2010年9月14日火曜日

秋の事件Ⅲ

誰かが小声で囁いている
少女というにはしっかりとした口調
そして優しさと強さを併せもっている
なにか強い思いがあるのだろうか

声は囁きをやめない
日がな一日 止むことはない
辛くはないのだろうか
知らぬ間に誰かと入れ替わっているのだろうか

いや、そんなことはない
声は確かに同じ声だ
そして繰り返し 唄のように
挨拶の言葉のように 発せられる

夜に鳴き始めた虫たちさえ
黙り込んでしまった
声はどこまでも進んでいく
空気を振動させて

時には 風に逆らって
震えながら
そして馬車に飛び乗るように
季節の流れに身を投じると
下流の町へと消えていく

その町で
きょう 信号が変わる瞬間
一人の少女が ため息をついた

声はなく
もちろん 笑みもなく

2 件のコメント:

  1. 少女のためいきは、希望のためいき。
    信号が、変わって、何かが変わった気がした。

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  2. 匿名さんへ
    30円のコーヒーチケットという詩を贈ります!

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