2012年9月28日金曜日

そして秋

去って行く夏と
入れ替わりにやってくる秋に
挨拶をするために
詩を書かなければならない

しかし夏と秋の輪郭は
意外とぼんやりしていて
一部は混ざり合っているので
明確に分けて挨拶をするのは困難だ

夏は半ズボンの少年で
秋は少し年上の少女だ
ちなみに
冬は未婚の母で
春は幼女だ

夏くん
さようなら
よくやってくれた
おかげでたくさん汗をかいた
叶わなかった恋や
挫折した冒険は来年に持ち越すよ
夏くんには関係ないだろうけど
秋さん
聞こえたと思うけど
そんなわけで
傷跡が染みる
美しい紅葉でなぐさめておくれ
未婚のお母さんがたまに吐く冷たい息で
凍えるまえに
美味しい収穫物をいっぱい食べさせておくれ
セピア色の写真を眺めるより
いますぐ写真を撮るように
アドバイスをしておくれよ

夏くん
秋さん
二人が愛し合いながらも結ばれないことを
私はまえからしっているよ

だから
あの涙に滲んだような
オレンジ色の夕日を
きょうは長めに
灯していてくれないか

2 件のコメント:

  1. 夏くんと秋さんは愛し合っていたのですね。
    少ししんみりとして、静かな感動を覚えました。

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    1. ありがとうございます。私が13歳の時に書いた詩に「そして冬」というのがあるんですが、その続編のような気持で書きました。あの頃の自分とあまり変わっていない自分に多少の驚きを覚えながら。。。

      「そして冬」の最初の2行

      君は柿の実を一つ
      ぼくに落とした

      …初めて雑誌に掲載され、飛び跳ねて喜びました。

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