私には花を手向ける相手がいない
手向けるべき花束もこの世にはない
あの人はもうどこかへ行ってしまった
暗い森を照らす光は
もう月と星の光しか夜は残っていない
蝋燭の火も
街あかりもみんな消えてしまった
子鹿の鳴く声も
泉の湧き出る場所も
あの軽快な足音もどこにも残っていない
傍らに人は座っているけれど
尋ねてみても記憶の中に
地図も道標もなく
そこには多くの人々や生き物たちが
彷徨い迷っている
遠くの陽炎のゆらゆらの中に
毎日やってくる日常の安らぎを見つけようとしても
それは粒子となって微かにキラキラ光るだけで
海底の砂浜に沈んでいく
もう帰ることはできないのだ
立ちどまるできないように
進むこともできないのだ
0 件のコメント:
コメントを投稿