2013年10月31日木曜日

しごと

みつおは
くるひもくるひも
まいている
トイレットペーパーを
それがみつおのしごとだったから

まきこは
くるひもくるひも
ならしている
ゆびを
それがまきこのしごとだったから

かおるは
くるひもくるひも
かきかえている
ちょうめんを
それがかおるのしごとだったから

きみは
くるひもくるひも
なにしてる?
あきることなく
それがきみのしごとだったのかな?



2013年10月30日水曜日

爽やかな朝を迎えたいと

爽やかな朝を迎えたいと
思っています
爽やかな朝はやってきますか

いいえ
きょうは
やってきません

2013年10月29日火曜日

くせ

こぶしをつくって
人差し指の横腹を噛む

おいしいお肉を食べなさい
指だって痛くはないよ
痛キモチいい感触だろ

歯も指も覚えている
自分の脳が
どう感じたか

歯と指は
意外と
仲がいい

爪は最近
思い出してもらえない

その分

ネーリストといつも見詰めあっているから

2013年10月28日月曜日

心 〜滝に打たれている〜

滝の音が耳についていて離れない
視線はウインドウ越しの道を見ているが
心は方々をさまよい
波打ち際や渓谷を行く列車や高校の夏の明るい教室や
恋人に別れを告げられた喫茶店や様々な場面で向き合った人びとの表情を
光速で辿るが
耳は滝の音と
今いる場所の音の中に動かずにいる
それを証明しようとするように
視覚もここにいて
ただ今を見つめている

心だけが
私の事情に関係無く心を乱して
自らでかけて行く
この時心は一つではないと心は悟っていた

2013年10月27日日曜日

鶴脱臼(つるだっきゅう)ホテルへようこそ  ほか


『鶴脱臼(つるだっきゅう)ホテルへようこそ 』

母娘の信頼がくじけそうになったときには
鶴脱臼ホテルへようこそ


『瓦礫の下敷きになりました』

八階の床が崩落し
七階で私は瓦礫の下敷きになりました
掃除のおばさんが発見してくれて
瓦礫をどけてくれましたが
私には約束があったので
すぐに約束の場所へと向かいました


『北海道にあります』

北海道にあります
自動車教習所は雨で泥濘んでいます
近くの駅は災害で壊れたまま
駅舎は傾いたままです


『歩きながら飲め』

屋外広場での昼食会は終わっていました
友だちが茶を注いだ茶碗を茶托にのせそれを四つかかえて追いついてきました
もう自動車教習所へと歩き出しているのに
歩きながら飲もうというのです

2013年10月26日土曜日

えらいひとは


えらいひとは
なぜえらいのか
えらくないわたしは
かんがえます

えらいひとに
なりたくないと
なれないわたしは
おもいます

えらいひとは
ほかのえらいひとを
だいじにするのは
なぜでしょう

えらいひとは
みんなのじんせいに
よろこびをあたえます
かなしみとおなじくらい

えらいひとは
それでもいきることには
いみがあると
おしえてくれます

えらいひとは
なんのために
えらいひとを
やっているのでしょう

えらくないわたしは
なんのために
えらくないひとを
やっているのでしょう

2013年10月25日金曜日

さようなら


しずめすしずめでんしゃのり
るのとばりはもうおりた
ちにかえればはらぺこの
きむしけむしのごんたくん
っきょのかおしてまっている

2013年10月24日木曜日

庭の木々が

庭の木々が私を見ていた
あの時は気づかなかった
五月に花びらを落としたモクレンが
そのことを忘れようとして
私に視線を投げかけてきた

あの時は分からなかった
私には何もしてあげられない

木々の上の空から
雲が私を見て
待ちきれないという様子で
去って行った

だが本当は
私の方が待ちきれなかった
私はすぐに意味もなく立ち上がり
身支度を始めたから

あの時は知らなかった
私がいないところで起こっていたこと
それを知らせようと
周りのものたちが働きかけてくれていたこと

私は何も知らなかった
いまも屋根の上に雨が降り注ぎ
テーブルの上のコーヒーカップが微かに湯気をたてている
いま私が何を知るべきなのか

指先から文字は生まれ続けるが
私は何も気づかなかった
私は何も気づけなかった

2013年10月23日水曜日

永遠の住処

夢の中でしか行くことができない場所を見つけた

水辺にちょうどいい窪みだってある

持っていないものは何でも借りられる

ここにいれば誰もがやさしくしてくれる

バカにしてののしってくる者もいない

鼻につく見栄っ張りも見ることがない

それできみは

ここにいることにした

どこへも帰ってゆく理由はない

枯れた草花を焚いているので悪い虫もよってこない

生々しい問題はなにもないここは

永遠のきみの住処

疑わなければ消え去ることがない

きみがひとりでいるところ

2013年10月22日火曜日

ヤマトタケル

ヤマトタケル
ヤマトタケル
これは呪文です
ヤマトタケル
ヤマトタケル
ヤマトタケル
に遭遇したことはありませんその憶えはありません
ヤマトヤマトヤマトタケル
ヤマトタケル
いまは悶々として苦しくても電話するのは流行りません
重たい話題は禁止です
ヤマトヤマトヤマトタケルヤマトタケルヤマト
スピリチュアルな話題に変換して
せめて少しだけでも話します挨拶代わりに
ヤマトタケルヤマトタケル
それでも彼女は友だちに次々と電話していきます
切られても嫌われてもその方が楽だと気づきましたから
クラウドにはいい写真が増えました魅力的な自分の写真も
時間は味方してくれます世間よりはやさしい
しかし神様の味方をしようとしても神様は暗闇に隠れてばかり
ヤマトタケルヤマトタケルヤマトヤマトヤマトタケルタケルヤマト
それだからふて腐れて加速度を付けて毎日夢の中に落ちていきます
だれも文句を言うことはできません好きにできます
夢の中から戻るときに戦争ゲームのように現実と勝負します
絵札をたんまり仕込んできているのでまず現実に負けることはありません
ヤマトタケルヤマトタケル
ヤマトタケルヤマトタケルヤマトヤマトヤマトタケルタケルヤマトヤマトタケル
何回でも何遍でも繰り返しますその間は老けません
ヤマトタケル
さて要らないものは喜ぶ知人に送りつけましょう
役立たずの冠をかぶった醜いハリボテくんは火にくべてお祈りしましょう
ヤマトタケルヤマトタケルねえそれでいいんだよね

2013年10月21日月曜日

アタマとココロ

となりどうしのアタマとココロ
うまくやってはくれまいか

だましあうのはやめにして
いやみいうのはあとにして
うまくやってはくれまいか

となりどうしのアタマとココロ
どちらがえらいこともない

きずつけあうのはなんせんす
たまにけんかもいいけれど
うまくやってはくれまいか

おねがいだから
おふたりさん

2013年10月20日日曜日

雨の日の電車


ニューヨークのミュージアムショップで買った傘をさして歩いている。家から駅へ向かう道。傘を買ったのは十年以上も前の夏。今は秋。
ホイットニーミュージアムのロゴがデザインされた傘。私はその傘の中に収まって、足を前へと振り出している。きょうは、中国人の友だちが誘ってくれた京劇を観に飯田橋までいくのだ。
雨は歩道に川を作っている。喉が渇いたのでセブンイレブンで緑茶のペットボトルを買ってナナコで支払った。すでに靴に水が浸みて靴下が濡れている。雨の日に履くのは初めての靴だった。
電車に乗ると皆、傘を持て余し気味に持っていた。
電車もまた、車内を傘の滴で濡らしながら、濡れながら走っていた。

2013年10月19日土曜日

こわがることもわすれて


すきなことをすれば
あっというまに
いやなことはすぎる
おもいだしたくないことは
ちいさくちいさくちぎって
たきびのなかになげいれちゃう
なにがもえたのかさえ
きっとわからなくなる

ぱぱままは
おもいでのたからばこがもう
いっぱいだけど
これからなにをいれようか
かんがえるのはたのしい
つらいひびは
てをつないできて
なかなかはなしてはくれないけど
いつかじぶんからてをはなせばいい

しあわせになっても
ばちはあたらない
ひとりじめしなければ
このよは
みんなのすみか
すきなことをやって
すきなひとをみつけて
すきなばしょにいればしあわせ

ぱーてぃーもわるくないね
ひとりで
よぞらのほしとかいわするのとおなじくらい
こわがっていないで
こわがることもわすれて
すきなことをしよう

2013年10月18日金曜日

不要なものを


不要なものを
捨てようとした時
近くで
〈私も不要でしょう〉
という声

見ると
目が合った

押し問答

分からない
不要 か
どうか

時が経つ
すると
また
どこからか
〈私も不要でしょう〉
という声

〈不要ですか〉

訊いてみた

答えない
目が訴える

〈きっと不要です〉

不要なものを
放置しているのは
全員

捨てられずにいると
いつまでも
不要なまま

信じてもらえない
ならず者

捨て場所は
ある

ここは広い宇宙だし
置き場所を
変えるだけ

不要なものが
手をつないで
行きたがっている

行かせてあげれば
君も
行ってもいいよ

2013年10月17日木曜日

薄暗がりにたたずむこころ

薄暗がりにたたずむこころ
こんなに重い

丸いパイプの
ペンキが剥げたところに
同じ色を塗り重ねると
すると
そこは新品よりもいい色になる

薄々気づいていたこと
だけれど世間はそんなことばかりだ

十重二十重に
塗り重ねられた空は
今は亡きあの映画監督が作った映画さながら
高い天井から吊り下げてある

私は足もとと頭上を交互に見る

約束ごとのように
背後にお化けたちの気配がするが
気づかなかったことにしておこう

よんどころない事情があるのは
人間ばかりではない

薄暗がりは
私のこころを隠そうとしているが
すでに
隠せない大きさになってしまっている
私のこころ

2013年10月16日水曜日

うつ病の友だち

うつ病の友だちは
うまくいってしまうことが怖い
やらない理由がみつからなくなるから

うつ病の友だちは
会いたくないときに人と会う
ふだんは会いたくても会えないから

うつ病の友だちは
うつ病のせいでますますうつ病になる
うつ病になったわけを知らないから

うつ病の友だちは
さちこってゆうんだほんとはね
だけど私はうつ病の友だちと呼んでいる

2013年10月15日火曜日

飛び降りる


飛び降りる
空から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

飛び降りる
今いる場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

飛び降りる
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

一人で 飛び降りる
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から

飛び降りる
一人で
まだない空白へ
空白という空へ
誰もまだいない
いったことのないなつかしい場所へ
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
いつか空になるその場所へ

2013年10月14日月曜日

ここは誰の庭?

ここは誰の庭?

迷い込んでごめんなさい

でもいま

私はひとり

この庭を楽しんでいる

庭は私のために揺れて

歌って

包んでくれる

芝生に足を投げ出して

花の香りを深呼吸する

やがて日が暮れて

月の光が庭を照らし

泉が囁き続けている

遠くから声が聞こえてくるが

本当なのかわからない

ここは誰の庭?

迷い込んだまま

私はずっとここにいる

不思議なことに

人影はいつまでたっても見かけることがない

自分の影さえまぶたの淵まで探してみても

見つけることができない

2013年10月13日日曜日


無数ってありますか
無数ってどのくらい?
無数の…っていうとき
そこに無数はありますか
たくさんの より多いのでしょうね
いっぱいの よりもっといっぱいなのでしょうね

無数の
たくさんの
いっぱいの

全部合わせても足りないほどの…

…そのあとに入る単語は
無?
無限や永遠が
眺めている 無?

無と一はどちらが多いですか
一ってどのくらい?
全部と同じくらいですか
全部より少ないですか

2013年10月12日土曜日

人である人

橋から橋をわたり
島から島をわたる

人は道をゆき
鳥は空をゆき
魚は海をゆく

人は服をまとい
月はつきまとい
星は欲しがっている

欲は干上がっている
陽はまたのぼり
またはまた閉じられる

ランプの灯はすぐに消え
シマシマの服を囚人がまとい
月々のものをパパが運ぶ

山また山を越え
谷また谷を下り
島から島を巡る

人であれば
あられもない
ヒトガタ
である人

2013年10月11日金曜日

残り火がどこかで

自分では悪口いうくせに
ひとに言われるとすぐおこる
なにもないふるさとのまちに
きんいろの秋の日差しが降り注いでいます

いつかはなかえようとした約束も
私をかばってくれた優しい友だちも
もうどこかにいってしまいました
金木犀の香りが今年も
時のしおりを挟み入れてきます

私はどうやって生きて行けばいいのでしょうか
考える必要がなくなりました
西の屋根に日が沈んで
残り火がどこかでちろちろと燃えています

2013年10月10日木曜日

グレーのスーツを着た女


心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている

木のようだ
風に葉っぱがゆれる
繊毛が光を指揮している

片膝を曲げて
唇をきゅっと締めて
息を凝らしている
自分では気づかずに
いつからかも気づかずに

心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている





2013年10月9日水曜日

家族が消えさらない部屋


遠くに海鳴りの聴こえる部屋
夕日が楽しげにやってくる部屋
家族が消えてしまった部屋

いるのは私だけ
でも私はいないも同じ
息を潜めて
笑いあったあの時の写真を
くり返し引きちぎる

いるのは私だけ
でも
いつでもいなくなるのも私
でも
いるのは私だけ

あるのは愛だけ
聞き飽きた陳腐なアイで包まれているアイだけ
包んでいるのもアイだけ

遠くに海鳴りが消えていく部屋
夕日が楽しげに帰っていく部屋
家族が消えさらない部屋 部屋





2013年10月8日火曜日

先生はあいさつをしましたか


先生は
別れるとき
私に
あいさつをしましたか
死んでいったとき
私に
あいさつをしましたか

先生は
誰に
あいさつをしましたか

私たちが
見ていないところで
だれに
初めまして と
さよなら のあいさつを

キスと
抱擁を

しましたか


2013年10月7日月曜日

不幸どころか


ジャムを塗ったところが
坂道に変わってゆく
そのとき
パンは海に
パンの耳は屋根の内側になる

白かった小麦粉は
海の青色に変わり
もう海になっている

ジャムを塗ったパンは
もう消え去ろうとしている
記憶の片隅に片足を残しているだけだ

エアコンから吹いてくる風は
むせぶほどの潮の香り
ラジオから聴こえてくる音楽は
海鳥の鳴き声となる

私は消え
私のいた空間は
景色で満たされて
不幸どころか
幸せさえ感じない









2013年10月6日日曜日

3人の女性



3人の女性が
橋の上に立っている
こんもりとした常緑樹の緑が向こうから見守っている
そこに水が流れているのか
私の立つ場所からは見ることができない

3人の女性は
橋の上から橋の向こうを見ている
見ながら何かをひそひそと話している
楽しい話ではないだろう
誰かがどうにかなってしまった話だろうか
川の流れを見ながら
この世に生きる辛さを嘆いているのだろうか

3人の女性は
若い娘と友人とその母だろうか
それとも娘と母と老婆だろうか
後ろ姿しか見えないので判別することができない
いつからそこに立っているのだろう
背の低い古びた街並はどんよりと暮れはじめ
橋の上を行き交う人も
やがて夕闇に呑まれるだろう

3人の女性は
その橋の上でかつて見知らぬ男が発狂して
おおきな荷物を川に投げ入れたことを
憶えているだろう
それはこんな季節のこんな時間帯だった

3人の女性は
疑いをもちはじめている
ひょっとしたら存在するのは自分だけで
あとの2人は誰かの幻想なのではないかと
私たちは外からはただ1人にしか
見えないのではないのかと
そして
やがて見ている私のことに気づく
私はこの場を立ち去らなければならない
私は立ち入ってはいけないのだ
3人のいる世界に入ってはいけないのだ

だが3人の女性は
私に近づいてくる
その躯だけを置き去りにして
あの橋の上の欄干から手を離して
私の中に
入ってきた





Girls on the bridge,1901 Edvard Munch

2013年10月5日土曜日

危ないので注意が必要(注意喚起)

5階建ての建物であるが
1階から5階まで全部吹き抜けになっている
吹き抜けの空間にジャンプ台のようにせり出しているのは畳
その畳は床板にガムテープで固定されている
誤って畳の吹き抜け側まで歩を進めると畳は撓(しな)り
ほぼすべての人は落下してしまう
(そのような人を何人も見てきた)

階段は数カ所にあるが
メインの階段は木の椅子を積み重ねて造ってある
この階段の中には
ソファがいくつか交じっていて
また固定が良くないものがあるので
不安定であるため
やはりたまに落下する人がいる

2013年10月4日金曜日

喋っているときには

喋っているときには
聞こえなかった
彼の沈黙が
語り始めた

彼は
夜の雨の向こうで
一方的に
問いを投げかけている

私は答え合わせをしたくて
喋ってみたくなる

時折
雨は降る強さを変え
二人の間に
ざわめきのベールを引く



iPhoneから送信

2013年10月3日木曜日

思い出の宝箱を開けるだけでも

思い出の宝箱を開けるだけでも
あなたと豊かな時間を過ごせるけれど
きょうは新しい場所に行きましょう
箱には入りきらないほどの思い出をまたつくろう



栞が挟んであったページに書かれていた
あなたのこと
ありふれた描写の暗号を解読するには
時間の鍵が必要だと
あの時気づいたのだった
書いた自分にも分からなかったその謎が
ぼんやり立ち現れそうになるが
怖くて表紙をパタリと閉じた

2013年10月2日水曜日

小さなお城

小さな自分のお城を造る
造って門を閉める

小さな自分が住む
小さなお城

ややこしい決まりをいっぱい作り
自らやぶる

好きな人ばかりを招き入れ
世辞を言わせて楽しむ

小さなお城は
古びていって

夕日に染まるお城は燃えはじめ
朝日を背にした姿は炭を隠し

落城の日は
落ち延びようか切腹しようか

それとも別の城に逃げ込もうか
迷っている

2013年10月1日火曜日

夜風の小径の垣根

夜風 夜風
よるのかぜ
お前はたぶん
ただひとりの
友だちだ

小径 小径
頼りない細道
私を抱きしめてくれる
その草の香りの
ふところ

垣根 垣根
昔からある垣根
浮いた言葉はじいて
透き通った
光を映すのか