2011年12月31日土曜日

一休みする場所について

くまさんと一緒に
歩いて行こう
うさぎさんはさようなら
遠くには火山が見える
あの煙の先の
雲の下あたりに
綺麗な街がある
そこまで行ったら
一休みしよう

うさぎさんが
いるかな

2011年12月30日金曜日

2011年12月29日木曜日

間違って愛してしまうあなたへ

クリスマスツリーは
お正月が過ぎたら飾りましょう
お漬物はセブンイレブンで買いましょう
洗濯物はつららの隣に干しましょう
ナッツ類はすぐに食べましょう
手紙は開けずに捨てましょう
サイドボードは真ん中に置きましょう
石にはホイップクリームを塗りましょう
よく来る客は風呂に入れましょう
ナナカマドの影には隠れましょう
引き受けたら大声を出しましょう
月が出たら酒を仕舞いましょう
苦しい時は正面をよく確かめましょう
ルビーを見つけたら手を叩きましょう
よく確かめたら捨てましょう
組曲はバラバラに並べ変えて聴きましょう
胸を見せたら交代しましょう
線に沿って剥がしたら床に置きましょう
揺れが収まったら潜りましょう

以上が私のアドバイスです

2011年12月28日水曜日

捨てたくない

日本から持ってきた古いパジャマのズボンは破れて色っぽいスカートみたいになった。
靴下の一つは片足に穴が空き、間もなく、もう片方にも穴が空いた。
これらはさよならするものたちだ。

捨てたほうがいいものが
他にもありそうだが
なかなか捨てられない。

とっておくというのが
私の性格だが
煮えきれない思いも同様に
とっておいてしまう。

断捨離というのが
うらやましい。
やる気がないのに
うらやましい。

でも
少しだけ真似してみたいのだ。
少しは気分が軽くなって
新しいものが見えてくるだろう。

だが、
効能がはっきりしても
性格が邪魔をして
思い切ったことはできないだろう。

人からはよく
思い切ったことをすると言われるが
本人は
自分なりに熟慮の末
おそるおそるやっているだけなのだから。

ところで、
ここ数日は試験勉強ばかりしているが
パジャマと靴下のことが気になっているのも確かだ。

捨てる前に写真を撮ろうと思っているが
そうしたら
彼らは永遠の生命を得ることに
なるのだろうか。

過去に捨てなければならなかったものたちが
永遠という駅で
私に手招きをしている。

絶望の谷には何も落ちていない

絶望の谷には何も落ちていない
孤独の影さえ見ることができない
日は暮れかかり
どんよりと冷たく湿った空気が忍び寄ってくる
カビのにおいが立ちこめて
逃れるすべがないことが知らさる

体の向きを変えれば
少しは景色が変わるが
もう前に見た景色は忘れている

いつからここにいたのか
迷い込んだのか追い立てられたのかも分からない

心臓の鼓動と息の音はしているが
その数を数えることはできない
星は出ているのだろうか
ここは屋外のようだが
なぜ空が見えないのだろう

立ち尽くしているより
歩いていた方がいいのだろうか
靴紐がほどけているようだ

耳を澄ますと
静けさに圧倒されそうになる
何という轟音だろう
体の中を甲高いエンジン音をうならせて
黒い輸送機が飛行していく
戦地から帰るのだろうか

目を閉じても
何も変わらないのは何故だ

小学校の授業を抜け出して
掛けていった裏庭の花壇のミツバチが
この世界を想像しているのだろうか

誰かが誰かを呼ぶ声が
上空を通過する
私の名前を呼ぶ人は居ないのか

何らかの変換装置が作動して
私には届かないだけなのか

2011年12月27日火曜日

暮れかけた商店街の道を

暮れかけた商店街の道を
下を向いて歩いていたら
そのこの横顔が
逆光の中で
いきなり光ったんだ

一瞬のことだったけど
シルエットは形のいい鼻の輪郭と
ふっくら盛り上がった唇を浮かび上がらせた
小さな光の欠片となった前歯は
夜空の星になろうとして飛んでいった

暮れかけた商店街は
落ち葉の雰囲気もして
足音にカサカサという音が混ざる
あの落ち葉は何日かまえに
わたしの肩をトンと叩いて落下した落ち葉だろう
商店街に人は多くも少なくもなく
冬のやや冷たい風が吹いている

そのこの額は
頭に優しい髪を湛え
体はそのこをいろんなところに連れ回してきたが
たぶん仲良くやっているのだろう
不穏さはなく
心地よさが湧き出ていた
笑顔はその一つの表現だろう

下を向いて歩くのはやめたいと
ずっと願ってきたが
いつのまにかすっかり慣れてしまい
目には動く灰色の道しか見えなかった
方向さえ決めれてやれば進んで行く道に
特別な思いもかけず
ただ単調になりかけていた

だかあのこの横顔が
逆光の中で
光ったとき
カラー写真が心に焼き付けられたんだ

薄暗い商店街の道は
私の心を映して
あかんべーをして
灰色の舌を晒しているが
その上を
慌ただしく人は通りすぎ
あのこは
いつまでも止まっている

動くことを私の心が許さないからだろう
だが間もなくその壁は破られ
動き出すだろう


これはまだ願いにすぎないのだが
薄暗い商店街のそのこの横顔が発した肉弾は
私の弱った心を間もなく打ち砕き
景色は動き
輝き出すにちがいない

それを見てみたい
岩陰から
こっそりと
できれば
だんだん堂々と

2011年12月26日月曜日

何度も経験している君に

何度も経験している君にしてみれば
それは形式的なことに過ぎず
見ているだけでも飽き飽きしているのだろうが
まだ経験していない私にとって
それはとても刺激的でときめくような出来事なのだ
だから口を出さず見守っていてくれないか
答えや本質を知っているからって
何度も経験しているからって
うまくできるからって
偉そうにできることではない
初めてやるときの気分を
君は思い出せるか
君はYesというかもしれないが
それなんだっていうのだ
私はいま
初めてそれを体験することで
こころが
満たされている
うれしいのか辛いのかさえ分からない
なにをどうやったらいいかは
他人からの受け売りだ
だけど
君のほうがオリジナリティがあるのだろうか
私はそうは思わない
私はうまくできないかもしれない
うまくできるかもしれない
またやりたいとおもうかもしれない
それが形式的なことでも
何度も繰り返しても
いつも飽きもしないで
次を待とうとするかもしれない
そんな私を
君は笑うだろう
でも
そんな君を
私は笑いはしない
私には
そんな暇はないのだ




2011年12月25日日曜日

なにかありそう気分

よくないことがないように
ずっとしんぱいしてします
しんぱいしすぎていがいたむ
おまけにずつうがしてきたよ
ねつもしょうしょうあるみたい
よくないことがないように
やはりしんぱいしています

なにかいいことありそうで
とにかくそとにとびだした
きぶんそうかいスキップし
にだんとばしでかいだんを
あがったところはうでのなか
やさしいあなたにだかれます
とてもいいことありそうで

2011年12月24日土曜日

こんにちは さようなら

こんにちは

マツザキヨシユキです。
どうぞよろしくお願いします。

きっと
あしたも
マツザキヨシユキです
やはり
どうぞよろしくお願いします。

日本という国は
あなたがいるので
日本は素敵な国です。

あさっても
マツザキヨシユキです
日本にいませんが
どうぞよろしくお願いします。

パソコンのラジオからは
日本の歌と中国の歌が
ランダムに流れてきます
中国の歌の言葉で一番好きなのは
つーちー です
あっ いままた出てきました

つーちー は
日本語では「自分」という意味です

あなたは
誰ですか
どこにいるのか分かりませんが
どうぞよろしくお願いします。

あっ 曲が変わりました
とくにいいたいことはないのです。
周りのみんなは
メリークリスマス、バイバイといって
立ち去っていきます

それではさようなら。
さようならは
仮定法の言葉ですか
よくわかりません
それではさようなら、
自分。

2011年12月23日金曜日

待たれている人

いつものところで
待っている

いつまで待って
いるのかな

来たら待つのを
やめるかな

来ないからこそ
待っている?

待たれていること
知らないで

2011年12月22日木曜日

愛しているといえなくなった日 12月

愛しているといえなくなった日に
あきらめ顔で
気取ってみる

誰も見ていないのに
誰かに見られているよう

あなたではない誰かが
あなたに報告してくれそうで

愛しているといえなくなった日に
周りに流されなかった
過去の一シーンを繰り返し思い描く

あなたはそこに居なかったけれど
いつかあなたと出会う日の
準備をしていたあの日

愛しているといえなくなったのには
どんな訳があるの?
誰も訊いてくることはないけれど
誰かがあなたに報告してくれそうで
何もない半端な高さの空を
何も見えない風が吹いてゆくのを
感じるふりをして
耽っている

2011年12月21日水曜日

大丈夫

鳥の巣に
鳥がいて
家には
人が住んでする

出かけていっては
帰ってくる

帰ってきては
また 出かける

引っ越し無用
鳥も人も
我が家があれば
大丈夫

2011年12月20日火曜日

意味があるの?

これ、ほしいの?
持っていたいの?
好きなの?

と訊かれても
意味がわからなかった

その意味が
今は分かるようになり
人に
尋ねることさえしてしまう

これ、いらないの?
欲しくないの?
じゃあ
あげないよ

意味が分かるようになって
分からないことが
増えていった

はおま?
にーやお?
るーぐおにーしゃん
ばーぅおーそんげいにー

答えを
知らず知らず予想してしてしまうことも
うまくやるコツだと
教えられ

言葉の籠を背おって
切り立った霧の崖に登る

ここから
飛び降りるときの話

言葉の意味と私は
どちらが先に落ちていくだろうか

答えは分かりきっている

だんらん
・・・・・
おふこーす
・・・・・

ちゃお

2011年12月19日月曜日

動物園

★ひとつめ

ネコが歩く
熊のあとを

鳥が
羽ばたく
ネコの上で

あなたが歩く
ネコの横を

わたしは
見てる
歩くの やめて

★ふたつめ

猿の山の広場に
いるのは
黄色い木馬と
赤い木馬
緑の木馬

猿の母さん
子どもを
木馬に乗せるかな
あっ
子どもは
ひとり勝手に飛び乗った
木馬がゆらり
重みで揺れた

猿の母さん
楽しそう

木馬は揺れる
お猿を乗せて

何を考えてるの?
揺れながら
木馬は

★三ツ目(小僧)


三つ目は、いつの間にかそばにいる「三ツ目小僧」のお話。


私には
生まれ時から
目が三つある

おでこにある目は やっかいで
髪の毛が 入っていつもかゆくなる

だけど
どの目も大切な目
シャンプーの時は
全部つぶらなければならない
だけどいつも
右の目を閉じるのを忘れて
痛い思いをする

左の目は
一番視力がよくて
天文学者がやっと発見した星だって
あたりまえに見える

右目は普通の目
ふつうの人間の子と同じ

おでこの目は
何が見えると思う

あなたの顔が見えるんだよ
ここに居ないのに


  おまけ
  三ツ目小僧は女の子も居ます。小僧ってよくないと思う。
  パンダより珍しいけど、動物ではないので動物園には居ませんが、見に行くことはあります。

2011年12月18日日曜日

ぞうさんのしょくじ

ぞうさんの
おとうさん
ぞうさんの
こども
おいしい
くさを
いっしょにたべる

やわらかいのは
こっちだよ
ぼくは いいんだ
こっちがすきなの

ぞうさんの
おとうさん
ぞうさんの
こども
おはなししながら
ごはんをたべる

おはなを
じょうずにつかってね
こっちのくさも
おいしいよ
ぼくはこっちを
たべてるの

おいしい
くさを
いつまでたべる?
たべたら
おひるね
するのかな

2011年12月17日土曜日

それが残念

大事なものは見つかりましたか
と 訊かれて
突然気づいた

大事なものなら
すでに持っているはずだと
手放すことはなかったと

と そこまで思って
手放さないでも
向こうから無理矢理離れていったことはあった
と思い出した

だが
大事なものを
自分から手放したことはないはず
と いうことは
今も持っているはず
だが
それは何か

分かった
大事なものが
なんだか分からない自分が
きっと 一番大事なもの

だが
あなたはしらけた様子
ああ そうだ 大事なものは
しらけて
機嫌の悪くなった
しらけていないあなた

そして
あなたが愛する人
あなたが愛する人が
愛しているあなた

そこに
私は居ないけれどね
それが
残念

2011年12月16日金曜日

空の対話

あなたの空は
晴れている?
曇っている?
それとも…
あなたの心と同じように
天気雨の後に
虹が出ている?
心を空にたとえるのは
難しいけれど
空を心にたとえるよりは
いいと思いませんか?
ところで
私の空は
先ほどから
星が輝き始めました
正確に言うと
輝く星が見え始めました
あなたの空と
私の空は
繋がっているはずだから
空を見あげて
話をしましょう
空の彼方には
遠い日の私たちが居るはず
未来の
私たちは
どこに居るのかな
目を凝らして
探してみましょうか
小さい名もない星を
探してみましょうか





なぜロシアが増えてきたの?

最近一か月のベージビュー

日本
1,257
アメリカ合衆国
165
ロシア
75
ラトビア
16
ドイツ
11
ウクライナ
8
マレーシア
3
オランダ
3
中国
2
インドネシア
1

マレーシアは残念ながら少し減ってしまいました。

2011年12月15日木曜日

あなたのことが

寒さは私の味方?
あなたから逃れようとしているけれど
あなたのことが
嫌いなわけではない

寒さを振り切るように
バス停からの道を勢いよく歩いて
帰ってきたけれど
あなたはまだ外のどこかに立っている

私のことを
待っているわけではないけれど

こたつに足を投げ入れてみたり
お風呂のお湯をかき寄せてみたり
パジャマのボタンを全部留めたりしているけれど
私の体が求めているのは
暖かさではない

寒さは
あれから黙ったまま
外に立っている
いや
立っているだけではなく
思い出の場所や
知らない場所を歩き回っている
歩き回っては
誰かの襟からその手を
暖かい背中や胸へ進入させている

私は考えたくても考えられない
正しい行いと誤ちが
天秤の上で釣り合って
どちらがどちらでもよくなってしまう
その天秤さえ
天秤の上に乗っている

行ったり来たりしていて
最初にどっちにいたのか分からなくなった

カウントダウンしているのか
それとも
経過時間を計っているのか
それとも
それは同じ意味なのか

ミカンを剥きながら
柿の種を食べる

あなたのことを思いながら
私の未来予想を繰り返しながら

寒さは私の味方?
やはり
あなたから逃れようとしているけれど
あなたのことが
気になっているけれど
好きなわけではない

    −−−愛しているといえなくなった日

大きなツリーが飾られた北京の新宿

2011年12月14日水曜日

なぜコーヒーフロートのアイスがストロベリーなの?

なんとなくいい感じ

北京の模型を歩く

あなたの客人

あなたは
自分で生きようとしている
私も同じだ

世界もまた
あなたや私を
生かそうとしている

そのような
誰も語ろうとしなくなってしまった
古びた合意が
夜の町にあふれて
ひっそりと佇んでいる

あなたは時どき
その傍らに立って
手招きをする

そこに
引き寄せられるのは
見慣れた普段着の言葉たちだ
これから
詩に仕立てられるのだ

クリスマスが近づいているのに
あなたはいつもと同じ様子だ
むしろ
次の季節の中に入っていこうとしている

あなたは
あなたが作った
クリスマスのことを
思い出す

ワインが招いた
酔いが静かに
迎えにくきている

ちょっと待って!

あなたは
外に向い
声をあげて告げた

あなたの
玄関で待っていたのは
月が落とした影

それは美しい
客人だった

ーーー
谷川俊太郎さんの誕生日に

2011年12月13日火曜日

幸せの顔

幸せになれないよ

あなたは
幸せになれない

なっても
すぐに
不幸になるよ

それに
幸せになっても
気づかないよ きっと

あなたは
幸せの顔を
知らないし
欲深いから

不満をたくさん持っていると
幸せの手を握れない

あなたは
欲望をかかえて
何処までいくの?

心配している人も
そのままにして
息を切らして
なぜそんなに急いで
その山を登るの?

ちょっとくつろぎすぎ?

2011年12月12日月曜日

北京の書店で

12/9 谷川俊太郎さんと田原さんのトークショーのお手伝い。質問者の間をマイクを持って行ったり来たり。楽しかった

未来の日

木の上の方が
明るい緑の葉を風に翻らせて
辺りを見回している
鳥は
木の代弁者として
飛び回っている

あなたは未来の日に
あのときどうしたらよかったのだろう

考えて
いくつもの答えのパズルを繰り返している

未来のことを考えているのに
過去の自分を省みている姿をイメージしてしまうのは
やめられないのだろうか

つよい後悔が足下を覆い
道は見えなくなっているのか

月のない田舎の闇夜より暗い
都会にいるあなたの心の闇

私が掬い出せるのなら
手伝ってあげたい

だが
未来のあなたは
今の私だから
それも無理なことなのだろうか
分からないまま
鳥は
巣に帰って行った

2011年12月11日日曜日

詩の時間

笑顔で別れたあのひとが

いきなり目の前に現れた


 


といっても似ているだけのひと


おまけに二人連れで


とても仲よさそう


 


私はよく見える席に座っていて


二人に見入っている


あっ ビールの泡が


唇の周りに着いているのに


気にせずに見つめ合っている


 


二人は静かに


会話をしている


何を話しているか悟られないようにして


二人の世界を守っているのだろう


 


私はチキンにソースを絡ませて


ココナッツライスと一緒に頬張る


彼女は


煮込んだチキンを箸で割いて


ひとかけらを口に入れる


 


私は大きなベッドの上に横たわった


彼女の足の方から彼女の中心めがけてダイブする


 


彼女は前を見つめて


相手の言葉に相槌を打つが


男は小さな椀に入った麺をすする


 


私は彼女の視線に絡め取られて


言葉を失う


 


勘定を済ませて


歩き始める


2011年12月10日土曜日

ドレミ

笑顔は誰からもらったの
その笑顔で
あなたは
質問する
「なぜ笑っているの?」

わたしは
答えられずに
もう一度笑顔をつくりなおした
だから
二度目の笑顔はにせ物

あなたはもう
わかっているね
あなたは
自分の夢のために熱心で
そのせいで優しい人になっている

わたしはあなたに
「優しい人ね」
といわれたとき
わたしが優しいのは
ほかに何もできないからなのだと
告白できなかった

タイミンクを
逸してね

でも
きょうは
月食の日
おもてには
たくさんの人が集まって
わいわい月食を観たり
写真に撮ったりしながら
この時間を楽しんでいる

月は
優しさがあるのかな
だから
たまには
地球の影に隠れて
太陽に見えないところで
嘘をついてみたいのかな

でも
私たちが観ているのにね

2011年12月9日金曜日

プレゼント


箱の中に


箱が入っていた


その中にも


箱が入っていた


 


いくら開けてみても


中から箱が出てきた


 


18個目を開けたとき


彼は


やっと気づいた


 


箱の中には何も入っていない


箱の外に


彼女からの


贈り物が入っていたのだ


2011年12月8日木曜日

調整日

きょうの顔は
気にいらない
冴えない
色が悪く
覇気がない
眼も充血している

お腹の辺りも
たるんだ感じ
目立たない服着て
当たり障りなく
過ごしたい

食べものに注意して
バランスよく少なめに
そして早く帰宅して
考えごとをしよう

勝負は
別の日にしよう
きょうは
調整日

大事な人から
優しい電話が
来ませんように

2011年12月7日水曜日

中身


ちょうどいい容れ物が見つからなかったのか


その朝
 
その辺に放ってあった黄色い容れ物に投げ込まれた

 


 


そのせいか


私はいつまでたっても居心地がわるい


首のあたりがフワフワし


節々が痛い


 


脳裏をヤドカリの中身が横切って行く


2011年12月6日火曜日

マリン



あなたのことを


きょうは


マリンと呼ぼう


 


あなたのうなじから


海の香りはしてこないけれど


あなたの瞳に


海の底の星空は映っていないけれど


 


きょうは


あなたのことを


マリンと呼ぼう


 


あなたは自分のことを


不器用だと言うけれど


 


私は あなたから


その器用な身のこなしを学んでいる



いつか


告げたことがあった


 


あなたはまた


人間関係が苦手だと言ったけれど


あなたの周りには


いつもあなたを求めて素敵な人が


集まっていた


 


マリン 


と呼んでも


マリリンモンローを連想しないでくれ


いっそプリンや風鈴の方がまだ近いのだから

 

 


きょうは


煩わしいことが片付いて


いま


何が煩わしかったのかさえ


リアルには思い出せないくらいに


脱力し


重力となって地面に落ちている


 


マリン


あなたは


あなたであって


あなたではない別の誰か


 


マリンは


私を


何と呼んでくれるのだろう


朝のベッドのシーツの中で


2011年12月5日月曜日

ほったらかしの落ち葉

あなたはすべてを


あなたは


すべてを知ってしまったから


あとは


知らないふりをすることにした


 


あなたは


すべてをやり終えてしまったから


ほどよく


壊してはまた作ることにした


 


あなたは


すべてを生きてしまったから


あとは


他人の人生を生きようとした


 


あなたは


すべてを愛していたから


無限の星が


いつまでも祝福していた


2011年12月4日日曜日

夕日の質問


池に


わたしの


顔が映っていますか


それは


どんな顔ですか


きれいですか


好きな顔ですか


見つめていて


気持ちが昂ぶりますか


抱いてみたいですか


 


橋に


わたしの影が


掛かっていますか


スマートな影ですか


魅力的な曲線を持っていますか


微かに花の香りがしますか


欲しいですか


影を持ち帰りたいですか


わたしと一緒に


あなたのベッドに


近くの公園

凍っています、池

鳥の巣

鳥の巣二つ

2011年12月3日土曜日

自分らしく生きること

自分らしく生きることを求めるということは
自分らしく生きてほしくないと
言っているのも同じことだと
気づかずに言っているひとは
自分らしく生きていると
思い込んでいる人から見ても
滑稽だが
真に自分らしく生きている人から見れば
見慣れたコマーシャルの一コマに似すぎない
自分らしく生きているひとは
自分らしく生きることを求められるたびに
もっと無名なありきたりの幸せを得て
生きていきたいと思うのだが
相手はそれを許してくれないのを
知っているから
おざなりな答えをするだけである
自分らしく生きたいと願うひとは
自分らしく生きたいと願うことが
自分らしく生きることの
邪魔をしていることに気づかないので
いつまでたっても悩みの中にいる
自分らしく生きたいと思わずに
むしろ自分を殺して生きていきたいと
願っているひとは
自ずと自由な自分らしい生き方をしているのだが
その自由さゆえに不満を持っている
だがその不満が
自分らしく生きることにつながっているのだと
意識することはむずかしい
それは興味がないからでもあるが
生まれながらにして
定まっていたことであるからだ

2011年12月2日金曜日

幽霊が応援している


あなたが悲しむと


そこだけ大地がへこんで


水が流れ込んでくるが


それが涙というものだ


 


水が流れ込んで来るのと一緒に


やってくるのが


あなたのことを大事に思う人の幽霊だ


幽霊だけど怖くはない


なぜなら


幽霊は人には見えないから


 


幽霊といったが


幽霊とは曖昧なものだ


(つまりあなたの「幽霊」と筆者の「幽霊」とは


別のものに違いない。


ちなみに筆者の幽霊は普通の人と見分けがつかない。


ひょっとしたら人間なのかもしれない・・・と思うほどだ)


 


その幽霊はあなたを応援してくれる


ただ便利な存在であるということではない


そこには愛があるから


あなたは


その幽霊に


何となくきづいてしまうことがあるかもしれない


 


幽霊にとって


それは嬉しいことだ


 


今晩


悲しいことがあったとしたら


あなたは涙を零すかもしれないが


幽霊はさっそく近くで


応援しているので


念のためにお伝えしておく


2011年12月1日木曜日

間違えられた天国

三週間まえと
四週間前では
どちらが幸せでしたか

いきなり質問を浴びせられた君は
とっさに四週間前だと答えた

では一か月前と一年前
どちらが幸せでしたか

どうもクイズ番組に出演しているらしいことに
君は気づいた

一年前!
君は自信を持って答えた

では三年前と十年前では?

 


たたみかけてくる


あの


椅子が回ることで有名なクイズ番組なのだろうか



十年前!
ほとんど間髪入れずに君は答えた

まだ質問は続く

では、二十年前と百年前では?

百年前!

と君はすぐに答えて
しまった!
と思った

引っ掛け問題に引っ掛ってしまったらしい
百年前はまだ生まれていなかったからだ

お得意の罰ゲームが待っているだろうか


だが


質問は続けられた


 


では、生まれる前と生まれた後では


 


生まれた後!


君は矛盾を楽じながら答えた



生まれてから、いったいどのくらい?



年の数と同じくらい!

 


ふざける余裕などないのに


なんだか腹が立ってきて


投げやりに答えた


 


では、生まれてすみません、といったのは誰だっけ


 


私の友だち!

 


君が満面の笑みで答えると

会場から笑いが起こり

掛かっていた音楽が盛り上がって鳴りやんだ

すかさず司会者らしき男が言った


 


やりました!


全問正解


地獄行きが待っています


おめでとうございます!


 


大きな拍手と歓声が鳴り響いた


君は天国の間違いではないかと言おうとしたが


雰囲気に飲まれて


笑顔で会釈しただけだった


2011年11月30日水曜日

忘れられた人は


忘れられた人は

缶詰を開ける音に反応して

こっそり

出てくる



あなたが

缶詰を開けたとき

忘れられた人は

あの人の前に立ち

手招きをする



もちろん

誰かが缶詰を開けるたび

別の誰かの前に

忘れられた人はこっそり

立っている



そんなことが

よくあるのだが

気がつく人は少ない



忘れられた人は

苦難をものともせず

隙をうかがっている



何かの拍子で思い出されたとき

忘れられた人は姿を消す



この

忘れられた人の寿命や

生活は様々だが

まだあまり研究されたことがない



私が去年から研究を始めたが

ほかにしている人を知らない

私は

いま忘れられた人のそばにいる

2011年11月29日火曜日

それが どうしたのですか?


毎日が過ぎていきますか


あなたの目の前を


あなたは気づかないようにしているのですか


去って行くものが


あなたに語りきれなかったことを


 


小川が流れていますね


もうすぐ氷が張るでしょう


氷の下を


水が流れるでしょう


氷の上に枯れ葉が積もり


そこを小さなネズミが


渡っていくでしょう


 


月は出ていますか


ほかの星より特別ですね


あなたは特別ですか


あなたにとって


誰かにとって


 


目覚まし時計は掛けて眠りますか


目覚まし時計のことを


忘れて眠れますか


2011年11月28日月曜日

飛んできたボール


飛んできたボール


捕ろうとしたけれど


捕りそこなって


顔面に当たった


 


鈍い音がして


頭の中が釣り鐘のように響いて


重たい痛みが沸きあがってくるのを


おさえられないことは知っている


 


心臓の鼓動に合わせて


痛みが波打ち


地面に倒れて


もだえているところだ


 


駆け寄ってくるのは「仲間」と


近くにいた人だ


間近まで来て様子をのぞき込んで


対処方法を考える


 


ゲームは暗黙のうちに


緊急停止している


 


銀杏の木のところで


いきなり鋭い木漏れ日に当てられた私は


その日のことを思い出した


 


あれからどうしたのだろう


冬の日の公園を歩きながら


私にはつながりが分からなかった


 


ただ


あれは今も私にぶつかってくるあれは


ボールではなく


詩ではないのか


 


それは


確からしいことだった