2010年12月20日月曜日

タクシーは待っていない

長い夢からさめて
ターミナルを出ると
放射能を撒き散らしたような
明るい鮮やかな夕空が待ち構えていた

とにかく何かしなければと
僕らはとっさに行く先のことを考えていた

そしてこの夕空が意味するところを見極められるはずだ
いつか観た映画の一シーンに答えがあるかもしれない

リニアがタクシーの向こうを走っていく
あのリニアは実験が途中なので
こんな日は危険だ
いや もしかするとあのリニアのせいで
空がこんな色になっているのかもしれない
どこかの時空にねじれて衝突して
夢の世界から何かが滲み出してしまったとも考えられる

タクシーに乗れば災難を避けて
田舎にたどり着けるだろう
街道を結ぶバイパスを二つ通り
東西に伸びる線路を横切って
あの村に行けば
とり返しがつかないことにはなるまい

僕らは連れ立って
人気のまばらなタクシー乗り場にきた

タクシーに乗ると
タクシーは行き先を尋ねることもなくドアを閉め
急発進した

バイパスの橋を渡ると
僕らは思い立って寄り道することにした
その家に入ると
主人は寝室で寝入っていた
僕らが入ると
主人は癇癪を立てて何かを叫び
やがてたしなめるように言った

昨日帰ってきたばかりなのに
直ぐに仕事があり
時差ぼけがきついが
望むところだ
生きている間中ずっと何かをし続けなければならない
寝ている以外は
寝る間も惜しんでしなければ

叱られた気分を抱えて僕らは外に出た
すると待っているはずのタクシーはいなかった

空には星が沢山出過ぎていた
いつもみる一等星より大きな星ばかりだ
その明るさに目がくらみ
ぼくらは思わず倒れこんだ

眠るためではなく
ただ明るさから逃れるために
藁の匂いがした

2 件のコメント:

  1. 続きが、読みたくなりますね。

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  2. ありがとう。普段生きる世界と格段に違うべつの世界があることをよく感じます。そんなことをまた書いてみたいと思います。

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