2012年10月2日火曜日

安らぎを見つけようとしても

私には花を手向ける相手がいない
手向けるべき花束もこの世にはない
あの人はもうどこかへ行ってしまった

暗い森を照らす光は
もう月と星の光しか夜は残っていない
蝋燭の火も
街あかりもみんな消えてしまった

子鹿の鳴く声も
泉の湧き出る場所も
あの軽快な足音もどこにも残っていない

傍らに人は座っているけれど
尋ねてみても記憶の中に
地図も道標もなく
そこには多くの人々や生き物たちが
彷徨い迷っている

遠くの陽炎のゆらゆらの中に
毎日やってくる日常の安らぎを見つけようとしても
それは粒子となって微かにキラキラ光るだけで
海底の砂浜に沈んでいく

もう帰ることはできないのだ
立ちどまるできないように
進むこともできないのだ

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