2012年9月27日木曜日

流れる星が見られるかもしれない

小雨がふっている
高原に敷かれた鉄路を
列車が走っている
秋の始めのこの時期は
草木が色づき始めるために
緑色や青色系の鮮やかさを
放出してしまおうとしているので
空気は強く香っている
都市にはないいい香りだ
だがその香りは彼にとっては
無意味で意識されていない
昼下がりというにはしっとりと湿った明るい午後だ
視点は移動しているので
定まっていない
時に繰り返している感覚もある
空から眺めているイメージも混ざる

彼は列車のことはよく知らない
他動的に乗っているから
切符は拾ったものだ
目的地は知らずに乗っている
いつか来たことがあるという記憶に導かれてはいるが
何かの力に操られたのだ
だから
ただ乗って時を過ごし思考を巡らせている

まわりの皆の動きに流されて
駅に降りると
降車客たちが思い思いに散らばっていく様子が
綺麗だった
それを立ち止まって見ていた
雨は降っていない
空は晴れ夕暮れ時がやってきた
彼はどこに歩いて行くのだろう
夜は流れる星が見られるかもしれない

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