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2011年11月30日水曜日

忘れられた人は


忘れられた人は

缶詰を開ける音に反応して

こっそり

出てくる



あなたが

缶詰を開けたとき

忘れられた人は

あの人の前に立ち

手招きをする



もちろん

誰かが缶詰を開けるたび

別の誰かの前に

忘れられた人はこっそり

立っている



そんなことが

よくあるのだが

気がつく人は少ない



忘れられた人は

苦難をものともせず

隙をうかがっている



何かの拍子で思い出されたとき

忘れられた人は姿を消す



この

忘れられた人の寿命や

生活は様々だが

まだあまり研究されたことがない



私が去年から研究を始めたが

ほかにしている人を知らない

私は

いま忘れられた人のそばにいる

2011年2月16日水曜日

いつもと違う日

林の上の澄んだ空気に
月が明るく光り

降り積もった雪を集めた小山に
苦しみを抱えた人が腰を下ろす

誰の文句も受け付けない場所

息をすると恥ずかしいほど
たっぷりと白い湯気が出る

でも誰も見ていない

静かさが
包む

心配事は
氷に閉じ込める

きょうはいつもと違う日
栞の日

2011年1月30日日曜日

ポッカリあいた穴

詩人が青空に白い雲があると言う
それで私は空に雲があることを思い出して
見上げてみる

空は青い
その言葉のせいかどうかはわからないが
確かに空は青いと思われた
その青空に
雲が幾つか浮かんでいる

詩人は
雲は地球に張り付いているようだと言う
浮かんでいると言うより
張り付いていると言う

なるほど
雲は地球にへばり付いている
そして青空は消え
群青の宇宙が広がっている

詩人はつづけて言う
宇宙は飲み込めるよ
大きく口を開けなくても
小さなカプセルだから大丈夫と

私は手渡されたその小さなカプセルを
唾と一緒に飲み込んだ
すると一瞬にして私は
宇宙の外側になってしまった
自分の意思が宇宙を形成しているようだ
星々の運行やその色
生命の生き死にも

詩人は言う
私は詩人ではないと
私は旅芸人だと
そして もう
旅の一座となって去って行こうとしている

私は引き止めたかったが
引き止めることはできないと感じていた
さびしさが溢れてきた

私は私にあいた穴から
青空を見た

ポッカリとしていた
穴から覗いた地球の風景

2011年1月2日日曜日

凶の日よさようなら

湖に映るのは死に顔だよ
友だちに声を掛けられた

きょうは
縄跳び
缶蹴り
かくれんぼ
鬼ごっこを
してはいけないよ
死者が混じるから

日陰の影法師
もどってこない木霊
開かずの間の鍵

へその緒にぶら下がって
自殺した子

2010年12月31日金曜日

幸せ in 段ボール

お茶漬けです
塩を振りましょう
食パンには
ケチャップを塗りましょう
お茶を飲みましょう

水を飲みましょう
飴をなめましょう
雑誌と新聞と 本も読みましょう
着替えをしましょう
夏服と 冬の服も重ね着と洒落てみましょう

神社にお参りに行きましょう
贅沢気分で
お寺にも行ってみましょう

夜は星を見ましょう
いつもより輝きを増した夜空です
お正月は仕事を休んで
一年の計画を立てましょう

あの人もこの人も
余計な
仕事はせずに
ゆっくり自分を取り戻す

仕事している人ご苦労さん
新しい段ボールに
新しい希望を入れて
幸せを確かめましょう

どっこいしょ
いい具合

2010年12月30日木曜日

旅立って行きましょう

この場から旅立って行きましょう
知らない誰かさん
もうこの場にはいられないから

知らない誰かさん
本当は知っている誰かさん

布団をたたんで
後先は考えずに
思いついたものだけ
カバンに詰めて

未練は置き去りに
後悔はカバンに詰めて

手紙やプレゼント
写真のアルバム
パソコン
CDやDVDは置き去りにして

この場から旅立って行きましょう
風の強い朝に
窓のカーテンは開けっ放しにして

2010年12月27日月曜日

古い友だちが訪ねてきそうな日

古い友だちが訪ねてきそうな日
二度と帰らない旅支度をしている
古いカバンに 持っていきたいものを出したり入れたりして

どんよりと曇った空の隙間から
濃い青色の空が覗いている
あの辺りから
虹がかかるだろうか

今日は特別な日らしい
何処かに置き忘れ
置き忘れたことさえ忘れていた日記帳が
突如あっけらかんと出現して
続きを書けと促してくる
続きなんて書ける筈ないのに

あしたになれば
この世界に私の痕跡はないだろう
その逆に
私の胸には深い傷が刻まれているだろう
小さい頃に見た柘榴の裂け目の鮮やかさに似た

そしてその傷の痛みのために
私のカラダは軽くなっていくだろう
友だちはそのことを察してやってくるのだろうか

古い友だち
どこからやってくるのだろう
今頃
近くの駅に着いただろうか

木の机の上で腕組みして
きょうは色々なことを考えている
不思議といつものような堂々巡りはせずに
一方通行で進んでいく思考

私には
色々なことが分からない
花火を見ている気分になってしまう
色々なことは何を意味しているのだろう

問いがいっぱいの頭の中に
もういいよ という声が通り過ぎる
そのせいで
私は深く考えるのをやめる

静かな町に
太陽が巡っていく
風は遠近法の中で通り過ぎ
思いは井戸水のように
汲み上げれば美しく輝き

私が外へと踏み出し歩き始めるとき
私は静止し
私以外のものが
動き始める
私が存在しなかったときと同じように

2010年12月26日日曜日

19分の詩

2318
自分を満足させるために
自分はどうしたら良いのだろう

2319
あたたかい部屋でテレビを観ている
ホームレスに同情できるか
心のホームレスに

2320
もうすぐ電車が出発する
夜行列車は何処を走っていくのだろう
地図で追わず
心の中で追ってみると
あの日の風景が流れていく
目的地はどこだろう

2321
カップラーメンをたべよう
お湯を沸かそう

2322
冬になると首筋がかゆい日がある
変わらずにいてくれるものが
ありがたいと思う時がある

2323
兄さん兄さん
姉さん姉さん

2324
兄さんに死

2325
お湯を注ぐ
食欲がなせる技
お湯を注ぐと
ラーメンができる
できたら食べることが
予想されている

2326
一分に一個書きながら
ラーメンを食べるのは
46年間生きてきて初めての体験だと気づいた

2327
23時37分になったら
アップする
いつものように推敲は後回し
僕の人生みたいに

2328
雪でバスが立ち往生している
立ち往生という懐かしい響きに
安心感を覚える
立ち枯れの木々
たったままの椅子
座ったままの一日

2329
電話代がたまったまま
定められた期日が来ると
人類社会から
切り離される
また1本

2330
カメラを向けると
カメラ用の顔になる人
ならない人
気まぐれな人
あなたの好きな人はどっち?

2331
ほっぺ先が
ピーンといっている

2332
首吊りブランコって知ってる?
誰かがが毎朝漕いでるやつ

2333
ゴミを捨てに行かなければならない
ゴミ捨て場に きょうも
分別して捨てなければならない
種類ごとに出す日が決まっている
そうか
そうすればいいのか

2334
捨て方が問題だ
尖った夢は

2335
きょうは君の香りがバスルームに溢れていた
みたことのない花の香り

2336
もうすぐきょうが終わる
この夜に暮らしているみんなのきょうが

明日が来ないことはないだろう
みんなが信じているから
きっと明日は来るのだろう
絶望的な明日でも
希望が持てる明日でも
とにかくやってくる

絶望と希望が同義語に思える人にも

2010年12月24日金曜日

ねがい事

いつも緑のもみの木

わたしのねがい事も
輝いていられるだろうか

美しいあなた
心はなにを求めているの

2010年12月19日日曜日

マッチ売り

求めるものに近づこうとする打算的人生より
過ぎゆく過去を大事に味わう人生のほうが
いいのでは?

ホームレスの僕が思うことは
過去のいい思い出のことばかり

でもそれらに飽きると
今度は現在のことを思う

家賃を払うのは必要悪かということ
月や星は電気メーターにつながっていないということ
食の安全は少し古くなったら捨てろということ
食べたい僕たちにはゴミ箱を漁れということ

自分がよければそれでいいという思いを持った人が
さまざまなルールを決め
ルールの隙間に蔓延して
自分の善良さに不安を覚えると
弱いものに情けをかける

クリスマスが近づくと
マッチ売りの少女が
今日も街頭に立って
寒さに凍えながら
火をつけるための棒を売っている

本当に燃やしたいものは何?
少女は尋ねることはしないが

ホームレスの僕は自問する
本当に燃やしたいもの
燃やしてしまいたいものは
何?

2010年12月18日土曜日

夜の空気

窓から入ってくる
月の灯りは
太陽から君への心遣い

闇の中に放りだされても
君は完全な独りきりにはならない

スピーカーから音楽を流し
本のページをめくれば
別の世界がハンモックのように
用意されている

君の想いを吸い込む夜気が
空のなかでシンとしている

2010年12月16日木曜日

玄関にくる人

寒さが手を引いて忘れていた人を連れてくる
ぼくは黙り込んで西日の部屋で文庫本を読んでいる
玄関の前で誰かが立ち止まるが
音一つ立てずに
何か迷っているのか

いつの間にか陽は暮れてきて
ぼくは本を置き
外へ出ることにした

鉢合わせは勘弁願いたい
煮えきらぬものはもうたくさんだ
ドアを開ける風で吹き飛ばすよ

そうして
ぼくもバス停へと飛んで行く

2010年11月26日金曜日

あやまらない

あやまると自分が消えてしまいそうになるので
彼女はあやまらない
あやまる必要がある時ほど
唇を真一文字に結んで
身をすぼめて待っている
あやまりたい気持ちが消えるまでいつまでも
固唾を飲んで
じっとしている

彼女の不用意な発言が
友だちを傷つけてしまっても
大事な約束を破ってしまっても
彼女はあやまらなかった

いつも
彼女の中に後悔とあやまりたい気持ちが押し寄せたけれど
彼女はあやまらなかった

あやまりたい気持ちが
彼女の中にあるとき
彼女は言い知れぬ自信が訪れていることに
気づくことがある
いつかあやまることができるようになるのを
待ち望んでいる自分に
自信をもつのだ

だから彼女は
あやまりたい気持ちから
逃げない
逃げないでじっとしている
彼女の中をなにかが行き過ぎる

いつか-
それも捕まえてみたいと
彼女は思っているのだ

2010年11月16日火曜日

星座の立場

そこをめくると
こんどは
当たりがでるか

めくりつづける日々
当たりのような
ハズレのような
よくわからない

脳みそ
役にたたない
くじ引きの人生

計算機
意味のない
暗い闇の中で

星座の居場所がたより
私のみちしるべ
星占いを見下ろす星
笑いも泣きもせず
表情ひとつ変えず
座って

2010年11月11日木曜日

あなたにとって

あなたにとって
ここはどんな場所ですか
そう尋ねたくて
モヤモヤしているうちに
あなたは何処かに行ってしまった

私にとって
ここはどんな場所なのだろう
色々思い巡らせ
モヤモヤしているうちに
あなたは帰ってきた

買い物袋を
両手にさげて

2010年11月10日水曜日

林檎をもって

小さな窓から世界を眺めてた
林檎をもって
外にでかけた
会社の窓から人々の様子を見渡した

ビルの中でみんなが働いている
賑わっている
とりとめもなく
手紙で呼び出されて外にでた

いつだって外にはでる
入りはしない

外から中を覗いてた
林檎をもって
中に入るため
部屋には鍵がかかってた

いつだって中には入る
出ていきはしない

2010年11月9日火曜日

BATSU

明るく素敵なあの人が
あの人の中にはもうない

いつからいなくなったのか
自分にも分からない

いつまでどうしてやっていくのか
分からないまま
きょうも夕暮がやってくる

トンビが空に円を描く
飛行機雲より大きい円

マルを貰うのはいつ以来だろう

2010年11月8日月曜日

あゆみ

強い動物の毛皮を纏うことで
荒地を渡っていく

わたしは旅人のよう
流れる雲が恋人

過去の自分は惜しげもなく捨てていく
そうしたいと願っているわけではないけれど

山のあなたの空遠く
革の私が歩いてく

2010年11月7日日曜日

夕暮れの部屋で

気づいてしまった本当のこと
言ってもいいですか

目の前のテーブルの上に置かれた
煤(すす)けたりんごのように
あなたの目の前に
投げ出しても

夕暮れの部屋で
出会ってもいいですか

今まで出会えなかった人に
リダイアルボタンを押すように
あっけなく
呼び出しても

2010年10月30日土曜日

みなさんごめんなさいのトークショー

1

式次第

会場のみなさんに謝ることを告げる
お詫び
世間から奪ったもの
お詫び
世間に対するなめた考え
お詫び
会場のみなさまに与えた苦痛について
お詫び
自分の行動についての反省
お詫び
いまと今後の自分の行動
お詫び
みなさまに自分ができること
お詫び


2

みなさんごめんなさいトークショーは
あやまってばかり

あやまってばかりでは間がもたないので
言い訳を語り始める
言い訳は聞きようによっては
お詫びよりおもしろい

あやまってほしい人は
話者が一通り話し終えると
聞きたかったのは
お詫びではなく
その経緯でもなく
自分に対する気持ち
でもなく
その気持ちに対する思いであるこを知る

トークショーは
夜を徹してつづき
いつ終わるともしれない
話者は改心しているが
性格は変えようがない
話は巡り
同心円を描きながら遠ざかっていくが
時々同じ道を辿る


3

みなさんごめんなさいのトークショーは
入場は無料
訪れた人が満足できるかは
主催者は自信が持てないでいる
それでも
主催者はいたるところで
どうしても開催したい

お詫びをしたい気持ちが
なにかを産むと信じているから

お詫びをされたい気持ちをもって生きる
苦しみを手にした日
世間が振り返って見せた
不敵な笑い顔を見てしまったから