2012年10月19日金曜日

ひとりでに

ひとりでに
影が窓から入ってきて
パンを食べている

やりきれぬ
思いを食べているのか
しくしくと泣いている

ひとりでに
ドアが開いて
今度は主人が帰ってきた

見たところ
不漁だったらしく
ゴキゲンが斜め

やりきれぬ
悩み事は持ち越さない主義なので
ストーブに薪をくべて
焼いてしまう

こんがりと
焼けたパンを
木の皿にのせて
テーブルの上に置く

見たところ
焦げ目を隠して
積み重ねて
置いてある

ひとりでに
涙が出てきて
頬に線ができる

そういえば
去年も
おととしも
こんなことがあった

こんがりと
焼けたパンは
影が全部食べてしまい
もう残っていない

ひとりでに
眠ってしまった主人は
いつまた起きるのか
わからない

見たところ
日が暮れて
薄暗い窓の外に
白い月が出ている

やりきれぬ
やり場のない思いは
そういえば
見たところ
ひとりでに
どこかにいってしまって
帰ってこない

2 件のコメント:

  1. 中村ゆき子2012年10月20日 0:49

    窓からひとりでに入ってきた影が、パンにやりきれぬやりばのない思いをはさんで食べてしまったのかな?心の中にある無の存在が。

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    1. 中村さん。深イイ鑑賞、ありがとうございます! そうだといいなぁと夢をいだけていいですね。

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