2010年11月22日月曜日

運命的な出会い ー婚活ではなくー

丘の斜面で夕焼けに照らされた彼女は
今描いているドローイングの話の途切れめで急にを目を瞑り
キスを求めてきた
彼女の顔をよく見るのは初めてだ

もうキスして戸惑いながらも
抱き合っていたけれど
僕が腕に力を込めて背中を引き寄せると
彼女はますます密着してこたえてきた

美大生の彼女は良家の子女で躾がきびしく
反発する気持ちを抱え
複雑な事情があり今はこの町に住み
三時間かけて学校に通っているという

抱きつくと互いの顔が見えなくなり
初対面の僕たちは安心な気持ちもしたけれど
少しすると淋しくなってきて
また顔を見てみることにした

その顔は
やはり初めて見る顔だった
お見合いのように気取ってほほえんでいる
変な状況だ
だがそれを二人ともが容認しているのはなぜだろう

ここは小さい頃に
鬼ごっこや缶蹴りをした小さな広場のすぐ隣だ
眼下に家々が見え
振り返ればこんもりとした森がある

僕たちはゆっくりと時間をすごすことにした
鼻の頭が冷たくなるまで
手を握り合って遊んでいた

帰り道
僕たちは明日のことを約束する必要はなかった
もう結ばれたも同然だから
会いたければいつでも自然に会えるのだ
そんな強い絆を感じていた

坂道は平地よりむしろ歩きやすかった
振り返りながらゆっくり歩く僕たちには

彼女の愛しい顔をみると
幸せそうな表情だ

一番星!
と彼女が指さした
えっ もう?
と指の先の空に目をやった時
後ろでコンと
鳴く声がした

きつね?

またきてコン
さよならコン

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