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2011年5月11日水曜日

月屋の日誌より

照明が消えてしまったので
月を5つほど貸していただけませんか
そう言って
木戸を静かに開けて彼女は入ってきた

ちょうどいい月が
入荷したばかりだったので
私は迷わず
いい月があります
電球色のもので
やや黄色い感じです
表示してあるのはひと月分の値段です
と説明した

彼女は
安心した様子で
商品を手に取ると
昼光色のものも一つ貸していただけますかと言った
そして
鈴のついた横長の札入れから
きれいなお札を出して代金を払いつり銭を受け取った

私は
ありがとうございます 
どうもありがとうございます
と丁寧に言って
彼女の後ろ姿を見送った
彼女は小峰ににているが
小峰ではないな
と思った

2011年1月25日火曜日

何かにかき消されてしまったようだ

朝露か夜露かは分からない
澄んだ空気の中に出ていくとみんなの顔があった
草っ原の匂い
水道の蛇口から勢いよく水を流し顔を洗い歯を磨いている
その向こうでは森が佇んでいる
その上はもうすでに青く輝きだした空だ
きのうの夜はたくさんの星が瞬く夜空だった
今は太陽の明るい白色が
空の一点から
空はもちろん
世界中を明るく照らしている
いつも制服のみんなは思い思いの格好
ミチコさんの柔らかい色の服も
ミツエさんのチェック柄のシャツも
この風景の中にある
輝く草花のような未来
過去も未来も風車の羽の一枚
そう思える不思議な時間
小峰が出てきた
僕は精一杯格好つけてあいさつをしたが何かにかき消されてしまったようだ

2010年10月26日火曜日

香里奈

好きなドライフルーツはイチジク
噛むと奥歯で小さな粒が潰れて音がする
その音がたまらない
他にないその音
その歯ざわりも

田舎のスマートな女
革のジャケットがよく似合う
細くまっすぐな脚
前髪から覗くロマンティックな瞳
形のいいくちびる

そんな香里奈にも
太刀打ちできないライバルがいる

小峰だ

2010年10月22日金曜日

花びら

小峰が大事にしている花
ベランダで咲いている綺麗な花
いつだったかてんとう虫が茎を登っていった
きっとその細い足に
水の流れを感じていたのだろう

小峰は別の流れを感じていた
花びらを染める鮮やかな色の流れだ
茎を伝わるうちに
見る見る変化していくその色は
花托に到達すると同時に
その花びらの色となる

そんなことは理科の時間には
習わなかったけど
小峰はそう信じていた

何かを思い
合わせて握られた手のひらの中で
息づいていた
小峰の思い

しっとりと熱い
愛のような 
愛でない なにかのような

2010年10月2日土曜日

心の波は寝息になって

屋根を取り払えば
まんてんの星が瞬いている
みんなそれぞれ必要なものを
カバンに詰め込んでやってきた
それは夢の焚きつけにつかう
燃料みたいだ

ぼくはラジオを持ってきた
いつも自分の部屋で聴いている番組を
きょうは周りの友だちを気にしながら
ちょっと自慢気に聴くのだ

なかなか周波数が合わないが
ノイズの波の向こうに
見え隠れするいつもの声

星も何かのメッセージを発しているのだろうか
壁を何枚か隔てた所には
みんなと同じ布団を敷いて
小峰が寝ている

同じ星の天井の下
同じ星の同じ場所で
寝息はモールス信号のように繰り返し
未来のメッセージを伝えようとしている

2010年9月27日月曜日

小峰に纏わりつくネコ

小峰とネコのことは想像するしかない

小峰が人前でネコといたところを
誰も見ていないから
第一 小峰にネコは似合わないと僕は思う

小峰はペットを飼うような感じではなく
孤立して淑やかで
生き物の毛を衣服につけている筈もなく
そんなに寂しがり屋でもない

それでも
小峰とネコのことを考えるのには訳がある
それは僕が小峰のことを考えるとき
最近は いつでも
ネコの気配を感じる
足もとにネコがいる!
このあいだは ネコがまとわりつき
小峰が もう~ とネコのことを払いのけるような声が聴こえた

ネコはどこからくるのか知らないが
妙に訳知りの様子で
程よく小峰に纏わりつくが
たまに度を越して追い払われる

その様子は
楽しそうで 悲しそうだ

僕はいつか
纏わりつくがネコに聞いてみたい
あんた 小峰の なんなのさ

2010年9月25日土曜日

眠っている小峰

小峰が眠っている
眠っている小峰は
どこか別の世界に 何かをしに行ってしまったようだ
ここにいない 小峰の 眠っている姿は
いつまでも見ていたいほど いい
小峰は寝息一つ立てずに静寂を保っていて
それは 最後の一葉をおとさないように という比喩がしっくりくるように思える
小峰を守るものは何もないが
世界中の善良な魂が みんなで小峰を守っているということが
なぜだか はっきりと判る
小峰は 薄く やわらかい色の 衣服をまとっているが
衣服の隙間から 肌を見せている
その肌は かすかに産毛が光っていて
赤ん坊の時と きっと ほとんど変わりがないのだ
小峰の閉じられた瞳は 美しく 小鹿のようなので
だから時折 小鹿がのぞきに来る
小峰は 2本の腕を持ち
手のひらは 5つに分かれている
その手のひらが いつだったか もみじを持って 写真におさまっていた
その光景は 紅葉と手のひらの境界を危うくするような事件だった

小峰は いつ 目覚めるのだろう
唇が 季節の風に 少し乾き
そのわずかな不快に 目を覚ますのだろうか
それとも どこからか飛んできた 綿毛の気配を感じて だろうか

こわれそうで やわらかい 小峰
父母から生まれ でも 誰のものでもない小峰は
いつか 自分を誰かに差し出すのだろうか
リボンを巻いた プレゼントと一緒に
瞳に笑みさえ 浮かべて

2010年9月22日水曜日

観察

小峰は
山より小さい
大地の
ふくらみ

雨にぬれ
水を吸い
くぼみに
ちいさな水たまりをつくり

人を登らせる
生き物を
這わせる

小峰は
来るものを拒めないのだ


くぼみは
水分を
静かに
蒸発させる

そうすることで
小峰は
平静を
たもてるから
月に照らされた
小峰を
横から見ると

いつもと違う
感じがした

2010年9月21日火曜日

合唱祭

みんなに交じって小峰が歌っている
ふくらみはじめた夢

小峰の声が
聴こえる

小峰がからだを揺らして
歌っている

小峰の周りも歌っているが
それと競うように小峰は歌う

声を出すことが気持ち良さそうに
よろこびを湛えている

合唱が盛り上がる
小峰も盛り上がる

小峰と一緒に
僕も盛り上がる

いつか小峰の名前を呼びたい
小峰はそのときは歌わない
歌は胸の中にしまいこみ
僕の名を呼ぶだけ