2014年1月31日金曜日

参加

思い切り力を込めて
黄色い風船を
空に打ち上げようとするのだが
風船は
上がっていかない

なにをしても
うまくいかない私

遠くで
住んでいた家も倒壊する

近くで
愛していた女も発狂する


静かにしていると
動いているものが見えてくるが
動いているもの同士は
連絡を取っているのだろうか

目を閉じて
闇の中に
浮き上がったギモンの答えを見つけようとするが
脳の周りに白い泡が纏わりついて
つい
その蠢く泡に見入ってしまう

胎内で丸まっていたときから
私がしようとしていたことが
いつかきっと明らかになる

風船は空気を内包して
空気の中で浮き沈みする
泡ははじけて会話する
私は耳の奥で「それ」を聴くことで
会話に参加しようとする



2014年1月30日木曜日

あなたは首を横に振る

あなたは首を横に振る
私の方を向いたとき
目が合う

でもまたすぐに眼をそらして
素知らぬフリ

私はため息を一つ漏らす
あなたは
私たちのいる部屋の空気を
かき回して
私に風を送る

押し入れの中に
しまっちゃうぞ
また次の夏が来るまで

2014年1月29日水曜日

じぶんは ひとり

ともだちは
じぶんではありません

じぶんのなかに
ともだちが
いるようなきがしても
ともだちはじぶんではありません

ともだちのゆめをみても
ともだちのきもちがわかっても
ともだちとじぶんが
くっついてうでずもうしていても
ともだちとじぶんは
わかれている
べつべつのにんげんです

もし
ともだちと じぶんのからだが
いれかわって
こころが
そのことにきがつかなくても
じぶんはじぶんだけ
ひとりです

じぶんがひとりであることは
すてきなことです

ふたりがともだちであるのと
おなじくらい
すてきなことです

2014年1月28日火曜日

チョコレートを買いに

雪の日に
女のひとに手を引かれて
田舎道を
チョコレートを買いにいった
古い木枠の硝子の引き戸をあけて
店の中に入った

ストーブの灯が燃えている
薄暗い店内の平台に
赤い包みのチョコレートを見つけた

その包みの中に薄い銀紙に包まれた
チョコレートが入っていて
分け合って
指をなめなめ食べるのだ

そして雪の降る薄暗い道を
女のひとと一緒に
帰っていった

あの女のひとは
母だったのだろうか
あの田舎道は
いまもあるのだろうか

ドラッグストアの店頭で

安売りされているチョコレートに訊いてみたが
もちろん答えてくれない

母に訊いてみようか
いや
訊かない方がいいだろう

甘い謎は
そのまま取っておいたほうがいいに決まっているから







絵 中村ゆき子

2014年1月27日月曜日

小さなとりが

ぼくはだまっているのに
小さなとりが
ずっとなにかをはなしている

ぼくは心のなかで
ひとりごとをいっている・・・ことに
いま気がついた

だまってぼくはひとりごとをいっているのに
小さなとりは
声をだしてはなしている

ぼくは小さな声をだして
いってみた
ーーだれにはなしてるの?
なにをはなしてるの?

小さなとりはぼくを見て
くびをかしげた
でもまた
そっぼをむいて
なにかをはなしはじめた

ぼくはまつげをパタパタさせた
小さなとりはいきおいよく

空へと とびたった

2014年1月26日日曜日

ぼくの せんそう

せんそうがやってきた
うかれたひとはいなくなった
まちじゅうに
なんみんがあふれた
しんだひとは
だれかがつちにうめる

おおきなふろおけが
といれのかわり
こうみんかんは
なんみんのすみか

ぐんたいは
がいこくにでかけて
まもってくれないから
てきがやってくれば
ていこうせず
ころされるかもしれない

やきゅうじょうのフェンスのうらに
ひとがたむろしているのは
せめてくるものから
かくれたいからだ

まだ
そらからばくだんはふってきていない
ラジオもテレビもほうそうをやめたので
がいこくのほうそうを
きくしかない

よるはでんとうがともらないせいで
ほしがきれいだ

エアコンもとまっている
いろんなにおいがまざっている
ちょうへいされたひとも
いるという

ぼくはふつかのあいだ
なにもたべてない
もうそのことさえわすれそうだ

こっかはなくなってしまったようだ
みんなしょくばほうきして にげたのだ
ひとびとは
ただいきのびるだけのじょうたいとなっている
しをかいたり
うたをうたをうたっているひともいない
あんなに はやっていたスマホさえ
もうするひとを どこにもみることができない

ふろおけに
ちんぽをむけて
ちからをこめると
なんと おしっこは
いきおいよく
むこうのふちあたってしぶきをあげた

そういえば
ふつかぶりの
しょんべんだった

2014年1月25日土曜日

なまえ

ぼくはきょうからぼくでなくなる
だから
ぼくの おなまえさん
さらばだ さようなら!

おなまえさん
おもえばいつも
きみを やおもてにたててきた
いつからか
ぼくはきみのかげにかくれて
そのぶんへいおんに
すごしてきた

だがきみは
もんくひとついわず
ぼくをまもってくれた

きずついて あざだらけになり
ふくはやぶけ
くつも かたほうしかのこっていないのに

そこでぼくは けついして
きみをへやのなかにいれ やすませることにした
もういんきょしてもいい
というきもちだ

とはいっても
ネットはつながるし
メールやFaceTimeだってできるから
きみにふじゆうはないだろう

おなまえさん
どうかゆっくり ほねやすめして
ぼくをみまもっていてほしい

こんどは ぼくじしんが
やおもてにたって
じぶんじしんで
せいぎのために たたかうから

せいぎはかっこいいもんんじゃない って
だれかいってたな

かっこわるいのは
ぼくのもちあじだ

そして
ぼくはしぬとき
いちばんきれいな
ほしをおもおう
とほうもなくとおくにあるそのほしは
なまえもないが
うちゅうのどこかでかぼそくひかっている
だれかにみられているか なんてことは
もちろん きにせずに

いまぼくにはみえていない
その ほし

きみにも
みえないかもしれない
なまえのない ほし

2014年1月24日金曜日

まいにち ちがう

おもしろいこと あったなら
ひとにいわずに だまっとこう
しかし いいたく なるもんだ
それがにんじょう しかたない

おもしろいこと たのしんで
がまんできずに はなしちゃう
おとなはそれを やめろって
えらそうに すぐ めいれいだ

おもしろいこと やめたあと
わらいをこらえて ねむったら
きみょうな ゆめを みてしまい
おきたらぜんぶ わすれてた

おもしろいこと なんだっけ
おもいだそうと してる あさ
おもしろいこと やってきた
おならもしちゃった だまっとこう

2014年1月23日木曜日

ギ・モ・ン

泣いたら
 気が晴れた
笑ったら
 淋しくなった
おこったら
 悲しくなった
ゆるしたら
 笑いたくなった
わたしの
 ココロは
変じゃ
 ないですか?

2014年1月22日水曜日

無念な詩

ゆるしてね
ゆるゆるしてて
ゆらしてて

キスしてね
すきまをあけて
すきにして

ねむりましょう
魔性の胸に
無念な詩

2014年1月21日火曜日

詩人のコトバ

下の方で火がチロチロと燃えて
煤(すす)の匂いが立ち込めている
あの大火がまだ続いているのだ  ✴︎

消し止められたものだと思っていた
もう忘れ去られたのだと高を括っていた
だがあの人の哀しい願いごとのように
その火は
いつまでも消え去ることはなかった

あの人は白黒写真のなかで笑っている
時代が繊細な色模様に彩られ
ノイズさえ音楽になったとき
あの人の叫び声は
人々が気づかぬ時に蒼空の彼方から
空に吊るされた高い高いブランコのように
やってきてはまた彼方目指して消えていった

それでも
時代の漆喰の壁に打ち付けられた〈?〉の形のねじ釘は
夕日にただあやしく光って
コトバでないものを語りかけてくる

その問いに私は頷いて
やはり
答えのコトバをもつことはなかった

——吉野弘さんを追悼して



✴︎酒田大火(さかた たいか)。1976年(昭和51年)10月29日に、吉野弘さんの郷里である山形県酒田市で発生した。

2014年1月20日月曜日

満月の次は?

君が向かう方向に
未来とやらが待ち構えているのか

待ち構えているものだから
すでに過去だといま君が言った

済んだことは全て過去にながれさるのか
いま思い出した過去は未来のビジョンだが

明日考える今日と3年後に考える昨日は
いまの私からどちらが近いのか

アラームのスイッチをいれ
予定を確認して
夢を見に螺旋階段を満月の方向へ上ってゆく

2014年1月19日日曜日

冷たい風にのせて

冷たい風にのせて
石の声を伝えよう
水の声でささやこう

冬の日差しを浴びながら
土の香りを懐かしもう
木々の戯れを見守ろう

私はこの地が好きだ
あなたと同じくらい

鉄瓶で湯を沸かそう
ナイフで鉛筆を削ろう
生きた証などなにも必要ない
ただ
いまを精一杯生きて
あなたを抱きしめよう

2014年1月18日土曜日

振り向いて、、、

声? 鳴き声?
が、したので、振り向いてみたら
田んぼの脇の 夜の道
暗がりから 何かの気配が
こっちを見てる

獣だろうか 人? 宇宙人?
森の黒い影の上に
たなびく 雲の上に
三日月

いつもより大きい

いつもより
時間が早く流れている

もう一時間も
ここで 振り向いて
様子をうかがいながら
つい 物思いに耽る私

きつねでございます
油揚げ

本当に 好きなんだ



2011年10月、北京市西部で撮影


2014年1月17日金曜日

曇り空の彼方に

わざと気づかないように
奥の方に仕舞ってあるもの
たまに目が合うと
コトバを失う

こわいかさえ分からないけど
なんだかヤバい気がして
触れずに来た
いままで ずっと

だけど いま取り出して
手にとって向き合わなければ
負けた気持ちで
生きていくしかない

そんなのいやだからと
自分に言い聞かせて
思いきって
蓋を開けた

わざと気づかないように
奥の方に仕舞ってあったもの
私はその中に引きずり込まれて
なにかが碎け散った

その破裂した音だけが
木霊して 羽音のように
バタバタと耳をかすめて
曇り空の彼方に飛び立っていく

2014年1月16日木曜日

どうしようもない子 〜少女編〜

平らで硬かった胸板に
柔らかなふくらみが育って
波打つようになった

制服を着替えるとき
空気がひりっとして
思わず 手のひらで押さえると
指のあいだから
はみ出して
押さえつけないで
痛い! と主張してくる

瞳は蒼空をうつして緑に萌え
流れる雲を追って灰色の哀しみを湛える

12歳の卒業式から
何日が経ったのか
指を折って数え
そしてその指を唇にもっていった

指が唇に触れているのだが
この感覚は
唇から来るものなのか
指から来るものなのか
それとも
どこか遠くからやって来たのか
分からずに途方に暮れる

私の唇は
小さなアンテナ
指はセンサー

私は大きくため息をついて
明るくない 未来のことも
考えていた

2014年1月15日水曜日

まっすぐな道を

足が痛いから
もう旅行なんかいかないと
不機嫌そうに言う母

家にいたほうが安心だし
行きたくないという

つれていってよ
また いつか
楽しい場所へ
ちょっと恥ずかしいけど

そこで
新しい 楽しい想い出を作って
土産に持ってかえろう

レンタカーを借りて
まっすぐな道を
どこまでも 走って

2014年1月14日火曜日

井の中のドングリ

いいもの持ってるね
いつどこでそろえたの?

あなたの周りには
ボクがほしいものばかり
そのまん中にあなたがいるのに
きょうも足早に立ち去ろうとする

いい香りがしている
サラダよりも新鮮だね

風下に立っていると
うっとり眼を閉じたくなる
引力は向かってくる
光を集めてくちびるが香る

あなたはそっぽを向いているけど
ピンク色
ボクは首ったけ
へのへのもへじ
井の中のドングリ

2014年1月13日月曜日

最初の一粒を 見つけたら

最初の一粒を
見つけたら
そうしたら
次から次へと
雪の粒が空から舞い降りてきた
いつの間にか
街じゅうが
雪の襲来に会って
黙らされていく

だれかが声を上げても
空の途中で
凍えて落ちていってしまう

今夜の雪は容赦ない
過去と現在(いま)をつなげようとしているのは
空がひとのコトバに飽き飽きしたから
そんなに私たちは
無駄口をきいてしまった

雪を見張るのを飽きてしまったあとも
雪は降り続いているだろう

海の中でヒトデが時計の代わりに回転して
時を計っているが
それは空と申し合わせをした訳ではあるまい

最初の一粒を
見つけてから
私は
いつかも こんなことがあったと気づきながら
口をつぐんで
コトバにならないように気を遣っていた

あまりにも
身も蓋もないではないか
もしコトバにしてしまったら
私はこの世の牢獄に閉じ込められて
生涯出ることができないかも知れないのだから

2014年1月12日日曜日

なんだかんだが たのしくて

なんだかんだが    たのしくて
きみといっしょが    うれしくて
おひさま    ポカポカありがとう
きみも    とにかくありがとう


絵 一之瀬仁美

2014年1月11日土曜日

どうしようもない子

どうしようもない子
その少年は
自分でも
どうして自分が人と違うことをするのか
普通のことが
普通にできないのか
わからない
いましがたも
飛び出して来てフェリーに
飛び乗ったばかりだ

強い海の風が
甲板の先端に立つ哀しげな少女を後ろから襲って
スカートの裾をなんども捲りあげて
少女は
パンティーのお尻を
その度ごとにさらけ出している

(少女はたぶんそれに気づいているのだ)
少年は高いデッキからそれを見て
独り占めしていたいと願っていた

悲しいことがあると…

悲しいことがあると
人は何をすればいいのだろう

少年は
いつまでもその
パンティーのお尻を見ていた
それは永遠に続く物語のようだ

海の強い風に
パンティーを捲らせて

(何かを忘れただろうか
少女は

きっと
そのことさえ
忘れてしまっただろう)

心では

何かと引き換えに

だが少年は
忘れない







どうしようもない子は
やがてオジさんになって
しみったれた自分をさすりながら
眼だけギラギラ輝かせている

少女は
なんどか暗い海に落ちたが
その度ごとに頭上に空を見て
波を蹴って上がってきた
そしてしたたかで情け深い母となり
どうしようもない子を育てている



2014年1月10日金曜日

薄い革袋

薄い革袋に
荷物をたくさん詰めて
やぶけそうになっても
耐えて
このままやっていきます

肉や骨
毛髪などが一緒くたです
もう
くたくたですが
なぜか
新鮮で
血がかよっているせいか
冬でも暖かいのです

薄い革袋のうえに
布をかけて
紐状のもので結び
定期券を持たせて
電車に乗せます

この
革袋を愛するひともいるのです
革袋はそのときほんのり染まり
甘美な香りに
酔いしれさえするのです

皮から湯気を発して

2014年1月9日木曜日

いないいないバー

ぴたっとキマルそのポーズ
その瞬間
ドキューン×3

素知らぬ顔
アンニュイ
不埒な女なの そうそう

今日は顔の半分マスクして
立ち姿
細枝に可憐な花弁

はんなりキメタそのポーズ
その瞬間
スポーン×3

猫なで声 かすれ声
いないいない
バー×3

ヴァーサス イケメンじゃない
におう におう
メン×3

2014年1月8日水曜日

まだ行ったことのない場所が


まだ行ったことのない場所が
写真の中から誘っている
私はここでこうして生きてきたと
愚痴まじりの味わい深い話を始める

ここ日本は
2014年1月。1週間前からの天気予報が当たって
夕方から雨になった。
耳が寒さの向こうに
聞き耳を立てているのは
寂しいからじゃなく
未来の友だちを捜しているのだ

その写真には
葉がすっかり落ちてしまって
だがもう間もなく芽吹きそうな
広葉樹
雨上がりの濡れた道
その向こうに
雲の小どもが遊びにきそうな池

私は
部屋に帰ってきて
何かを整理するつもりもなく
だだ思いや視線を巡らせ
部屋の中を行き来し
昨日の残りの麻婆豆腐を
暖めて食べた

まだ行ったことのない場所が
誘ってくれているのは
幸せなことだ
そんな場所が
まだ五万とあり
その数は死ぬまで大差なく減らないだろう

私は
まだ行ったことのない場所に
行きたいし行きたくない
だが
ただどこかに
まだ行ったことのない場所があることが
私を生かしている
と言うことができるのだ






2014年1月7日火曜日

そしてあんたは

愛するとは
裂けた傷口を癒すことだ と
あんたは言った

一緒にいると
周りの空気が淀んでくるよ と
あんたは言った

離れていると
あんたを恨みたくなるんだ と
あたしは言った

波風が立たないと
不安と絶望で眠れないよ と
あんたは言った

そして
あんたはいなくなった
嵐の夜が終わった朝の
金色の日差しの矢の中
あたしもいなくなった

2014年1月6日月曜日

星屑 落下星(らっかせい)

得意なことを自慢しているあなたの
眼の輝きが好き

苦し紛れのいい訳を探すときの
あなたの声が好き

海でも見に行くかと
ぶっきらぼうに誘うあなたが好き

階段をひとりで走って上っていってしまう
気遣わないあなたが好き

お前は何がほしいんだと
決めているくせに訊いてくるあなたが好き

あなたが好きで好きでどうしようもない
のぼせちゃってる私も好き

サンダルつっかけて
夜道に星屑 落下星 探しにいこう

2014年1月5日日曜日

忘れてはいけない

冷たい風にあたり
ぼやけた気持ちをしゃっきりさせます
小さな勇気を取り戻します

忘れてはいけないもの
それは
真空の夜空から見守っている星
春風を生む暗い海
あなたが作りだすことができる未来

覚えていてほしいこと
私たち出会えたこと
離れたあとも忘れない
あなたの手の温もりが残って
いまも私を励ましている

2014年1月4日土曜日

あなたと私

電車にとびのれば
すぐに生まれ育った街に行ける
そこには見慣れた道
街路樹
駅前のビル

まだ
あなたと私が一緒にいたころの
思い出が
影のように 遺ってる

もう一度出会いたいなんて言えない
あの頃の私たち
楽しすぎて
輝いていたから

いまは静かに時を
やり過ごしている
その時を
美しい色に染め上げたくて

暮れ行く街
遠く 道の見えなくなるあたり
まだ
あなたと私
ふざけながら
歩いていそうで

2014年1月3日金曜日

足りない気持ちに包まれて

太陽と風の香りがする
ベッドに顔をうずめて
透明な涙を零してみたら
滴はすぐに
見えなくなった

部屋に舞う埃の小宇宙
フッと吹き飛ばして
どの靴を履いて出かけようか
考えてみた

君は遠くて近いから
君はやさしくて残酷だから
ボクは君と無関係に
生きていく

さよなら
さよならをおそれた
愛しい時間たち
もう君がいなくても
足りない気持ちに
包まれて 寄り添って
生きてゆける

2014年1月2日木曜日

夜を待つ朝は

夜を待つ朝は
無骨な薬缶の冷めた水の心

なんのために
生まれてきたのか

思春期は遠く過ぎ去ったのに
青春の蹉跌は
錆びて胸に刺さったまま

心臓が鼓動を打つたびに
これでもか、これでもか、と
痛みを投げかけてくる

夜は眠るもの
朝は希望を抱いで外に飛び出すものと
オトナは教えてくれたけど
むしろ 夜の闇の中にしか
希望は見出せないと今 感じてる

なんのために生きているのか
自己満足のためなのか
それとも他人を満足させるためなのか
そもそも意志や思いなどは無関係なことなのか
大事なことは
口を開けて待っていても
学びようはなかったのだ

夜を待つ朝は
無骨な薬缶の冷めた水の心

2014年1月1日水曜日

君の磁石

君の磁石はいい磁石かい?
何を引き寄せるというのだ
どこまでも渡ってゆける鉄の舟か
太古ににちりばめられた無数の恒星か

俺の磁石はいい磁石はかい?
何を弾き飛ばすというのだ
悪い連中が抱え込んだくすんだ名誉か
夜な夜な取り出して眺める不安と恐怖か

君の磁石はいい磁石かい?
何を預言するというのだ
大事なひとを即座に見分ける秘伝の術か
悪魔に出会わない藪の中の一本の小径か

俺の磁石はいい磁石はかい?
何を言いよどむというのだ
短い命が絶えるまでの残り時間か
悦楽と幸福を得るための生け贄のリストか

磁石は引き寄せ弾き飛ばし
預言し言いよどむ
人の胸の上で
踊り狂って光を反射して