ひとりでに
影が窓から入ってきて
パンを食べている
やりきれぬ
思いを食べているのか
しくしくと泣いている
ひとりでに
ドアが開いて
今度は主人が帰ってきた
見たところ
不漁だったらしく
ゴキゲンが斜め
やりきれぬ
悩み事は持ち越さない主義なので
ストーブに薪をくべて
焼いてしまう
こんがりと
焼けたパンを
木の皿にのせて
テーブルの上に置く
見たところ
焦げ目を隠して
積み重ねて
置いてある
ひとりでに
涙が出てきて
頬に線ができる
そういえば
去年も
おととしも
こんなことがあった
こんがりと
焼けたパンは
影が全部食べてしまい
もう残っていない
ひとりでに
眠ってしまった主人は
いつまた起きるのか
わからない
見たところ
日が暮れて
薄暗い窓の外に
白い月が出ている
やりきれぬ
やり場のない思いは
そういえば
見たところ
ひとりでに
どこかにいってしまって
帰ってこない
窓からひとりでに入ってきた影が、パンにやりきれぬやりばのない思いをはさんで食べてしまったのかな?心の中にある無の存在が。
返信削除中村さん。深イイ鑑賞、ありがとうございます! そうだといいなぁと夢をいだけていいですね。
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