2010年12月31日金曜日

幸せ in 段ボール

お茶漬けです
塩を振りましょう
食パンには
ケチャップを塗りましょう
お茶を飲みましょう

水を飲みましょう
飴をなめましょう
雑誌と新聞と 本も読みましょう
着替えをしましょう
夏服と 冬の服も重ね着と洒落てみましょう

神社にお参りに行きましょう
贅沢気分で
お寺にも行ってみましょう

夜は星を見ましょう
いつもより輝きを増した夜空です
お正月は仕事を休んで
一年の計画を立てましょう

あの人もこの人も
余計な
仕事はせずに
ゆっくり自分を取り戻す

仕事している人ご苦労さん
新しい段ボールに
新しい希望を入れて
幸せを確かめましょう

どっこいしょ
いい具合

2010年12月30日木曜日

旅立って行きましょう

この場から旅立って行きましょう
知らない誰かさん
もうこの場にはいられないから

知らない誰かさん
本当は知っている誰かさん

布団をたたんで
後先は考えずに
思いついたものだけ
カバンに詰めて

未練は置き去りに
後悔はカバンに詰めて

手紙やプレゼント
写真のアルバム
パソコン
CDやDVDは置き去りにして

この場から旅立って行きましょう
風の強い朝に
窓のカーテンは開けっ放しにして

2010年12月29日水曜日

すきま風

よろしく
すきま風
よろしく
気になる奴
寒いじゃないか
でも よろしく
すきまを通るの
たいへん

入って 
もと通りになるの
人の形してるの
似てるの

淡雪と一緒だったのに
すきま風だけ
すきまから
入ってくる

淡雪とはお別れ

隙間と知り合って
お別れの心に
すきま風

ストーブつけたら
すきま風
温風になる

人は何になれるだろう

2010年12月28日火曜日

気分屋さんの気分

鎌倉に行きたいと美穂はいう
だが鎌倉への道は分からない
海辺をスイーッと行きたいと美穂はいう
だがスイーッといける筈がない

窓の外は冬の景色
美穂はあたたかい部屋の中に居て居心地が悪そうだ
プリウスにはナビが付いているから
すぐに飛び出して鎌倉に行こうという

なぜ鎌倉なのかは話してくれない
鎌倉に行って何をするというのか
寒空の下 ぶらぶら街を歩き回るのだろうか
立ち食いしたり買い物をしようというのか

まあそれもいいのかも知れないが
夜になったらホテルにでも泊まろうというのだろうか
気分転換のために
それともまた海辺の道をスイーッと戻ってくるつもりなのか

美穂はしかしもう飽きてしまったようにあくび顔だ
10秒で変わってしまう美穂の気持ち
なかなか変わらないわたしの気持ち
天秤にかけたら…

と 思っていたら
美穂が小さくあくびをして
大江戸行こうか と言った
大江戸温泉物語になぜ行かなくてはならないのだろう

2010年12月27日月曜日

古い友だちが訪ねてきそうな日

古い友だちが訪ねてきそうな日
二度と帰らない旅支度をしている
古いカバンに 持っていきたいものを出したり入れたりして

どんよりと曇った空の隙間から
濃い青色の空が覗いている
あの辺りから
虹がかかるだろうか

今日は特別な日らしい
何処かに置き忘れ
置き忘れたことさえ忘れていた日記帳が
突如あっけらかんと出現して
続きを書けと促してくる
続きなんて書ける筈ないのに

あしたになれば
この世界に私の痕跡はないだろう
その逆に
私の胸には深い傷が刻まれているだろう
小さい頃に見た柘榴の裂け目の鮮やかさに似た

そしてその傷の痛みのために
私のカラダは軽くなっていくだろう
友だちはそのことを察してやってくるのだろうか

古い友だち
どこからやってくるのだろう
今頃
近くの駅に着いただろうか

木の机の上で腕組みして
きょうは色々なことを考えている
不思議といつものような堂々巡りはせずに
一方通行で進んでいく思考

私には
色々なことが分からない
花火を見ている気分になってしまう
色々なことは何を意味しているのだろう

問いがいっぱいの頭の中に
もういいよ という声が通り過ぎる
そのせいで
私は深く考えるのをやめる

静かな町に
太陽が巡っていく
風は遠近法の中で通り過ぎ
思いは井戸水のように
汲み上げれば美しく輝き

私が外へと踏み出し歩き始めるとき
私は静止し
私以外のものが
動き始める
私が存在しなかったときと同じように

2010年12月26日日曜日

19分の詩

2318
自分を満足させるために
自分はどうしたら良いのだろう

2319
あたたかい部屋でテレビを観ている
ホームレスに同情できるか
心のホームレスに

2320
もうすぐ電車が出発する
夜行列車は何処を走っていくのだろう
地図で追わず
心の中で追ってみると
あの日の風景が流れていく
目的地はどこだろう

2321
カップラーメンをたべよう
お湯を沸かそう

2322
冬になると首筋がかゆい日がある
変わらずにいてくれるものが
ありがたいと思う時がある

2323
兄さん兄さん
姉さん姉さん

2324
兄さんに死

2325
お湯を注ぐ
食欲がなせる技
お湯を注ぐと
ラーメンができる
できたら食べることが
予想されている

2326
一分に一個書きながら
ラーメンを食べるのは
46年間生きてきて初めての体験だと気づいた

2327
23時37分になったら
アップする
いつものように推敲は後回し
僕の人生みたいに

2328
雪でバスが立ち往生している
立ち往生という懐かしい響きに
安心感を覚える
立ち枯れの木々
たったままの椅子
座ったままの一日

2329
電話代がたまったまま
定められた期日が来ると
人類社会から
切り離される
また1本

2330
カメラを向けると
カメラ用の顔になる人
ならない人
気まぐれな人
あなたの好きな人はどっち?

2331
ほっぺ先が
ピーンといっている

2332
首吊りブランコって知ってる?
誰かがが毎朝漕いでるやつ

2333
ゴミを捨てに行かなければならない
ゴミ捨て場に きょうも
分別して捨てなければならない
種類ごとに出す日が決まっている
そうか
そうすればいいのか

2334
捨て方が問題だ
尖った夢は

2335
きょうは君の香りがバスルームに溢れていた
みたことのない花の香り

2336
もうすぐきょうが終わる
この夜に暮らしているみんなのきょうが

明日が来ないことはないだろう
みんなが信じているから
きっと明日は来るのだろう
絶望的な明日でも
希望が持てる明日でも
とにかくやってくる

絶望と希望が同義語に思える人にも

2010年12月25日土曜日

ノック

ノックする場所が間違っているのではないですか

あなたは毎日
靴のかかとで
ノックしてきました

舗装された道や
家の近くの狭い道
校庭に敷き詰められた砂利の上
電車の床
石段やエスカレーターの鉄の階段

そのほかにもありとあらゆる場所をかかとでノックしてきましたが
間違っていたのではないですか?

そのノックの音に誰も返事をしなかったのですから
あなたはこの先もノックを続けますか?
いつまでも飽きることなく続けるのでしょうか

ノックする場所を変えてみたらいかがですか?

そういうわたしも
長年続けてきて思い通りいかないことがあります

自分ではなかなか冷静に対応策をかんがえられないものです
いつ反応があるかわからないものに対しては

おっと
誰かが来たようです
ノックの音がしました
では また

2010年12月24日金曜日

ねがい事

いつも緑のもみの木

わたしのねがい事も
輝いていられるだろうか

美しいあなた
心はなにを求めているの

2010年12月23日木曜日

眼差しを留めるもの

誰も自分のことなど解ってくれない
そんな眼差しが
道端の枯葉を見つめていた

枯葉は思った
木に茂っていたころ
同じ瞳がわたしを見上げていた と

雨が降り
風が吹いて
星が綺麗な夜に
枯葉は木から落ちた

枯葉が居なくなったところに
小さな空ができた

その空は
孤独な眼差しに満たされるのを
待って木に引っかかっている

2010年12月22日水曜日

沼よ

駅のエスカレーターを昇りながら悩みごとの沼が体からはみ出ているあなただけれど
その沼には絵にもならないほど美しい小ぶりのはすの花がいくつも咲いている
はすの花はどれも首を曲げて悩んでいるけれど
そのせいであなたの悩みごとは空に向かい少しずつ蒸発をつづけている

あなたはその蒸発をむしろ止めたいと思っている自分に驚いているけれど
悩みごとは連鎖して他人のものまで絡みついて繋がっていくので際限がないことにもすぐに気付いてしまう

沼をはみ出させながらあなたはイルミネーションに彩られた並木道を歩いてゆくけれど
並木道からも気づくと沼がはみ出し始めて
歩いていく人の多くからも次々と沼がはみ出してきて
すぐにそれらが交わって混沌とした情景が生まれてしまう

あなたは知らん顔を装ってスタスタ歩いてゆく
目的地にいかなければならない
生きていくためのお金を稼がなければならない
一度一生生活するのに程よいお金が玄関先に置いてあったことがあったが
それは夢だったようだ

脇目も振らない振りをしてあなたは歩く
ブーツの下から泥が溢れてきて
ずぼずぼ音を立てている

2010年12月21日火曜日

仕事

二階にあなたが探しているものがある
そのせいで
一階は水浸しだ

奥の階段を登り
鉄の扉を開け
次の木の扉を開けると
ガラスの向こうがブースになっている
テーブルの黒い天板の上には
マイクロホンが設置されている
ここから実況中継をするというわけだ

あなたがキューを振れば
ブースの男はカフを上げて
女と始めるだろう

ほら 二人とも
もう半裸状態だ
台本そっちのけでよくやるものだ

黒い天板に乗せられた女に
男が覆いかぶさっている
女は挑発的な眼をして腰を揺らす

いつの間にか室内なのに雨が降り出した
台風のような生温かい雨だ
もうわけがわからないほど
荒れ始めた

それで
あなたは何度もキューを振るのだが
何のキューなのか
もう誰にもわからなくなっている

BGMが高らかに盛り上がり
世界を嬌声が脅かす

男と女はいつまでも飽きることなく
つづけている

私は
あなたを置き去りにして
次の仕事場に向かわなければならない
夜空に浮かぶ月や黒雲さえ置き去りにして

2010年12月20日月曜日

タクシーは待っていない

長い夢からさめて
ターミナルを出ると
放射能を撒き散らしたような
明るい鮮やかな夕空が待ち構えていた

とにかく何かしなければと
僕らはとっさに行く先のことを考えていた

そしてこの夕空が意味するところを見極められるはずだ
いつか観た映画の一シーンに答えがあるかもしれない

リニアがタクシーの向こうを走っていく
あのリニアは実験が途中なので
こんな日は危険だ
いや もしかするとあのリニアのせいで
空がこんな色になっているのかもしれない
どこかの時空にねじれて衝突して
夢の世界から何かが滲み出してしまったとも考えられる

タクシーに乗れば災難を避けて
田舎にたどり着けるだろう
街道を結ぶバイパスを二つ通り
東西に伸びる線路を横切って
あの村に行けば
とり返しがつかないことにはなるまい

僕らは連れ立って
人気のまばらなタクシー乗り場にきた

タクシーに乗ると
タクシーは行き先を尋ねることもなくドアを閉め
急発進した

バイパスの橋を渡ると
僕らは思い立って寄り道することにした
その家に入ると
主人は寝室で寝入っていた
僕らが入ると
主人は癇癪を立てて何かを叫び
やがてたしなめるように言った

昨日帰ってきたばかりなのに
直ぐに仕事があり
時差ぼけがきついが
望むところだ
生きている間中ずっと何かをし続けなければならない
寝ている以外は
寝る間も惜しんでしなければ

叱られた気分を抱えて僕らは外に出た
すると待っているはずのタクシーはいなかった

空には星が沢山出過ぎていた
いつもみる一等星より大きな星ばかりだ
その明るさに目がくらみ
ぼくらは思わず倒れこんだ

眠るためではなく
ただ明るさから逃れるために
藁の匂いがした

2010年12月19日日曜日

マッチ売り

求めるものに近づこうとする打算的人生より
過ぎゆく過去を大事に味わう人生のほうが
いいのでは?

ホームレスの僕が思うことは
過去のいい思い出のことばかり

でもそれらに飽きると
今度は現在のことを思う

家賃を払うのは必要悪かということ
月や星は電気メーターにつながっていないということ
食の安全は少し古くなったら捨てろということ
食べたい僕たちにはゴミ箱を漁れということ

自分がよければそれでいいという思いを持った人が
さまざまなルールを決め
ルールの隙間に蔓延して
自分の善良さに不安を覚えると
弱いものに情けをかける

クリスマスが近づくと
マッチ売りの少女が
今日も街頭に立って
寒さに凍えながら
火をつけるための棒を売っている

本当に燃やしたいものは何?
少女は尋ねることはしないが

ホームレスの僕は自問する
本当に燃やしたいもの
燃やしてしまいたいものは
何?

2010年12月18日土曜日

夜の空気

窓から入ってくる
月の灯りは
太陽から君への心遣い

闇の中に放りだされても
君は完全な独りきりにはならない

スピーカーから音楽を流し
本のページをめくれば
別の世界がハンモックのように
用意されている

君の想いを吸い込む夜気が
空のなかでシンとしている

2010年12月17日金曜日

君と

ゆっくりしよう
もう時間に邪魔されることはない
人目を気にすることもないから
コインを入れるように
君に愛情を注ぎ込もう

眼をつぶっていても
つぶることに飽きてしまって
また見開いても
まだ終わらない

港を離れた船が
沢山の出会いと別れを乗せてもどってきても
僕たちは
まだ始まったばかりだ

ゆっくり
空白だった時間を埋めるように
確かなものを確かめ
不確かなものさえ
確かにしよう

列の最後に並んでいた現実は
昨日みた夢のように消え
友達たちの輪の中から弾かれて
衝突した君

2010年12月16日木曜日

玄関にくる人

寒さが手を引いて忘れていた人を連れてくる
ぼくは黙り込んで西日の部屋で文庫本を読んでいる
玄関の前で誰かが立ち止まるが
音一つ立てずに
何か迷っているのか

いつの間にか陽は暮れてきて
ぼくは本を置き
外へ出ることにした

鉢合わせは勘弁願いたい
煮えきらぬものはもうたくさんだ
ドアを開ける風で吹き飛ばすよ

そうして
ぼくもバス停へと飛んで行く

2010年12月15日水曜日

月の光に

ボローニャの石畳の道
路地を抜けていく風
聖堂の鐘の音
映画館の前の人溜まり

みんなは何処へ行ってしまったのか
思い当たる人に手紙を書いてみても
返事は来ない

待ち合わせは塔の下
宝飾店のウインドウを回り見ながら
再会し
夜の賑やかさの中に消えていった

もしかなうなら
月の光に乗せて
あの日の自分に手紙を出したい
あのひとを離してはだめですよと

2010年12月14日火曜日

虹色の隠しごと

隠しごとが入ったリュックを背負って
坂を上がってやってくる
その部屋で
隠しごとは暖炉の前に置いて
二人は求めあった

隠しごとはいつも
放置され
だんだんと熟成された

二人もお互いをよく知るようになり
いつも夢中で話したので
季節の使者がドアの外にやってきては
呼び鈴を何度押しても
気づくことはなかった

水銀灯がLEDランプに取り替えられ
道は冷たく光り
行きかう人の心は
メルヘンを探してさまよった

夜の新たな影法師が生まれると
過去形で語られていた物語を
読み手が追い越し
現在進行形になってしまい
二人は越えなければならない峠に差し掛かったことに気づかされ
目配せをしあった
それが最後で最初の会話となって行った

次の話が未来形で語られ始めたとき
隠しごとは
虹色に燃えながら炎の中にあった

2010年12月13日月曜日

端っこの星

細長い部屋の端っこで
詩をかいている
ずっと端っこにいるのは
僕の好み

だからなのか
端っこが好きな人が好き
端っこを分かち合い
端っこでおしゃべりするのが
いい

真ん中で輝く星は
憧れの一等星
ぼくは端っこのやっと見えている星が好き
名前さえわからない

小さな星がなければ
きっと宇宙はもっと寂しい
大きな星が幾つ寄り集まっても
闇に消えゆく小さな星の
その沈黙に
敵わない

2010年12月12日日曜日

お金を配ってます

お金 余りましたので配ってます
どうぞお持ちください
詩を書いた方に差し上げます
今日書いた詩を見せてください
どんな詩でも結構です
詩をみせてください
一万円札ばかり
どうぞお持ちください
詩集を出した方
いつも詩を書いている方
詩人の方
詩集を見せてください
余ったお金を配っています
かわいそうな方のために
お金がなくて困っている方
詩が好きな方
どんな詩が好きか教えてください
お金を配ってます
残り僅かです
好きな詩を教えてください
未来創作を読んだことのある方
詩人の仲間と集まるのが好きな方
お金を配ってます
お金を差し上げます

2010年12月11日土曜日

よせて はずす

むすんで
ひらいて
たたんで
のして

くるんで
ほおり
ゆるめて
しめて

こすって
こづき
ぬらして
なでて

つりあげ
はねあげ
よせては
はずす

2010年12月10日金曜日

網 あみ

マスコミに網かけられているが
彼女は気づいていないのかな

網の向こうから見つめている
何か喋っている

誰に向けてなのか
その誰かは網かけられてないのかな

網かけられると
不自由になるけど
ギュッと抱き締められ
安心感に浸れる

でも人に網かけて
いいものか

網かけられている様子があまりに哀れなので
神様に訊いてみたら

従順なひとが
なにも考えないで幸せを手に入れるには必要なんだと諭された
マスコミもつかいようということか

神の国も不景気で
リストラが進み
人の幸せの実現に
手がかけられないそうだ

神様の世界でも
民主主義が導入され
嘆かわしい状態が続いていて
選挙のためにも随分時間が取られるという

海に網かけて
お魚をとり
どこからか出直す必要ありそう
ですね

2010年12月9日木曜日

メモのメ

メモしてる?
何をメモしてる?

えっ
メモしてない?

何をメモしたい?
メモしたくない?

メモしてみたら!
メモしたらどうする?

メモあった?
メモ見つかった?

メモあったら
またメモする?

メモされる?
言ったことや買うものや

アドレスやパスワードや
メモ隠す?

メモ隠した場所メモする?
メモ 洒落てみる?

メモ 謎かけする?
メモ いたずらする?
目も当てられないメモもある?
もったいないメモもある?
モアレの目立つメモも
桃色のメモもある?

見つめてみる?  メモ
見つめてみない メモ
見つめていない
見つめられている
メモに
貸しがある?
借りがある?

メモに
見つめられている
メモの目が
鈍く光った

2010年12月8日水曜日

幾つもの いつも

何度同じ言葉を繰り返してきただろう
それなのに彼等は何度でも
初めましてというようなな顔をして現れてくる
いったいカレンダーを何枚破いてきたことか
同じ歌を何度口ずさんだか
同じひとに何度おはようを言ったか

それなのに
いつも
どこからか新しい気持ちが湧いてきて
繰り返してきたことなど
まるでなかったことのようにされてしまう

優しいきみは
繰り返し打ち寄せる波打ち際で
来るものを待っているしかないことを
知らされ
黙って微笑んでいる

海の向こうに陽がしずむと
やがて
波音だけが聴こえてきて
きみの心は
ざわめきと凪とをくり返している

きみの微笑みだけが残る

明日きみに挨拶しよう
おはようと
左手を軽く降って
いつものように

2010年12月7日火曜日

ノックのように

いつかのきつねが声をかけてくれた
コン コン
それを聞いていた鳥が木の枝で
ケタ ケタ 

僕はキーボードを
トタ トタ
すると誰かが電車に揺られつり革が
キー キー
体は
ゆっさ ゆっさ

世間が夜になる
だんだんと 夢の世界が
近づいてくる

誰のもとにも
やってきて
誘いかけてくる

だだいま

おやすみ

寝息が
スー スー
寝ずの番 きつねが
コン コン

2010年12月6日月曜日

詩人の声が

優しい詩人の優しい眼差しは
心の中で戦い続ける静かな炎の穂先
炎を燃やすのは絶え間なく湧いてくる愛

地球が宇宙にぽっかりと浮き
何度太陽の周りを回っても
太陽が何度僕たちの頭上を通り過ぎても
詩人の言葉は繰り返し
僕らのうえに降りそそいでいた

優しい詩人の優しい声が
今日もどこかで語っている
詩でないものを
詩に囚われないように

2010年12月5日日曜日

プレゼント

冬の暖かい日差しの中で
夢を見たわ

どこからが夢で
どこまでが空想だったか
わからないの

冬の街を雨が通りすぎ
珍しく虹が掛かったの
そして
いつまでも消えずにいた

白いカーテンの揺れる部屋で
あなたは風がいいねと言って
ほほえみかけてくれた
私は
そう?
とわざとそっけなくした

それからあなたに
プレゼントの箱を手渡したわ
あなたは私の肩を抱き寄せて
いつもの挨拶のキスをした

夜がきて
朝がきて
沢山仕事をした
友達とお酒を飲み
旅行にも行った
ネイルも何度も塗りかさね
それと同じくらい嘘もついた

気づくと
いつもの場所の
古びた椅子にすわっていて
目覚めていたけれど
いつ
眼をあけたのか
もう忘れていたの

2010年12月4日土曜日

シマウマ

シマウマ
シマとウマが共存する大地

ハゲタカ
禿と鷹が舞い降りる

小姑
と呼ばれる女が
頬杖
頬を杖で支え

昼寝
昼なのに寝ている

落ち葉の季節
沈黙
水底に沈み黙っている
禿げた人

2010年12月3日金曜日

いちにのさんで

いちにのさんでやりましょう
と言われて
そんな勇気を持っていたか不安になる

さんにいいちで
消えたくなった

2010年12月2日木曜日

下り坂を登って行くと
平坦な場所に出た
そこからは上り坂だ

上り坂を下り
橋を渡り
いくつかの角を曲がり
いくつかの巨木や潅木の横を通り過ぎ
蔵の脇の細道を進むと
原っぱだ

草がそよそよと揺れ
それを見る 私の心もそよそよと揺れる
風のあとについて
低い丘の頂点まで行くと
眺望がひらける

しばらく下界を眺め
気分がよくなると また歩き出す
今度は丘から街へ続く道

下り坂を登る

2010年12月1日水曜日

だらだら坂

なだらかなだらだら坂
なだらかなだらだら坂

登っていく
登っていく

そして
下っていく
下っていく

2010年11月30日火曜日

このままでまってます。

ろくろっくびだよ
ろくろっくび
輪切りだよ
全員集合だよ
立ち見だよ
全員集合
立ち見だよ

切れるよ
断裁だよ
ギロチンだよ
夢じゃないよ
夢二だよ
8時だよ
全員立ち見だよ

中身はないよ
中身はない
ナイスだよ
ないっすよ

酢はないっすよ
夜は 友だちだよ
友だちは
お金がすきだよ
お金
金の玉を隠しているよ
金の玉
金の卵もだよ
隠して書く
かくして
カクカクしかじか
金の玉
隠したよ

寝込んだよ
布団かぶってた
いろいろうまくかぶってた
兜も座布団も
カラフルな座布団も
かぶってた

ぶたないで
ブタさん
ふた なくさないで
ふた三個なくさないで
ブタさん三個なくさないで

泣かないでいて
あなあけないでいて
赤坂付近にいかないで
いか たべないで
くま たらふく
たらも たべないでいて
手をつないで
繋がる
しわよせしないで
しないでって
市内で言わないでいて
しわよせしないで
幸せでいて
祈るから頼むから
ここにいさせて遺産わけて
勇んで胃酸で溶けないで

どかないで
どうか一つ
如月まで
どんどん
いかせて
いってみて
いってみせて
せめて みせて
攻めて
責めないでいて
見せしめて
せめて責めないで
このままでいさせて

このままいさせて

ください
第三者
このまま
いさせて
ください

2010年11月29日月曜日

展示された一行

この1行は力強い

AKIRA

あきら きらきら
きらきら あきら
あしたは どちら
あかずの とびら
みらーと みいら
らいせの せいらー
あきかぜ ららら
つららが きらら
あきらめないで
らっきー AKIRA

2010年11月28日日曜日

横たわる彼女に
Pizzaを一枚ください

本当の理由は誰にもわからない
黄色い線の内側で

掛け持ちなんです、っていって
いますぐGET!

細身なんですけどなかなかいいのがないの
いまから24時間受け付けます

眠りが浅いほう?
エスカレーターでは

なんかほんとにいいのかって思う
お客様にお知らせいたします

パワーが集まってる気がする
目的地の天候は晴れ

庭に出るといいよ
ボタンを押してください

きょうまた会う?
危険です

迷惑です
見えるのが霧氷

2010年11月27日土曜日

注意

気をつけてビジネスをやりなさい
思いがけない邪魔が入る事があるから
思いがけないので避けられない
あなたが善良であっても関係ない

川べりを歩くときは
虫の襲来に注意しなさい
アットいうまに群舞する縄張りに
入ってしまうから
眼をやられないように

猫に触るときは機嫌を窺いなさい
急に咬むことがあるから
仲良しに見えて実はそんな気持ちはないから
咬まれて意外と傷つくから
平静を装っても何にもならない

鍬を振るときは後ろを確かめなさい
確かめた後に子どもが近づくことがある
鍬に当たると顔を怪我する
傷が残ることがある
君にその気がなくても

夜は犯罪者に襲われないようにしなさい
まだ犯罪者でない人が今日初めて犯罪に走る事もあるから
盛り場にいかず、戸締りをして、警報ブザーを携帯
甘い誘惑に惑わされる事もある
ひったくりや危なそうな呼び出し等々
用心に越した事はない

詩は安全ではないものがいい
心の隙間に入り込み今までの価値観を壊すものを読みなさい
短い言葉でピーンと来るもの、記憶を呼び起こすものもの
読みやすい心地よいリズム
詩は短くて一日のサイズのよう
一生を凝縮した一日のよう
宇宙を凝縮した君の部屋のよう

2010年11月26日金曜日

あやまらない

あやまると自分が消えてしまいそうになるので
彼女はあやまらない
あやまる必要がある時ほど
唇を真一文字に結んで
身をすぼめて待っている
あやまりたい気持ちが消えるまでいつまでも
固唾を飲んで
じっとしている

彼女の不用意な発言が
友だちを傷つけてしまっても
大事な約束を破ってしまっても
彼女はあやまらなかった

いつも
彼女の中に後悔とあやまりたい気持ちが押し寄せたけれど
彼女はあやまらなかった

あやまりたい気持ちが
彼女の中にあるとき
彼女は言い知れぬ自信が訪れていることに
気づくことがある
いつかあやまることができるようになるのを
待ち望んでいる自分に
自信をもつのだ

だから彼女は
あやまりたい気持ちから
逃げない
逃げないでじっとしている
彼女の中をなにかが行き過ぎる

いつか-
それも捕まえてみたいと
彼女は思っているのだ

2010年11月25日木曜日

直行

熟れた実を摘み
お口に入れる
直行

わけずに一回で
すぐ食べる
直行

寄り道せず
浮気もしない
直行

出張しても
遊ばす
観光も接待も無縁
お宿に直行

鈍行列車より
超特急が好み
時を惜しんで
直行

曲がったことが嫌い
直行

名前だって
ナオユキ
直行

詩を読んでも
行間は飛ばし
詩情も省いて
最後まで
直行

このひと
直行ばかりして
早死にしませんように

2010年11月24日水曜日

ブタさんは語る

ピンクの光るブタさんが
笑顔で横たわっているよ
こっちをみてる
サンタの帽子をかぶってるから
もうすぐクリスマスなんだろう

テーブルクロスはケーキとイチゴ柄
楽しげなジャズが流れている

ピンクの光るブタさんと
目が合っても
恥ずかしがらなくてもいいんじゃない?

ホタルみたいに体を光らせて
合図しなくても
分かってるさ
携帯くん

誰かから仲直りの電話でしょ
光の色で分かる
なんてウソだけど

女子部は先に帰ります
用意があるから

いいわ
気分がいいから
いいことにする
渡り廊下のベンチで待ってます

2010年11月23日火曜日

ジュン

コロッケを分けるように
愛情を分けて
惜しみもせずに
ジュン

一生懸命生きることより
幸せを求めて生きる方がいい と
幸せから知らず知らず逃げて
気づかないものだと
そんな歌を聞かせて

誰もが自分の人生の主役をはっている
それを受け入れないと追い出しを食らう と
みんなに教えて
ジュン

2010年11月22日月曜日

運命的な出会い ー婚活ではなくー

丘の斜面で夕焼けに照らされた彼女は
今描いているドローイングの話の途切れめで急にを目を瞑り
キスを求めてきた
彼女の顔をよく見るのは初めてだ

もうキスして戸惑いながらも
抱き合っていたけれど
僕が腕に力を込めて背中を引き寄せると
彼女はますます密着してこたえてきた

美大生の彼女は良家の子女で躾がきびしく
反発する気持ちを抱え
複雑な事情があり今はこの町に住み
三時間かけて学校に通っているという

抱きつくと互いの顔が見えなくなり
初対面の僕たちは安心な気持ちもしたけれど
少しすると淋しくなってきて
また顔を見てみることにした

その顔は
やはり初めて見る顔だった
お見合いのように気取ってほほえんでいる
変な状況だ
だがそれを二人ともが容認しているのはなぜだろう

ここは小さい頃に
鬼ごっこや缶蹴りをした小さな広場のすぐ隣だ
眼下に家々が見え
振り返ればこんもりとした森がある

僕たちはゆっくりと時間をすごすことにした
鼻の頭が冷たくなるまで
手を握り合って遊んでいた

帰り道
僕たちは明日のことを約束する必要はなかった
もう結ばれたも同然だから
会いたければいつでも自然に会えるのだ
そんな強い絆を感じていた

坂道は平地よりむしろ歩きやすかった
振り返りながらゆっくり歩く僕たちには

彼女の愛しい顔をみると
幸せそうな表情だ

一番星!
と彼女が指さした
えっ もう?
と指の先の空に目をやった時
後ろでコンと
鳴く声がした

きつね?

またきてコン
さよならコン

2010年11月21日日曜日

人生くん

あたりまえのこと
ありきたりのこと
当たり障りのないこと

多い順に並べよ

つまらないこと
突き詰めたこと
つらいこと

多い順に並べよ

想像したこと
創造したもの
騒々しいもの

多い順に並べよ

並べたうえで

好きな順に
並べ直し
感想を述べよ
感情を述べよ

ところで
人生は
完走せよ

2010年11月20日土曜日

美しい絵

その壁にいまは絵は掛かっていない
彼女が誇らしげに掛けておいた絵は
僕が踏みつぶしズタズタにしてしまったから

その壁はいまはもうない
別の場所に引っ越して行ったから
未来を夢見て出て行ったから

その彼女はいまはもういない
誰かにさらわれて行ったから
戻って来るのを待っているだけだから

2010年11月19日金曜日

出会えない

見えないけれど
星は出ている

空に出て
こちらを見つめている

くらい空に
目を凝らしている

見られている
見ている

どちらでもいい
ぼくたちは
永遠に
交わらない

視線がぶつかっても
気づかないでいる

吐息がかかっても
風と区別がつかないでいる

2010年11月18日木曜日

11.18

風が吹くたびに木の葉が落ちてくる
表参道を歩きながら
これは裏街道ではないとつぶやき
歩行のリズムに合わせて
思い出を回転させ
シャツフルしていると
前方から救急車がやってきて
目の前の路地をはいっていったので
その行く先に目をやると
高校生たちが制服を着て歩いていて
寒そうに身に巻きつけた布にしがみついていたので
あの布は今風に言うとなんて言うんだろうという考えに
脳みそを占領され
なんてちっぽけな脳みそなんだろうとおもい
その割に大きな頭を
凝り固まっていたい首でどうにか支えながら
きょうは誕生日だからなにかすこしでも自分の為に特別なことをしようと
きれいなショーウインドウを見ながら歩いてみることにすると
昔彼女とわかれてその後会うこともなかった喫茶店がリニューアルして
前の面影もなくなっていて
自分の面影も似たものだと思いながら
道が上り坂になり
風が吹いて落ちてきた木の葉が一枚どういうわけか
手のひらに入ってきてそれを握ってしまい
賄賂ではないだろう
木の葉の手紙か狐のお金か
どちらにしても昔は木の葉を集めて焚き火して
焼き芋を作ったものだと懐かしさがこみ上げ
信号待ちをしていると
信号が変わる前に美しい街の光景を写真に収めたいと思い
この場所この日がデジタルに記録され
これを見返すのは自分だけなのか
それともいまは婚活中のひとが
私と結ばれて一緒に観るのかなどど妄想し
そこにまた救急車が通り過ぎ
救急車は9×9×48なのかなどど考え


もうやめた

2010年11月17日水曜日

それを

あわてずに
いそがずに
しんちょうに
だいたんに
たのしく
いっしょうけんめい
たいみんぐよく
ためらいをすて
しんこきゅうしてから
ひとめをきにせず
しんけんに
なるべくしぜんたいで

それを
すると
いい

かみさまが
みている

きみじしんも
みている

2010年11月16日火曜日

星座の立場

そこをめくると
こんどは
当たりがでるか

めくりつづける日々
当たりのような
ハズレのような
よくわからない

脳みそ
役にたたない
くじ引きの人生

計算機
意味のない
暗い闇の中で

星座の居場所がたより
私のみちしるべ
星占いを見下ろす星
笑いも泣きもせず
表情ひとつ変えず
座って

2010年11月15日月曜日

11月の誕生日

マカロン

小さなホールケーキ
色とりどりのキャンドル

幻灯機のおもちゃ
ペパーミントティー
メモリーに入れた曲

封筒に入れたカードと手紙
リボンをかけたプレゼント

誕生日のきみ
考えていること教えて欲しい

部屋を包むカーテン
柔らかな灯り

向かい合わせ
隣り合わせの時間

2010年11月14日日曜日

ドトールコーヒー

東海の小島の磯の白砂に
ドトールコーヒー、ドトールコーヒー
じっと手を見る
ドトールコーヒー、ドトールコーヒー
こころよくわれに働く仕事あれ
ドトールコーヒー、ドトールコーヒー
からくれないに
ドトールコーヒー、ドトールコーヒー
たわむれに
ドトールコーヒー、ドトールコーヒー
やせがえる まけるな一茶
ドトールコーヒー、ドトールコーヒー
旨いコーヒー 村いっぱいの
ドトールコーヒー、ドトールコーヒー

2010年11月13日土曜日

週末の終末的な

電車に乗るお金がないときは
歩く
歩く元気がないときは
部屋にいる

部屋にいると
夕方に
夕焼け小焼けのメロディのチャイムが聴こえてくる

何のためのチャイムなのか
みんなはどんな気持ちで聞いているのだろう
みんなって 誰のことだろうう

テレビをつけると
内閣は売国奴だといっている

メロディのチャイムがまた鳴っている
きょう 何度目だろう

なにかせよと促す
なにかしなければ
なにかをでっち上げて
終わらせなければ

もう夕闇だ
電灯もつかない
夕闇だ
誰かに謝らなければ
チャイムをとめなければ

2010年11月12日金曜日

推敲しないままに

書いた途端に載せてしまう。とても乱暴だと思いながら。そして、画面に映して1回目の推敲。それから時々見返しては、少しずつ推敲している。まえにどんなことが書いたあったのか、当然自分でも分からなくなっている。

消える声

夜明け前の闇の彼方で誰かが泣いている
きのうもきょうも

いつから泣いているのだろう
誰が泣いているのだろう

人の声なのか
男なのか女なのか
狼なのか
それとも巨大な扉が軋んでいるのか

ぼんやりと夜が明けてくると
その声は聞こえなくなる

天体の発する何かのせいなのか
僕の耳の感度が落ちてしまうからか

あの声
あの悲しそうな声
苦しそうな声

いつか
あと10年もしたら
あの声は
喜びの声に聞こえるだろうか

ぼんやりと淀んだ朝の空に
ささやいてみた
この声は
あの声まで聞こえてる?
あの声は
親しい人
それとも
最も遠い人?

2010年11月11日木曜日

あなたにとって

あなたにとって
ここはどんな場所ですか
そう尋ねたくて
モヤモヤしているうちに
あなたは何処かに行ってしまった

私にとって
ここはどんな場所なのだろう
色々思い巡らせ
モヤモヤしているうちに
あなたは帰ってきた

買い物袋を
両手にさげて

2010年11月10日水曜日

林檎をもって

小さな窓から世界を眺めてた
林檎をもって
外にでかけた
会社の窓から人々の様子を見渡した

ビルの中でみんなが働いている
賑わっている
とりとめもなく
手紙で呼び出されて外にでた

いつだって外にはでる
入りはしない

外から中を覗いてた
林檎をもって
中に入るため
部屋には鍵がかかってた

いつだって中には入る
出ていきはしない

2010年11月9日火曜日

BATSU

明るく素敵なあの人が
あの人の中にはもうない

いつからいなくなったのか
自分にも分からない

いつまでどうしてやっていくのか
分からないまま
きょうも夕暮がやってくる

トンビが空に円を描く
飛行機雲より大きい円

マルを貰うのはいつ以来だろう

2010年11月8日月曜日

あゆみ

強い動物の毛皮を纏うことで
荒地を渡っていく

わたしは旅人のよう
流れる雲が恋人

過去の自分は惜しげもなく捨てていく
そうしたいと願っているわけではないけれど

山のあなたの空遠く
革の私が歩いてく

2010年11月7日日曜日

夕暮れの部屋で

気づいてしまった本当のこと
言ってもいいですか

目の前のテーブルの上に置かれた
煤(すす)けたりんごのように
あなたの目の前に
投げ出しても

夕暮れの部屋で
出会ってもいいですか

今まで出会えなかった人に
リダイアルボタンを押すように
あっけなく
呼び出しても

2010年11月6日土曜日

ずれゆく質問

その写真に何が写っていますか

陽の光が差し込む大きな窓
花のない水玉模様の花瓶
大きな古い木のテーブル 
刺繍の入ったナプキンに包まれたカトラリー
開けっ放しの扉の向こうの書斎机
壁に掛けられた何枚もの額
その中には鮮やかな色の抽象画やパステルで描かれた風景
……

その写真を見てどう思いますか

私が撮った写真
その時には見えなかった
やわらかく静かにそこにある時間
寒い季節のあたたかい陽だまり
誰もいない部屋のぬくもり
凛とした空気
自分と無関係の場所
でも懐かしく魅きつけられる
……

その写真を見てどうしたいですか

すさんだ自分の生活
すさみ切れない自分の生活
ものに溢れ雑多なものに埋もれて過ぎていく
遠くを見つめて進もうとする
足元の草花を踏みつけるような日々
キラリと光るプライドをポケットに忍ばせ
たまに握り締めている

どうしたいのか
……

その写真 いただけますか

ノルウエーの北の小さな町
青い港に泊まる赤い船
冬になると太陽が地を履い
ついには登ってこなくなる
静かな燃える眼をした町の人々
オーロラを見に来た人と同じ酒場で話をする
子供たちのことや仕事のこと バカンスのこと
それらのことは写っていない

いい写真ですね

ずっとカメラを手にしてきた
ビデオカメラで仕事もした
高いところに登ったり
狭いところにも入って撮影した
いい写真が撮れる自信がない
いいと思ってもよくある写真にしかならない
よくあるような写真を目指していたのでそれでいいのだが
いい写真がなかなか撮れない
いい写真と言われるとホッとする

これからどんな写真を撮りたいですか

観たことのない風景
想像では見ることができない
インターネットでも見られない
自分がその中に入らないと見られないもの
見ているその時に気づけないもの
たとえば君と会話するときに
変わっていく風景 というのがあると思う
その時シャッターを押して写ったもの
その時 心は捕まえなかったのに
写真だけが捕まえたもの

2010年11月5日金曜日

進め金閣寺

金閣寺の金色が光りすぎている
金色すぎる
金色を通り越し別の色だ
輝きすぎだ

君がくれたCD
ジャケットの代わりにセロテープで貼り付けてある
その写真
大胆だ
その構図も
金色の建物がド真ん中に配置されている

渡されたとき
君が画像加工したと言っていた
いったい
どんな曲を入れてあるのか

いつものように
舌の先端を器用に内側に反らせて丸めながら
君が作ったCD
その写真を加工しながら
君はどんな思いを巡らせたのか

金閣寺と格闘し
金閣寺に癒され
金閣寺のことを思い出す
初めて行ったときのこと

ひょっとしたら
ふたりとも
同じようなこと
考えているかもしれない

同じようなこと

同じより
幸せな

2010年11月4日木曜日

相談

最近調子が悪くてね。
君のことがうまく考えられない。
おまけに貯金も底をつき、とっておきのアンティチョークの瓶詰も
もうない。

近くにいたネコにもソッポを向かれ
何処かに消えてしまった。

シャツのボタンは割れるし、
カメラは壊れるし
おまけに十年使った傘は盗まれた。

このまま行ったらなにがおこるか分からない。

だから、君、
どうしたらいいか一緒に
考えてもらえないか。
君の相談には乗れないが。

2010年11月3日水曜日

訪れる枯葉

夕方に眠くなって
辛い思い出が回り始める
泣いているのは百舌鳥ではない
あれは誰かさんの歌声だ

枯れ葉が誰もやって来ない玄関に訪れる
訪れて足踏みをしている

君は虫ではなく枯葉だよ

君はお札でも
アルミホイルでもない
木の葉の枯れたものだよ

ビニールの表紙の
小学時代の国語辞典には
愛 の次に
アイ・オー・シー 国際オリンピック委員会
と書いてあった。
「あ」から順番に国語を憶えようとして僕は
それをなんども読んだ

それと似たようなことをし続け
果てるとき
はて?
いつまでも地続きのどこかで
何を振り返ったらいいのか?

枯葉を頭に乗せて
何かに化けて輪廻するか

つぎは
枯葉になりたいから
木の葉に生まれたいと
カ行イ段の木に
狙いを定めて…
枯葉の意味を理解して…

2010年11月2日火曜日

電車代が高いから
旅にも行かず
旅にも行かないから
同じ場所をグルグル周回し
同じ場所をグルグル周回するから
ストレスが蓄積され
ストレスが蓄積されるから
暴飲暴食をしてしまい
暴飲暴食をしてしまうから
体がもたついて
体がもたつくから
恋人にけなされ
恋人にけなされるから
気分が陰鬱になり
気分が陰鬱になるから
夜なかなか寝付かれず
夜なかなか寝付かれないから
眼がいつも赤く
眼がいつも赤いから
コンタクトをやめ
コンタクトをやめたから
世界がボーッとする
世界がボーッとするから
眼が少し旅に出る

おしまい

2010年11月1日月曜日

日課

夢を見るのが楽しみで睡眠に入る
そこには生きている手ごたえがある
目をさますとその充足感を頼りに
次々やって来る問題をやり過ごす

闘牛場のヒーローさながら
バッサバッサと身をかわす
だが最後には
決着をつけなければならない
だからこのシーンは未完のまま終わる
そこにはうらぶれた路地裏がある

トボトボ歩いて帰るしかない
夜明けのカラスが鳴いている
これからがお楽しみ

入り口を入ると
僕はほっとする
美容院の二階が今日のぼくの住居だ
さあ
でかけよう

昨日から練っていた計画どおりに
なにが出るかは
終わるまでのお楽しみ
死んでも平気
生き返るから

2010年10月31日日曜日

館内放送

ミミー マーガ サン さん
モーガ チチ トルノ さん
いらっしゃいましたら
クソレタッ イ レプス 広場で
シンケウコ ヨグウ の皆様がお待ちです
至急 お越しください

2010年10月30日土曜日

みなさんごめんなさいのトークショー

1

式次第

会場のみなさんに謝ることを告げる
お詫び
世間から奪ったもの
お詫び
世間に対するなめた考え
お詫び
会場のみなさまに与えた苦痛について
お詫び
自分の行動についての反省
お詫び
いまと今後の自分の行動
お詫び
みなさまに自分ができること
お詫び


2

みなさんごめんなさいトークショーは
あやまってばかり

あやまってばかりでは間がもたないので
言い訳を語り始める
言い訳は聞きようによっては
お詫びよりおもしろい

あやまってほしい人は
話者が一通り話し終えると
聞きたかったのは
お詫びではなく
その経緯でもなく
自分に対する気持ち
でもなく
その気持ちに対する思いであるこを知る

トークショーは
夜を徹してつづき
いつ終わるともしれない
話者は改心しているが
性格は変えようがない
話は巡り
同心円を描きながら遠ざかっていくが
時々同じ道を辿る


3

みなさんごめんなさいのトークショーは
入場は無料
訪れた人が満足できるかは
主催者は自信が持てないでいる
それでも
主催者はいたるところで
どうしても開催したい

お詫びをしたい気持ちが
なにかを産むと信じているから

お詫びをされたい気持ちをもって生きる
苦しみを手にした日
世間が振り返って見せた
不敵な笑い顔を見てしまったから

2010年10月29日金曜日

トタンの屋根にトトトタン

ペットボトルの紅茶を腰に
ナイキエアーの靴底で
ワーキングシェアで生じた休暇に
ピクニック気分の小旅行

電池が心配アイフォーン
音楽聞くのはウォークマン
電池を食うぞノイズキャンセラ
押してはいけないこのボタン

ルンルン ラルラル
トトトタン
トタンの屋根に降るものは
雨粒でなはなく落ち葉でもない
誰かが降らせた最終兵器

2010年10月28日木曜日

消し忘れた灯(ひ)

街にLEDの明かりが灯る
無数の星
お店の中で揺れるキャンドルの炎
瞳に映る灯
白い歯の表面で輝く光

眼を閉じてみると
そこにもある
金星のチラチラと揺れる紅い光
青白い月光
ピアノの鍵盤に反射する朝日
椅子の背中に乗っている光の粒子

そのなかで
僕が灯した光が
今も
輝いて見える

君にこっそりともした光
君の指で輝く
イミテーションの宝石

2010年10月27日水曜日

月の香

目が覚めていくとき
固まってしまうだろう

季節の風が運んでくる感覚
何回めぐってきたのだろう

今はもういないあのひとの香り
浸みこんでとどまるように祈ったけれど

月のない夜に観た
思い出の中の月はほのかに赤かった

不吉と絶頂の予感が繰り返し
やかんの水が煮えたぎる音だけがして

通奏低音が鼓膜の奥でなっている
自分はどんな譜面の上を進むのか
誰の意思で
いつまで

2010年10月26日火曜日

香里奈

好きなドライフルーツはイチジク
噛むと奥歯で小さな粒が潰れて音がする
その音がたまらない
他にないその音
その歯ざわりも

田舎のスマートな女
革のジャケットがよく似合う
細くまっすぐな脚
前髪から覗くロマンティックな瞳
形のいいくちびる

そんな香里奈にも
太刀打ちできないライバルがいる

小峰だ

2010年10月25日月曜日

気づくともういない

気づくと
イヤホンをして
きみが坂をのぼってくる
リズムよく大胆な歩幅で
僕を見つけたからだろう

僕もきみに向かって歩き出す
早くきみの体に触れたいから
きみはイヤホンを外して笑顔を投げてくる

春の日差しを感じた
バスが騒音をまき散らして登ってきたけれど
僕たちの前を通りすぎると
もう僕たちはいなくなっているのさ

紅茶にスプーンが入れられて
くるくるかき回す
真昼の喫茶店にたばこの煙が漂い
誰かが入ってくる音がする
すると
もうそこに
僕たちはいないのさ

2010年10月24日日曜日

自分への伝言

泣く泣く僕も空を見る
というフレーズが
空に消えて行く

消えて
なくなってしまえ

いらないものから逆に見捨てられ
しがみつく

何々のように
と比喩を言って受け流すのは
止めにしたら

まとまる筈ないよ
デスクトップは狭いんだから
それに何世代も前の年代物

大事にしたってたかが知れている
広い空にならすてられる

やり直した人生の失敗作だって
これからの未来だって

いきてていいよ

いつか旅先で見つけた花
いきてていいよ
いきてていい
いきてていいよを
いきてていいよを
いきていよいよ
いきていよいよ
いきていきて
いきてえいきてえ

生きてていいよ
生きてていい
生きていい世を
生きていい夜を
生きていよいよ
生きて居よ居よ
生きて生きて
生きてえィきてえ

2010年10月23日土曜日

とてもいいわ

(とてもいいわ

そう言われて
舞い上がった

(とても素敵

あっ、また、ほめられた
ナマでこう言われるのはいい

短いヒトコトなのに
地球だって持ち上がりそうだ

(なんでもできるね

そんなことないけど
そんな気さえしてくる

(ひとりでなんでもできるよ
(あなたひとりで

2010年10月22日金曜日

花びら

小峰が大事にしている花
ベランダで咲いている綺麗な花
いつだったかてんとう虫が茎を登っていった
きっとその細い足に
水の流れを感じていたのだろう

小峰は別の流れを感じていた
花びらを染める鮮やかな色の流れだ
茎を伝わるうちに
見る見る変化していくその色は
花托に到達すると同時に
その花びらの色となる

そんなことは理科の時間には
習わなかったけど
小峰はそう信じていた

何かを思い
合わせて握られた手のひらの中で
息づいていた
小峰の思い

しっとりと熱い
愛のような 
愛でない なにかのような

2010年10月21日木曜日

不足

きょうは指たちがやる気ない
キーボードを叩いても
愚痴ばかりしか出てこない
ビタミンが不足しているのか

月の光に訊いてみたら
反対に叱られた

何をいってるの!
ビタミンじゃないわ
愛情が欠乏しているのよ
愛錠で補いなさい

ところで
それがどこで売っているのか
月の光も
どこ吹く風で
教えてくれない

誰に電話したら
教えてくれるのかな

2010年10月20日水曜日

帰宅

帰り道の不真面目な月
きょうはその位置で合っているのか

腕を振って歩くことが
力をくれる
車の音が遠ざかる
家は暖かく
何気なく迎えてくれるだろう
テレビが笑わせてくれたり

すぐ脇を
追い越す自転車
倒れろ と念力かける

きょうは つかれた
はりきりすぎた

一歩ごとに近づくドア

一歩ごとに遠のく
やさしい友

2010年10月19日火曜日

おっとこれは泥のついた一万円札か!

おっとこれは泥のついた一万円札か!
この封筒の金はつかわずにおこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この祝儀袋の三万円もつかわずにおこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この通帳の10万円はつかわずにおこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
このお守りは大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この掛け軸も大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この本も大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
このグリーティングカードも大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この写真も大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
そうおもってこれも大事にしておこう
おっとこれは泥のついた一万円札か!
いいやこれは泥のついていない一万円札だ
(あってよかった。)

2010年10月18日月曜日

塀の向こう

ぴにょーん ぴにょーん
おまちかね
またまたやってまいりました
ぴにょーん

トランポリンは良い道具です
塀の向こうがよく見える

新しい塀 古い塀
垣根も 白壁も 砂壁も
勢いつけて ひとっ跳びです
ぴにょーん

自分の体の重さだけを使って
気になるあのひとの 塀の向こう
プライバシーだって
勝手気ままにのぞき見します

それはダメダメ
イケないこと
なんて言わないで

深いわけがあるのですから
それは人を助けるためなのですから

ぴにょーん と跳ぶと
塀の向こう 芝生が見える
家が見える
中では君が倒れている

わたしは
ぴにょーん
それを発見して
救急車を呼ぶ
病院に連れて行く

ピーポー ピーポー
ピニョン ピニョン
ピーポー ピーポー
おまちかね
またまたやってまいります
お邪魔でしょうか
塀をこえたら
よくないですか

2010年10月17日日曜日

無関係な自分

睡眠障害になりたくなかったので
気にしないことにした
朝と夜がどう過ぎようと
眠気や気だるさがいつ襲って来ようと
僕とは無関係
ということにした

毎日同じ夢も見るし
さまざまなバリエーションの怖い夢も見るので
それに
起きていても厄介な妄想や気分の抑揚が激しいので
僕は無関係
ということにした

僕のことは僕には無関係
僕は日記にそう記し
関係ない僕に時々日記を書かせた

詩を担当している僕は
僕を現実の社会に連れ出そうとする
しかし無関係な僕はそれを夢の中のこととして始末しようとする
僕は怒り僕を問いただす
しかし僕は答えず
反対に質問をしてくるありさま
僕は途方に暮れてあきらめる

僕は何を思い何をしようとしているのか
僕はだれに頼まれて僕を運営しているのか

そうして
疑問は置き去りにして
時間が流れたり逆流したりして転がっていく

時計が転がっているのではなく
中身の針やら数字やらがまわっているだけなのだ
きっとそうなのだ

推敲しながら

このブログは公開されている日記のようなものです。毎日書いた詩は、しばらくすると読み返して推敲します。なかなか思うようにいかないものも少なくありません。
黒糖ジンジャーソーダ

2010年10月16日土曜日

三姉妹

一番上のお姉さんが一番美人
二番目のお姉さんが一番かわいい
三番目のわたしは個性的でチャーミング

一番上のお姉さんはしっとりした名前
二番目のお姉さんは弾けそうな名前
三番目のわたしは個性的な名前

一番上のお姉さんは英語が上手
二番目のお姉さんは料理が上手
三番目のわたしは踊りが上手

一番上のお姉さんはほっそりしてる
二番目のお姉さんはぽっちゃりしてる
三番目のわたしはふつうの体系

一番上のお姉さんはハードな生き方
二番目のお姉さんは平凡生き方
三番目のわたしは思いつきで生きる

一番上のお姉さんは結婚に失敗
二番目のお姉さんはもうすぐ結婚
三番目のわたしはもうすぐ出産

一番上のお姉さんは夢を追う
二番目のお姉さんは現実を追う
三番目のわたしは夢見て生きる

一番上のお姉さんは二番目をかばう
二番目のお姉さんは三番目をかばう
三番目のわたしは一番上をかばう

一番上のお姉さんは6歳年上
二番目のお姉さんは4歳年上
三番目のわたしはいつも年下

一番上のお姉さんが夕日を見てる
二番目のお姉さんは日向ぼっこ
三番目のわたしは月食に祈る

「みんな しあわせ
 いつまでも
 みんな 
 別々
 いつまでも」

2010年10月15日金曜日

いつも聴こえていた

耳を澄ますと何が聴こえる?

雑多な日常の音たちの向こうに
いつも聴こえているその音
きっと
巡り合えるだろう

音は鳴って
語りかけている
音は
耳を傾ける者のためにある

しかし
音は
操作することはできない

音は 
救命ロープみたいだ

底なしの闇に落ちても
いつの間にか地上にいるのは
そのせいだ

今夜

耳を傾けてみないか
息を 殺して
しじまのような呼吸に

音は
近づいてくるか
遠ざかっているのか
確かめて

2010年10月14日木曜日

燃えよ! キャンプファイヤー

燃えろよ 燃えろ 炎よ燃えろ
と 歌いながら
炎と 皆の顔と 星の出た空とを
かわるがわる見て
何かに酔いしれていく

嫌いな子も 嫌な先生も
今は 一緒でいい
不揃いな歌声も
かえって 素晴らしいと思ってしまう

僕たちに たしかに過去はあったけれど
嫌な過去は この炎にくべて
今を照らせれば役に立つ
そのままもっていても役には立たないから

炎を囲んで 皆で歌い踊る
太古の精霊も混じっているけれど
ほとんどの人は気づかない
でも気配は感じているはず

おしゃべりには魔法がかけられ
明日の朝にはほとんど消えてしまう
ただ大事な約束は10年後に思い出すらしい
嫉妬や皮肉は消えにくいから残りかすが出るらしい

炎は太陽より強く 心に何かを焼き付ける
影絵のような気持ち 
メルヘンのような不思議な夢
記憶のしおりのような
炎がつくったページになる

やがて 
炎は消され
友だちは 皆 帰っていく
もう ここに集まることは二度とない
ただ 思い出すことはできる
その時
ここで君は 何を考える?

僕は 君のことを考える
この僕の思いを
いまでも 燃やすことができるか考える
そして
精神を集中してみるのさ

2010年10月13日水曜日

僕ら

敵はいない
いるのは味方だけ
君が正しく生きて行けば

外にでよう
おそれることはない
きみが自分を信じていれば

呼びかけよう
とても大事なことを
何回でもあきらめずに いつも

語り合おう
僕ら 向かい合って
夜明けが夜を押しやるまで

2010年10月12日火曜日

煮え切らない思い

煮え切らない思いをかかえたまま
旅に出る
思いは煮詰まってゆき
やがて新しい思いが現れる
しかしすぐに それは煮え切らない思いに変わる

煮え切らない思いをかかえたまま
部屋へ帰る
思いは煮詰まってゆき
やがて新しい思いが現れる
しかしすぐに それは煮え切らない思いに変わる

煮え切らない思いをかかえたまま
旅に出る
思いは煮詰まってゆき
やがて新しい思いが現れる
しかしすぐに それは煮え切らない思いに変わる

2010年10月11日月曜日

sign

そのひとのことを思うとき
目の前は涙で滲み
辺りは水の香りで一杯になる

じっさいに泣いているわけではない
涙の思い出があるわけでもないはずだ

しかし
そのひとのことを思うとき
その笑顔はさびしさに輝き
笑い声は風鈴の音のように止むことがない

手をつないで遠出をして
初めて眺めた夕暮れの景色
旅先の部屋で勢いよくボタンをはずす指
夜の迷路ををさまよいながら
目をつぶって遠くの音を聴いた

鏡の前に立ち
ツーショットの具合を確かめると
また向きあった胸と胸
そこに激しい嵐の予兆が打ちよせたのだ

朝はあっけなくやってきて
地平線が煙り
すぐに二人は互いを見失った
探すこともままならない

それからどう季節が流れたのか
思い出せず
目を上げるとそこには部屋の白い壁があり
一通の手紙が届いた
カレンダーを見ると
20年の年月が過ぎていた

そのひとは
いま
新しい土地に出発しようとしているという

ぼくは 小さくサインを出してみる
2人へのサイン
何のサインかは自分にも読み解けない

2010年10月10日日曜日

しましまの(パールホワイト)

しましまのよる
うずまきのもちーふ
しるくのしーつ
するするするつーる
ぴかぴかのかーぶ
りっしんべんのべんつ
つきあかりのりんく
すべすべするちーく
すりすりしてたーん

2010年10月9日土曜日

胸の ここに

なつかしい声の響き
いつか聴いたことのある

美しい光の反射
夜の深い湖の中にある

こころ時めかせる初めての香り
鼓動を高鳴らせ体温を熱くする

しっとりとすべる感触
巻きついては離れるレースのような

つなぎとめる細い紐
絡むことなく巻きつくこもとなく

それらが一つになって
ここに 胸のここに

胸のここに とどまり

2010年10月8日金曜日

秘書の階段

秘書とタワーに上る
階段で

どうしてこんなことになったのか
覚えていない

ドアに向かう社内の廊下では
秘書は前を歩く
階段では社長が前を歩く

でも疲れると
社長は秘書に前を歩くように命じる
秘書は訳もきかず今度は前を歩く
昇っていく

秘書はハイヒールに
ストッキングの足を心地悪そうに突っ込んでいる
でもすべてをかなぐり捨ててただ歩く
社長がヒーヒーと疲れて愚痴を言う
秘書は頑張らなきゃだめですよと声をかける

秘書は若くよく体を動かしている
社長はしょっちゅう椅子に座って煙草を吸いコーヒーを飲む
だから階段においては社長のほうが不利だ

足がもつれれば怪我をすることにもなる
途中でやめるには
階段を下りなければならない

汗の玉が落ちる
階段の掃除をする人のことが頭をよぎる

秘書は後ろを気遣うようにしながら
容赦なく昇っていく

社長は秘書を制止する
肩に手をかけて
秘書の一段上に倒れるように昇ると
今度は自分が先に行くという

呼吸を5回ほどすると
スローペースで昇り始める

秘書はそのペースに合わせて
二、三歩遅れてついてくる
秘書が持つ鞄には
秘密の書類

社長の後ろからついてくる
秘書の体には正しさが満ち溢れ
秘密の書類は秘書を超えて
どこまでも昇ろうとしている
階段の先の その先までも



http://www.liftec.net/

2010年10月7日木曜日

初秋に書いた詩

雨の滴が

住みなれた 窪地の家々を濡らす
中学校の校歌を濡らす
靴の底と 先端をぬらす
隠しておいた想い出を濡らす

雲り空の明りが

盆地を照らす 空家になった犬小屋の屋根を照らす
落ち葉が溜まった池を照らす
元気ハツラツ と書かれた看板を照らす
黄色い 止まれ の文字を照らす
誰もいない野外音楽堂を照らす

遊んでいる声が

へいに反響する 電柱に反響する
開かずの扉に反響する
玉虫の背中に反響する
放課後の音楽室に反響する
盲人の鼓膜に反響する

コスモスの色が

夕日と仲良くなる 日没と仲良くなる
見つめる瞳と仲良くなる
花びらに触れる唇と仲良くなる
血のついたハンカチと仲良くなる
浅い眠りの夢想と仲良くなる

初秋の詩は
いつまでも着地せず
中空を漂う

2010年10月6日水曜日

月見

僕は45歳
もうすぐ46歳
毎年一つずつ年齢が上がってきた
僕のうち
どれだけが昔の僕なのかわからない
細胞としては
もうすべて入れ替わってしまっているだろうから
勝手にバトンタッチして
僕の存在を守ってきたのだろう
それが余計なことかどうか
そう問われれば 余計だと言いたくなる
けれどそう言ったところで
これからも今までと変わりなく
細胞は再生し
自分は守られていくのだろう
細胞を誰かに明け渡そうとしたこともない

僕は生れてから45年と11カ月
それを秒でいうなら……どこかのサイトで便利に計算できるはずだが
僕の元となった精子や卵子はもっとまえに生まれた訳だし
さかのぼれば何億年生きてきたことやら
へその緒が懐かしい
今まで僕につながってきたへその緒を全部つないだら地球を一周するだろうか
これじゃ長すぎて縄跳びさえできないね
いや ひょっとしたらした奴がいるかもしれないけど だれか調べられないか?

僕が愛した人数十人 いや数百人かもしれない
なぜ愛したかわかる人 数人
愛とは何かわかる人 ???
僕の今の立場
ホームレスに親近感を覚える
ちょっと孤高を気取る
サラリーマンにして自由人にして見栄っ張り
夢追い人で一風変わったメタボレーゼ

過去に出した自分の詩集 10冊ぐらい
書いた詩の数 1000ぐらい
これから書く詩の数 1年に400×(死ぬまでの年数-5)+50くらい

昔好きで今も好きな女性 あり
今好きで昔嫌いだった女性 なし
小学校の先生に結婚すると予測された年 45
予測された相手の年齢 うんと若い
実際 兆候なし

趣味 実益を兼ねるもの
本当の趣味 実益を兼ねないもの
家族 父が2年前に他界 その他は健在
自分 不健全であるが健在
モットー 正直に明るくひとが喜ぶことを
生活方針 先送りしない(なるべく)
実際 ほとんど先送り
夢 夢を持ち続け追いかけること
使命 信じてくれた人を幸せに

住居 アパートの2階
若葉コーポ

昔から若葉は好きでした
今日の夜ごはん パン、ハム、バター(バター成分が30%のマーガリン)
好きなこと 好きな女性と交際 旅行 デジカメで撮影(自分撮りを含む)

仕事 一生懸命頑張ってやっていた ※大事なものを守れなかった経験あり

きょうは一人で秋を感じるお祭りの日にした
帰ってきてから
1パック105円の団子を窓辺に置いて
ススキ代わりのグアムのまじない人形を飾り
空を見上げた

そこに月があってもなくてもよかった
何度も観てきた月を思い出して 空に重ねることができるから
細胞の記憶をたどれば
愛する人の網膜にも入ることができそうな気がした
そうすることで
自分の思いの波にも乗ることができそうで
それで祭りは盛り上がれそうで






この詩をアップしたら下↓のような広告が出た。びっくり。




  • 聖心再生医療センター
    将来の疾患や若返り治療に向けて 自分の細胞を凍結保管
  • 2010年10月5日火曜日

    杓子定規な私

    先生の言う事をよくきく優等生
    制服があるおかげでお洒落は楽
    文学で男女の恋愛をよくまなび
    インターネットで擬似体験する
    小峰はこのさき正しく生きます

    2010年10月4日月曜日

    新聞連載詩 未来4

    「未来の手のひら」  マツザキヨシユキ

    皺だらけの手を見ていると
    安心だ

    その手は
    いろんなものを触って
    強さを蓄えてきたから

    生まれたばかりの日
    その手は
    差し出された人差し指を
    力強く握った

    以来 
    その手は
    差し出された いろんなものを
    握ったり
    握らなかったりしてきた

    父が買ってきたおもちゃ、ドアのノブ、どんぐりの実
    リレーのバトン、消えていく雪の粒
    恋人の湿った手、去っていった人の袖のボタン
    あげればきりのないほどのものたちだ

    指先は敏感で
    いろんなものの感触も確かめた

    きょう
    皺だらけの手が
    生まれたばかりの命に触れようとしていた

    未来へと育つ小さな手が
    もうすぐ去り行く人の人差し指を握り締めた

    いつかも そんなことがあった
    そのまま
    しばらく開くことのなかった小さな手のなかに
    残ったもの

    メッセージ☆
    赤ちゃんと年寄りは実はとても近くにいるということを誰もが感じているでしょう。
    たとえば二人が視線を合わせているとき、とても濃い交流が何かの形でなされているのではないかと思えてなりません。秘密の暗号交信のように。
    輪廻というのがあるかどうかは分かりませんが、生まれてきた命というのは、すべてを見透かす無垢の目を持っている、・・・いや、実はもっとも老成した種の生命そのものの視点をもっているということなのかもしれません。年寄りから赤ちゃんに伝えることがあるとしたら、人類の未来のための使命、とでもいうべきものでしょうか。

    2010年10月3日日曜日

    窓越しの猫

    へいの上に猫がいる
    こちら側と あちら側
    猫は 両方 見えるだろう

    へいの向こうでは
    蛙が 池に 飛び込む
    こちらでは 豆腐屋の自転車が
    通る

    へいとは 関係ないところで
    子供の はしゃぐ声が する
    もぐらは
    もうじき 目を覚ます

    電話を切った 女子高生が
    涙を流して 泣いている
    猫は ちらと 後ろを 振り返る
    遠くで 汽笛が鳴って
    街に響き渡る

    猫は 足音も立てずに 歩き去る
    きょうもまた
    私が残される

    2010年10月2日土曜日

    心の波は寝息になって

    屋根を取り払えば
    まんてんの星が瞬いている
    みんなそれぞれ必要なものを
    カバンに詰め込んでやってきた
    それは夢の焚きつけにつかう
    燃料みたいだ

    ぼくはラジオを持ってきた
    いつも自分の部屋で聴いている番組を
    きょうは周りの友だちを気にしながら
    ちょっと自慢気に聴くのだ

    なかなか周波数が合わないが
    ノイズの波の向こうに
    見え隠れするいつもの声

    星も何かのメッセージを発しているのだろうか
    壁を何枚か隔てた所には
    みんなと同じ布団を敷いて
    小峰が寝ている

    同じ星の天井の下
    同じ星の同じ場所で
    寝息はモールス信号のように繰り返し
    未来のメッセージを伝えようとしている

    2010年10月1日金曜日

    あいまいなわたし

    世間は
    あいまいなことであふれている

    そのほうがいい と
    みんなが 言う

    そう言う みんな は
    オトナ と呼ばれている
    呼ぶのはオトナである

    ところで
    山の中腹にある
    自然公園
    (中腹というのが どの辺りなのか
    なんという山であったかは
    あいまいだが)
    そこに
    かもしかが 数頭いた
    その かもしかは 
    なぜか クリスマスになると
    商店街に 駆り出された

    いい 鴨になった
    とは思わない
    だって
    かもしかは
    喜んでいたかもしれない

    しかし
    もしかしたら
    かもしかは
    疑問だらけだった
    かもしれない

    自分は誰なのか
    トナカイと 同じなのか
    そうなのかもしれない
    でもすべては
    うそのうえに成り立っているのかもしれない

    首を傾けて
    澄んだ目を空に向けて

    2010年9月30日木曜日

    天秤座の彼女

    天秤座の彼女は いつも
    カレシとモトカレを
    天秤にかけているという

    地球から20光年のところに
    地球とよく似た星が 見つかったという
    その星は天秤座の中にあるらしい

    いっしょに蠍座のところにいた
    僕の彼女は
    いま別の星座に近づいているらしい

    天秤座の彼女は
    双子座の双子のカレシの
    区別がつかなくて やけになっているらしい

    これらのことは B型の友達が教えてくれた
    うそつきの友達が これはマジ ホントなんだけど と
    語ってくれたのだそうだ

    2010年9月29日水曜日

    行きずり

    きみは行きずりのひと

    何度も待ち合わせして
    手も繋いでみたけれど
    河原で短いかけっこもしたけれど
    ベッドでに沈みながら未来の話もしたけれど

    きみと僕のあいだには
    何かが挟まっていて
    密着して合わさらなかった

    きみとは
    さよならをすることなく
    行き違った

    僕はまたきみと
    行きずりたいと願う
    また行きずるだろうか
    行きずらないだろうか
    そうだ  いっそ正面衝突がいい
    それならその場にもつれて倒れこみ
    行きずれない
    人目を気にしない勇気さえあれば
    日記のように詩を書き、このブログに掲載しています。誰かに読んでもらおうというものではく、ほとんど自分のために書いていますが、偶然に通りかかった人が立ち寄ってくれ、常連のようになりつつある人もいて、それはそれで張り合いがあってうれしく、その少ない読者に感謝しています。しかし、「広報活動」をして、もっと多くの読者を獲得しようとは思っていません。少ないのがちょうどいいのです。


    詩をかく楽しさとは別に、毎日は苦闘しています。また、詩を書くことが、その苦闘をより鮮明にしているとも思えます。冬の寒さが夕日のあたたかさを教えてくれるように、詩と日常は別の場所にあって、詩は苦闘のありかを照らしています。苦闘ははやく過ぎ去ればいいのですが。

    2010年9月28日火曜日

    白いタンクトップ

    きみはぼくのすきなひと
    白いタンクトップがよく似合う
    飾り気のない美しい人
    きみの横顔には
    しゃれた街並みや緑の草原
    曇った窓ガラス 雪の雑木林も
    よく似合う
    きみはいろんなものをほしがるけれど
    ぼくは それらの代わりに
    一本の枯れ枝を渡したい
    枯れ枝はなんの役にも立たないけれど
    きみの頬をふくらますのには十分だ
    きみはぼくの誘いにもよくつきあって
    軽やかについてくるけれど
    きみが思っているのは
    いつでもきみの優雅な日常のこと
    きみをどこに解き放つかということ
    ぼくはきみの部屋にある
    きみの写真を思い出す
    モノクロ写真のの森の中にいまもつるされているはだかのきみ
    その周辺を 天女の布が舞い 漂っていて
    きみは今にも放心しそうに こちらを見ている
    ぼくは きみに 問いかける
    きみはなにをゆめみているのか
    きみは いつもわらうばかりで こたえない
    きみは なにも ゆめみていない
    ぼくは きみに 手紙をかこう
    よまれることのない とどくこともない手紙
    きみのゆめのなかで もやすといい

    2010年9月27日月曜日

    小峰に纏わりつくネコ

    小峰とネコのことは想像するしかない

    小峰が人前でネコといたところを
    誰も見ていないから
    第一 小峰にネコは似合わないと僕は思う

    小峰はペットを飼うような感じではなく
    孤立して淑やかで
    生き物の毛を衣服につけている筈もなく
    そんなに寂しがり屋でもない

    それでも
    小峰とネコのことを考えるのには訳がある
    それは僕が小峰のことを考えるとき
    最近は いつでも
    ネコの気配を感じる
    足もとにネコがいる!
    このあいだは ネコがまとわりつき
    小峰が もう~ とネコのことを払いのけるような声が聴こえた

    ネコはどこからくるのか知らないが
    妙に訳知りの様子で
    程よく小峰に纏わりつくが
    たまに度を越して追い払われる

    その様子は
    楽しそうで 悲しそうだ

    僕はいつか
    纏わりつくがネコに聞いてみたい
    あんた 小峰の なんなのさ

    2010年9月26日日曜日

    夜の(ピンクゴールド)

    えっ?
    夜のしましま

    いっ?
    なかに入っちゃうの?

    うっ?
    がまんしなくてもいい

    あっ?
    あのときよりいい感じ

    おっ?
    どこまでもいくのだ

    ねぇ
    夜のしましま

    しましま?
    しましま。

    新聞連載詩 未来 3

    「心の当たりくじ」 マツザキヨシユキ

    指で土を掘って 種を一粒落とす
    間隔をあけて もうひとつ またひとつ
    そしてすぐに 土をかぶせてしまう
    種をまくときの気分はなぜか楽しい

    これで きっと 芽が出て 花が咲く
    どんな花が咲くのだろう
    花が咲くころ 自分は何をやっているのだろう

    花が咲いたら 写真を撮って うんと凝って撮って
    あのこにメールで送ってみよう
    あのこはなんて言うのかな

    花が咲くころ いま石ころを投げつけたい
    にっくきアイツは もう自分の前にはいないだろう
    今 手元にある 宝くじは 100円玉2つになり
    わたしは せっせと 働いているだろう


    メッセージ☆
    種というのは「未来カプセル」のようだと、どこかで誰かが言っていたような気がします。
    人にとって、自分の「未来カプセル」って何なのでしょうか。
    宝くじ、でしょうか?
    いいえ、もちろんぼくは違うと思います。ではねなんでしょう。それは人さまざまだと思うのです。
    僕にとっての「未来カプセル」は、毎日詩を書くこと、です。いつか花咲くといいなと思いながら書き続けています。

    2010年9月25日土曜日

    まっすぐ進む

    いつかの夏の終り、道が終わってしまう光景を見た

    眠っている小峰

    小峰が眠っている
    眠っている小峰は
    どこか別の世界に 何かをしに行ってしまったようだ
    ここにいない 小峰の 眠っている姿は
    いつまでも見ていたいほど いい
    小峰は寝息一つ立てずに静寂を保っていて
    それは 最後の一葉をおとさないように という比喩がしっくりくるように思える
    小峰を守るものは何もないが
    世界中の善良な魂が みんなで小峰を守っているということが
    なぜだか はっきりと判る
    小峰は 薄く やわらかい色の 衣服をまとっているが
    衣服の隙間から 肌を見せている
    その肌は かすかに産毛が光っていて
    赤ん坊の時と きっと ほとんど変わりがないのだ
    小峰の閉じられた瞳は 美しく 小鹿のようなので
    だから時折 小鹿がのぞきに来る
    小峰は 2本の腕を持ち
    手のひらは 5つに分かれている
    その手のひらが いつだったか もみじを持って 写真におさまっていた
    その光景は 紅葉と手のひらの境界を危うくするような事件だった

    小峰は いつ 目覚めるのだろう
    唇が 季節の風に 少し乾き
    そのわずかな不快に 目を覚ますのだろうか
    それとも どこからか飛んできた 綿毛の気配を感じて だろうか

    こわれそうで やわらかい 小峰
    父母から生まれ でも 誰のものでもない小峰は
    いつか 自分を誰かに差し出すのだろうか
    リボンを巻いた プレゼントと一緒に
    瞳に笑みさえ 浮かべて

    2010年9月24日金曜日

    錆びたポスト

    おいてけぼりにした錆びたポスト
    あの家と一緒に
    ドングリの木の傍らの
    引き抜かれた門柱の奥
    草花の咲く庭の向こう側
    電信柱の間のへいの向こう側
    小さな公園の隣
    家路につく足跡が聴こえ
    風に流されてきた線路の音が籠る場所
    花火大会が屋根越しに見える
    カレーの香りが漂い
    剣道に出かける少年が飛び出す
    落ち葉の中で焼き芋が作られる
    その家

    外壁に張り付いたポスト
    古くて錆びたポスト

    いまはもう どこにもないポスト

    2010年9月23日木曜日

    ふくらむ小峰

    小峰はまだまだふくらんでいく
    小峰はずんずん伸びていく
    小峰はるらるら歌っている
    小峰はとんとん冷えている
    小峰はきしきし立っている
    小峰はりらりら溶けていく
    小峰はすりすり熱していく
    小峰はねたねたまったりとする
    小峰は小峰のことが分からない

    2010年9月22日水曜日

    観察

    小峰は
    山より小さい
    大地の
    ふくらみ

    雨にぬれ
    水を吸い
    くぼみに
    ちいさな水たまりをつくり

    人を登らせる
    生き物を
    這わせる

    小峰は
    来るものを拒めないのだ


    くぼみは
    水分を
    静かに
    蒸発させる

    そうすることで
    小峰は
    平静を
    たもてるから
    月に照らされた
    小峰を
    横から見ると

    いつもと違う
    感じがした

    2010年9月21日火曜日

    合唱祭

    みんなに交じって小峰が歌っている
    ふくらみはじめた夢

    小峰の声が
    聴こえる

    小峰がからだを揺らして
    歌っている

    小峰の周りも歌っているが
    それと競うように小峰は歌う

    声を出すことが気持ち良さそうに
    よろこびを湛えている

    合唱が盛り上がる
    小峰も盛り上がる

    小峰と一緒に
    僕も盛り上がる

    いつか小峰の名前を呼びたい
    小峰はそのときは歌わない
    歌は胸の中にしまいこみ
    僕の名を呼ぶだけ

    2010年9月20日月曜日

    夏の瞳

    お店の中を覗き込んだら
    きれいなお姉さんと目があった
    かるい笑みをうかべていた彼女は
    目があうとはじかれたように
    瞳をそらし
    すぐに また一瞬僕の方を見た
    今度は僕が瞳をそらした
    彼女もまたそらした

    僕は扉を開けて彼女に告白し付き合いすぐに結婚し
    三人の子をもうけた

    僕はその店の前に何となくたちどまった
    彼女は椅子に座って何かをしていたようだった
    彼女がその店の客なのか店員なのか
    僕は分からず迷った
    目があった瞬間
    僕は恋をした

    近くで大音量のスピーカーが
    J-popを流していた

    斜め向かいの店でカツカレーを食べる
    そのあいだじゅう
    僕は彼女の瞳を思っていた

    夏の最後の日差しが
    店前に光を当て
    人が行きかっている

    川の流れの音が時折聞こえてくる
    きれいなお姉さんはあの店で
    何を感じているのだろう

    さようなら
    またここに来た時
    時間が止まっていたように
    あの瞳は僕の瞳に焦点をあわせるだろうか

    そらさずに
    あわせつづけることに
    どれだけたえられるか

    2010年9月19日日曜日

    おりこうさん

    おりこうさんのありんこさんは
    りこんしてから
    ありがとう

    ありげーだーのけいたいでんわ
    げーむしながら
    けいさんできる

    さんだるはいてるさんたくろーす
    たくはいぎょうむに
    くろうさんたん

    2010年9月18日土曜日

    終わりへ

    たき火のにおいがした
    雲と煙は友だちなのだろうか
    あるいは霊はどうなのだろう

    盆地に夕焼けが落ちていく
    灯りの数が増えていく
    互いにシーソーをしているのだろうか

    高地から低地へ
    都市から田舎へ移動する
    海は今も凪いでいないだろうか

    沈黙をすることが
    美しい人を引きつけることがあるだろうか
    傷つけるよりも多く

    電車が線路をならして走っている
    その重さに何が含まれているのだろう
    まさか過去の駅で乗せた重い荷物も?

    この詩も終わりに近づいて
    僕のブログへ旅立とうとしている
    終わりは旅立ちの合図なのか

    2010年9月17日金曜日

    狂詩曲

    どうにか なって しまいたい
    どこかに いって しまいたい
    と きみは
    微笑みながら 云うから
    何が本当なのか 
    わからなくなってしまう

    いつになっても このままがいい
    どこにも いかないで
    と きみは 
    真剣な顔をして 云うから
    ぼくは 
    動くことができない

    虫たちが羽をこすり
    植物がこっそり 受粉する

    一人ぼっちの夜よ
    あと何回 
    ぼくに やってくるのだ
    呼びもしないのに

    季節の変わり目や
    人々の夢の上を
    乗り越えて

    2010年9月16日木曜日

    夜明け前の暗い道に
    生ぬるい 雨が降る

    目覚める前の僕の耳に
    入り込んで来る 微かな声

    書きかけの手紙から
    気化して行く 愛の想い

    うつむくきみの心に
    浸み込んで行く ちいさな一粒の滴

    2010年9月15日水曜日

    30円のコーヒーチケット

    金券ショップでチケットを買う
    120円のコーヒーチケットが
    とても安くて1枚30円
    ぼくは迷わず「5枚」と云った

    1枚30円で買ったコーヒーチケット
    1枚目は新宿の店

    ノートを広げて思いついたことをメモ
    やらなければならないことを箇条書き
    今日しなければならないことは
    今日なんとかし終えた
    明日は明日しなければならないことをする
    あさってしなければならないことは
    あさってすることに決めた

    1枚30円で買ったコーヒーチケット
    2枚目は赤坂の店

    15人ほどの人間が思い思いに
    それぞれ時間を過ごしている
    誰もがしなければならないことを
    両手いっぱい抱えている
    締め切りに追われて生きている人がいる
    ノルマに縛られ一生懸命
    自分を逃す道を探す人も

    1枚30円で買ったコーヒーチケット
    3枚目は大宮の店

    将来のこと考えれば考えるほど
    ぼやけてきてしまうのはなぜか
    友達に聞いても同じ問いが
    返ってくるだけだから
    いつのまにか問うことの代わりに
    紛らわすことがうまくなった
    自分を責めて苦笑して

    1枚30円で買ったコーヒーチケット
    4枚目は仙台の店

    高速バスで早朝の街に着くと
    街が目覚めるまでまだもう少し
    気だるさと懐かしさを傍らに
    過ぎ去った人を思う
    同じ場所で朝のコーヒーを飲み
    夢見ていた愛の生活
    この場所は変わらないまま

    1枚30円で買ったコーヒーチケット
    5枚目は待ち合わせ

    手を小さく振って近づいてきたのは
    さよならをし忘れたからですか
    そんな意地悪言っても
    笑いあえる不思議
    ぼくは30円でここにいるけれど
    君の分のチケット買い忘れた
    あと一枚買えばよかった

    2010年9月14日火曜日

    秋の事件Ⅲ

    誰かが小声で囁いている
    少女というにはしっかりとした口調
    そして優しさと強さを併せもっている
    なにか強い思いがあるのだろうか

    声は囁きをやめない
    日がな一日 止むことはない
    辛くはないのだろうか
    知らぬ間に誰かと入れ替わっているのだろうか

    いや、そんなことはない
    声は確かに同じ声だ
    そして繰り返し 唄のように
    挨拶の言葉のように 発せられる

    夜に鳴き始めた虫たちさえ
    黙り込んでしまった
    声はどこまでも進んでいく
    空気を振動させて

    時には 風に逆らって
    震えながら
    そして馬車に飛び乗るように
    季節の流れに身を投じると
    下流の町へと消えていく

    その町で
    きょう 信号が変わる瞬間
    一人の少女が ため息をついた

    声はなく
    もちろん 笑みもなく

    2010年9月13日月曜日

    新聞連載詩 未来 2

    「魔法の力」 マツザキヨシユキ

    来る、来ない、来る…と花占いしてたら
    いつの間にか未来になっていた

    タイムマシーンにさらわれたのだ 
    そこには 見慣れない風景があった

    人々の表情もどこか不自然に見える
    それに 音がよく聞こえない
    どうしたのだろう
    私はどぎまぎしていた

    するといきなり誰かが後ろから肩をたたき
    私に向かって言った

    「きょう、くる?
    それとも行こうか」

    私には行くも来るも
    なぜか一緒のように思えた

    上のほうで
    柱時計の音がした


    メッセージ☆
    時々、過去に起こったことの前後関係が
    わからなくなること、ありませんか。
    そんな時はタイムマシーンに乗ってもきっと迷ってしまいます。
    新しい気持ちで朝が迎えられたり、心が二日酔いだったり、
    時と記憶の魔法の力は、きっと誰もが持っています。使いこなせればいいのですが…。

    2010年9月12日日曜日

    区別がつかない

    毎日 日付変更線がこの身の上を通り過ぎていくのに
    通り過ぎでしばらくすると もう
    境界線は 溶けてなくなってしまう

    初めてそのひとと会った夏の終り
    スキー場の斜面に無数に咲き誇るコスモスが
    風に揺れていたけれど
    その風が
    その日が
    どんな境界線で区切られているかは
    判然としない

    コスモスの中に
    そのひとはいたけれど
    いま そのひとはどこにいて
    何をしているのか
    その輪郭さえ
    とらえることができない

    幻と夢の間に
    夕日が落ちて
    思い出へと誘う

    誘っているのが
    誰なのか
    判然としない

    2010年9月11日土曜日

    詩は死なない 1

    詩のノートが
    消えてしまった

    詩のノートには
    シャーペンや万年筆や色鉛筆
    近くにいた人から借りたボールペンや
    その他さまざまな筆記具で
    詩が書かれていた

    まだ書きかけのものや
    嫌いになってしまったものや
    線によって消されたもの
    丸の付いたお気に入りのもの
    書いた行の上に線が引かれたもの

    それらは
    僕の前から突然 姿を消した
    誰かに呼ばれて
    ちょっと出かけて行ったのか

    ノートが帰ってくる頃
    僕はいないだろう
    書かれた詩に
    返事が返ってくる頃
    ノートはもう
    どこにもないだろう

    おもしろい詩の試み デザインレーベル oblaat

    谷川賢作さんのサイトで紹介されている


    2010年9月10日金曜日

    さよならを言いなさい
    きみの大事なものに いますぐ
    きみがそれらのものとともに
    生きていくことはだれも認めない
    きみは自分の意志をすてなさい
    その愚痴のような意志は
    誰の何の役にもたたない
    詩でなく散文で語りなさい
    きみの韻律は人の心を揺らさない
    きみは部屋から出て行きなさい
    きみの汗は雨でなきゃ洗われない
    枯れた木が杖として使われるように
    道端に転がりなさい

    窓の外で誰かが言った
    窓を開けると嵐が立っていた

    2010年9月9日木曜日

    新聞連載詩 未来 1 

    「未来へ」 マツザキヨシユキ

    みんなでよってたかって
    きみの悪口を言ってる
    きみをどうやって救うのか
    寄り集まって話し合ってる

    ぼくは きみのこと
    そんなに悪いと思わないよ
    っていうか いいとおもってる
    悪口を言う人たちより
    ずっとね

    きっと いつか 
    きみと会えるね
    きみとぼくの 中間点で会おう

    出発したら知らせる
    じゃ


    メッセージ☆
    未来は待っているだけではやってこない。
    自分からも進んでいかなければ。
    希望を持って進めば、きっとどこかでばったり
    未来と出会える。僕はそう信じている。
    未来って、きっといいやつだ思う。

    努力しているケーキ

    どうやったらおいしくなるかという問いが詰まっているケーキは芸術品!

    2010年9月8日水曜日

    傷心

    道の端っこをしよんぼり歩くことを許してくれないか、世界さん。
    こんな蒸し暑い月のない夜だから、
    逃げ帰る自分の影も薄く、
    存在をより薄くしてくれるから、
    戯言や愚痴を言うことを許してくれないか、世界さん。

    世界の友達さん。
    見えないところにいる知り合いの皆さん
    どうか気付かないで。ね。
    僕のことに。

    世界さん、いつか
    懺悔してみましょう。
    僕が立ったところが
    自分と世界の交わる中心だと
    大手を振っていえる日に。

    今は、そのことに堪えられないから
    道の端っこを進みます。

    小さな自分のアパートに向かって。
    小さな虫が鳴いているその上空を。

    2010年9月7日火曜日

    裏庭には

    裏庭には 二羽ニワトリがいる
    世の中には 悪い人がいる
    裏庭には 二羽ニワトリがいる
    世の中には いい人がいる
    裏庭には 二羽ニワトリがいる
    世の中には 知らん顔の人がいる
    裏庭には 二羽ニワトリがいる
    世の中には 恨みを持った人がいる
    裏庭には 二羽ニワトリがいる
    世の中には たくさんの人がいる
    裏庭には 二羽ニワトリがいる
    世の中には たくさんのニワトリがいる
    裏庭には 二羽ニワトリがいる

    2010年9月6日月曜日

    いつか行った場所

    そこに あのときの
    自分はいない
    いるのは 
    いまの 自分だけ

    いや、そうじゃない…
    見渡せば
    他人がいる 
    いっぱい…

    面影というのは
    どこに出現するものなんだろう
    どもるように呟いて
    尋ねようとしていたら
    僕の中できみが答えた

    「あなたの知らない
    夢枕のうえよ」
    
    初夏の糺の森
    

    2010年9月5日日曜日

    秋の事件Ⅱ

    夏祭りの後
    あっという間にやってきた秋祭り
    子どもたちが担ぐ神輿がやってきた
    からからと紙の飾り物を回して揺らす風は
    もう寒い季節に向かって吹いていく

    きょうは夕日が美しいことを
    思い出すだろう
    いつか見た夕日
    美しかったいろいろなもの

    2010年9月4日土曜日

    束ねた髪の 後ろを歩く

    束ねた髪を振り子のように
    揺らして歩く
    月夜の道を

    束ねた髪の振り子を見つめ
    一緒に揺れる
    リズムをとって

    束ねた髪が
    かすかに香る
    遺影の前の
    果物のよう

    2010年9月3日金曜日

    いったきり

    とっつきにくいひとに
    とっつきにくいひとだといわれ
    やさしくないひとに
    やさしくないねといわれ
    あいするあのひとに
    あいしてないといわれる
    ありきたりのはなし
    いったきりのやまのてせん

    2010年9月2日木曜日

    毎日首つり

    目を覚ますとき
    毎日首がつられる

    硬いロープで
    喉を締め付けられて
    気が遠くなる勢いで
    目を覚ます

    それでも
    目覚まし時計で起きるよりは
    自分らしい
    と思う

    眠るときは
    馴れない手漕ぎボートで
    小さな波を超えていく

    目的地は見えず
    永遠に近づけない
    虚しさの重みで
    沈んでいく

    2010年9月1日水曜日

    そのままのきみで

    そのままのきみでいい
    と 言ってみたくなった
    心の中で言うことさえためらわれる
    自信に満ちたことば

    このままの自分では
    だめな自分が
    きみを
    逃がすまいとしているのか

    このままでいい
    と 思っていないきみが
    見つめる先に
    脇目も振らずに歩いていく人の姿がある

    2010年8月31日火曜日

    月見だんごの夢

    小さなものが集まり支えあって
    ひとつの世界をつくっている。
    ひとつのだんごは
    世界にとって
    なんの役割り?

    どう機能してているのかわからないけれど、
    月夜のひとつのだんごは
    毅然としてうつくしく
    存在感に満ちている

    寄り集まって重なり合い
    何に向かってものを言おうとしているのか

    月、 
    ススキ、
    縁側、
    兎、
    たまに吹いてくる風

    宇宙と交信する
    エネルギーの玉?

    ぼくは何を言おう。
    夢に見たその白い球を
    ひとつ手にして
    あなたに
    何を伝えよう