2013年3月30日土曜日

さくらがさいた

さくらがさいたと
さわいでる
さわいでいると
ひろめてる

さくらのしたで
さがしてる
ほんとのしあわせ
そこにない

さくらがちると
さがしてる
つぎにさくばしょ
さがしてる

さくらのはなは
すぐにちる
ひとのいのちは
いつちるの

さくらはなにも
おもわない
ひとがかってに
おもうだけ

2013年3月29日金曜日

束ねた髪の 後ろを歩く 歌詞


束ねた髪を振り子のように
揺らして歩く
月夜の道を

束ねた髪の振り子を見つめ
一緒に揺れる
リズムをとって

束ねた髪が
かすかに香る
あなたはあまい
果物のよう

宙に浮かんで
実っている
あなたはあまい
果物のよう


2013年3月27日水曜日

きのうより遠い朝


滝に向かう道
雨上がりの草が
半ズボンの足に
かゆみを移してくる
何か不満があるのか
ただ遊んでほしいのか

湿った空気でもさわやかだ
早足で歩き始めたら
心臓がリズムを合わせて来た

気持ちはずっと
躯の中にとどまっていて変わらない

滝の音が近づき
好きな「きみ」の鼓動が
香りとともに脈打ち
息が上がっていく

滝壺近くの草は
夜になっても
シャワーを浴びている

私がシャワーを浴びたのは朝
そして
二人で浴びていたのは
きのうより遠い朝




2013年3月25日月曜日

夜の桜


この世には
裏切りも むごいこともあると
あなたはいつか教えてくれました
そのおかげで
私は美しいものを愛でることができるように
なりました

でも
そのことは
だれにもいいません
自分自身にさえ
もう語りかけることは
しないのです

そのせいで
咲き誇る夜桜の下
あなたにそっと感謝する気持ちを
小石のように堀に投げ入れることも
できるのです

(友だちの夜桜の組写真によせて)

2013年3月24日日曜日

花見をしてる間に

花見をしてる間に
かわいい子どもが死にました
花見をしてる間に
なにもかもがなくなってしまいました
花見をしてる間に
騒がなければいけなくなりました
花見をしてる間に
恋人は共有されました
花見をしてる間に
ムラ社会が成熟しました
花見をしてる間に
太郎を眠らせることに失敗しました
花見をしてる間に
次郎は亡命しました
花見をしてる間に
多くの人が死にました
花見をしてる間に
死者が息を吹き返すでしょう

2013年3月23日土曜日

ありそうで なさそうで

たのしそうで
たのしくない

あぶなそうで
あぶなくない

うまくいきそうで
うまくいかない

ただしそうで
ただしくない

あらわれそうで
あらわれない

きらわれそうで
きらわれない

おわりそうで
おわらない

そのはんたいも
そのまたはんたいも

ありそうで
なさそうで

混乱してる
自分が見てる

2013年3月22日金曜日

自転車で行くんだ


自転車で行くんだ
夕暮れの街
休憩室でインスタントのうどんを食べてから
埠頭の横を駆け抜けて
商店街の坂道を下り
バスを追い越して

大好きなあのひとは
私のことは忘れてと
明け方の夢の中に
わざわざ言いにきた

忘れはしない
憶えたままどこへでも
行ってやる

山際の公園に来ると
すっかり暗くなった夜空に
無数の星が現れて
巡っていた

2013年3月21日木曜日

空白に


世界には空白がいっぱいあって詩を書き入れることができる
埋めきれないほどの空白に
幾らでも文字を埋め続けていくことができる
それはたぶん
一生かかっても終わることがない
それはとても
豊かなこと
それはとても
楽しくワクワクすること
幸せなこと

いま
ここに一冊の古い本がある
時代遅れの本みたいだ
古びてくすんで日に焼けて
それでも消え去ることなく
むしろ なおさら
空気の中で輝いている
内側には多くの文字を記して
余白の方が少ないといえるが
ここにも また
私は詩を書く
文字を書き入れることができる
印刷された文字の周りに
デザインの中に

世界は
余白を埋められるのを待っているかのようだ
そう感じるのは
宇宙が広がっていっているからに相違ない

星のインクは銀糸のごとく
月のインクは金糸のごとく
血の色と白色を縫って
洗濯物のように空にかざされていて・・・

2013年3月20日水曜日

4:05

太陽は雲に隠れているが
西の空を見れば瞼が痛い
(好きな人は 嫌いです)
(好きだった人は どうでもよい)
天と呼ばれる場所は
どこもほぼ白く輝いている
全体で輝いているので
影を作ることには不器用だが
暗がりは弱い者が逃げ込む場所として
等閑(なおざり)にそこここにある

ぽかんと口を開けていてもいなくても
どちらでも関係ないという風情で
(嫌いな人は 嫌いなままです)
(嫌いだった人は どうでもよい)
私は暗がりから空を眺めている
なんの情を傾けることなく

人びとは待ちこがれていた春がきたと騒ぎ
私は私の気持ちが騒ごうとしているのを識って
それを抑えようと
躯を椅子に沈めている

2013年3月19日火曜日

やるべきこと

きょう目覚めたら
残り物の餅を食べ
薬を飲み
顔を洗い
身支度をします
そして
水を汲みに行き
そのあとティッシュを買いに行きます
そして何通かのメールを出します
すると夕方になります
あさってには友人と
二時間電車に乗って
彼の契約に立ち会いに行きます
あしたの仕事は鍵を開けることと
きょうできなかったことを
やることです
しかし
やるべきことはたまり過ぎ
忘れていくばかり
一日中働いても
終わりは見えません

2013年3月18日月曜日

洗練されている


画鋲が上履きに入っていたので
それを取り除き
ソックスを脱いで
血の小さな珠を確かめて
また履いた

分かりやすい事柄だ
たいして汚れないところが
お気に入り

悪臭もしないし
ぞうきんや
洗剤でぬぐう必要はない
なにかを買い直す必要もないし
病院に通う必要もないから
これはいい

なかなか洗練されていると思う

2013年3月17日日曜日

かざぐるまよりもっとよく

かざぐるまよりもっとよく回るもの
キュートなあなたのそのカラダ
やわらかく弾み
まわるまわる
ころがりまわり

ホームで行き交う
あなたに似たひと
似ていないひと
制服のひと
背が高いひと
髪が長いひと
スタイルがいいひと

次々話しかけてみる
みんなそれぞれ違う反応
びっくりするひと
笑顔を作るひと
いぶかしがるひと
逃げるひと

私は歩いていく
何かをぐるぐる回しながら
飛んでくる眩暈
春風になびくフレアスカート
胸の膨らみの斜面に弾かれる日差し

2013年3月16日土曜日

きみのいいわけ

きみのいいわけはききあきた
ときみはぼくにいう
そのことばもききあきた
とぼくはきみにいう
ぼくのいいわけはいつもちがうのに
きみのいうことはいつもいっしょ
きみはぼくのいいわけをききあきて
きみのいいわけをかたる
ぼくはきみにきみのいいわけはおもしろい
という
きみはぼくに
そういうきみこそおもしろい
という
あなたはわたしたちのことをどうおもう?
わたしはあなたのことをしらない

いいわけだらけのきみにいう

2013年3月15日金曜日

悪魔のいた部屋

夕焼けの日差しと一緒に
部屋の中に
悪魔が入ってきた
小さい鬼のような悪魔だ

私は彼と遊ぶことにしたが
いつ噛み付かれるか分からないので
注意しなければならないが
注意が追いつかない

頭の演算スピードは
ほとんど固まってしまっている

悪魔はそれを見透かして
仕掛けてくる

私にこの部屋を明け渡せと
遊びながら
無言で仕向けてくる
頭を働かせないことで
分かることがあるもんだなと
いま
これを書きながら思う

行間に悪魔を見つけるが
読んだ人の心に
もう
紛れ込んでしまった

2013年3月14日木曜日

そこに あいつが


髪を切りすぎ
眉もそりすぎ
お金もなくなり
すっからかん
さっぱりしすぎて
こりゃあかん

ろんろんろんろん
ろんろんろん

そこに あいつが
やって来た

2013年3月13日水曜日

きっといつまでも


指紋の溝は
いくつあるの

僕の指先
花びらに似ていると
ママは言ってった

やわらかさを知りたくて
唇にあてて
確かめた
しっとりと暖かくて
愛おしくなった


一まいの花びらは
季節からの
やさしい手紙

私のことを
応援してくる

生まれたばかりの私が
胸いっぱいに
すいこんだ
あの花の香り

きっといつまでも
わすれない

2013年3月12日火曜日

もし私がいなくなったら

もし
携帯が繋がったら
救えた命もあっただろう

もし
一人でいたら
生きながらえた命もあっただろう

もし
おかしいことをおかしいといっていれば
多くの命を見殺しにしなくてもよかったこともあっただろう

もし
心ある人が指図していれば
未来の命まで奪って仕舞うことはなかっただろう

もし
私がきちんとしていたら
そのことを伝えられただろう

もし
あなたが私をしかってくれたら
わたしはあなたもしかっただろう

もし
時間を戻せたら
私は繰り返さないだろう

もし
私がいなくなっても
あなたがやっていただろう

2013年3月11日月曜日

墓碑銘

辛い思いをした
誰かさん
その辛さを
どうやって耐えたの

大きな声で笑い
丁寧にお礼を言う
おばあさん
どうして
あなたは優しい人なの

すべてを失ったと言われている人
いちばんいいものが
残っているよね

私もすべてを失ったと言われるが
いちばんいいものは
残っている

ただ
それを認めたくない
困難に立ち向かう
自信がないから
勇気が湧いてこないから

飛行機に乗っていました


飛行機に乗っていました

乗務員が私のことを気遣って
助けに来ましたが
命綱をつけているので
万が一風に飛ばされても大丈夫です

翼に乗るのは初めてでしたが
怖いことはありません
しかし離陸のことを思い出せないので
ひょっとしたら恐怖のために気を失っていたのかもしれません

乗客は私を客室に戻せと騒いでいます
翼にはパイロットも乗っていましたが
私は客なので
客室にいるべきだと
私以外の全員が考えたのでしょう

私は小さな窓から押し入れられて
客室の自分の席に行きました

そこには日大芸術学部放送学科の1年後輩の女性が座っていました
窓側が空いていたのでそこに座ると
周り中が日大芸術学部放送学科の出身者でした

アナウンスは「左手前方に富士山がごらんいただけます」と告げるが
それどころではない
私は後輩や同窓生と話さねばならない
この理不尽な世の中について

みな
浮き足立っている
昼下がりの飛行機
旅は始まったばかり
関西方面は
黄砂の影響があるという
あなたの存在が心の真ん中にある
目の前にいなくても
あなたを思える幸せに 私は
満たされている

2013年3月10日日曜日

小さな夢


甘いクッキーをお口に入れると
甘い願いが一つかなう
小さな夢で
見えないけれど

ビターチョコクッキーお口にいれると
苦い思い出を一つ忘れる
かすかな記憶で
気づかないけれど





2013年3月8日金曜日

たい焼きを焼いています


たい焼きを焼きます
一日900個のたい焼きを焼くのが私の仕事です

900個のたい焼きは
買っていった人を
よろこばせていることでしょう

私はおいしいたい焼きができるよう
いつも考えています
たい焼きを焼くとき
私は生地と餡のバランスと
焼き加減を考えています

繰り返し考えています

鉄板に向き合っていると
顔が熱くなり
休みなく立って焼いていると
夕方には腰や脚が痛くなります

それでも
一日焼き終わり
バスで帰宅するとき
つり革につかまりながら
私はたい焼きを食べる人のことを思うと
疲れさえ心地よく感じるのです

私は休み無く
たい焼きを焼いています
休むことがいやだからです
休みの日があれば
休みの日に何をすべきか
考えなくてはいけなくなります
それはたい焼きを焼くことを
穢(けが)すことになります

私はたい焼きを焼くことが大好きで
天職だとおもっています
それで週5日はデパートで焼き
後の二日はスーパーで焼いているのです
私はたい焼きを食べることも好きですが
一日1枚しか食べません
贅沢に思われるからです
たい焼きを食べるとき
私は神聖な気持ちになり
理想的な家族像を思い浮かべます

私がたい焼きを焼き始めて
長い年月が経ちました
これからも
いいたい焼きが焼けるよう
一生懸命やっていきたいと思います

たい焼き焼きの境地に達し
さらにその道を極めつつ
焼いていきたいと思います

私の焼くたい焼きは
デパートで90円
スーパーでは120円で売られています
これは黒あんの値段です

2013年3月7日木曜日

理解者


ぼくのそばに立って
石を投げてくる人がいる
ボッチャン
ぼくを呼んでいるのはだれ?

わたしのところへ来て
椅子に座って泣き出した子
泣き終えると鼻をかんで
自分を励まして去っていった
あんたはだれ?

池のほとりに佇んで
にんまり笑っている詩人さんは
だだ一人の理解者

2013年3月6日水曜日

すり鉢状のあの子

すり鉢状のあの子に
注意しなければならないと
彼は
思っていたに違いない

落下してきたものは
すべてすり鉢状に固められてしまう
人や宇宙の念にしてもだ
いままで見ることが出来なかったものさえ
すり鉢状に固められてしまうから
物理学者が気づいたら
あの子はひっぱりだこになるだろう

すり鉢状がいつから始まったのか
あるいは始められたものなのかは問題ではない
未来に向かいすり鉢は開かれている
誰かが伏せてしまわない限りは
すり鉢は終わることがないだろう

彼はなで肩の肩をさらに丸めて考えている
すり鉢の謎に
何故近づくことができないのかを

2013年3月5日火曜日

うつ病の友だち



ナイトガウン羽織って暖炉の脇にいる
シャンデリアの照明
湖のほとり
宝石箱や金庫や引出しの棚に納まりきらない宝飾品
財産はそこここに放置され
見張っている者はない

オーディオルームの4Kのディスプレイで
特注でリマスターしたという古い映画を流す
観客は一人だが
もう飽きて
浴室のジャグジーで足の爪の模様を眺めている
そして眼を瞑って
パパのことを思い出すことにした


誰かいい人と巡り会いたい と
月並みな言葉のあとに出てきたのは
車が欲しい というフレーズ
いつも願うのは功名が欲しい という内容だったが
きょうは違った
車が欲しい理由は
いつでもどこにでも出かけることが必要だと思い立ったからだが
すでに思いは
そこにはなかった


うつ病の友だちを思いやって
鬱々としていた
うつ病の友だちは
詩と写真の才能を持っていた
ついでに育ちもよく人気者でお金持ちだった
うつ病の友だちは
何でもよくできた
うつ病さえ克服してしるかもしれなかった

思いやる必要はなかった
思いやる必要はなかった

2013年3月4日月曜日

ストリート・ストリッパー


ストリート・ストリッパー 
スレスレのスリットにノースリーブ
ストレスレスな シースルー
スレンダーでスイート&セクシー

2013年3月3日日曜日

朝 私の 1


戸がガタガタいっている
戸はおはようと言えないだろう
私はおはようと言わずに書く
おはようと言う相手がいないからだろう

戸はガタガタいうのをやめた
風が止んだからだろう
私はカタカタとキーを打っている
ガタガタいう必要がないからだろう

朝は忘れずにやってくる
私はよく忘れるのに朝は忘れない
朝は目覚めを与え闇を追いやる
私は朝の光に追いやられる人間

2013年3月2日土曜日

いいわけ

イイワケを考えているんだね
いいいいわけがみつかったかな
いいいいわけがみつからないと
いいわけをしなくちゃならないよ
いいわけは得意じゃないんだね

2013年3月1日金曜日

逆光の少女


最後のチャンネルを切ってしまったら
戻って来れなくなるかも知れない
それでもあなたは
かつて世界と結んでいたチャンネルを
いとも簡単に切ってしまった

これで私の方からあなたを探すことは
永遠に たぶんできない

あなたは遊びのように
無邪気な笑みさえ浮かべて
チャンネルを次々と切った
その瞬間ばかりは
人には見せられない鬼の形相で

ひな祭りに
桜餅を食べてお祝いするなどということは
呪い歌の中にしか既にない

スケート靴で氷上を走り抜け
逆光の湖上にはもういない

鬼の香りだけが
少女の血を現していた