2011年1月31日月曜日

難しい質問

世間はいいものですか
爽やかな風が吹いていますか
励ましあっていますか

大事なものをみんなで守っていますか
強欲な人に牛耳られていませんか
ズルをする人は損をしていますか
夢を持って生きてゆけますか

嫉妬ややっかみに苦労させられませんか
心ない罠を仕掛ける人はいませんか

子供の笑顔が守られていますか
人の気持ちや尊厳が大事にされていますか
理不尽なことに埋め尽くされていませんか
敵と味方に分類ばかりしていませんか

自分だけよければいいという行いが蔓延していませんか
無意味な破壊行為を繰り返していませんか
欲望にまみれて幸せを見失っていませんか

自分を本当に大切にしていますか
きょうを素敵に過ごしましたか
明るい明日が迎えられるように

2011年1月30日日曜日

ポッカリあいた穴

詩人が青空に白い雲があると言う
それで私は空に雲があることを思い出して
見上げてみる

空は青い
その言葉のせいかどうかはわからないが
確かに空は青いと思われた
その青空に
雲が幾つか浮かんでいる

詩人は
雲は地球に張り付いているようだと言う
浮かんでいると言うより
張り付いていると言う

なるほど
雲は地球にへばり付いている
そして青空は消え
群青の宇宙が広がっている

詩人はつづけて言う
宇宙は飲み込めるよ
大きく口を開けなくても
小さなカプセルだから大丈夫と

私は手渡されたその小さなカプセルを
唾と一緒に飲み込んだ
すると一瞬にして私は
宇宙の外側になってしまった
自分の意思が宇宙を形成しているようだ
星々の運行やその色
生命の生き死にも

詩人は言う
私は詩人ではないと
私は旅芸人だと
そして もう
旅の一座となって去って行こうとしている

私は引き止めたかったが
引き止めることはできないと感じていた
さびしさが溢れてきた

私は私にあいた穴から
青空を見た

ポッカリとしていた
穴から覗いた地球の風景

2011年1月29日土曜日

影絵の物語

めちゃくちゃだったのか

めちゃくちゃだったのだろうか

わざとめちゃくちゃにやったのだろうか

切り絵の抜け殻のように
あなたのかたちが
夕空に残っている
風にたなびいている
当然のように
昔からそこにありました という顔をして

これは現実の景色なのだろうか
華奢なあなたの比喩として
思い余って
現れているということなのだろうか

胸では鈴がなっている
場違いな雰囲気を醸し出して

めちゃくちゃになる
めちゃくちゃになっていく
どんどんめちゃくちゃになっていく
めちゃくちゃになって
あるものは空に飛んでいく
あるものは穴の中に入ってしまう

誰かに相談してみようか
そうするべきなのか
それとも
成り行きを見守るべきなのか

またたくまに
夕空に星が瞬き始める
そして風が止む
そしてまた風が吹く
当たり前のように
きのうからそうしていました と言いたげな感じで

ああ
またもや
めちゃくちゃな映画が始まってしまう
もう100回以上はやっている

観客を取り残して
語りたいことだけが
語られていく

2011年1月28日金曜日

見つめられている

線に沿って
刃をあてて切るのですよ
定規を当てて

あなたは先生のように
やさしく命令した

しかし
まっすぐに切るのはむずかしい
いっぺんで
し終えようとするときには
いつもうまくいかないことばかりを想像してしまう

刃は進む
叫び声を巻き込みながら
大事なものを絶ち切りながら
そのためか
刃は戸惑い
よどみの吹き溜まりを作る

こんなことをしなければよかった
してきたことは逆さまから見ても
そこに佇みつづける

溜息とともに
気を散らす
切り取られたものが
私を見つめている

2011年1月27日木曜日

白いそれ

灯台?
岬に突き出たセンサーは
敏感すぎて
人の
声ともつかない声まで拾ってしまう
巨大なパラボラを携えている訳ではないけれど
たまに
何かの電波を受信してしまい
その都度あたふたする
表情をあわてて取り繕おうとするのだが
おそらく
誰かに監視されている訳ではない

灯台のようなそれは
何のためにそこにあるのだろう
ひょっとして
灯台自身の一人芝居?

月の夜に
カメラの感度をあげて
それを撮影してみた
シャッターボタンがぬるくなるまで
指を離さなかった

凪いだ波は無数のカイコが分泌した絹
群青の大地の崖の上に
白くなめらかに浮かぶ
立ち上がったそれ

私は黙れば黙るほど
饒舌になる
誰かがニヤリと嗤い
私は灯台の灯に照らされる

2011年1月26日水曜日

亡命詩人

陽炎の向こうに蜃気楼が現れ
その彼方にオーロラの光がたゆたう
地面を見つめていた私は
手にしていた文庫の詩集を手のひらで丸めて
現実のロープにつかまろうとしていた

足元に霧が流れ
何かの音が木霊し
小高い山の頂が
浮き沈みする

あれはいつのことだっただろう
時の流れを無視した不確かな記憶が
目を瞑っていない瞼の奥で渦巻いて
挙動不審にさまよっている

私は手にした詩集の1ページを開く
そこには詩を編み出そうとしている人物が描かれている
誰なのかは分からない

本を閉じてまた開くと
そこには詩が刻まれているだけだった

2011年1月25日火曜日

何かにかき消されてしまったようだ

朝露か夜露かは分からない
澄んだ空気の中に出ていくとみんなの顔があった
草っ原の匂い
水道の蛇口から勢いよく水を流し顔を洗い歯を磨いている
その向こうでは森が佇んでいる
その上はもうすでに青く輝きだした空だ
きのうの夜はたくさんの星が瞬く夜空だった
今は太陽の明るい白色が
空の一点から
空はもちろん
世界中を明るく照らしている
いつも制服のみんなは思い思いの格好
ミチコさんの柔らかい色の服も
ミツエさんのチェック柄のシャツも
この風景の中にある
輝く草花のような未来
過去も未来も風車の羽の一枚
そう思える不思議な時間
小峰が出てきた
僕は精一杯格好つけてあいさつをしたが何かにかき消されてしまったようだ

2011年1月24日月曜日

自由

きょうも地面に90度の角度で立っている
先端に頭を乗せて
風を受け青空を見上げて

足には革とゴムで囲いを作り接地点を守っているが
頭には細い糸状のものを生い茂らせて
熱や予期せぬ衝撃から守っているが

これら守りのシステムは急誂えのもではなく
生物の進化過程でようやくできあがったものであるので
本人のものではあるがその功罪からは本人は自由にしてあげなければならない

2011年1月23日日曜日

椅子を噛む

椅子を座る
椅子をいじめる
椅子を噛む
スイカを噛む
椅子を居座る
椅子を吸う
スイをイカ
貝を吸う
スカを椅子
かすをイカ
貝をイカ
イカを買う
貝を飼う
浮きを飼う
貝を浮く
櫛を生む
ムウを住む
スカを死す
島をスカ
カウを飼う
羽化を変え
貝を知れ
蓮を履き
キレを透け
スハを履き
椅子を酢の
キスを住む
炭を書く
破棄を聞か
騎士をして
蓮を着せ
スリを強い
椅子を噛む
椅子を住む
スカに住む
椅子を知る
椅子を知れ
椅子を踏め
椅子を噛む

2011年1月22日土曜日

あなたは

あなたは汚れない
あなたは瞳に反射する光
あなたは拒まない
あなたはTシャツの上で踊る絵
あなたは馴れ合わない
あなたは氷上を進む観測船
あなたは繰り返す
あなたは季節を変える風
あなたは流されない
あなたは彫られた表札の文字
あなたはためらわない
あなたは風見鶏
あなたは諦めない
あなたらしくあることを

2011年1月21日金曜日

詩を生むあなた

あなたたが詩を生んでいる
影に隠れて
耳を澄まして
詩が生まれ落ちる音に
聞き耳を立てている

詩は
わたしの指先から文字になり
その魂のようなものを
床に落す
木のテーブルも椅子も透けて通って
机の上に文字だけになった詩が残る

あなたは口もとに笑みを浮かべて
瞬きを少なめにして
詩の誕生を神妙に受け止めている
あなたが詩を生んでいるのに
あなたはそれに気づかない

わたしは
あなたが詩を生んでいることを
あなたに伝えようとするが
いつもあなたは
わたしのまえにいない

2011年1月20日木曜日

コーヒータイム

「ウニ」と書いてあるタンブラーで
きみはコーヒーを飲んでいる
窓辺の席で脚を組んで
手にはケータイ
誰かを待っているような表情で
しっとりと艶かしい

グロスのルージュは
取れにくいもの
髪はやわらかなブラウン
何度か染め分けてやっとお気に入りのコンディションになった
向かいのスツールにはバックとコート
テーブルには色とりどりのアンティークグラスビーズがちりばめられたペンと
手帖

一つ溜息をつくと
だれかに溜息を見られなかったか心配になって
周りを見回した

そしてウニを
またもや唇にあてた

2011年1月19日水曜日

受け持ち

自分というものを受け持ってどのくらいがたっただろう
学校の担任の先生と共同で受け持っていた時もあったが
そのころは自分を「受け持っいる」という感覚はなかったような気がする
いまでさえ なんとなく受け持っている気がしているだけで
実際に受け持てているかどうかは冷静には判断できない
自分とはなんだろう
他人や知人とどう違うのだろう
入れ替わったらどうなるのだろう
朝起きなかったら何か変わるだろうか
生活圏から消えたら何か変わるだろうか
自分が自分という担任の元でもがいている
また担任が聞き分けのない自分に手をこまねいている

ただただ卒業式が待ち遠しい
その後のことは別にして
自分とさようならできるのだろうか
担任と卒業生みたいに笑いあって涙さえ浮かべて

2011年1月18日火曜日

次に

紅茶を飲むわ
カップを温めて
奥から綺麗なアッシュトレイを引っ張り出して
煙草に火をつけるわ
カーテンを開け
風を入れる
寒いけど
ソファーに腰掛けて
音楽を選んでかけてみる
好きだった曲に続いて
別の曲が流れる
好きだった人の次に
別の人が現れるみたいに

2011年1月17日月曜日

おいしいものを

僕が見ていないと
あなたは苺ショートの苺をまず先に食べてしまう
丸ごと口にいれ頬張って食べる
その表情はとても迫力があり
愛らしい
人生の酸いも甘いも噛み分けた自信に満ちている

美しい顔立ちのあなたが
行儀良く
僕の前に現れる
僕は愛している
整った笑顔であなたは笑う
笑ってトムヤムクンを食べる
生春巻を食べる

僕はこっそり口元を盗み見る
逆に盗み見られていることにも気づかずに
あなたはお待ちかねの
マンチュアムをたべる

2011年1月16日日曜日

LOTOで人生変えますか

LOTOで人生変えたローっト
と甲高い叫び声がテレビからこだまする
日本中のテレビのスピーカーを使って
地響きのように人々の住むこの島の隅々にまで到達する

CMの男は
屋根をぶち抜いて家でキリンを飼うだけでは飽きたらずに
今度は「雪降らし機」なるものを購入して
友達と雪遊びをするらしい

みずほ銀行は
その宝くじを売るため
山手通り沿いの高層ビルの支店の一角にに小さな店舗を設けている
雨が降ると水浸しになる道路の奥まったところにその売場はあり
みずほ銀行はその辺りに自転車を止められるのを嫌って
プラスチックの黄色い鎖を数十メートルにたって張り巡らせ
空き地を作っている
歩行者はやむなく水たまりの道路を歩いて鎖の切れ目から乾いた空き地に入り
くじを買う
くじ売り場にはスピーカーが設置されていて
空き地越しの道を歩く人に「あなたも億万長者」と呼びかける
こんにちは、西田敏行ですというタレントの挨拶で引き付けて

CMによると
億万長者は倍増中で億万長者を作る機会を開発したという
「けっこうあたるぜナンバーズ」というあやふやな唄もヒットさせたという

新宿西口地下の宝くじ売り場は
当選金の払い出し業務は早めの時刻で終了し
販売だけは引き続き行う
11時を過ぎると辺りはホームレスと呼ばれる人々でごった返し
その合間を家路に向かう人や遊び場を移動する人などが通り過ぎる
公衆トイレにはトイレ内でいかがわしい事をしないようにと貼り紙がされている
このトイレも深夜は閉鎖される

宝くじは日本中で売られている
テレビ局は宝くじのCM獲得に熱心だ
国民的スターが宝くじを宣伝する
国民をその気にさせて宝くじビジネスを成長させるため

人々は思う
宝くじが当たったら人生が変わる
お金にはその力がある と

2011年1月15日土曜日

秘書と世界 -序説-

秘書と世界の境目に衣服がある
秘書寄りにはランジェリー、ストッキング、キャミソール、
指には指輪、首の周りにはネックレスがある
世界よりにはブラウス、ブレザー、スカート靴などがある。
秘書の顔と世界の間にはファンデーション、唇はルージュ、爪はエナメル、ビーズ
混ざり合う位置に香水、シャンプーの残り香などがある
秘書と世界の間には気流があり、秘書の中と世界とを出入りしている
秘書が声を発するとき、世界との境目は渦巻いて混沌とする
秘書の中の濡れた肉が開口した唇から覗き見えたかと思うと世界の空気が出入りし、その時
外と中の区別が付きにくくなる
見ようによっては世界は秘書の中に入り込み、秘書は世界に挟まれてしまうからだ
秘書を境目にして世界の内外(うちそと)は区別が難しくなる

もう一つ重要な事柄がある
それは、この秘書が抱えている意識と世界の意識との関係である
秘書は世界の意識によって支配されているが
秘書はそのことを意識せずに
もっぱら自分の意識の中に世界を置いているのだ
このことにより世界と秘書との主従関係と
身体性とがねじれ現象を起こしている
第三者Aから見れば秘書と世界との関係は一見そう複雑に見えない
だが秘書は秘書と世界との関係を第三者に投影して意識することに不慣れだ
そこで第三者は自分の身体の一部を秘書の内部に挿入して
客観的な意識の一体化を試みるが成功した試しがない
この問題を解く鍵は何処に存在するのか
詩人Bに訊いてみると詩人Bは一編の詩を以て回答した
その詩はいずれ紹介するとしよう

2011年1月14日金曜日

ゆるく

ゆるいことを考えてみる日
ゆるく考えてみる
あらゆる紐を緩め
柱時計のネジをゆるく巻いて
ぬるいお湯に浸かって
ヌルヌルクリームを塗って
ゆるせない人をゆるして
自分をおおめにみる
すると
何かがかわる
わからないくらいすこしだけれど

2011年1月13日木曜日

花を挿した

ありのままが美しい
と あの人はいう
正面から向き合って 絶対逃げちゃダメだ
と あの人はいう
失くしたものは わけがあって失くなったのだ
と あの人はいう
本気になったら 何だってできるはず 殆んどのことは
と あの人はいう
夢は実現するためにあり 実現したらもっと大きい夢が見えてくる
と あの人はいう
言い訳ばかりしないで 少しずつでもやりたいことに近づかなくちゃ
と あの人はいう
言うだけなら誰でもできるんだから やらなくちゃ意味がないしかっこ悪いよ
と あの人はいう

アマリリスの花が
朝 テーブルに置いてあった
誰が置いたのだろう

空き瓶に挿した
水を入れて

2011年1月12日水曜日

質問?

友達は何人いますか?
恋人は?
ビタミン足りてる?
似たような話題を何度も話す?
着回しのいい服ばかり着ている?
きのうとおとといはだいぶ違う?
今と一年前は似ている?
食べ物の好みは変わった?
携帯 何台目?
毛虫にさされたことある?
プールで水飲んだ時と近い?
結婚式に出た?
葬式は?
トンビに狙われた?
捨てられないもの多い?
裏切られた?
浪費した?
カモられた?
カモった?
漏った?
ろくろっ首怖い?
煙は煙い?
スキーした?
うまい?
肋骨見える?
ダイエットどう思う?
人と違う?
損してる?ヨリを戻した
詰め寄った
しみったれた?
消した?
加えた?
温めた?
緩めた?
いれた?
ずらした?
蹴飛ばされた?
外した?
舐められた?
舐め舐めした?
なめした?
くすませた?
寝転んだ?
寝入った?
串巻にした?
すっころんだ?
すっとぽけた?
消沈した?
消灯した?
投書した?
詩を投稿した?
投資した?
舌を巻いた?
下をなでた?
上に進んだ?
ろくろを回した?
回された?
馴染んだ?
楽しんだ?
貸した?
書いた?
課した?
からかった?
逗子へいった?
イタコと会った?
ルビーを選んだ?
断髪式に参加した?
クルマを買った?
郭へ行った?
らりった?
ろれった?
竸った?
雪駄を履いた?
セックスした?
したいことをした?
良かったです。

2011年1月11日火曜日

テニスコートの彼女

テニスコートに雨が降っているが
彼女には青空と虹が見える

風が強まり
テニスコートは夜の闇に飲み込まれていったが
彼女には試合に汗する選手たちの姿が見えている
太陽が影を作っいる

彼女はテニスコートの近くの4階の窓から
テニスコートを見下ろしている

まだ彼女に声をかけた者はいないが
彼女は会話している

男は彼女のことを先ほどから見ている
だが男の姿を見たものはいない

2011年1月10日月曜日

季節なんてバカだ

寒い季節はたまらない
歩くだけでも一苦労
命がけとは言わないが
凍った道路でずっこける

ぬるい季節も大変だ
虫がもぞもぞ動き出す
何着ていいのか決まらない
眠気に襲われ遅刻する

暑い季節は汗まみれ
冷房効きすぎ風邪を引く
花火大会混みすぎる
腐った牛乳飲んで吐く

涼しい季節は寂しすぎ
葉っぱや涙が落ちすぎる
太陽もっぱら遠慮して
寒くなるのに決まってる

2011年1月9日日曜日

詩のありか

五万円の月収のほとんどを美容関係に使う
ほとんどはコスメでファンデに消える
もうすぐ成人だが自宅に住み
バイトと婚活に励む
週二三回は友だちと会いファミレスかマックでお茶する
カレシはいない

夢は安定した職に就いたまあまあの男子と結婚し
定年まで安定した生活を送ること
高望みはしない

どちらかというと美人ではないが
笑顔がきれいで
明るくカワイイ
勉強はあまり好きではなかった
人当たりはいいほうだ

高校を出てアルバイト生活
友だちもそんな感じ

古いぬいぐるみに囲まれて
鼻まで布団をかぶって眠る
液晶時計だけが青く点っている

夜半
そこに詩がやってきて
胸の膨らみでジャンプして
パッと消えた

そのことは
誰も知らない

私の胸は小さすぎる?

谷川俊太郎さんの恋愛詩BEST版として刊行された詩集『私の胸は小さすぎる』のタイトルのネーミングが秀逸であると評価している審査風景。(賞の名前はうっかり失念)。
この詩集、昨年のH氏賞受賞詩人で、谷川俊太郎さんの翻訳者としても活躍する田原さんの選、私の編集によるもの。2010年に刊行されました。(角川学芸出版・1680円)

2011年1月8日土曜日

つり輪

首吊りの輪っかを飽きるほど作ったが
一度も使ったことはない
これだけたくさん用意して使わないのには
何か理由があるはずだと思ったのは
今日が初めてだ

もしその輪っかが
別のものだったらどうだったのだろうと考える
例えば婚約指輪だったらとか
イカリングだったらとか
ボテコだったらとか

首吊りの輪っかは でもたぶん特殊だ
死刑執行の部屋が公開されこの間ニュースでやっていた
そして刑事ドラマを見ていたら今度は首吊りの輪っかに犯人を掛けて
殺していた
その犯人は冤罪だったのだか
そういった判断は
首吊りの輪っかを主体としてみたときに
誰が決めるのが正しいのか

例えば僕が首吊りの輪っかを自分にかけるとして
その判断は正しいのだろうか

首吊りの輪っかは 夢の宇宙空間いっぱいに
跳び回って乱舞して
レビューのショーを今夜もやっているけれど
客席は疎らだ

いろいろ飛び交うものはあるけれど
それは過去から未来へと投げられた
おひねりのようなものなのか
もうしばらく考えないと
答えは出てこない

いいや答えがでるかどうかも定かではない

昨日は誘われていわしの鍋を食べることになったが
いわしは何を言わしめるのか
キーホルダーの輪っかに指をかけてチャラチャラ言わせながら
待ち合わせ場所に行った

道玄坂の交番の前
武器は持っていない
不器用はもっているけれど



【予告】
さて、次回は・・・
「加速する幸せの方程式」をお送りします

2011年1月6日木曜日

あなたとわたし

あなたと会話すると
あなたが黙り込むそのわすがな間に
私は宇宙の彼方まで行ってタッチしてまた戻ってくる

あなたは次に発する言葉を選び終えると
瞬きもせずに発語する
その響きは大昔に聞いた音楽のようだ

あなたは何か会話しているらしいが
私は言葉を発した瞬間に
泡の中に閉じ込められてうまくいかない

胸のポケットにはペンがあるが
そこまでの距離は遠すぎて手がとどかない

あなたはそれが楽しいかのようにはしゃいでいる
そうかと思えば今度はしっとりした視線をこちらに向けてくる

世界が回っているのか自分が回っているのか分からない
地球の公転はそんなに早くないはずだ
回っているのはあなたの周りにいる私
それともその反対

2011年1月5日水曜日

コーラを振って

そのコーラの缶開ける前に
思い切り振ってもらえないかな
あたたかい部屋の中で
きょう2人きりだった記念に
そう
きょうは特別な日になる
未来の2人にとって

準備中の看板は
もう降ろしたよ
心の準備もできた

ほら
窓から見える満月も
心待ちにしてしているみたいだ

遠くで汽笛がなった
いまだ
振るんだ
そしてリングに指をかけ
プルトップを持ち上げるんだ

泡のシャワーに祝福された君の指には
アルミのギンのリングが残る
安っぽい輝きにみえるかい

2011年1月4日火曜日

自分を活かすアイデア

木の幹に無数の光が群生している
クリスマスのイルミネーションは新年を彩るイルミネーションとなった

ひとりでにゆるい風か吹いて来て
常緑樹の無数の葉を震わせた

それをなんとはなしに眺めていたいた大勢の中の一人は
「選ばれし人」になる為に
喫茶店でもう小一時間思案しているが
いいアイデアはやってこない

それどころか絶望色に染まりつつある
最近はその繰り返しだ
しかし本人は気づいていないがその絶望色は結構魅力的だ

さあ
もう何処かへ行こうと席を立つ瞬間に
会計のことで頭を覆われ
次に来たアイデアは混んだ電車のマシな乗り方だった

2011年1月3日月曜日

あなたは何も持っていないから

あなたは何も持っていないから
持っている人より
たくさんのものを
これから持つことができる

何をもつかは
あなたとあなたの運次第

あなたはいまは何も持っていないから
何も捨てることができない

あなたがこれから何を捨てるのか
わたしは見届けたい

2011年1月2日日曜日

凶の日よさようなら

湖に映るのは死に顔だよ
友だちに声を掛けられた

きょうは
縄跳び
缶蹴り
かくれんぼ
鬼ごっこを
してはいけないよ
死者が混じるから

日陰の影法師
もどってこない木霊
開かずの間の鍵

へその緒にぶら下がって
自殺した子

2011年1月1日土曜日

夜。モノレールの、上で。

モノレールが空をゆく
その下で
君の睫毛がバッサバッサと風を起こした
ただ瞬きをしていただけなのに

路上は太陽の光を吸収して
熱を発している
路上の君は思わずもだえている

無理からぬ事情は世間に溢れ
恩情と薄情が組んず解れつ寝乱れて
涙の塩まみれになっている

そうか
黄色い色ばかり目立つね きょうは
なんだろう なぜだったのだろう
過去と未来に挟まれた路地裏が
表返って
中間的な者たちが居場所を失い
さまよい出る場所をさがしている

冬の暑い日
夏の寒い日に見た金星が
君を目がけて矢を放ってくる

もういいかげん
目を醒ませよ
酒でも浴びて
目を醒ませよ
諸君