小雨がふっている
高原に敷かれた鉄路を
列車が走っている
秋の始めのこの時期は
草木が色づき始めるために
緑色や青色系の鮮やかさを
放出してしまおうとしているので
空気は強く香っている
都市にはないいい香りだ
だがその香りは彼にとっては
無意味で意識されていない
昼下がりというにはしっとりと湿った明るい午後だ
視点は移動しているので
定まっていない
時に繰り返している感覚もある
空から眺めているイメージも混ざる
彼は列車のことはよく知らない
他動的に乗っているから
切符は拾ったものだ
目的地は知らずに乗っている
いつか来たことがあるという記憶に導かれてはいるが
何かの力に操られたのだ
だから
ただ乗って時を過ごし思考を巡らせている
まわりの皆の動きに流されて
駅に降りると
降車客たちが思い思いに散らばっていく様子が
綺麗だった
それを立ち止まって見ていた
雨は降っていない
空は晴れ夕暮れ時がやってきた
彼はどこに歩いて行くのだろう
夜は流れる星が見られるかもしれない
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