2010年10月7日木曜日

初秋に書いた詩

雨の滴が

住みなれた 窪地の家々を濡らす
中学校の校歌を濡らす
靴の底と 先端をぬらす
隠しておいた想い出を濡らす

雲り空の明りが

盆地を照らす 空家になった犬小屋の屋根を照らす
落ち葉が溜まった池を照らす
元気ハツラツ と書かれた看板を照らす
黄色い 止まれ の文字を照らす
誰もいない野外音楽堂を照らす

遊んでいる声が

へいに反響する 電柱に反響する
開かずの扉に反響する
玉虫の背中に反響する
放課後の音楽室に反響する
盲人の鼓膜に反響する

コスモスの色が

夕日と仲良くなる 日没と仲良くなる
見つめる瞳と仲良くなる
花びらに触れる唇と仲良くなる
血のついたハンカチと仲良くなる
浅い眠りの夢想と仲良くなる

初秋の詩は
いつまでも着地せず
中空を漂う

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