雨の滴が
住みなれた 窪地の家々を濡らす
中学校の校歌を濡らす
靴の底と 先端をぬらす
隠しておいた想い出を濡らす
雲り空の明りが
盆地を照らす 空家になった犬小屋の屋根を照らす
落ち葉が溜まった池を照らす
元気ハツラツ と書かれた看板を照らす
黄色い 止まれ の文字を照らす
誰もいない野外音楽堂を照らす
遊んでいる声が
へいに反響する 電柱に反響する
開かずの扉に反響する
玉虫の背中に反響する
放課後の音楽室に反響する
盲人の鼓膜に反響する
コスモスの色が
夕日と仲良くなる 日没と仲良くなる
見つめる瞳と仲良くなる
花びらに触れる唇と仲良くなる
血のついたハンカチと仲良くなる
浅い眠りの夢想と仲良くなる
初秋の詩は
いつまでも着地せず
中空を漂う
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