2012年11月3日土曜日

5角形の白い扉

私は彼女をトイレのドアへと導き、白く輝く便器を指さした。

逃げ込んだ家は郊外の小高い丘に続く緩やかな坂道の途中の
低い崖の上にあり道路を挟んで向かい側に空き地があった。
その空き地は駐車スペースに利用できたので、いつも何台かの車が停まっていた。
昨日降った雨で駐車スペースはすこしぬかるんでいた。
晩秋らしく枯れた夏草が無秩序に生えていた。

家の扉は「5角形の白い扉」で、目の高さに明かり取りのくもりガラスが埋め込まれていた。

80年代生まれの女、Rと私はフローリングに置かれたベッドの上でむさぼり寝ていた。着の身着のままでここにやってきたので、彼女は昼間のままの服装で、下だけ脱いでいた。何かの気配で目を覚まし、危機が迫っていることを察して目を見合わせた。
今まで眠っていたと思えぬほど凛々しい表情で、互いの動きも素早かった。

私は彼女をトイレのドアへと導き、白く輝く便器を指さした。
次の瞬間、私たちは身を縮めて豆粒になり、そこに飛び込んだ。
その瞬間、遠くでドアを叩く音がした。

ドアを開ければ放射能が入ってくることは間違いない。それを伏せておいて、刺客はドアを叩いて、やがては、壊して入ってくるのだ。

刺客が入ってきた時、私たちはすで裏をかいてに駐車場に来ていた。素早く車に飛び乗って走り去らなければならない。
彼女はすでに飛び乗って態勢を低くしている。
私は一気にかけ出して乗り込むと、キーを挿してエンジンを入れ、アクセルを踏み込んだ。

追っ手は追って来なかった。

1 件のコメント:

  1. 中村ゆき子2012年11月4日 0:06

    どこでもドア~なのか、どこでも便器なのか??はたまたスモールライト!か?
    逃げた先に刺客がいるかも!

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