2011年10月31日月曜日

じんせいは わからない

よいことをして
わるいこともして
よくもわるくもないことをして
どちらかわからないことをして
おとなになった

おとなになっても
よいことをして
よくないことをして
どちらかわからないことをして
ろうじんになった

じんせいは
むずかしい
じんせいは
おもしろくて
つまらない
あくびをしたら
しかられる

しかったひとも
あくびをしてる

2011年10月30日日曜日

寒い季節がやってくると

寒い季節がやってくると
コタツにいた猫が
黒焦げになって
塀の上を歩いている

寒い季節がやってくると
落ち葉に隠した
木の葉のお金が
白い煙を出しながら
小さな炎を灯して燃えてしまう

寒い季節がやってくると
散歩に行くのがいやになり
ついでに
愛する人を
迎えに行くのもいやになる

寒い季節がやってくると
寒がりのあなたが
暖をもとめてあいつに寄りそい
いつまでまっても
帰ってこない

2011年10月29日土曜日

試合

あなたは私の様子を窺って

質問の玉を打ち込んでくる

わたしは

しどろもどろになるが

必死にこらえて体勢をつくり

その玉を打ち返す

 

うまく打ち返せることもあれば

そうでないときもある

フェンスを越えて

通りがかりの人に拾ってもらうことも

しばしばだ

 

それでもあなたは

不意をついて

質問を打ち込んでくる

剛速球の質問は

打ち返すことができずに

地面にバウンドして

快音を立て後ろに流れていく

 

あなたはびくともしない

笑っているのか泣いているのか

なんともないのかさえ分からない

 

星屑が暗くなった空から

降ってくる

月がやさしく灯っている

 

あなたは

私を近づけない

あなは

私が近づくのを恐れながら

誰かを待っている

 

2011年10月28日金曜日

愛の練習

わたしはあなたをあいしています
中国人のえんこんさんが
食事時に
中国人のしゃおりいと
しゃおちょんに
日本語を教えている
さっきからなんども繰り返している
わたしはあなたをあいしています
ふたりは覚えるのに必死だ
わたしはあなたをあいしています
僕はすこしはなれた席で
それを聴いて頷いている
ふたりの発音はなかなかうまい
真剣にゆっくりと
一音ずつ発音するので
彼女たちの知らぬまに
愛が言葉に飛び乗ってやってきそうだ
それはたぶん
やっかいだ
愛がやってきたら
急いで窓を閉めるか
とりあえずソファに座らせて
どうするか考えなくてはならない
あなたはわたしをあいしていますか
こんどは疑問形が
僕の愛を探りに来た
隠さなければ
すき
不意打ちで
省略形もやってきた
すきですか
すきです
きらいですか
すきです
私は
窓を開けたり閉めたり
考えたり
忙しい
わたしはあなたをあいしていますか
おっと
これはむずかしい
はい
たぶん
あなたは私を愛しています



取締役

取り締まります
あなたを
きつく
やさしく
締め付けます
きのう
あなたは
よくないことをした
私が見ていないとおもっていたの?
私はこっそり見ていました
私は網を張って調べていました
それが私の役目だからそして
すべてを報告書に書きます
自分に都合のいいように
あなたの運命の一部は
私次第
あなたは知っているでしょう
私の愛の姿を取り締まる者と
取り締まられる者
表裏一体となって
これからも
どうぞよろしく
業績は
あなたしだい
来年度の計画も
中・長期目標も
私が認めれば思いのまま
あなたと私の将来は安泰
市場に適応さえすれば
市場に溺れても




2011年10月26日水曜日

いなくなった私に

あなたがこの世からいなくなっても
私はあなたを探し続けます
私がこの世からいなくなったって
あなたは
いなくなった私に
探されるでしょう

2011年10月25日火曜日

駆けてきた娘

走っていってしまいました
ぼくの手をほどいて
雲の流れる方へ
風の音がする
街の方へ

走ってきたと思っていたら
走っていってしまいました

2011年10月24日月曜日

やっぱり愛していたんだ

やっぱり愛していたんだ
それでも
やっぱり愛していたんだ
もう愛することはやめようと決めたんだ だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
あなたにも私にもいいことではないとわかっていた だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
とりためた写真は捨てられずに残っている
いつか捨てようと決めた だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
あなたより好きな人はきっと見つけることはできる
あなたより私にふさわしい人だって……だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
もう夢で見たことと現実に起こったこと
あなたの顔や仕草だって本当は忘れてしまっているのかもしれない
あなたのいやなところや可愛くないところだっていっぱいあったはずだ
だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
過去形と未来系が衝突して大破して
私は傷ついてたまに後ろ向きになって
もう早く忘れたほうがいいと何度も思ったんだ だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
愛していたいだけなのかもしれない
本当は愛していないのかもしれない
愛とは何か分からないのかもしれない
愛は刹那なのか永遠なのか
そんなこともわからない だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
愛していたといわれて
愛する人はどう思うのだろう
破れたチラシが風に待ってまとわりついてきたくらいのことかもしれない
だけど それでもやっぱり愛していたんだ
勝手に愛していたんだ
誰かに忠告されても
ずっと会うことがなくなっ
その声もまなざしも忘れてしまっても
約束したいろんなことがおもい出せなくても
それでもやっぱり愛していたんだ
だけど
もうやめようと思うんだ
先が無いと思うから
それでもやっぱり愛しているんだ

2011年10月23日日曜日

資格試験

資格試験に落ちた記憶はないのだか
受かった記憶もないから
やはり資格は持っていなかったのだろう

あなたから
「あなたには資格がない」言われて
作り笑いしかできずに
課題を家に持ち帰ったけれど
あなたが家庭教師をしてくれない限りは
問題は解けそうもない

あたふたと困り果てて
いつものように疲れて眠ってしまった

しっかりした人なら
眠さに負けることもないのだろうが

あなたは
私を見通して
とっくに決めていたのだろう

この人は
私のパートナーになる資格はない

2011年10月22日土曜日

ただ愛してはいなかった

あの人は私の将来を一緒に考えてくれた
ただ愛してはいなかった
あの人は誕生日でもないのにプレゼントをくれた
ただ愛してはいなかった
プレゼントはひとつではなく沢山だった
ただ愛してはいなかった
熱が出たとき、あの人は看病してくれた
ただ愛してはいなかった
川べりの道を歩いて手をつないだ
ただ愛してはいなかった
またどこか行こうねと何度も約束をした
ただ愛してはいなかった
あの人は私を大事にし、やさしかった
ただ愛してはいなかった
あの人は私を喜ばせることが好きだった
ただ愛してはいなかった
あの人は私に大事にいているノートをくれた
ただ愛してはいなかった
あの人はいつも私に愛していると言っては抱きしめた
ただ私は愛してはいなかった

2011年10月21日金曜日

ただ愛してはいた

そのひとのことが好きなわけではない
ただ愛してはいた
そのひとに幸せになってほしいなんて思わない
ただ愛してはいた
そのひとと暮らしたいとは思わなかった
ただ愛してはいた
そのひとはほかの人と暮らしていた
ただ愛してはいた
そのひとは私をなじった
ただ愛してはいた
そのひとは時々発狂した
ただ愛してはいた
そのひとはときどき変な顔を見せた
ただ愛していた
そのひとはどこかに行ってしまった
ただ愛してはいた
そのひとは突然姿を見せたが挨拶もしなかった
ただ愛してはいた
そのひとは私を愛してはいなかった
ただ私は愛してはいた

2011年10月20日木曜日

なぜだかは わからないけど

遠くにいるあの人は
きっと私のことを
思ってくれている

私が思う分だけ
きっとあの人は
私のことを
思ってくれている

なぜだかは
わからないけど
私は
信じることができる

なぜだかは
わからないけど
私はあの人を
愛している

近況など

このページを読んでくださる方に感謝をこめて、ちょっと近況を書きます。ツイッターに書き込むには、とてもお金がかかるので、ここに書くことにします。フェイスブックに書き込む方法は見つかったので、よかったら、そちらも見てください。

私は、いま北京大学に留学生として来ていて、学校の宿舎に住んでいます。リビングとシャワー・トイレは三人共用ですが、寝室兼デスクの在るパーソナルスペースがあり鍵を掛けられます。
毎日、約四時間の授業に出席し、そのために約4時間の予習復習をしています。留学生はいろんな国の、いろんな年齢の人がいて、一緒の教室で勉強しています。15人ほどのクラスで、いい感じの人がそろっています。日本人も一緒になることがありますが、しゃべらないようにしているので、日本語はまったく使うことがありません。

北京大学はとても広くて美しいキャンパスですが、たまにスモッグに包まれます。そんな日は喉が痛くなる前に、部屋に帰って喉用のスプレーをひと噴きしてなるべく外に出ません。昔から喉が弱く、すぐ風邪をひきましたが、いまは、対処法がいろいろ見つかったので、風邪をひかなくなりました。
来週はアイスランド、日本からも詩人が来て、中国の詩人たちと一緒に、北京大学で詩の研究会があります。私も参加することになりました。

詩の勉強をすることや、その同志たちと何かができることはとても幸せです。
中国に来る詩人の一人に覚和歌子さんがいらっしゃいますが、先日、横浜のオブラートのイベントでご一緒しました。中国で再会できるなんて、素敵なことです。

中国に来た目的の一番は、中国の詩人たちと交流することにあります。友人の詩人、田原さんのおかげで、早い機会に中国の詩人たちと再会出来ることとは、ありがたいことです。

2011年10月19日水曜日

私の消しゴム

ひとつの消しゴムを
こんなに長い間
大事につかったことは
いままで
なかった

見慣れない文字を消し
かなわない絵空事を消し
空に浮かぶ雲を消し
書き損じた作文を消した

紙の上の世界が吸い込まれ
消しゴムのかすが取り払われると
新しい道のように
まぶしい光が反射していた

消しゴムを手に
私はきょうも
出かける

どこかに
行くために

帰る場所を
見つける旅を
思い描きながら

2011年10月18日火曜日

自分の胸に

明け方に悪魔が来た
私が眠るのを見に来た
悪魔に見られながら眠るなど
いままで
考えたこともなかった

悪魔は
本棚の隙間に隠れて
旧い詩集のように
私を見ている

私が悪魔を見ようとすると
悪魔はすかさず目をそらすので
恋人同士のように
親密にはなることはできない

悪魔は私が寝入ったあと
何をしているのだろう
訊いてみたい衝動に駆られるが
目を覚ましたとき
いつもそこに悪魔はいない
どこにいってしまうのか

自分の胸に
訊いてみよるとしよう

2011年10月17日月曜日

あなたの唇は濡れている

あなたの体に触れていると
花の香りに包まれる

どんな花が香っているのか
目を閉じて想像しながら
月の明るい海に漕ぎ出す

近くで波音はするが
海は静まっている
小さな船は
めまいを起こしそうな揺れを続けるが
あなたと私はしっかりと結び合って
酔うことも受け付けない

たしかなお互いの感覚を
確かめるだけだ

遠いような近いような
未来のような
懐かしい景色の中にいるような
今までにない想いが
とどまって波打つ

あなたは
揺れが収まるタイミングで
小さく声を漏らし
喉の奥に仕舞い込む

私たちは目を開けているのか
瞑っているのかも分からないまま
どこかへ進もうとしているが
同じ場所を行ったりきたりするばかりだ

あなたはずっと
私の腕に長い指を巻きつけてつかまったまま
疲れることも知らないようだ

どこかで
鳥が飛び立ったような気がして振り向くと
それは
あなたの胸から
たったいま飛び立った
透明な鳥だった

月の光の反射で
その輪郭だけが
空に上っていった


matsuzakiyoshiyuki@gmail.com

2011年10月16日日曜日

あなたは濡れていないだろう

あなたは濡れていないだろう
この雨の夜の中でも
あなたは雨を除け
濡れていないだろう

あなたはすでに濡れていたから
濡れるべきところは
濡れているたら
もうこれ以上濡れることはなかったのだろう

あなたは
乾いた笑いに湿り気をなじませて
絡み合う手をしっとりと結び
濡れた瞳で見つめているだろう

だから
あなたは
この雨に
濡れていないだろう

濡れている私をよそに
乾いていっているだろう


☆読んでくださっている方へ

ありがとうございます。
今、中国に来ていて、自分のブログを毎日見ることはできません。二週間に一度ぐらいは見られると思います。
ただしコメントが書き込まれた場合、コメントはすぐにメールで送信されてきますので、見ています。Pollyさん、匿名さん、メールで感想を送ってくださる方、ありがとうございます。
マツザキヨシユキ

2011年10月15日土曜日

そしたら雨が降ってきた

あなたのことを考えて
下を向いて歩いていた
そしたら雨が降ってきた

あなたのあなただけにしかないものを
その素敵さを思っていたら
いろんなことを忘れてしまい
そしたら雨が降ってきた

あなたと私は
うまく別れられたかな
私はそうは思っていない
あなたはあまり気にしていないだろう
最後は笑顔で手を振って
うれしい気持ちがあふれていたけど
それが最後だったのかな

そしたら雨が降ってきた
天気のことなど気にしていなかった
あなたのことを考えていたから
ほかのことはすっかり忘れて
街路樹や花壇が美しかったから
あなたのことを思っていた
そしたら雨が降ってきた

別れに涙は似合いすぎていて
私はなおさらかっこわるかっただろうから
笑顔で手を振る雰囲気で
じっさいとてもうれしくて
あなたもきっとうれしくて
それはとてもよかったな

あなたはその後どうしているの
私はなにかに弾かれたように
空を飛んで遠くの町にやってきた
時間は過ぎていったけれど
いまからまたあのつづきもできそうで
いろんなことが
ごちゃごちゃになって混じり合い
前後不覚
倒れこむ勢いで
足を出せば前に進む
乾いた石の歩道はさっきから
ずっと続いていた

目的地を目指して歩いているんだ
そしたら雨が降ってきた
雨は歩道を濡らしている
あなたは濡れていないだろう

愛しているといえなくなった日

愛しているといえなくなった日に
曇り空を見ている

道を歩くと
自分の靴音が控えめな音を立てて鳴っていることに
心地よさを感じる

これは
さびしい
悲しみのリズムを刻んでいるのだろうか

小さな鳥は
私が見ていることに気づくと
首をかしげて何かを考えているようだったが
すぐに飛びたって
見えなくなってしまった

すべてのことがなかったかのように感じるのは
感傷的な心のせいだろうか

私が歩いていくと
木々や芝生の庭が
前方からやってきて
後方へと去っていく

見上げるられた
木は
角度の変化に合わせて
葉っぱが膨大な情報量の映像を浴びせかけてくる
しかしそれは
ひとときのことだ

銅像の向こうを回り
その古い建物の入り口から中に入り
学生たちの間をすり抜けて
教室に入ると
さまざまな国からやってきた
おそらくはさまざまな事情を変えた人々が
かたことの言葉や
流暢な母国語でしゃべっている

私は
日本で生まれ日本で育った
マツザキヨシユキという名前の人間だが
いまは
ソンチーイーシンだ

ソンチーイーシン
あなたは誰ですか

あなたはなにを
したいのですか