2013年12月31日火曜日

あなたへ

暗くて寒い部屋
胸のところで缶ジュースみたいに
絶望を握りしめて
息を潜めているあなた
私は
あなたのことばかり
考えています

あなたにも
うれしさにみちあふれた
日々がありましたね

私にもありました

不器用なあなたは
大事なことを
いつも後回しにしないと
その大事さが分からなかった

幸せを放っておいて
人の幸せを願うという贅沢を
たくさんして
そんなに不幸に浸かってしまった

今度はあなたが
幸せになる番です
幸せをつかんだ人の
真似をしても
悪いことはないのです

私もそうしたいと
思っています

2013年12月30日月曜日

たとえられた風

海の向こうから
潮風の香りの手紙がとどく
はりがねの形の平仮名が
洒落た置き物のような漢字をつないで
ほどけぬように
カタカナでとめてある

あなたの見慣れたイニシャルは
渡り鳥が羽を休める場所
私もなんどか
あなたにとまって
羽を休めた

そんなこともあった

地球の違う場所では
朝と昼と夕方と夜とが
それぞれの場所を覆っていて
みな
違う言葉で挨拶をしたりするが
黙っている場合もある

そういう私も
いま黙って
手紙が来るのを待っている

手紙というたとえをまとった
なつかしい
春の風が

2013年12月29日日曜日

てにしたしゅんかんに

てにしたしゅんかんに
あわくきえてしまうものがある
てにしなければよかったと
くいてももうおそい

ずっとてにしたかったものなのに
ずっとおいもとめてきたものなのに

どうしてそれは
きえてしまうのか
てにしては
いけないものだったのか

ほんとうはわたしは
きづいている
わたしがそれを
ほしいとねがうちからが
わたしには
いちばんだいじなものだったと

それがこころにあったとき
わたしのこころは
つよかった

みたされることをまちこがれる
つよいおもいで
わたしはいつもみたされていた
わたしとともにいた
だいじなじかん

2013年12月28日土曜日

初めて知るだろう

あなたの前ではずんでいた白い鞠
私がポケットに隠し持っていた光るパイプ

あなたの髪が匂い立つ真昼のスコール
私の胸で渦巻く怪鳥の羽ばたき

あなたのものと
私のものを
一緒くたにして
たき付けに
くべてしまえ
その穴に
その竃の火に

やがて湯がたぎるだろう
湯に その辺の生命をそのまま投げ入れて
私たちは夜の間中
魔除けのダンス

やがて明け方の太陽が
夕焼け空を背景にしていると
初めて知るだろう
初めて知っただろう

2013年12月27日金曜日

日々の扉

もう気づくことはない
そんなふうに 思うことはなくても
毎日が新しいことの連続だった日々は
いつのまにか別世界を描いた絵のようだ

もう誤ることはない
そんなふうに 考えはしなくても
いつも間違った道に迷い込んでいたあの頃は
かさぶたとなってすでに消えた傷口のようだ

もう「いいひと」にはならない
そんなふうに 決意しなくても
すぐに人を信じてしまう性格は
皮膚に刻まれた曲がった笑い皺のようだ

もう私は私から抜け出したい
そんなふうに 望みはしなくても
そう願った日々の重い扉は
とっくに開け放たれていて出入りは自由だ

2013年12月26日木曜日

なみは

なみはさらう
りくちのものを
そのてにしたものを
うむをいわさず
ひきつれて

なみはつつむ
うつくしいもの
そうでないもの
おんどやいろさえ
同化して

なみは話す
太古と未知のはなし
いみのない繰りごと
その声がこきゅうと
まざりあったあとも

なみはしる
せつなのかがやき
むごんのよげん
なみだがかくまった
ちいさなこえも

なみはあそぶ
ほしとゆきをうずまいて
あさとよるを
ひとつにして
ふところに深海をかかえて

なみはありつづける
わたしがせかいから
しょうめつしても

2013年12月25日水曜日

見知らぬだれかが

心がつかれたら
重荷をいったん脇に置いて
ひと息つきましょう

ぎすぎすした衣を脱いで
日向ぼっこでも
してみましょう

好きな人と過ごした
きらめく日々を
思い出してみましょう

無垢な魂の
わがまま勝手な力を
体の芯に感じてみましょう

そして
あなたのように
心がつかれたひとのことを
見知らぬだれかが
どこかで
心配して祈りを捧げているのだと
信じてみましょう

それは全く
本当のことなのだから

2013年12月24日火曜日

気取らない幸せ

幸せをそっちのけにしておいて
それに気づかない人が多い

そしてそれに気づいたときには
もうその幸せはそこにない

メーテルリンクさんが教えてくれたのは
まだ学校に行く前のこと

ルビー色の気取ったカクテルが   いま
気取らない幸せを教えてくれた

もう学校も出て街をふらついている私に
君の居場所はそこではない   と

2013年12月23日月曜日

ケーキの入った箱を

ケーキの入った箱を
落としてしまいました
やっと手に入れた
大事なケーキ

ケーキは箱の中で
大けがしてしまったでしょう

私の顔からは
笑みがきえました
そのかわりに
涙がとまりません

あなたを守れなくて
ごめんね

強くなりたいと
願った夜

2013年12月22日日曜日

私の中に

泥水の中に落ちた
大事なもの
私の手を引いてくれたから

我に返った

太陽の光を跳ね返して
眩しかった

私の
大事なもの
泥水の中で
輝いていた

泥水の中から
私は
拾い上げた
泥でよごれてしまったけれど
それは
もっと大事なことを
話してくれた
私の中に
残った
その 輝き

2013年12月21日土曜日

記憶

あなたの顔は
なつかしい村

私はそこで
暮らしてた

泉の水で喉を潤し
水鏡でいい顔を作った

防風林をかき分け
砂浜に転がり遊んだ

小高い山に登り
しっとりした驟雨を浴びた

洞窟を覗き込み
コウモリのねぐらを見つけた


あなたの声は
到来(アリバダ)の知らせ

波打ち際に
一万の亀たちが上陸した

月は姿を隠し
影は命を満たした

私はあなたを縛り
あなたは一切の夜の記憶をほどいた

2013年12月20日金曜日

少年


みんなのまえでうたった暗い歌
聴かせたくない人がいた
強いものの陰に隠れ
弱い者をみていた弱い自分
寂しさのうえに横たわり
夢の中で遠くまで出かけた
自分の中の宇宙が自分を介して
外の宇宙と相談している
木の机に刻まれていた知らない人の名前
人差し指が覚えているそのなつかしい人

2013年12月19日木曜日

少し背伸びを

白い椅子に
空気が座っている
ほおづえをついて
私の話を聴いている

もうだいぶ長い時間が過ぎた
私は
さっきとまた同じ話をしている

空気が
あくびした
私は席を立って
改札口へ向かった

カードをかざすと
そこから数字が抜かれて
小さくなった

肩をすぼめていた私は
すこし
背伸びをしてみた

2013年12月18日水曜日

きいろいくまさん

きいろいくまさん
わらっているよ
ひとりぼっちで
ソファーにすわって

きいろいくまさん
なかないでね
わたしもひとり
ゆうごはんはパン

きいろいくまさん
どこかにいこう
だれもこれない
かなたのさとへ

きいろいくまさん
つかれてねむる
わたしもねむる
ほしぞらがいっしょ

2013年12月17日火曜日

ほしいもの

いま食べるための
ひときれのパン
いま喉を潤すための水
いま伝えなければならないことを知らせるコトバ
それをささえる勇気

私はほしい
パンでなくてもいい
水でなくても
コトバでなくても
勇気さえなくてもいい

いま
私がここに生きていくために
必要なもの

それがあれば
宇宙からの問いを
問いのまま受け入れることの大事さを
忘れることはない

流れる水さえ
止めることができる
一枚の写真に収まってしまったように
宗教画の一部となってしまったように
私は風景の一部に
積極的に加担する

黄金比のポーズさえキメて

2013年12月16日月曜日

きょうのぼく

いきているかちがない
しんだほうがましなぼく
しぬかちもない
いきているほうが
なみかぜがたたないぼく

いのちをつながない
かくんやいえもつがない
たちきるぼく

わるいせけんには
だまされてばかり
いいひとをまもれない
むりょくなぼく

ごみのかちもない
にさんかたんそをはいしゅつするぼく

はやくつちとまじって
しょくぶつになりたい
あわれでみにくいぼく

しょくぱんをたべるとき
おいしいとかんじる
そのことをだれかに
プレゼントしたい
きょうのぼく

2013年12月15日日曜日

しにゆくひとは

きょうは、谷川俊太郎さんの誕生日。毎年それを祝い詩を書くのですが、
この詩は違います。


しにゆくひとは


しにゆくひとは
すんでいる
にごりすぎて
すみわたる

みなもになにかをなげいれても
なみはたたず
なにもかもをしまいこむだけ

おともきこえてこない
この世でノイズを聴きすぎたので
もう音はたたない
ただかすかな色彩が
ゆうぐれて
漂ってくる

しにゆくひとは
方向音痴になっていく
三半規管も不要であるから
回路を切ったのだろう

走馬灯のようなおもいでが
走馬灯のように回る
意味が重なってしつこくなっても
意味は無意味に行きついたので
自由だ

しにゆく人が
死にゆきつくまで
あとどのくらい時間があるのか
答える神様はいない

死にゆく人は
死にゆく人になりきり
世間をつんざいて
血潮で線を描く

道に喩えることができる
無粋な比喩は
苦いくすりのように
何かに効き目がある

とは
言えないだろう

2013年12月14日土曜日

奇跡というもの

奇跡は何食わぬ顔をして
あんパンを食べている
ところで
そのあんはうぐいす色であった

奇跡はハッとして
帽子に手をやった
鳥のフンかとおもいきや
なんと金貨だった

奇跡は青空に
軌跡を描いて
行くべき道を
教えてくれたこともある

奇跡なんか起きたことがない
と言っている人がいるが
なんと滑稽なのだろう
気づかないなんて


☆蛇足

(奇跡はあまりに
ありがたがられるので
ありふれた格好で
ドアががたっと開くの待っている

ドアが開いたら
やさしい日差しが
あるいは
微かな風邪が
頬に触れるだろう

そのとき・・・・)

2013年12月13日金曜日

ほしいものができたら

ほしいものができた
買うことはできない
ほしいもののことを
ずっと考えている
ほしいものは変わらずに
そこにある
私は少しずす変わっていっていて
ほしいものは
気配を変えない
落ち着いている
瞑想しているのだろうか
あるいは眠っているのか
私の瞼は重たくなってくる
私はその場所から姿を消す
夢のなかでは
知り合いの女が
腹から血を流してもがいている
近くにその元恋人が立って
真っ二つに割れたiPadで
病院を検索していたがその過程で
ほしいものをみつけ
そちらに夢中になってしまっているようだ
私は女に
大丈夫だからと言って
女のことを気遣いつつ
助けたいと願った
私はこの女をほしいと思うと同時に
ほしいものリストに追加した

2013年12月12日木曜日

あなたがこのよにうまれて

あなたがこのよにうまれて
よろこんだひとはいたが
かなしんだひとはいなかった

あなたがかなしみのなかにいるとき
くうきはバリアをつくって
あなたをまもろうとした

あなたがこのよにうまれて
やがてあなたはめをひらき
うつくしいものをみた
いいかおりをかいだ

それはあなただけのものだ
いま
まちにながれはじめたおんがくも
よくきいてみるといい
それは
あなたのためだけに
かなでられている
おんがくだ



わたしはおもっている

2013年12月11日水曜日

花をだいていた女の子

はなをだいていた
おんなのこ
いつのまにか
じぶんも
おはなになっていました
みんながくちぐちに
きれいだと
いいました

はなをだいていた
おんなのこ
かれていく
おはなも
だいじにしました
みんながくちぐちに
あわれだと
いいあいました

はなをだいていた
おんなのこ
じぶんは
きれいじゃないと
ないていました
みんなはくちをつぐんで
ひとことも
こえをかけませんでした

はなをだいていた
おんなのこ
かれしが
きれいだよと
まいにちきすをしました
みんなはくちぐちに
おにあいだと
いいました

はなをだいていた
おんなのこ
はなの
たねを
まきました
みんなはどんなはなが
さくのか
めをとじてかんがえました

2013年12月10日火曜日

だからとにかく

こそこそと
みちのはじをあるけば
どろみずにはまり
こえをたてずに
ちかづくとちゅうで
ころんでたおれ

みようとすれば
そこにはもうなく
さわったときには
やけどしたっけ

のぼっていくと
みちはなく
くだっていけば
がけからおちた

わたしはさいきんこんなぐあい
だからとにかく
だいじょうぶ

2013年12月9日月曜日

本物

コンサートが終わり
一つの家族が薄暗い道を歩いている
命のかたまり

音楽はしつけ糸
靴はクッション
まとったユニクロのウルトラライトダウンは
隠し事を欺く

足取りは恋心の成れの果て
夜の星空は
寒い風に散る涙を映した偽物

2013年12月8日日曜日

ゆらゆらゆれて

ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています
うごくもののうえ
かわりゆくかたち
うまれてくるもの
きえさってゆくもの
ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています

ゆらゆらゆれる
しんきろうのまどから
みわたします
せかいは
やはりゆらゆらゆれて
そこにたつ
ひとはふらふらしています

ふらふらしながら
どこかに
たよるものがないか
めをまわしてさがしています

2013年12月7日土曜日

鉛筆で

私の考えは
鉛筆で書く
文字を書き間違えるように
考えもよく間違えるから

私の思いは鉛筆で書く
書き終わった途端に変わるから
きらいな人も好きな人に変わるから

私の未来は鉛筆で書く
あなたが消して書き直せるように
未来は独り占めできないだろうから





絵 一之瀬仁美

2013年12月6日金曜日

いつまでもここに

いつまでも
ここにすわっていたい
この席に

いまは
駅前の
クリスマスのイルミネーションを借景に
珈琲の香りが漂い
ほどよく賑わっている
今ふうのカフェだが
まわりのひとが
すべていなくなり
たてものに蜘蛛の巣が張り巡らされ
壁は剥げ落ち窓は割れ
寒風が吹きこんでも
街が廃墟となり
行き交うひとが皆無となっても
私は
この席に
すわっていたい

私の思いは
強く不変であるに違いない
私はいたい場所に
いたい
それが私の抵抗だから
それが私がいる意味だから

2013年12月5日木曜日

あやまち




あやまちをくりかえし
いきてきた
いきてきたといま書いたのも
またあやまち

あやまちにあやまちをかさね
あやまちの塔が建つ

あやまちの塔を自ら破壊して
あやまちの道をひきかえして
あやまちの川のほとり
誤って正しいことを
水にながす

あやまちで
日が暮れて
あやまちの夢にめをさまし
誤った名を呼んで
ふたたび眠る

あやまちをくりかえし
いきつづける
くらしをよくしようとする
だがくらしはよくならない
すべてがあやまちだから

あやまちの躯を
正しいもので染め
正しさというもので染め
中身も
ねこそぎ入れ替えなければ

それでも
あやまちをおかすだろうが
あやまちには
気づかなくなるだろう


2013年12月4日水曜日

みらいのために

だれかのために
はたらいて
なにかのために
しんでいく
そんなじんせい
ありました

すきなだれかに
のせられて
しぼりとられて
わらわれて
ちいさなゆめは
きえるもの

やさしいひとを
ふみだいに
とおくをながめた
ひとがいた
こわれたふみだい
もえるごみ

ながいものには
まかれつつ
いやなおもいは
ひとまかせ
おやまのたいしょう
ごきげんよう

わるいはなしは
わすれましょう
おとくなはなしは
おぼえとこう
やったもんがち
おらがむら

きれいなものに
かこまれて
よごれたものは
しらんぷり
じぶんのよごれは
きづけない

2013年12月3日火曜日

無題の日々



行くところがないから
行きたくない方角を避けて歩いた

落ち着く場所がないから
好きな本を開いては
その中に入っていった

愛するひとがいないから
すれ違うひとが「そのひと」かどうか
確かめながら歩いた

守りたいひとはいたが
その力はないから
ただ守られていた

神様は見えなかったが
神様はきっと
視線を合わせるのが苦手なのだ

と 思うことにした

2013年12月2日月曜日

そんなこともあった



まいにち生きているのが、つらくて、あなたは、もう死ぬ価値さえない、という
生きている価値は、たぶん、もうとっくの昔にあなたのこころから、消失したというのだろうか

白く頼りない翼の鳥が、寒々とした冬のくもり空を、裁ちばさみのように切り裂いていくのを、あなたは、不意に見てしまい、
ああ。わたしも、世の中を切り裂いて死んでいくことができたなら、と、あるいは、生きていくことができたなら、と唱えながら
放課後の校舎で、誰かが書いた「生きる」という詩を読んだことがあったな、と、ありありとその景色や色彩まで、思い浮かべた

その名前は枝に残った枯れ葉
弄ぶものはいない だが弄ばれている
それは 行きずりに誰かが触れたから。その影を踏んだから…
音が交じってグラウンドノイズができあがるときに、それに隠れて
あなたの吐いた息が、あなたの命を吹き消した

そんなこともあった

2013年12月1日日曜日

取扱い説明書

この容れ物
不便なこと この上ない
もっと
いいものがたくさん容れられるようにしたいが
どうしたらいいのか
説明書がない

多くの人が
知恵を出し合って
取扱い方法を考えたり教えたり
話し合ったりしているが
いまだに
明快な答えはないようだ

造ったひとが
ちゃんと取り扱い説明書を
残すべきだったといえるだろう

不親切なことをすると
きっと
バチが当たると思う
それがたとえ神様でも

2013年11月30日土曜日

なにもなくても



なにもなくても
しあわせです
なにもないから
しあわせです
いいえ
ほんとうは
すこしだけあるから
しあわせです
そのすこしだけで
みたされるから
しあわせです
いいえ
ほんとうは
みたされないときも
しあわせです
からっぽがあって
しあわせです
いいえ
ほんとうは
からっぽを
そらにむけているから
しあわせです
あめのしずくも
そらのあおいろも
いれられるから
しあわせです
いいえ
ゆめもやさしさも
からっぽのなかになら
いれられるから
しあわせです
いいえ
いれたものをだすのも
じゆうだから
そんなじゆうが
あって
しあわせです

2013年11月29日金曜日

見たいと思えば

昔のまちを歩いてる自分を眺め
君にはこんな人生があると
教えてあげた

ただ私は コトバを持たず
笑顔も ヒトの眼差しも持たなかったから
夏の日
汗が紐にしみ込んだ帽子の上に
日差しと天気雨を降らせた

雨水は ミチの色を濃くし
道は雨水を蒸発させようと躍起になっていた
道沿いの桑は君を見下ろし
まちのトタン屋根は
楽器のように音を立て
なんと言っていた?

星空
昨日 バスを降りて見上げた
大きすぎるソラに飾られていたもの
冬という季節のつめたい空気で
ぬるくなった夢を
冷やして
絆やしがらみの細い糸を根こそぎ取り去って
大事な線だけを残してくれる
ワイヤレス通信だが
それでいいと感じられるその線は
見たいと思えば

見ることができる

2013年11月28日木曜日

あたりまえのものたち


あたりまえをさがしに
あたりまえをあつめに
でかけてきます

あたりまえにふれて
あたりまえをかんじて
あたりまえをもちかえるために

あたりまえをふくろにつめこみ
あたりまえがくさらぬように
こわれぬように
だいじにもちかえります

あたりまえのものたちは
あたりまえではないうつくしさで
あたりまえにかがやいている

わたしはなみだをながします
あたりまえのなみだなのかは
わかりません
なみだがかれたら
ねむり
あたりまえのように
ゆめをみるでしょう

へやにおいてあるあたりまえのものたちは
なにもかたりません
ただ
わたしがあたりまえのはなしを
かたりはじめました

あたりまえのあなたに
ありきたりのなんでもないひの
ひるさがり

2013年11月27日水曜日

マジックの目

二度と巡り会うことのないひとを
いま失います
くるくるパニック
私を狂わせて

最高のひとを
みすみす手放して
最低の自分を手に入れます

季節変わりの広告が白い歯を光らせて
足元の薄暗い闇の小さなゴミを
見ています

日常茶飯事は
いつでも目くらまし
さあ
言い訳を考えて!
きみが最低の自分を
見捨てずに付き合っていけるように

はい
見極めないで
まぶたに描いたマジックの目で
すべてを見渡せますか




2013年11月26日火曜日

ひとりというとり

ひとりというとり
かわいいことり
いろとりどりの
ふくをきる

ひとりというとり
さびしいときは
ともだちひとり
よんでくる

ひとりというとり
おっとりしてる
とりつくしまの
いえにすむ

ひとりというとり
とりえはなあに
イスとりゲームは
つよくない

ひとりというとり
じぶんがきらい
とりかえたいな
べつのとり

ひとりというとり
ねむっているよ
ひとりもいない
きみひとり

2013年11月25日月曜日

竹とんぼ

あなたが声をかけてくれたから
私はもうこのまま死んでしまってもいいと思った
階段を降りながら
速さはつまみで調整するんだ   と
言っていたあのひとの指先と立ち姿を頭に描いていた
ふわふわの家猫ちゃん
しっとりとこの世を去るチャンスは
そうは多く来ないでしょう
新しい名前のビルの窓の外の梁から
もうじき雨で濡れるだろう固められた地面へと
真新しい竹とんぼを飛ばす

2013年11月24日日曜日

りんりんりんりん


りんりんりんりん
夜の街に
太陽がいないなら
君が代わりに
りんりんりんりん

はい、おしまい

りんりんりんりん
尖った貝殻
貝に見捨てられ
砂に沈んでいく

はい、おしまい

りんりんりんりん
世の中と
仲間になると
混ざってねっとり

はい、おしまい

りんりんりんりん

りんりんりん
りんりんりん

2013年11月23日土曜日

11月の集会




たまにはみんなで集まって
ワイワイガヤガヤやりましょう
知らないひとがまざっても
きょうは仲間にいれましょう

たまにはみんなで集まって
普段のことを話しましょう
知らないひとがきいたなら
おもしろいなとおもうでしょう

たまにはみんなで集まって
好きなことだけ話しましょう
お喋りするのに夢中なら
自然と夕日は落ちるでしょう

たまにはみんなで集まって
笑顔で手を振り別れましょう
また会いましょうと口々に
後ろ歩きで帰りましょう

2013年11月22日金曜日

だれかかくれているのかな


きのかげに
だれかかくれているのかな

いいえ

だれもかくれて
おりません
われたきいろいふうせんが ひとつ
おちているだけ

へいのむこう
だれかかくれているのかな

いいえ

だれもかくれて
おりません
みずたまりが かぜにゆれて
わをかいているだけ

くものうえ
だれかかくれているのかな

いいえ

だれもかくれて
おりません
なみのおとが とおくにきえてく
ばしょがあるだけ

2013年11月21日木曜日

朝が来ています

夜になると暗くなります
暗くなると夜になります
夜になると夜ご飯を食べます
夜ご飯は夜に食べます

朝になると明るくなります
明るくなると朝になります
朝になると朝ご飯を食べます
でも朝ご飯を食べなくても
朝は来ています

朝が来なくても
朝ご飯がない部屋にも
朝が来ています

2013年11月20日水曜日

5ぶんの3

きょうはふだんしていること
ぜんぶさぼって
でんしゃにのればしらないまち
そこからさらにすたすたあるいて
やねをしたにみて
ロープウェイにのれぱ
わたしのすむまちがひろがる
さらにそのむこうにこうそうびる
うみがけしきのいちばんうえに
よこたわっている

でんしゃでがっこうにかよう
しょうがくせいは
かばんにけいたいをぶらさげて
ピンクのけいとであやとりしてた
どんなちえをまなべは
しあわせになれますか
おしえてよ

やまのうえのどうぶつえんの
かこいのなかのしか
おおきなひとみが
わたしをみると
なにかこたえをいいたくなるよ

きょうはいつのまにかひぐれ
わたしははじめてはいったきっさてんで
せかいのりょうしんとあくいについて
かんがえていたが
イチゴジュースをすいこむたびに
かんがえはきりかわっていく

とおくで
きらきらひかっていた
かわのながれ
いま
めをつむるとわたしのなかにあるが
わたしはそれをぬすんできたの?
いや
まもっているだけだ
いいきかせて
みせをでて
じぶんのへやをめざして
いともくさんににかえりつく
そんないちにちの

5ぶんの3

2013年11月19日火曜日

いのち

はねている
はずんでいる
きみのからだ
なかからだれかが
でてきそう

ふくらんでる
ひかってる
きみのほっぺ
いつかほおずえ
つくのかな

みつめている
おいかけてる
きみのひとみ
きづかれたって
へいきなんだね

ないている
わらっている
きみのまいにち
いつまでも
しゅじんこうでいて

2013年11月18日月曜日

進むのだ

失敗しても進むのだ
できないだろうと思っても
やりたいことは覚えてる
どんなに邪魔が入っても
泥道雪道いばらの道も
ズンタカタッタ進むのだ

失敗しても進むのだ
やりたくないと思っても
やりたい気持ちはここにある
煮え湯のまされ干されても
砂漠も荒野も嵐の夜も
気にせず無心で進むのだ

失敗しても進むのだ
心が痛みつづけても
鼓動が打っていればいい
裏切り傲慢ひとでなし
愛するひとから引き裂かれても
あきらめないで進むのだ

2013年11月17日日曜日

くまの子がやって来て

くまの子がやって来て
私の顔を覗きこんだ
不思議そうな顔をしているけど
くまには「不思議」がわかるだろうか

私はそんなくまの子をみていたら
前よりすこし元気になって
元気になったら
途端に誰かと会いたくなってきて
さっさと身支度して玄関から飛び出した

冬の空気がつめたくて
なんだか清められたような気がする
電車に乗ると
私とおなじようなコが
ひとりで揺られている
いち に さんにん

「いちもくさんに走る電車だな」
電車はきっと急いでいるのだ
私は急ぎたくないのに
でも
早く降りる駅に着くことはいいことだ
たぶん

待ち合わせの場所に着くと
相手はまだ来ていなかった
くまさん
あなたのおかげで
私は外に出て
誰かと待ち合わせしている
きっともうすぐ来るだろう
笑顔で近づいてくるだろう

すると
そこに
くまの子がやって来て
私の顔を覗きこんだ
不思議そうな顔をしているけど
くまには「不思議」がわかるだろうか

2013年11月16日土曜日

冬が来る

夜空に雲がながれ
枯れ葉が舞い落ちる冬が来る
コートのポケットに手を突っ込んで
足早に駅に向かう冬が来る

あたたかい飲み物を
すすって飲んでみたくなる冬が来る
過去の思い出を1枚の絵にして
次々とめくっていきたい冬が来る

白い息を鼻と口から吐く
それが恥ずかしい冬が来る
風呂に入るとき
膚がジーンと浸みて湿ってゆく冬が来る

いじめられっこが
いつまでも視界から消えない冬が来る
いつなんのために生まれたのか
母に尋ねたことも忘れ果てた
冬が来る

2013年11月15日金曜日

あのひとが
笑ってくれたから
きょうはいい日

あの人が
怖い顔をしていたから
きょうは悪い日

あのひとが
悲しい顔をしていたら
それはどんな日?

それは・・・

それは
私が少し
期待に胸を膨らます
いい日

悲しさを癒して
嬉しい顔をしたい

私の嬉しい顔に
会いたい

そう思っているのは
私だけ?

もしそうだったら
暗い顔をして
泣いてしまう

その顔に
飛びついてきて
やさしくしてくれる人は
いま
どんな顔を誰にみせている?

その誰かは
じつは
私かも知れない

2013年11月14日木曜日

雪が舞っている

雪が舞っている
窓の外
そこも ここと おなじ
今 なのかな

きょうも
雪が舞っている
そこいらじゅう
風が 巻き上げて
舞っているんだな

未来の夜 みたいに
きょうも
雪が舞っている
それに あった
音楽をかけてみようか

私はひとりなのに
雪が舞っている
だれに 見せているのかな
誘っているのかな
寂しいダンスかな
楽しく踊り狂っているのかな

2013年11月13日水曜日

さてさて

さてさて
しめしめ
より
はてさて
めしめし

おひとよしに
いきている

2013年11月12日火曜日

私が想ったのは・・・

あさ 想ったのは
離ればなれの 友のこと
あのころの瞳のままで
好きなことをはなしてる

ひる 想ったのは
年老いた 母さんのこと
気ままにすたすたショッピング
ぼくにもなにか買ってくれ

よる 想ったのは
まだ見ぬ あかんぼう
血潮がすける やわらかいほほ
きもちよさそうにあくびした

あした 想うのは
きっと あなたのこと
たまに おなじことを思いついて
言う前に 笑ってしまったりして

2013年11月11日月曜日

きみのいのちをまもるのは

きみのいのちをまもるのは
いったいどんなものなのか
さっきたべてためだまやき
きのうまなんだりかしゃかい

きみのいのちをまもるのは
むねにだいてるそのゆめか
すてたとおもったぷらいどか
だいじにもってるおもいでか

きみのいのちをまもるのは
きみはいつからひきうけた
きみがねがってしてること?
ぼくもねがってしてること

2013年11月10日日曜日

雪の覆い

波の真似
雲のうそ
空の人ちがい
道の頼み事

川のためらい
炎の裏切り
人の憎しみ
雪の覆い

2013年11月9日土曜日

どこで 何をして

日向になった場所に
猫は移動して
いい思い出ばかりを思い出す

鳥は
過去を振り返ることなく
未来さえも見詰めずに
風を切り 風に乗り
いま 世界を見下ろしている

緑をまとったこんもりした森は
空に伸びていくと見せかけて
地中深く根を伸ばしている
夜の間も 脈々と

いったい私は
どこで
何をして 生きていったら
いいのだろう

地球は
私たちの重さをその星の命で
受け止めている

乗りかかった舟ではない
生まれるまえから
死んだ後もずっと
一緒なのだ 一体なのだ

蝉が言っていた
地面の下にいたときは
空にあこがれ
空を僅かに飛んだとき
地面の下の命に
恋をしたのだと

2013年11月8日金曜日

躯でも声でもことばでも

躯でも声でもことばでも語れない
愛した人 してきたことも
ぼんやりして
ただ佇むしかないその門の黒い柱の前

ここは壁に囲まれたすみかなの?
夢も裏切りも混ざり 湿った場所
外は闇色 悪魔が赤い舌出してうろついてる
ここにいるしかない?

青い月が道を照らして待っている
そのむこうにかがやく
露にぬれたま新しい大地
草を揺らし 靴音に励まされ
走ってゆく

未来でも過去でも時は止まっている
あの横顔 騒がしい街
去ってゆく
燃えだした塔の上を流れる川という川

白い夜がそっと閉じて
誘ってる
ずっと前から知ってた
自転車乗り捨てたその訳
握りしめた手 背中はあたたかさ
感じてる