2010年12月31日金曜日

幸せ in 段ボール

お茶漬けです
塩を振りましょう
食パンには
ケチャップを塗りましょう
お茶を飲みましょう

水を飲みましょう
飴をなめましょう
雑誌と新聞と 本も読みましょう
着替えをしましょう
夏服と 冬の服も重ね着と洒落てみましょう

神社にお参りに行きましょう
贅沢気分で
お寺にも行ってみましょう

夜は星を見ましょう
いつもより輝きを増した夜空です
お正月は仕事を休んで
一年の計画を立てましょう

あの人もこの人も
余計な
仕事はせずに
ゆっくり自分を取り戻す

仕事している人ご苦労さん
新しい段ボールに
新しい希望を入れて
幸せを確かめましょう

どっこいしょ
いい具合

2010年12月30日木曜日

旅立って行きましょう

この場から旅立って行きましょう
知らない誰かさん
もうこの場にはいられないから

知らない誰かさん
本当は知っている誰かさん

布団をたたんで
後先は考えずに
思いついたものだけ
カバンに詰めて

未練は置き去りに
後悔はカバンに詰めて

手紙やプレゼント
写真のアルバム
パソコン
CDやDVDは置き去りにして

この場から旅立って行きましょう
風の強い朝に
窓のカーテンは開けっ放しにして

2010年12月29日水曜日

すきま風

よろしく
すきま風
よろしく
気になる奴
寒いじゃないか
でも よろしく
すきまを通るの
たいへん

入って 
もと通りになるの
人の形してるの
似てるの

淡雪と一緒だったのに
すきま風だけ
すきまから
入ってくる

淡雪とはお別れ

隙間と知り合って
お別れの心に
すきま風

ストーブつけたら
すきま風
温風になる

人は何になれるだろう

2010年12月28日火曜日

気分屋さんの気分

鎌倉に行きたいと美穂はいう
だが鎌倉への道は分からない
海辺をスイーッと行きたいと美穂はいう
だがスイーッといける筈がない

窓の外は冬の景色
美穂はあたたかい部屋の中に居て居心地が悪そうだ
プリウスにはナビが付いているから
すぐに飛び出して鎌倉に行こうという

なぜ鎌倉なのかは話してくれない
鎌倉に行って何をするというのか
寒空の下 ぶらぶら街を歩き回るのだろうか
立ち食いしたり買い物をしようというのか

まあそれもいいのかも知れないが
夜になったらホテルにでも泊まろうというのだろうか
気分転換のために
それともまた海辺の道をスイーッと戻ってくるつもりなのか

美穂はしかしもう飽きてしまったようにあくび顔だ
10秒で変わってしまう美穂の気持ち
なかなか変わらないわたしの気持ち
天秤にかけたら…

と 思っていたら
美穂が小さくあくびをして
大江戸行こうか と言った
大江戸温泉物語になぜ行かなくてはならないのだろう

2010年12月27日月曜日

古い友だちが訪ねてきそうな日

古い友だちが訪ねてきそうな日
二度と帰らない旅支度をしている
古いカバンに 持っていきたいものを出したり入れたりして

どんよりと曇った空の隙間から
濃い青色の空が覗いている
あの辺りから
虹がかかるだろうか

今日は特別な日らしい
何処かに置き忘れ
置き忘れたことさえ忘れていた日記帳が
突如あっけらかんと出現して
続きを書けと促してくる
続きなんて書ける筈ないのに

あしたになれば
この世界に私の痕跡はないだろう
その逆に
私の胸には深い傷が刻まれているだろう
小さい頃に見た柘榴の裂け目の鮮やかさに似た

そしてその傷の痛みのために
私のカラダは軽くなっていくだろう
友だちはそのことを察してやってくるのだろうか

古い友だち
どこからやってくるのだろう
今頃
近くの駅に着いただろうか

木の机の上で腕組みして
きょうは色々なことを考えている
不思議といつものような堂々巡りはせずに
一方通行で進んでいく思考

私には
色々なことが分からない
花火を見ている気分になってしまう
色々なことは何を意味しているのだろう

問いがいっぱいの頭の中に
もういいよ という声が通り過ぎる
そのせいで
私は深く考えるのをやめる

静かな町に
太陽が巡っていく
風は遠近法の中で通り過ぎ
思いは井戸水のように
汲み上げれば美しく輝き

私が外へと踏み出し歩き始めるとき
私は静止し
私以外のものが
動き始める
私が存在しなかったときと同じように

2010年12月26日日曜日

19分の詩

2318
自分を満足させるために
自分はどうしたら良いのだろう

2319
あたたかい部屋でテレビを観ている
ホームレスに同情できるか
心のホームレスに

2320
もうすぐ電車が出発する
夜行列車は何処を走っていくのだろう
地図で追わず
心の中で追ってみると
あの日の風景が流れていく
目的地はどこだろう

2321
カップラーメンをたべよう
お湯を沸かそう

2322
冬になると首筋がかゆい日がある
変わらずにいてくれるものが
ありがたいと思う時がある

2323
兄さん兄さん
姉さん姉さん

2324
兄さんに死

2325
お湯を注ぐ
食欲がなせる技
お湯を注ぐと
ラーメンができる
できたら食べることが
予想されている

2326
一分に一個書きながら
ラーメンを食べるのは
46年間生きてきて初めての体験だと気づいた

2327
23時37分になったら
アップする
いつものように推敲は後回し
僕の人生みたいに

2328
雪でバスが立ち往生している
立ち往生という懐かしい響きに
安心感を覚える
立ち枯れの木々
たったままの椅子
座ったままの一日

2329
電話代がたまったまま
定められた期日が来ると
人類社会から
切り離される
また1本

2330
カメラを向けると
カメラ用の顔になる人
ならない人
気まぐれな人
あなたの好きな人はどっち?

2331
ほっぺ先が
ピーンといっている

2332
首吊りブランコって知ってる?
誰かがが毎朝漕いでるやつ

2333
ゴミを捨てに行かなければならない
ゴミ捨て場に きょうも
分別して捨てなければならない
種類ごとに出す日が決まっている
そうか
そうすればいいのか

2334
捨て方が問題だ
尖った夢は

2335
きょうは君の香りがバスルームに溢れていた
みたことのない花の香り

2336
もうすぐきょうが終わる
この夜に暮らしているみんなのきょうが

明日が来ないことはないだろう
みんなが信じているから
きっと明日は来るのだろう
絶望的な明日でも
希望が持てる明日でも
とにかくやってくる

絶望と希望が同義語に思える人にも

2010年12月25日土曜日

ノック

ノックする場所が間違っているのではないですか

あなたは毎日
靴のかかとで
ノックしてきました

舗装された道や
家の近くの狭い道
校庭に敷き詰められた砂利の上
電車の床
石段やエスカレーターの鉄の階段

そのほかにもありとあらゆる場所をかかとでノックしてきましたが
間違っていたのではないですか?

そのノックの音に誰も返事をしなかったのですから
あなたはこの先もノックを続けますか?
いつまでも飽きることなく続けるのでしょうか

ノックする場所を変えてみたらいかがですか?

そういうわたしも
長年続けてきて思い通りいかないことがあります

自分ではなかなか冷静に対応策をかんがえられないものです
いつ反応があるかわからないものに対しては

おっと
誰かが来たようです
ノックの音がしました
では また

2010年12月24日金曜日

ねがい事

いつも緑のもみの木

わたしのねがい事も
輝いていられるだろうか

美しいあなた
心はなにを求めているの

2010年12月23日木曜日

眼差しを留めるもの

誰も自分のことなど解ってくれない
そんな眼差しが
道端の枯葉を見つめていた

枯葉は思った
木に茂っていたころ
同じ瞳がわたしを見上げていた と

雨が降り
風が吹いて
星が綺麗な夜に
枯葉は木から落ちた

枯葉が居なくなったところに
小さな空ができた

その空は
孤独な眼差しに満たされるのを
待って木に引っかかっている

2010年12月22日水曜日

沼よ

駅のエスカレーターを昇りながら悩みごとの沼が体からはみ出ているあなただけれど
その沼には絵にもならないほど美しい小ぶりのはすの花がいくつも咲いている
はすの花はどれも首を曲げて悩んでいるけれど
そのせいであなたの悩みごとは空に向かい少しずつ蒸発をつづけている

あなたはその蒸発をむしろ止めたいと思っている自分に驚いているけれど
悩みごとは連鎖して他人のものまで絡みついて繋がっていくので際限がないことにもすぐに気付いてしまう

沼をはみ出させながらあなたはイルミネーションに彩られた並木道を歩いてゆくけれど
並木道からも気づくと沼がはみ出し始めて
歩いていく人の多くからも次々と沼がはみ出してきて
すぐにそれらが交わって混沌とした情景が生まれてしまう

あなたは知らん顔を装ってスタスタ歩いてゆく
目的地にいかなければならない
生きていくためのお金を稼がなければならない
一度一生生活するのに程よいお金が玄関先に置いてあったことがあったが
それは夢だったようだ

脇目も振らない振りをしてあなたは歩く
ブーツの下から泥が溢れてきて
ずぼずぼ音を立てている

2010年12月21日火曜日

仕事

二階にあなたが探しているものがある
そのせいで
一階は水浸しだ

奥の階段を登り
鉄の扉を開け
次の木の扉を開けると
ガラスの向こうがブースになっている
テーブルの黒い天板の上には
マイクロホンが設置されている
ここから実況中継をするというわけだ

あなたがキューを振れば
ブースの男はカフを上げて
女と始めるだろう

ほら 二人とも
もう半裸状態だ
台本そっちのけでよくやるものだ

黒い天板に乗せられた女に
男が覆いかぶさっている
女は挑発的な眼をして腰を揺らす

いつの間にか室内なのに雨が降り出した
台風のような生温かい雨だ
もうわけがわからないほど
荒れ始めた

それで
あなたは何度もキューを振るのだが
何のキューなのか
もう誰にもわからなくなっている

BGMが高らかに盛り上がり
世界を嬌声が脅かす

男と女はいつまでも飽きることなく
つづけている

私は
あなたを置き去りにして
次の仕事場に向かわなければならない
夜空に浮かぶ月や黒雲さえ置き去りにして

2010年12月20日月曜日

タクシーは待っていない

長い夢からさめて
ターミナルを出ると
放射能を撒き散らしたような
明るい鮮やかな夕空が待ち構えていた

とにかく何かしなければと
僕らはとっさに行く先のことを考えていた

そしてこの夕空が意味するところを見極められるはずだ
いつか観た映画の一シーンに答えがあるかもしれない

リニアがタクシーの向こうを走っていく
あのリニアは実験が途中なので
こんな日は危険だ
いや もしかするとあのリニアのせいで
空がこんな色になっているのかもしれない
どこかの時空にねじれて衝突して
夢の世界から何かが滲み出してしまったとも考えられる

タクシーに乗れば災難を避けて
田舎にたどり着けるだろう
街道を結ぶバイパスを二つ通り
東西に伸びる線路を横切って
あの村に行けば
とり返しがつかないことにはなるまい

僕らは連れ立って
人気のまばらなタクシー乗り場にきた

タクシーに乗ると
タクシーは行き先を尋ねることもなくドアを閉め
急発進した

バイパスの橋を渡ると
僕らは思い立って寄り道することにした
その家に入ると
主人は寝室で寝入っていた
僕らが入ると
主人は癇癪を立てて何かを叫び
やがてたしなめるように言った

昨日帰ってきたばかりなのに
直ぐに仕事があり
時差ぼけがきついが
望むところだ
生きている間中ずっと何かをし続けなければならない
寝ている以外は
寝る間も惜しんでしなければ

叱られた気分を抱えて僕らは外に出た
すると待っているはずのタクシーはいなかった

空には星が沢山出過ぎていた
いつもみる一等星より大きな星ばかりだ
その明るさに目がくらみ
ぼくらは思わず倒れこんだ

眠るためではなく
ただ明るさから逃れるために
藁の匂いがした

2010年12月19日日曜日

マッチ売り

求めるものに近づこうとする打算的人生より
過ぎゆく過去を大事に味わう人生のほうが
いいのでは?

ホームレスの僕が思うことは
過去のいい思い出のことばかり

でもそれらに飽きると
今度は現在のことを思う

家賃を払うのは必要悪かということ
月や星は電気メーターにつながっていないということ
食の安全は少し古くなったら捨てろということ
食べたい僕たちにはゴミ箱を漁れということ

自分がよければそれでいいという思いを持った人が
さまざまなルールを決め
ルールの隙間に蔓延して
自分の善良さに不安を覚えると
弱いものに情けをかける

クリスマスが近づくと
マッチ売りの少女が
今日も街頭に立って
寒さに凍えながら
火をつけるための棒を売っている

本当に燃やしたいものは何?
少女は尋ねることはしないが

ホームレスの僕は自問する
本当に燃やしたいもの
燃やしてしまいたいものは
何?

2010年12月18日土曜日

夜の空気

窓から入ってくる
月の灯りは
太陽から君への心遣い

闇の中に放りだされても
君は完全な独りきりにはならない

スピーカーから音楽を流し
本のページをめくれば
別の世界がハンモックのように
用意されている

君の想いを吸い込む夜気が
空のなかでシンとしている

2010年12月17日金曜日

君と

ゆっくりしよう
もう時間に邪魔されることはない
人目を気にすることもないから
コインを入れるように
君に愛情を注ぎ込もう

眼をつぶっていても
つぶることに飽きてしまって
また見開いても
まだ終わらない

港を離れた船が
沢山の出会いと別れを乗せてもどってきても
僕たちは
まだ始まったばかりだ

ゆっくり
空白だった時間を埋めるように
確かなものを確かめ
不確かなものさえ
確かにしよう

列の最後に並んでいた現実は
昨日みた夢のように消え
友達たちの輪の中から弾かれて
衝突した君

2010年12月16日木曜日

玄関にくる人

寒さが手を引いて忘れていた人を連れてくる
ぼくは黙り込んで西日の部屋で文庫本を読んでいる
玄関の前で誰かが立ち止まるが
音一つ立てずに
何か迷っているのか

いつの間にか陽は暮れてきて
ぼくは本を置き
外へ出ることにした

鉢合わせは勘弁願いたい
煮えきらぬものはもうたくさんだ
ドアを開ける風で吹き飛ばすよ

そうして
ぼくもバス停へと飛んで行く

2010年12月15日水曜日

月の光に

ボローニャの石畳の道
路地を抜けていく風
聖堂の鐘の音
映画館の前の人溜まり

みんなは何処へ行ってしまったのか
思い当たる人に手紙を書いてみても
返事は来ない

待ち合わせは塔の下
宝飾店のウインドウを回り見ながら
再会し
夜の賑やかさの中に消えていった

もしかなうなら
月の光に乗せて
あの日の自分に手紙を出したい
あのひとを離してはだめですよと

2010年12月14日火曜日

虹色の隠しごと

隠しごとが入ったリュックを背負って
坂を上がってやってくる
その部屋で
隠しごとは暖炉の前に置いて
二人は求めあった

隠しごとはいつも
放置され
だんだんと熟成された

二人もお互いをよく知るようになり
いつも夢中で話したので
季節の使者がドアの外にやってきては
呼び鈴を何度押しても
気づくことはなかった

水銀灯がLEDランプに取り替えられ
道は冷たく光り
行きかう人の心は
メルヘンを探してさまよった

夜の新たな影法師が生まれると
過去形で語られていた物語を
読み手が追い越し
現在進行形になってしまい
二人は越えなければならない峠に差し掛かったことに気づかされ
目配せをしあった
それが最後で最初の会話となって行った

次の話が未来形で語られ始めたとき
隠しごとは
虹色に燃えながら炎の中にあった

2010年12月13日月曜日

端っこの星

細長い部屋の端っこで
詩をかいている
ずっと端っこにいるのは
僕の好み

だからなのか
端っこが好きな人が好き
端っこを分かち合い
端っこでおしゃべりするのが
いい

真ん中で輝く星は
憧れの一等星
ぼくは端っこのやっと見えている星が好き
名前さえわからない

小さな星がなければ
きっと宇宙はもっと寂しい
大きな星が幾つ寄り集まっても
闇に消えゆく小さな星の
その沈黙に
敵わない

2010年12月12日日曜日

お金を配ってます

お金 余りましたので配ってます
どうぞお持ちください
詩を書いた方に差し上げます
今日書いた詩を見せてください
どんな詩でも結構です
詩をみせてください
一万円札ばかり
どうぞお持ちください
詩集を出した方
いつも詩を書いている方
詩人の方
詩集を見せてください
余ったお金を配っています
かわいそうな方のために
お金がなくて困っている方
詩が好きな方
どんな詩が好きか教えてください
お金を配ってます
残り僅かです
好きな詩を教えてください
未来創作を読んだことのある方
詩人の仲間と集まるのが好きな方
お金を配ってます
お金を差し上げます

2010年12月11日土曜日

よせて はずす

むすんで
ひらいて
たたんで
のして

くるんで
ほおり
ゆるめて
しめて

こすって
こづき
ぬらして
なでて

つりあげ
はねあげ
よせては
はずす

2010年12月10日金曜日

網 あみ

マスコミに網かけられているが
彼女は気づいていないのかな

網の向こうから見つめている
何か喋っている

誰に向けてなのか
その誰かは網かけられてないのかな

網かけられると
不自由になるけど
ギュッと抱き締められ
安心感に浸れる

でも人に網かけて
いいものか

網かけられている様子があまりに哀れなので
神様に訊いてみたら

従順なひとが
なにも考えないで幸せを手に入れるには必要なんだと諭された
マスコミもつかいようということか

神の国も不景気で
リストラが進み
人の幸せの実現に
手がかけられないそうだ

神様の世界でも
民主主義が導入され
嘆かわしい状態が続いていて
選挙のためにも随分時間が取られるという

海に網かけて
お魚をとり
どこからか出直す必要ありそう
ですね

2010年12月9日木曜日

メモのメ

メモしてる?
何をメモしてる?

えっ
メモしてない?

何をメモしたい?
メモしたくない?

メモしてみたら!
メモしたらどうする?

メモあった?
メモ見つかった?

メモあったら
またメモする?

メモされる?
言ったことや買うものや

アドレスやパスワードや
メモ隠す?

メモ隠した場所メモする?
メモ 洒落てみる?

メモ 謎かけする?
メモ いたずらする?
目も当てられないメモもある?
もったいないメモもある?
モアレの目立つメモも
桃色のメモもある?

見つめてみる?  メモ
見つめてみない メモ
見つめていない
見つめられている
メモに
貸しがある?
借りがある?

メモに
見つめられている
メモの目が
鈍く光った

2010年12月8日水曜日

幾つもの いつも

何度同じ言葉を繰り返してきただろう
それなのに彼等は何度でも
初めましてというようなな顔をして現れてくる
いったいカレンダーを何枚破いてきたことか
同じ歌を何度口ずさんだか
同じひとに何度おはようを言ったか

それなのに
いつも
どこからか新しい気持ちが湧いてきて
繰り返してきたことなど
まるでなかったことのようにされてしまう

優しいきみは
繰り返し打ち寄せる波打ち際で
来るものを待っているしかないことを
知らされ
黙って微笑んでいる

海の向こうに陽がしずむと
やがて
波音だけが聴こえてきて
きみの心は
ざわめきと凪とをくり返している

きみの微笑みだけが残る

明日きみに挨拶しよう
おはようと
左手を軽く降って
いつものように

2010年12月7日火曜日

ノックのように

いつかのきつねが声をかけてくれた
コン コン
それを聞いていた鳥が木の枝で
ケタ ケタ 

僕はキーボードを
トタ トタ
すると誰かが電車に揺られつり革が
キー キー
体は
ゆっさ ゆっさ

世間が夜になる
だんだんと 夢の世界が
近づいてくる

誰のもとにも
やってきて
誘いかけてくる

だだいま

おやすみ

寝息が
スー スー
寝ずの番 きつねが
コン コン

2010年12月6日月曜日

詩人の声が

優しい詩人の優しい眼差しは
心の中で戦い続ける静かな炎の穂先
炎を燃やすのは絶え間なく湧いてくる愛

地球が宇宙にぽっかりと浮き
何度太陽の周りを回っても
太陽が何度僕たちの頭上を通り過ぎても
詩人の言葉は繰り返し
僕らのうえに降りそそいでいた

優しい詩人の優しい声が
今日もどこかで語っている
詩でないものを
詩に囚われないように

2010年12月5日日曜日

プレゼント

冬の暖かい日差しの中で
夢を見たわ

どこからが夢で
どこまでが空想だったか
わからないの

冬の街を雨が通りすぎ
珍しく虹が掛かったの
そして
いつまでも消えずにいた

白いカーテンの揺れる部屋で
あなたは風がいいねと言って
ほほえみかけてくれた
私は
そう?
とわざとそっけなくした

それからあなたに
プレゼントの箱を手渡したわ
あなたは私の肩を抱き寄せて
いつもの挨拶のキスをした

夜がきて
朝がきて
沢山仕事をした
友達とお酒を飲み
旅行にも行った
ネイルも何度も塗りかさね
それと同じくらい嘘もついた

気づくと
いつもの場所の
古びた椅子にすわっていて
目覚めていたけれど
いつ
眼をあけたのか
もう忘れていたの

2010年12月4日土曜日

シマウマ

シマウマ
シマとウマが共存する大地

ハゲタカ
禿と鷹が舞い降りる

小姑
と呼ばれる女が
頬杖
頬を杖で支え

昼寝
昼なのに寝ている

落ち葉の季節
沈黙
水底に沈み黙っている
禿げた人

2010年12月3日金曜日

いちにのさんで

いちにのさんでやりましょう
と言われて
そんな勇気を持っていたか不安になる

さんにいいちで
消えたくなった

2010年12月2日木曜日

下り坂を登って行くと
平坦な場所に出た
そこからは上り坂だ

上り坂を下り
橋を渡り
いくつかの角を曲がり
いくつかの巨木や潅木の横を通り過ぎ
蔵の脇の細道を進むと
原っぱだ

草がそよそよと揺れ
それを見る 私の心もそよそよと揺れる
風のあとについて
低い丘の頂点まで行くと
眺望がひらける

しばらく下界を眺め
気分がよくなると また歩き出す
今度は丘から街へ続く道

下り坂を登る

2010年12月1日水曜日

だらだら坂

なだらかなだらだら坂
なだらかなだらだら坂

登っていく
登っていく

そして
下っていく
下っていく