬ12を過ぎ
5時の位置に来たとき
1時の方向の車の中に母と子がいるのが視えた
母は子供と無理心中しようとしていたが
子供はビー玉が一つ床に落ちて見つからなくなったと
シートの下をしきりに覗き込んでいた

6時の方向の車には
やはり別の母と子が乗っていたが
この母は
子供を刺し殺すタイミングを計っていた
刺し殺した後
車ごと置き去りにして
逃げ帰ろうと考えていた

彼は円周をもう一周して
4時の位置に車を停めた

死へ向かう密度がこれほど高い場所に来たのは
初めてだった

下の駐車場は
きのうの雨でぬかるんでいる
ここは
木の上の月の景色が見渡せる場所
誰も円の中心へと入っていくことはない
一握りの人同士ががにらみあい
その行状を見届けられる唯一の場所

2012年12月3日月曜日

そわそわしちゃう

そわそわしちゃう
やさしくてすき

たったかはしる
たのしくてすき

じっとりみてる
いろけがあるね

くっきりはなす
わたしはできぬ

しらじらあける
よあけはきれい

しんしんひえる
さむざむこごえ

あなたがいれば
ぬくぬくゆるむ

いないとこまる
そわそわしちゃう


2012年12月2日日曜日

甘えん坊さんの巨塔

甘えん坊さん
彼女はたまに自分の言っていることがわからない
かきくけこ

口をついて出た言葉の意味を理解するまえに
次の言葉を発してしまうから
おまけに相手がややこしいことや
どうでもいいことを
長ったらしく語りかけてくるから

パニックだ
さしすせそ
差し詰めすし詰めだ

白いニットの胸の膨らみの前で
手を合わせ
体を揺すりながら
眼は焦点を結ばない

小さな噴水から
ちょろちょろと
白い水が漏れる

四つ葉の残り一枚
バターケースのなかの
少し残ったバターが
味方だよ

探せばほかにも!
浦島太郎の玉手箱の中
まみむめも
マリモの中心部
彼女の中心部で
息づいている
脳みそ色の巨塔

2012年12月1日土曜日

あたたかい私信

いま、山手線で向かっています。
あと、三十分くらいです。
おでんは食べないでください。
昨日はごめんね。
殺したのは、あなたじゃなく私かもね。
反省しました。
最近、ちょっと行き違いが多いけど、これから良くなると思っています。

ミーナにエサあげましたか。
共食いする夢みちゃいました。

月がきれいだね。
明日は、郡山行くよ。
朝、東京駅で下田さんと待ち合わせした。

いいポスター、できるといいな。

じゃ^ - ^

2012年11月30日金曜日

チキン 大丈夫?

苦し紛れの言い訳で
さらに苦しくなりました

癒しを求めて休みすぎ
歩くだけでも辛くなり

トクをしようと東奔西走
かえってお金が消えていく

役にたとうと張りきると
自分の役に立ちません

好きなあの子を追いかけて
きらいなあの子に捕まった

楽しい計画立てたけど
しんみりうなだれたい気分

2012年11月29日木曜日

青春みたいに胸を弾ませて

自分の体にしがみつかないと
生きて
行けないんだね
アルパカちゃん

とある
寒い日に
アルパカちゃんは
裸になって
考えていた

いつも途中で
こんがらかって
やめてしまうのは
前の
ハンパな
カレシと一緒

アルパカちゃんは
縛られるのも
ぎゅっと押さえつけられるのも
じらされるのも
嫌いではない
だけど
相手に仕返しをしたくなる

公園の池の湧き水のそばで
アルパカちゃんは
自分のことを考えながら
いつの間にか
他人のことばかりを
考えていることに気づいて
「おえっ」と言った

きょうは
古い家に帰る
電車を乗り継いで
夕日の方向へ
走っていく

青春みたいに
胸を弾ませて
アノときみたいに
息をハーハー言わせて

2012年11月28日水曜日

あなたが現れるたびに

あなたが現れるたびに
私はくだらぬ言い訳をして
あなたに赦してもらおうとする

あなたが立ち去るたびに
私はその背中を見送り
またあなたがやってくることを願う

あなたと会えない日が続き
私は自分らしさを取り戻そうと
あなたのことを忘れようとする

100万円あげる

電子書籍として実験的に連載開始しました

2012年11月27日火曜日

黒ネコちゃん

軽くなっていく黒ネコちゃん
冷たい場所を見つけて
浅くて早い呼吸をしています

もう好物も食べません
赤い舌と喉の奥まで
惜しげもなく晒したままです

さっそうと雀に飛びついた姿は
もう瞼の奥に残るばかり

黒ネコちゃん
妹が連れてきた偉そうなネコ
さらば
妹はまだ帰らぬが
先に行っても誰も怒りはしない

よくやった
さあ
どこにでも行け
塀の向こうでも
その向こうの屋根の向こうでも

福永令三さんの訃報に接し

児童文学の作家、福永令三さんの訃報に接した。福永さんとはいろんなことを一緒にやらせていただいた。福永さんの新作の本のシリーズを出版すること。そして新人の児童文学作家を発掘し、世に送り出すこと。とても時間がかかる根気のいる仕事をご一緒にさせていだだいた。何度も熱海のお宅に伺って、ケーキを食べながら思いをめぐらせ、お話をした。福永さんが読者からのファンレターを宝物のように大事にしまっているのをみせていただいたことを思い出す。あのすばらしい笑顔。最初の待ち合わせのために送られてきたご自分の写真。私に詩を教えるために書き込みを入れて送ってくださった詩集。奥様のやさしい声まで。何度も私のやっていた出版社にも足を運んでいただいた。つぎつぎと思い出される。そして、私の出版社がなくなるときに電話で交わしたわずかな言葉。83年の生涯が幸せであったことを祈ります。当時の仲間たちと、あの坂を上ってまた会いに行きたい。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E6%B0%B8%E4%BB%A4%E4%B8%89

2012年11月26日月曜日

ソファに座ったまま

ソファに座ったまま
やっちゃおうというのか
窮屈で強く凭れたりして
いつもと違うのもいいけれど
僕たち初めてだよ

きみは縛られた写真をチラッと見せたりして
なかなか挑発もうまいね
飢えたワンちゃんみたいに
まっしぐらさ

アロマキャンドルを幾つか灯して
古いイタリア映画点けっぱなしにして
ぼくに服を捲り上げさせるなんて
ブラが結び目の解けないギフト包装みたいで
割いちゃいたくなる
それも当然狙いだね

きみの声はなんてかわいいんだ
甘え上手なのは
匿さないんだ

ソファが湿り気を帯びて
舌が絡み合う音も
初めてのようだ

深い息を吸って
きみはなにかのチャンスを狙っているのか
途方に呉れる遠い道のりを
駆け上がっていくんだ
これから

カーテンを閉ざして
二人だけになろう
実況中継はやめて
誰かにまかせておけばいいね

2012年11月25日日曜日

けつまくりたまえ

けつまくりなさいよ
けつまくりたまえ
つまりまくるけつ
きみつかみ
かみつかずつつみいれ
つかみかからずつつがなく
つみつくらず
もちもつきもうそつきもせず
つらくなくつらくあたらず
つみれなべつつにつきいれ
なべしきにつつみこむことなく
きみ
けつまくりみなけつまくり
つっぱらずつづけてつんのめることつつしみ
つきすすんでつつしみつつけつまくりなさいよ
けつまくりたまえ
けつまつまで
けつまくりたまえ

シマシマお尻

うきうき浮世
飽き飽き秋よ

シマシマお尻
ますます祭り

ふわふわ服は
わくわく和服

むんむん蒸れる
るんるんするの?

「死のうとしたときに」に中村ゆき子さんから寄せられたコメント

あなたはどこの崖の上にたっているのですか?

私の、家の近くに101才の老人が一人でくらしています。
畑の中のプレハブで。呼び鈴がきこえないのでアルミのドアにはけん玉の木の玉がつってある。
元気ですかと訪ねると、「猫ちゃんと一緒に楽しく暮らしております」と答えた。
老人は野良猫にエサをやって可愛がっています。
ある夏の大雨の日、プレハブの家は水に浸かってしまい、おじいさんは息子夫婦の元へ引き取られていきました。
その後もアルミのドアの前には、からのエサいれと一緒に野良猫が・・・・

この話の続きをあなたに聞いてもらいたいのです。、だから私が行くまで空でも眺めながら待っていてほしいのです。


※マツザキより これはブログの読者、中村ゆき子さんから、先日11/23の詩に対して寄せられたコメントです。中村さん、ありがとうございます。皆さんに読んでいただきたくて、そのまま転載させていただきました。

2012年11月24日土曜日

あれからどうだった

夢の途中で何度も起きた
いつのまにかうたた寝してしまう夢を見ていた

サンダルを突っかけて
近所の川まで写真を撮りに行った
帰り道に
いそいそとカメラを持って川まで歩いたことを思い出しながら

お茶漬けにお湯を注いで
マイナスを掛け算した

予約タイマーで
昨日の番組を予約したのは
今日になってからだった

テレビをつけると
カーター大統領が演説している
あさっての飲み会に誘われていることを思い出した

カメラを持って出かけよう
しばらく会っていない友だちと
あれからどうだった?
という話をしよう

2012年11月23日金曜日

死のうとしたときに

死のうとしたときに
ふと違うアイディアが浮かび
引き返そうとした人

映画の主人公みたい
気取って
崖の上に立つ

苦しいことが晴れた空に蒸発する
というのは勝手な幻想
じりじりと心を焦がすだけだから

突風にあおられて
髪の毛が乱される
懐かしい香りが
鼻の奥を突いて
背中をなでてくる

時は流れているので
頭の中で続けられる描写は追いつかず
自然とあきらめてはまた始める

エンディングテーマが流れ始めた
なかなかいい曲だ
この曲にふさわしいラストシーンに
視界のすべてが巻き込まれてゆき
フェードアウト

2012年11月22日木曜日

入っています

お財布の中に
小銭が少し入っています
お財布が
隠しているものは
なんでしょうか

セーターの中に
おとなが一人入っています
なぜ入って
いるのでしょうか
ほかに取替えは利かないのでしょうか

熊の中に
サーモンが一匹入りました
サーモンは
なにを
考えていたのでしょう

子供の中に
お姫様が一人入っています
大人になったら
出られなく
なるのでしょうか

毛虫の中に
蝶の子どもが
入っていますか
おたまじゃくしに
きいたら
教えてくれるでしょか

ツクバネの実に
落下傘部隊が入っています
競争したら
どちらが
負けるのでしょうか

2012年11月21日水曜日

小さな声で話すのは

小さな声で話すのは
秘密のようにしたいから
恥ずかしそうに話すのは
あなたをくすぐってみたいから

やましいことはありません
やましいこともしたいけど

2012年11月20日火曜日

クレマチス

去年のきょうから一年が経ちました
一年前のきょうも同じ11月20日でした
11月20日はやわらかい日差しで
きょうのこの辺りを明るくしています
分け隔てなく日陰以外を照らしています

地震で壊れた街は新しい建物が建ち未来都市が姿を現そうとしています
ビルの間の青空を雲が流れて行きます

ランチタイムに人びとがレストランに大挙して訪れ
壮年の旅人たちはゆったりすることを楽しんでいます
地ビールを喉を鳴らして
満足そうな表情を満面にたたえています

時間は流れているのでしょうか
今が永遠のようにその辺に佇んでいます

スマホを覗き込めば友達たちが会話をしようと仕掛けてきます
手にした端末で心がつなげられ
実際の居場所より近くに居るようです
何が実際なのか
チラと考えたりします

来年のきょうは人びとは何をしているでしょうか
あの人やこの人やその人は
今と同じことをしているでしょうか
いや
多分していないし
しているのだと流れる雲のように考えます

コーヒーを飲み終えた人が
店を出て
次の居場所に移動して
さっきまで一緒にいた人のことを忘れてゆきます

だがまた思い出すこともあるでしょう
思い出さない人は
忘れていますが
思い出したときには
忘れていたことに気づくでしょう
思い出された人は
どこで何を思っているでしょう

誰も何も何かを答えてくれません
誰も何も答えようとしません

新聞の紙面に記者は他人事を記しています
新聞はこの日に置いていきましょう
明日には明日の新聞が配られるので
溜まりすぎないようにした方がよさそうです

まあそんなところです
私もバスに乗らなくてはなりません

2012年11月19日月曜日

ベタベタ

彼女は
おでんとユッケを食べて
好きな酒を呑む
フォーにパクチーをどっさり入れてツルツルたべる
ライフスタイルは自分のもの
人に迷惑はかからないと思っている

『さようでございます』

欠点を巧く隠して
着飾って世間を渡って行く
晴れの日のためには準備も完璧にして

欠点を隠していることは
爽やかでかっこいい
そのうち隠していたことも忘れて
笑顔を振りまいている

『そのようなことはございません』

(((o(*゚▽゚*)o)))
彼女はたまに絵文字で会話をする
寒くなってきたら
暖かいお茶を何倍も飲む
実際の歳より若くてお洒落

余裕のあるときは
口数すくなくベタベタ
彼氏にものをいう

2012年11月18日日曜日

どのこかな

ちくりちくり
愛の裏返し
ひとでなし
ねちねち
くるくる
ぴったり
ぎゅうぎゅう
とろりんこん
さかなかな
かなかな泣き虫
どのこかな

2012年11月17日土曜日

抱きとめもせず 寄り添いもせず




あなたが 光なら
私は 空にたなびく 雲でありたい

抱きとめもせず
寄り添いもせず
ただ
なんとなく
近い存在でありたい

それがかなわいなら
かなわない理由は気にもとめずに
勇気だけを頼りに
さまよいたい

行き着くところは分かっているから

そこは
あなたが眠る場所

そこに
たどり着いた時にも
私はただ  なんとんく
あなたの近い存在でありたい

2012年11月16日金曜日

11月16日

白黒の兎がドアから出ていく後ろ姿を見ながら
懐かしさと悲しさの差がいまだにわからないと
ぼんやりと遠いお花畑をスローモーションで思った

知ることはすべてできない
そのことはもちろん知っていたが
知らないことがすべてであると
夕日に浮かんだ雲に打ち明けられた時

懐かしさの向こうから悲しみが
滝を崩して
勢いよくこの身を打ちにきた

寝入り鼻に
目醒めていく11月の未明
逆立ちした朝焼が夕焼けに変身し
酔った人の夢が電車の中で迷い
降りる駅を探している

まだ絶望という文字はやってきていない

2012年11月15日木曜日

そう、あなたには詩がある

うたた寝をしてしまって目覚めたあなた
そう、あなたには詩がある

こてんぱんにやっつけられて疲れて眠ってしまったあなた
そう、あなたには詩がある

首が痛くて頭も痛くなってきたあなた
そう、あなたには詩がある

明日食べるものがなくて凍えているあなた
そう、あなたには詩がある

手術を終えてやっと退院したあなた
そう、あなたには詩がある

銀行に騙されて首をくくろうとしているあなた
そう、あなたには詩がある

暴力を受けて体も心も傷ついて逃げ出してきたあなた
そう、あなたには詩がある

友だちに裏切らればかにされて悔しさを噛み締めているあなた
そう、あなたには詩がある

ふる里の家を失ったあなた
そう、あなたには詩がある

家族を目の前で傷めつけられて悲しんでいるあなた
そう、あなたには詩がある

取り立て屋に終われ税務署に催促され電気も止められたあなた
そう、あなたには詩がある

もう何もないと絶望しているあなた
そう、あなたには詩がある

まだ何も経験していないのに何もかも嫌になってしまったあなた
そう、あなたには詩がある

弱みに付け込まれていいようにされっ放しのあなた
そう、あなたには詩がある

大事に育てたものが奪われて絶望しているあなた
そう、あなたには詩がある

木馬から転げ落ちて以来いいことがないあなた
そう、あなたには詩がある

泣いてばかりいるあなた
そう、あなたには詩がある

死のうとして生きていくことをやめようとしているあなた 
そう、あなたには詩がある

何をやっても上手くいかないあなた
そう、あなたには詩がある

憂鬱で体もだるく心のどこかが張り詰めているあなた
そう、あなたには詩がある

真面目にやってきて不真面目な人にしてやられたあなた
そう、あなたには詩がある

ずっと閉じ込められてずっと我慢してずっと愚痴を言っているあなた
そう、あなたには詩がある

寒い公園のそばで幽霊と一緒に夜を過ごして眠れないあなた
そう、あなたには詩がある

毎日が同じ繰り返しで時間が無駄に過ぎていくだけのあなた
そう、あなたには詩がある

誰がなんと言おうが言うまいが
そう、あなたには詩がある

そう、あなたには詩がある

2012年11月14日水曜日

二人だけの舞踏会

わたしはあなたになりすまし
みたいものみなみてしまう
あなたはわたしになりすまし
したいことみなしてしまう
わたしはあなたになりすまし
さらにわたしになりすます
あなたはわたしになりすまし
さらにあなたになりすます
そうしてふたりはたくさんの
かめんをかぶりぶとうかい

2012年11月13日火曜日

アルパカのぬいぐるみ

三階建ての二階は
天地がひっくり返っても三階建ての二階なので
彼女は安心してそこにいることができる

ずっとそこにいることもできるが
安住の地は別のところにあると信じているので
彼女の眼はいつも何かを探しているような感じになる

明け方または夕方に
雨が降っていると
道は泥水を跳ね上げる
それが泥の水であるかは
明確な証拠はないが
だれもその説明を求めないので
それはそうであるということにいておいて
差支えはなさそうだ

頼りないものを頼りにしなければ
世間はわたっていけないので
せめて頼りになるものを拵(こしら)えて縋(すが)りたくなる

水の上に魚が跳ねた
彼女は一緒に跳ね上がってみた
アルパカのぬいぐるみを落としそうになってまで
衝動のままに
跳ねる必要があったのだろうか

2012年11月12日月曜日

破れた靴下

破れた靴下を履いているんだ
大事な靴下なんだ

それは
100円ショップで買ったから
お金がないときにやっと買ったから

破れた靴下は
あしたさよなら

君の体で
僕のクツを磨いて ピカピカにして
ゴミ箱に入って他のゴミと一緒に
ゴミ捨て場に行ってください

破れた靴下は
きょうでお別れ
君のことは忘れない
君はゴミになって燃やされて
僕のことは忘れるだろう

忘れてくれていい
感謝こそすれ
恨みはしないから





2012年11月11日日曜日

長い廊下の先には

長い廊下の先には教室があります
途中には料理屋の客間や
新館と旧館の段差に作られた「7段階段」
女子更衣室
「女中部屋」と和室の客間
映画の舞台にもなった「土曜日の実験室」
上の方にに肖像画が沢山掛かっている
モーツアルトが学んだという音楽室
その入り口には「鮫島教諭」と記されたブレートが貼られています

小雨が降り始めた門から母が入ってきて
入り口脇の「コモンスペース」でミニライブをしていたふたりの詩人に
お金の入った封筒を渡そうとしました
私はそれをやっと静止して母を
教室へ連れて行くことにしたのです
そこは北京大学です

そのころ
印刷会社の夫妻はベンツのワゴン車で
丘の上の温泉の高級旅館に向かっていました
信号のつながりが悪く
ちよっとイライラしながら
しばらくして見えてきたのは
北京大学でした

私は長い廊下を印刷会社の社長と歩きながら
その先に何があるのか想像していました

その教室には
もうすでにこの世にはいない「女学生」たちが
一様に不満気な顔押して
黒板の方を向いていました
「ラオシー」と呼ばれる先生は中国人のはずですが
中国語が上手く話せないのです

まあまあまあまあ と言いながら
にぎやかな漫才師が入って来ました
漫才師はこの場を
放送の尺に合わせて何とかまとめてしまう自信があるようです

夕闇がいつの間にか窓の外で待っていました
ガラス窓を開ければ
妖怪のような口を開けて
彼らは入ってくるでしょう
出口を探すでもなく
ただ生ぬるく成り果てて
登場人物たちを腐敗させてしまうのです

2012年11月10日土曜日

11日111月


11

どこかから賛美歌が風に乗って

大きな池のある公園を通り過ぎ

駅前の鳩のいるベンチの前の小さな広場に

聴こえてきたような気がしたその日


その穏やかな日の午後2

そのひとは黄色いラインの電車に乗って

心の闇を見せに行く


白く入り組んだ瀟洒な建物の

まあるい噴水の音が聞こえそうな

植え込みの向こうの窓に

ちらりとそのひとの姿を見ることができる


午後3

何人かと面談をして

会釈を繰り返しているうちに

心の目はおでこからはみ出して

でんでん虫のツノのように頭上に突き出していた


買ったばかりの白いスマートフォンで

電話をしなくては

私がここにいることを確かめなくては


そうして

白い糸にがんじがらめに巻かれた自分の様子を

デジタルカメラで撮影して

タイムラインに上げなくては


日暮れのオレンジ色の太陽が

ビルの向こうに落ちる前に

闇を消毒して

目を閉じてもなにも踏んでしまわないように

下の方を片付けよう


手を揉んで

リズムを掴む

心臓の鼓動と呼吸と瞬きと

言葉の早さを合わせるのだ

2012年11月9日金曜日

社長、あなたへの復讐

社長、私の気持ちがわかりませんか
あなたは
確かに私に優しいし
世界中のいろんな所に連れて行ってくれて
綺麗な景色や雄大な絶景や誰もいない海や
サバンナの草原も見せてくれました
きっと私一人では行くことが出来なかった場所

そしてあなたは私を愛してくれたし
いまも愛していると思う
だけど
ちょっと強い言葉になるけれど
あなたは勘違いしていると思う
バカにしているとおもう
人の気持ちや真面目なお勤めや一般人の考えることを

あなたは長財布にいっぱいお金やカードを入れている上
マイルやスタンプカードも細かく集めていて
無駄遣いもしないし節約もするけれど
小市民の楽しみを理解して古着も着るしB級グルメも食べるけど
女の子の好みもつぶさに調べて
私をびっくりさせるけど
私は不満がどんどん溜まっていっていることが
理解できないのですね

社長
あなたの会社はとてもうまくいっていて
業界からの期待も大きいけれど
あなたは仕事も一生懸命やるし
私のためにもたくさん時間を割いてくれるけど
私は不満なのです
あなたがなんでも上手くやってしまうところに
するするとすり抜けてしまうところに

あなたは友だちも大事にして
昔のサークルの友だちとはいまも釣りをしたり
飲みに行ったりしていますよね
そして決まってその帰り道に
私にメールをくれて
おみやげを持ってきてくれます

そんなことしなくていいのに
嬉しいけれど
無理しているように見える
上手く伝わるかどうかわかりませんが
もっと正直に
凄くやりたいことだけやってほしいのです
細かいことはいいから

社長 あなたは
私が不満を持っていることに耐えられないでしょう
私はよく分かっています
それも贅沢な不満です
でも
それだけに私にも始末が悪いと察してください

あなたは
じゃあ どうすればいいのだ と すぐ言って
それを解決しようとするでしょう
でも 解決しないで欲しいのです
私に不満を持ったまま
いさせてはもらえないでしょうか
きっとあなたにとっては我慢ならないでしょうね

そう言うと あなたは
我慢してもいいし 我慢するより
我慢しなくていいようにする と
言うでしょう

いいえ
私は 不満を持っていたいのです
その不満を持ったまま
あなたと付き合いたいのです
あなたが その 私の不満に
耐えて欲しいのです
耐えてでも 私を愛してくれるなら
私は いまより
もっと幸せに
不安な気持ちが薄れて
あなたと 初めて深い話が
不器用でもこころの通った話が
できると思うのです

だめですか
無理でしょうか
無理しないでください
いいえ
無理してください

理不尽な私の願いを
私と一緒に
抱いてください

私は 社長 あなたに
復讐をしたいのです
勘違いして
私を釘付けにして 身動きが取れない女にした
あなたに復讐を

2012年11月8日木曜日

暗黙と沈黙の上に

誰からも許可をもらわないまま
生きている「私」

勝手に生きていて
いいものだろうか

なんとなく勢いで生きているが

時に想念の強い波動に溺れそうになったりするが

暗黙と沈黙の上に布団を敷いて
今日も眠りにつくだろう

2012年11月7日水曜日

ある 日の 午後

あひるが 手のひらのパンを食べるよ

あひるは
くちばしは黄色くて
軟かい木のおもちゃのよう

手のひらに握っていたスマホは
私を呼んでくれないから
机の上に放置してきた

それと一緒に
きのうまでのわだかまりも

あひるの くちばしが震えて
パンを喉の奥へと送っている

あひるは 食べる時
手を使わない
あひるは 直接 地面に置いてある

脚の上に置いてある
アヒル形の あひるが
直接 パンを食べている
ある 日の 午後

2012年11月6日火曜日

この国の人


丈夫できれいなお家を造りました

外国から舟で運んできたデザインのいい上等な家具と

カーテンとベッドと布団も食器も買いました

いい音のするスピーカーとアンプも揃えました

カラーコーディネートやガーデニングを学び

見えない部分まできれいにしました

この国のいいものに

よその国のいいものを組み合わせて

上手に調和させていきました

 

ある人は

そこまでお金をかけることができないから

機能的で快適な家を造りました

そしてその場所を一生懸命掃除しました

自分の家のない人も

大概 部屋を借りて

生活をよくしようと頑張りました

 

道は整備され鉄道は敷かれ

電気と下水道が整備され

インフラが充実して行きました

ときには無駄なものも造りましたが

必要と思われるものを先回りしてどんどん造っていきました

そして最後に造るものがなくなってしまいました

 

それでも

隙間を見つけては

造り続けていこうとしました

しまいには 造っては壊し

造るために壊し

訳も分からず 更新して

見捨てられたものだけが

古びて行きました

 

造る力は有り余っているのに

造るべきものがなく

とうとうお金も回らなくなってしまいました

しかし権力者は

お金を着服し続けました

我儘に 好き放題に

お金の力でお金を集めました

 

この国を旅しに訪れた

旅人は思いました

 

この国はなんと美しく行き届いていていることか

いいものが

溢れかえっている様子に

驚きながら

この国の人の泣きそうな顔を眺めていました




2012年11月5日月曜日

死にたい

死にたい
というのが彼女の声に出さない口癖

死んでしまった方が楽だろうか

確信が持てないのは
死んだことがないから

死ぬと
体から魂が離れて
楽になるというが

眩しい光やお花畑のいい香り
懐かしい人や風景に出会える
生活のためにいやな仕事をする必要もなくなる

しかし
楽したいから死ぬのかというと
ちょっとちがう
そんなに楽をしたいわけではない

世間の建前では
人の命は大事なものだ
尊厳や夢よりも上位だ
何千何万人の不都合よりも
うず高く積まれた札束よりもだ

生きている価値のない人間でさえ
価値ある人間と同じく
殺すことはできない
死ぬ価値がある人さえ
殺すことはできないのだ

老人になって
世間が賞賛する仕事を初めてしてしまうことがある
それが棚ぼたや偶然でも
そういうことがあると
本人も自信をもち
生きていてよかったと満足する

楽したい
死にたいと
ずっと思っていたとしても
それはご破算となり
生きることの快楽に執着する

さて
白鳥と鶴は別の鳥だっただろうか
鶴のことを白鳥の一つと
勘違いしていた男は
自分と他人の区別もできずに
考えている

彼女はさっきから朝焼けの天空の下で
茫然としている

生きている価値がある人と
死ぬ価値がある人を混同しているのは
誰だい?

2012年11月4日日曜日

明かりの見えない森のなかに

明かりの見えない森のなかに
投げ出され放置された人

昨日までは毎日宴会をして
いい酒を飲んでいた

身ぐるみ剥がれて猿ぐつわをされ
縛り上げられた人

昨日までは笛を吹いて
威張っていた

苦しさの極限にいる人
絶望に覆われた視界
ただ明日を夢みるばかり
昨日に帰ることはできない
明日の日がくれば
明後日になにを思う
腐りかけた豆乳が冷蔵庫で待っている

2012年11月3日土曜日

5角形の白い扉

私は彼女をトイレのドアへと導き、白く輝く便器を指さした。

逃げ込んだ家は郊外の小高い丘に続く緩やかな坂道の途中の
低い崖の上にあり道路を挟んで向かい側に空き地があった。
その空き地は駐車スペースに利用できたので、いつも何台かの車が停まっていた。
昨日降った雨で駐車スペースはすこしぬかるんでいた。
晩秋らしく枯れた夏草が無秩序に生えていた。

家の扉は「5角形の白い扉」で、目の高さに明かり取りのくもりガラスが埋め込まれていた。

80年代生まれの女、Rと私はフローリングに置かれたベッドの上でむさぼり寝ていた。着の身着のままでここにやってきたので、彼女は昼間のままの服装で、下だけ脱いでいた。何かの気配で目を覚まし、危機が迫っていることを察して目を見合わせた。
今まで眠っていたと思えぬほど凛々しい表情で、互いの動きも素早かった。

私は彼女をトイレのドアへと導き、白く輝く便器を指さした。
次の瞬間、私たちは身を縮めて豆粒になり、そこに飛び込んだ。
その瞬間、遠くでドアを叩く音がした。

ドアを開ければ放射能が入ってくることは間違いない。それを伏せておいて、刺客はドアを叩いて、やがては、壊して入ってくるのだ。

刺客が入ってきた時、私たちはすで裏をかいてに駐車場に来ていた。素早く車に飛び乗って走り去らなければならない。
彼女はすでに飛び乗って態勢を低くしている。
私は一気にかけ出して乗り込むと、キーを挿してエンジンを入れ、アクセルを踏み込んだ。

追っ手は追って来なかった。

2012年11月2日金曜日

世の中に弾かれて

世の中に弾かれて
自分から出ていった

スピードに乗れなくて
脇道に入っていった

言い訳をしたくなくて
黙って座っていた

争いが嫌いなので
花の種を配った

青空が好きなので
雲と一緒に消えていった

2012年11月1日木曜日

その愛は

その愛は伝わりすぎる
いつまでも胸の中に
とどまっていることができない

その愛は激しすぎる
いますぐに縄を解かないと
引きずられて怪我をする

その愛は強すぎる
すべてを巻き込んで
吹き荒れて撒き散らす

その愛は死ぬことがない
あなたが死んでも
生きて愛し続ける

その愛は眩しすぎる
その愛は伝わりすぎる

生きる 雑念

生きていても
死んでしまっても
人に迷惑がかかるから
ただ慣性の法則に従うのだと
理屈をこねくり回して
毎日をやり過ごしているが
食欲を始めとしていろんな欲求が湧いてくるので
頭や体の働きもそれに任せて生き延びている

嬉しいことも
悲しいことも
楽しいことも
いらいらすることも
辛いことも
どうでもいいことも
毎日やってくる

知人や友人たちは
どうしているのだろう

長年仕事をしてきた人たちは
それなりに形になって
周囲に認められ 尊敬もされ
稼ぎや蓄積もあるだろう

あと1本糸が切れたら
自分は奈落の底へと落ちる
その一本にすがって
不安に揺れている

もし死んだら
生まれ変わるだろうか
それとも知らないうちに
誰かの人生を引き継いで
その命をやっていくのだろうか

神様に知らされることもなく
何の記録も遺らない状態で

意識が舟だとしたら
私は漕ぎ手なのだろうか

明日はやって来るものではなく
静止している風景なのだろうか

2012年10月31日水曜日

おまつり まんねり

つよがり しっゃくり しらんぷり
どっぷり とっぷり ぼったくり
やっぱり きっぱり へのつっぱり
おまつり まんねり あとのまつり

一昨年の10月31日に書いたもの

館内放送



ミミー マーガ サン さん
モーガ チチ トルノ さん
いらっしゃいましたら
クソレタッ イ レプス 広場で
シンケウコ ヨグウ の皆様がお待ちです
至急 お越しください

去年の10月31日に書いたもの

じんせいは わからない



よいことをして
わるいこともして
よくもわるくもないことをして
どちらかわからないことをして
おとなになった

おとなになっても
よいことをして
よくないことをして
どちらかわからないことをして
ろうじんになった

じんせいは
むずかしい
じんせいは
おもしろくて
つまらない

あくびをしたら
しかられる
しかったひとも
あくびをしてる

2012年10月30日火曜日

ワタシヲ タベナイデ

ワタシヲ タベナイデ
タベタラ ナカナイデ
イナクナッテモ ソコニイテ

デモ イナクナラナイカラ
ワタシヲ タノシマセテ
シツジミタイニ
イウコトキイテ

ワタシハ
ダレカノテヲ フリホドイテ
ココニキタノデス
ホシウラナイノ カードヲモッテ

アナタハ
カクゴヲキメテ
ヨワムシナノハシッテイルヨ
デモ
モウソツギョウダネ

イチバンダイジナモノヲ
ステテキテ
ソシテ
ワタシヲ
タベナイデ
アジミスルダケニ
シテオイテ

2012年10月29日月曜日

死んでいません  (書きかけのメール)

きょうも
生きていますか
息をしていますか
鼓動を胸の中で立てて

死んでいませんね

そうですか
それはよかった

私は
あなたが生きてさえいれば
死んでいなければ
まずはいいのです
生きてさえいれば
いろんな良くなる可能性がありますから

もし
あなたが何かに苦しんでいるなら
その闘いは
あなたを良くするための闘いだと思います
「良くする」ってどういうことか分からなくても
一生懸命やっているあなたを
私はすごいと思います

私は
生きているあなたを讃えたいと思います

私も一生懸命やっていますが
あなたに比べると
ずっと努力がたりないと思います
だから
私はあなたのようにもっとちゃんと苦しんで
必要な答えを見つけたいと思っています


2012/10/29

回転

お寿司が次々やってきて
目の前を過ぎていく
お寿司 こんにちは
お寿司 さようなら

押し寿司は
押されたね
巻き寿司は
巻かれたの?

お寿司が右からやってきて
左の方へ遠ざかる
お寿司 こんばんは
お寿司 おやすみなさい

にぎり寿司よ
ようこそ
お稲荷さんは
ごきげんよう

あの子もこの子もやってきて
目の前を過ぎていく
あの子 どこから来て
この子 どこへ行く

お嬢さん
トシ幾つ?
あなた
何の用?

2012年10月28日日曜日

中央線の電車

その独り身の中年男は
(初めて詩に登場するわけだが)
JR中央線のドア際の手すりに寄りかかりながら
ぼんやり考えていた
昔からその位置が好きだった

TwitterをiPhone4Sで眺めて
学生はいいなぁ と
つぶやいた

夢や希望
世間に知らないことが沢山ある
それは中年男にはないものだ
代わりに良くない常識や古傷や
幾つものシミが顔にあった

この中年男の生きる意味は
どこにあるのだろう
中年男は誰かに教えてほしいと願っていた
しかしそう願い始めてから
無駄な時が流れている気がしていた

電車は都心に向かい高架を走っていて
踏切がない
警鐘も聴こえない
走る音も静かになった

中年男には何が必要なのか
男は黙っていた
中央線の電車だけが
それを教えようとしていた

2012年10月27日土曜日

幼い魂

この身をいじめたら
誰かが何かを赦してくれるなどと
考えていた幼い魂は
正しい答えを見つけられぬまま
立ち枯れた林の間を
獣の鳴き声のようにさまよっている

さまよっている間に
いつの間にか
老いぼれてしまう

凍てつく月光をいつか
見ていたことがあったと魂は思い出そうとするが
未来の月の光と混じってしまって
分からなくなる

そうして
すべて分からなくなる
たださまよう魂は
安堵することなく
さまよい続ける
誰かの赦しを得られるはずがないと知りながら
命が果てるまで
さまよっているのか

質問ごっこ 更新しました!

私が質問に答える「質問ごっこ」

質問も募集しています。

http://blog.livedoor.jp/matsuzaky/

2012年10月26日金曜日

ろんろんろんろん

ろんろんろんろん
ろんろんろん

きょうも ももんが
やってきた

ろんろんろんろん
ろんろろろ

なにしにやって
きたのかな

ろんろんろんろろ
ろろんろろん

どこかにつれて
いっとくれ

2012年10月25日木曜日

わたしをいじめてたきみへ

なぜ きみは となりの席に
すわって いたの?
なぜ いまになって 手紙を書いたの?
それも 出さない 届かない 手紙を なぜ
書いたの?

          *

きみが 私に お金をせびって
公園の柵をこえて もち去ったとき
私は きみと きみの友だちの
後ろ姿を みていたよ

きみは もう いじめないと約束したのに
つぎの日から まえにも増して
私を いじめたね
おぼえているでしょ

よく考えると
ああなることは うすうす分かっていたんだ
でも 少しは 希望はあった

きみは ずっと私をいじめたけど
不幸になってほしいとは考えなかった
あのときは 憎かったけど
いま考えると もっと 憎いやつがたくさんいたんだ
きみは ずっと 生ぬるい人間だったんだと
私は思う

私は
子どもを3人産んで
結婚は 2回したけど
まあまあおちついて 生活している
白髪の多い ババアになったけど
茶パツにして おしゃれもすこしはしている
少女だったころより うす化粧だけどね

         *

暗い少女時代は何だったのかと
いまだに回想することはある
たしかに 今の私の中に あのときの 自分もいる
でも 暗かった過去が
幸せの涙で洗い流され
新しい自分になったと感じたこともあったんだ
本当に愛せる人と出会ったおかげて

私はずっと愛を求めて 
愛を与えて生きていくんだと思う
きみにこんなことを言うのは変だけど
きみの中には愛情はあったんじゃないかな
もう誰にもたしかめようもないことだけど
たしかめても しかたない ことだけど

私も きみに
この 出さない 手紙で
私の こころの わだかまりを
流しさってしまおうと思う

なぜ きみが 出さない手紙を書いたのか
出してくれても よかったんじゃないか

うん
もうそんなギモンも終わりにして
さっさと 寝ることにする
明日 朝 早いから


                       
                               BYE!

2012年10月24日水曜日

いるもの と いらないもの

いらないものを身の回りに集めて
自分を守っているから
彼女の部屋はいつでも散らかり放題

たまにゴミ捨てや整理整頓をして
掃除機をかけるが
外からいろいろ持ち帰ってくるので
すぐにもとの状態を取り戻す

いらないみのといるものの区別が
たまにつかなくなるから
彼女はいつもいらついている

たまに根本的に考えなおして
いらないものを減らし
すっきりした部屋にしようと思うが
なんだか違う気がしてしまう

いらないものと同化して
身を潜めていると
いるものが隣からささやきかけてくる

2012年10月23日火曜日

「ああ、恥の多いぼくの人生」

「ああ、恥の多いぼくの人生」
という詞があったとしよう
十五歳の子と四十五歳のオヤジが言うのでは
随分違う

どう違うのか
諸君にぜひ考えてみてもらいたい

2012年10月22日月曜日

十月の とある日の わたくし

立派な表札の掛かった門があって
その前を貧相なわたくしが通り過ぎる

並木のあいだの道は人と犬が通い
木の上の枝はカラスが使っている

昼間は太陽と青空が使っていた
この辺りの世間は
夜になると月と星が控えめに控えて
見下ろしている

喫茶店は二人の姉妹とその友人がやっている
客はこの姉妹たちと無関係の人がほとんどだ

あきらめてやっていくことと
あきらめずにやっていくことは
ほぼ同じこと

わけもなく駅が混雑する日
そんな日が度々あっても
駅員にはなにも変化がない

オレンジスカッシュを頼んだのは
その色が見たかったからだけではない
三日月型のオレンジがグラスの淵にへばりついて
わたくしを励ましてくれるだろうから

ありがとうオレンジスカッシュ
わたくしは表札をいつかかけたいよ
どんな表札がいいかは
わたくしが決めよう

2012年10月21日日曜日

髪の毛を濡らして

髪の毛を濡らして
やってくる彼女は
朝 彼の家でシャワー
彼にはそれが自慢さ

シャンプーの香りを振りまいて
きのうと同じ服を着て
走ってくる彼女
彼にはそれが自慢さ

しかし
自慢の彼女は
彼とは別の誰かの腕の中
お腹の上
それは彼には
自慢できない
ご自慢の彼女の
悪い癖
いつまで続くの
自慢できない
悪い癖

2012年10月20日土曜日

・・・・・・伝えたい

「ありがとう」ばかりではなく
「さよなら」と伝えてたい

霜の降る月の夜に
狐がすすきの間から
顔を出し
きょとんとしている
その時

「さよなら」ばかりではなく
「もう会えません」と伝えたい

円型の大地に
波打ちながら風が渡っていく
吹き違い
混じりあいつつ
地にはりついて

「もうあえません」ばかりではなく
「幸せを祈っています」と伝えたい

やがて雪が振り
この辺りは一面真っ白になる
その上を
足跡が縫っていく

「幸せを祈っています」ばかりではなく
「・・・・・・・・」と伝えたい

黒板に書いた文字を消したら
教室を出て行きましょう
また明日もやってきます
その時に気持ちがいいから

2012年10月19日金曜日

ひとりでに

ひとりでに
影が窓から入ってきて
パンを食べている

やりきれぬ
思いを食べているのか
しくしくと泣いている

ひとりでに
ドアが開いて
今度は主人が帰ってきた

見たところ
不漁だったらしく
ゴキゲンが斜め

やりきれぬ
悩み事は持ち越さない主義なので
ストーブに薪をくべて
焼いてしまう

こんがりと
焼けたパンを
木の皿にのせて
テーブルの上に置く

見たところ
焦げ目を隠して
積み重ねて
置いてある

ひとりでに
涙が出てきて
頬に線ができる

そういえば
去年も
おととしも
こんなことがあった

こんがりと
焼けたパンは
影が全部食べてしまい
もう残っていない

ひとりでに
眠ってしまった主人は
いつまた起きるのか
わからない

見たところ
日が暮れて
薄暗い窓の外に
白い月が出ている

やりきれぬ
やり場のない思いは
そういえば
見たところ
ひとりでに
どこかにいってしまって
帰ってこない

2012年10月18日木曜日

廃人のように暮らしているよ
僕は元気です

それも 関係ありません

秋の夜が 更けて
囁きかけて きます
遠くから 近くにやってきます
気が 遠くなるほどの
距離を 走って

あの夏に 叶えられなかった
願いごとの 理由が
今になって
はっきりと 分かって きます

日照り続きの 道に
雨が しみ込み

さまざまな 疑問が
答えを得られないまま
報われて いきます

割り箸の うえに
カマキリが 卵を産みます

公園の 向こうで
友達の 小さな 家が
火事になって 燃えています

季節は 寒くても 暑くても
関係 ありません
すぐに 過ぎていって しまうから

ここに 残っている ものは
過ぎゆく ことが できなくて
腐って 滅びることも できなくて
ただ 立ったり 座ったり 横になったりを
繰り返しています

新月から 2日目の 月が
雲の影から
覗こうとしていますが
それも 関係ありません

犬が 吠えていますが
あの犬は
きのう 友達の家に
おしっこを 引っ掛けていた 犬です

2012年10月17日水曜日

ちゃんと苦労する詩

工藤ちゃんが
苦労してる
工藤ナオちゃんが
尚 ちゃんと 苦労してる
工藤ナオちゃんの姉が
尚 ちゃんと 苦労してる やーねー
工藤ナオちゃんの姉が
屋根が漏って ちゃんと 苦労してる
やーねー もってのほか だね!
屋根が  たわんで  漏って 苦労してる
工藤ナオちゃんの姉が
屋根が たわんで 漏って 尚 ちゃんと苦労している 
やーねー やな 屋根やね  あかんで!
工藤ナオちゃんの 姉さん
尚 ちゃんと 苦労する 姉やね  もってのほか だね! 
屋根が 漏って やーねー やーねー
もってのほか だね! 
工藤ナオ ちゃん
直さんと ちゃんと 屋根 直さんと  あかんで!

2012年10月16日火曜日

難しい話

お腹が空いたら
私にごちそうしてくれますか
なんの義理もないと
あなたは思っているのでしょう
けれど
もしかしたら
義理はあったかもしれませんよ
前世とかに・・・
私にもよく分らないけれど
そういうことにして
何か私に食べさせませんか

「すきなものを
すきなだけどうぞ」
などと言って
大盤振る舞いしなくてもいいから
ほどほどに気前よく
食べさせませんか
そうしたら
あしたから
あなたと私
仲良くなるかもしれません
私はあなたにお礼を言います

だから
どうですか
私に何か
食べさせませんか
とりあえず
お茶を濁さず
答えてください

あなたがいつも食べるために
使っているお金を
少しだけ私に振り向ければ
それができるのです

どうでしょうか
無理な相談でしょうか
あなたにとっては
難しい話なのでしょうか

おなかがすくのがいちばんこまる

おなかがすくのがいちばんこまる
なにかをたべなきゃならないからね
たべたくないときどうしたらいい?
たべずにしぬのをまつべきなのか
たべたくなるまでまつべきなのか
おなかがすいててわからない

2012年10月15日月曜日

23時のラストオーダー

一人で入った
一人きりの不二家レストランの
美味しくないパフェは
何も知らなかったころの
血の混じった涙の味
塩素の香りのカットフルーツ
湿ったカビのようなシフォンケーキ
苦味だけが後味にのこるオレンジ
それを救うのは
無造作に丸くくり抜かれた小さなバニラアイス
喉と疲れた脳をほぐして
750円と刻印される
コンクリートで整備された都会の川のほとり
24時の閉店まで
どんな明日を描こうか

2012年10月14日日曜日

ろんろんろろろん

ろんろんろんろん
ろんろんろん
ろんろんろんろん

誰か いる?

ろんろんろんろん
ろんろんろん
ろんろんろろろん

はい います

ろんろんろんろん
ろんろろろ
ろろろろろんろろ

誰ですか

ろんろろろんろん
ろろんろろん
ろろろろろろろ

ももんがです




あなたはネコが
すきなのね

あなたのまわり
ネコばかり
足の踏み場も
ネコばかり
肩を持つのね
ネコばかり
重さをはかる
ネコばかり
この場を借りて
ネコばかり
ネコの上にも
ネコばかり
ネコの下にも
ネコばかり
苦しいときの
ネコばかり
ネス湖にいるのも
ネコばかり
寝込んでいるのも
ネコばかり

あなたはネコが
すきなのね

2012年10月13日土曜日

夢から覚める前に

夢から覚める前に
いそいでアイスカフェオレを喉に流し込んだ
まだほとんど飲んでなかったので

ベッドのうえで
きのうの宿題を思い出そうとしたが
どこに置き忘れたのか
どうしても思い出せない

青空にキンモクセイが香っていた
あの少し肌寒い日に
鉢合わせして出会ったあの人は
何をしているだろう

ぼんやり部屋なかを眺めたら
そこは自分の部屋ではなかった

2012年10月12日金曜日

ものうげなあのこ

すきまからのぞいてごらん
ほんとうのことがわかるから

こえをだしちゃいけないよ
みつかったら
つかまってかえれなくなる

あのこはうつくしいかおをしているが
おそわれていらい
ひがおちると
こころがおにになってしまう

じぶんでもきづいていないらしい

あのこのおおきなひとみは
うるんで
だれもがみとれるが
ときどきまっかにそまり
あいするものを
みつめころしてしまう

あいしてもあいしても
しらぬうちに
あいてをころしてしまう

そのきおくは
あさになるときえてなくなるから
あのこは
ちゃんとあいさつして
ひとびととうまくやっている

さあ
いま
すきまからのぞいてごらん
ものうげなあのこは
なにをしているとおもう?

2012年10月11日木曜日

おなかをすかせて

じんせいは おなかがすく
いっぱいたべたら
まんぷくになる
おなかがすいたら
なにかをたべる
なにかをたべると
なにかはどこへ?
なにかは
おなかのなかへいき
おなかをすかせて
きえていく
ぼくにはゴハンが足りないのです
もっとおかずも食べたいのです

2012年10月10日水曜日

すきなひとが

すきなひとが
となりでねむっています
あなたは
なぜかねむらない

あなたは
なにをのぞんでいますか
ほしいものが
あるのですね

ふたりは
ずっといっしょです
いままでも
そしてこれからも

あたらしいものが
ふるびて
やさしくなっていきます
うるさいことを
いわなくなります

そらは
うえにありつづけて
おちてきません
すいへいせんの
したにあるそらは
かくれたままです

あなたは
なににかくれていますか
だれかのかげにですか
それとも・・・

2012年10月9日火曜日

あなたはうつ病さえ

あなたは
あなたの優しい性格で
うつ病さえ迎えいれたのですね

あなたは
あなたの優しい性格を
失わないまま
少しずつ強くなって
たまに知らん顔で
辛いこともやってのけている

木綿の衣服を
じゃぶじゃぶ洗って
汚れをおとし
お日さまにさらして乾かして
いつの間にか身に纏って走り回っている

あなたのことが好き
あなたは
あなたの優しい性格を
周りの人につかっているが
誰につかったのかはもうわからない

それほど
無尽蔵につかい続けている

2012年10月8日月曜日

なつかしさを求めて

なつかしさを求めて
この丘にきたんだね
そういう顔をしているよ
暇人みたいだよ

2012年10月7日日曜日

詩の友だち

彼は詩の友だち
私がこうして詩を書いているとき
彼もまた詩の中にいる

詩は永遠の欠片のように
心に突き刺さっいる

夢の中で探し当てた
いい方向へと向かう道が
雲に覆われた月のせいで
見えなくなっているけれど

平気な顔をしているのは
信じているから
信じられる何かを

2012年10月6日土曜日

その香り

私はじっと座っているだけだった
座って花の香りを吸い込んで
うっとりと目を閉じていた

いや
目を閉じてはいなかった
私は
劇場の舞台に目をやって
心地良い歌声に心をさ迷わせて
浸っていた

暗転が暗闇を投げかけてくる
拍手が静寂を破って
あふれだす

私の胸を満たしたその香りは
記憶の中に沈んで
未来の明るい日差しを投射してくる

時は
劇場の微風を吸い込んで
ゆるやかに速度を早め
舞台の奈落の上空を渦巻いて
ただ爽やかに過ぎ去っていった

2012年10月5日金曜日

何度思ったことか

死んでお詫びしたいと何度思ったことか
死んでもお詫びできないと何度思ったことか
死んだらさらに迷惑がかかると何度思ったことか
死ぬより死んだ気になったほうがいいと何度思ったことか
死んだ気でやるのは死ぬより大変だと何度思ったことか
死ぬなんて口走る自分は死ぬに値しないと何度思ったことか
死んでも何も良くならないと何度思ったことか
死んだら誰かが喜ぶだろうと何度思ったことか
死んだら喜ぶ誰かのためにも死ねないと何度思ったことか
死んだふりして死なないのもいい手だと何度思ったことか
死なないふりして死ぬのは意味がないと何度思ったことか
死んだら死にたくない人の力になれないかと何度思ったことか
死ぬなら首を吊ったらどうかと何度思ったことか
死ななくてもいい人生はなんて素敵なんだと何度思ったことか
死んだら誰が葬式に来てくれるだろうと何度思ったことか
死んでも葬式はみすぼらしいだろうと何度思ったことか
死んだらまた生まれかわるのだろうかと何度思ったことか
死ぬよりいい途はないものかと何度思ったことか
死ぬ時何を思うだろうと何度思ったことか
死んだらあのひとはどう思うだろうと何度思ったことか
死なないで生きていこうと何度思ったことか
死なないでいるうちにいつか死ぬのだろうと近頃何度思ったことか

2012年10月4日木曜日

わたしはおまけ

わたしはおまけ
おとくなひとよ
ねだんはないし
すててもへいき
がっかりしても
そのときかぎり
じゃまにならずに
くっついている
ときたましゅやく
わきやくなのに
だいじにされる
だいじなゆめを
かかえていれば
ゆめをほっする
ひとがはぐする
たのしいよるよ
とわにつづけよ
だけどつづかぬ
ゆめあささめる

2012年10月3日水曜日

さよならは短いことばで

長い長いあなたとの
付き合いだったけれど
さよならは短いことばで
すませましょう

気持ちは変わらなくても
別れのときは
突然やってきます
それを望んでいなくても

自分のなかに
さよならしたい理由を
見つけようとしましたが
それさえ
なんだかとても
いいものに見えてきてしまうのは
なぜでしょう

きのうの大きくて明るい月は
きょうは雨雲に覆われて
あなたと私の心を隠しています

最後には抱きしめます
それは
無粋なことに違いないけれど
あなたもそれをきっと待っていると
私には信じられたから

あなたの胸が私の胸と交感して
鼓動を打ち
別れの時が来ます

もう会うことはありません
会いたくても
会うことはできません

長い長い付き合いでした

生きてきた時間よりも ずっと

2012年10月2日火曜日

安らぎを見つけようとしても

私には花を手向ける相手がいない
手向けるべき花束もこの世にはない
あの人はもうどこかへ行ってしまった

暗い森を照らす光は
もう月と星の光しか夜は残っていない
蝋燭の火も
街あかりもみんな消えてしまった

子鹿の鳴く声も
泉の湧き出る場所も
あの軽快な足音もどこにも残っていない

傍らに人は座っているけれど
尋ねてみても記憶の中に
地図も道標もなく
そこには多くの人々や生き物たちが
彷徨い迷っている

遠くの陽炎のゆらゆらの中に
毎日やってくる日常の安らぎを見つけようとしても
それは粒子となって微かにキラキラ光るだけで
海底の砂浜に沈んでいく

もう帰ることはできないのだ
立ちどまるできないように
進むこともできないのだ

2012年10月1日月曜日

木立の間の日だまりを

木立の間の日だまりを
ぼくに貸してくれませんか
小さな椅子を置いて
愛する人と
話をしたいから

風がめぐり
草花が香り
木の葉が見下ろす

人がやっと
寝転べるほどの
その場所を
太古からあったような
その場所を
貸してくれませんか

日がくれて
木々の天井の隙間から
かすかな光の星が
一つだけ見える
その場所を

2012年9月30日日曜日

みかこさん と いまの君

思い出コレクターの
みかこさんは
美しい過去が好き

どんな過去も思い出も
磨きあげて
大事なところは念入りにブラシをかけ
余計な凸凹は取り去って
飾り棚に並べます

並べるときに
関連する思い出も調べて
書き添えることもあります

そして
時々取り出しては
自分だけで観賞して
うっとりしています

友だちや
これから仲良くしたい人が現れると
みかこさんは張り切って
思い出を見せながら話をします。
その話を
誰もが面白がるものだから
みかこさんは得意になります
得意になり過ぎて本まで書いてしまいました

そんな
みかこさんの部屋は
思い出でいっぱいです

思い出だけでいっぱいなので
まだ思い出にならないものたちは
入ることができません

みかこさんは
いきのいい現在のことは
いまの君に任せっきり
いまの君は
みかこさんのパートナーです

片付けが上手で
考えることが苦手です
いまの君は
不要なものはとっておかず
磨いたり繕ったりせず
すぐに捨ててしまいます

みかこさんとは反対の性格なので
きっと仲良くできるのです

2012年9月29日土曜日

やっぱりきょうも

しょんぼりしてる
とんぼがとまる
しんみりしてる
しみじみおもう
よかれとおもい
おもいはうらに
すましてみても
すまされないし
ぐっすりねれば
ねるのはくすり
やっぱりきょうも
はったりばかり

2012年9月28日金曜日

そして秋

去って行く夏と
入れ替わりにやってくる秋に
挨拶をするために
詩を書かなければならない

しかし夏と秋の輪郭は
意外とぼんやりしていて
一部は混ざり合っているので
明確に分けて挨拶をするのは困難だ

夏は半ズボンの少年で
秋は少し年上の少女だ
ちなみに
冬は未婚の母で
春は幼女だ

夏くん
さようなら
よくやってくれた
おかげでたくさん汗をかいた
叶わなかった恋や
挫折した冒険は来年に持ち越すよ
夏くんには関係ないだろうけど
秋さん
聞こえたと思うけど
そんなわけで
傷跡が染みる
美しい紅葉でなぐさめておくれ
未婚のお母さんがたまに吐く冷たい息で
凍えるまえに
美味しい収穫物をいっぱい食べさせておくれ
セピア色の写真を眺めるより
いますぐ写真を撮るように
アドバイスをしておくれよ

夏くん
秋さん
二人が愛し合いながらも結ばれないことを
私はまえからしっているよ

だから
あの涙に滲んだような
オレンジ色の夕日を
きょうは長めに
灯していてくれないか

◇質問募集◇ 質問ごっこ

撮影 深堀瑞穂
詩人の質問箱
詩人に訊いてみたいことを、私が代わりにお答えします。他人の意見が参考になることがありますよね。詩人の意見は、役に立つかもしれません。・・・という趣旨で、あの有名な「谷川俊太郎質問箱」(ほぼ日)とは一味(だいぶ)違うものをやりたいと思います。この企画は、ある人から強く勧められてはじめますが、自分にとっては、自分が一番苦手なするところの「説明力」を鍛えるこになるだろうと期待しています。自分のぼんやりしたアイディアを他人様にちゃんと伝えるというのはとてもむずかしいことだと思うのです。しかもそれが、人のさまのためになれば・・・ということで、挑戦してみようと思います。

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2012年9月27日木曜日

流れる星が見られるかもしれない

小雨がふっている
高原に敷かれた鉄路を
列車が走っている
秋の始めのこの時期は
草木が色づき始めるために
緑色や青色系の鮮やかさを
放出してしまおうとしているので
空気は強く香っている
都市にはないいい香りだ
だがその香りは彼にとっては
無意味で意識されていない
昼下がりというにはしっとりと湿った明るい午後だ
視点は移動しているので
定まっていない
時に繰り返している感覚もある
空から眺めているイメージも混ざる

彼は列車のことはよく知らない
他動的に乗っているから
切符は拾ったものだ
目的地は知らずに乗っている
いつか来たことがあるという記憶に導かれてはいるが
何かの力に操られたのだ
だから
ただ乗って時を過ごし思考を巡らせている

まわりの皆の動きに流されて
駅に降りると
降車客たちが思い思いに散らばっていく様子が
綺麗だった
それを立ち止まって見ていた
雨は降っていない
空は晴れ夕暮れ時がやってきた
彼はどこに歩いて行くのだろう
夜は流れる星が見られるかもしれない

2012年9月26日水曜日

さわやかな朝

さわやかな朝だった
やるべきことは
すべてし終えた
それもあってさわやかな
朝だった

2012年9月25日火曜日

立入禁止地区

立ち入ってはいけない
ここから先は
そうやって
線を引けばすむ

それを決めた人間は
ここには居ない
ここには来ない
会食弁当を食べるのに忙しい

線のところには
雇われた人が待っている
雇われた人は
そこにいると
「雇われた人」からただの「人間」になっていく
家族やふる里ことを考えるから
雇った人が誰なのか
わからなくなってくるから
関係がなくなってくるから

誰が決めたのか
誰にもわからなくなっていく

神さまが
川で陸地に線を引いたことを
思い出す
その美しい線と比べると
人が作った線は
なんと殺風景なのだろう

その線が
何を奪っているか
奪っている人間は
何を守っているのか
誰にも分からなくなる








南相馬市
壊れたままの堤防
2012/09/19
筆者写す