金券ショップでチケットを買う
120円のコーヒーチケットが
とても安くて1枚30円
ぼくは迷わず「5枚」と云った
1枚30円で買ったコーヒーチケット
1枚目は新宿の店
ノートを広げて思いついたことをメモ
やらなければならないことを箇条書き
今日しなければならないことは
今日なんとかし終えた
明日は明日しなければならないことをする
あさってしなければならないことは
あさってすることに決めた
1枚30円で買ったコーヒーチケット
2枚目は赤坂の店
15人ほどの人間が思い思いに
それぞれ時間を過ごしている
誰もがしなければならないことを
両手いっぱい抱えている
締め切りに追われて生きている人がいる
ノルマに縛られ一生懸命
自分を逃す道を探す人も
1枚30円で買ったコーヒーチケット
3枚目は大宮の店
将来のこと考えれば考えるほど
ぼやけてきてしまうのはなぜか
友達に聞いても同じ問いが
返ってくるだけだから
いつのまにか問うことの代わりに
紛らわすことがうまくなった
自分を責めて苦笑して
1枚30円で買ったコーヒーチケット
4枚目は仙台の店
高速バスで早朝の街に着くと
街が目覚めるまでまだもう少し
気だるさと懐かしさを傍らに
過ぎ去った人を思う
同じ場所で朝のコーヒーを飲み
夢見ていた愛の生活
この場所は変わらないまま
1枚30円で買ったコーヒーチケット
5枚目は待ち合わせ
手を小さく振って近づいてきたのは
さよならをし忘れたからですか
そんな意地悪言っても
笑いあえる不思議
ぼくは30円でここにいるけれど
君の分のチケット買い忘れた
あと一枚買えばよかった
詩を贈っていただくとは恐縮です。
返信削除私は、この詩の中では、最後の連が一番スキです。
そこまでは、投げやりな感じがしますが、
最後の連で、とても自然で、素直で明るい感じがしました。
ありがとうございます。