2014年1月23日木曜日

ギ・モ・ン

泣いたら
 気が晴れた
笑ったら
 淋しくなった
おこったら
 悲しくなった
ゆるしたら
 笑いたくなった
わたしの
 ココロは
変じゃ
 ないですか?

2014年1月22日水曜日

無念な詩

ゆるしてね
ゆるゆるしてて
ゆらしてて

キスしてね
すきまをあけて
すきにして

ねむりましょう
魔性の胸に
無念な詩

2014年1月21日火曜日

詩人のコトバ

下の方で火がチロチロと燃えて
煤(すす)の匂いが立ち込めている
あの大火がまだ続いているのだ  ✴︎

消し止められたものだと思っていた
もう忘れ去られたのだと高を括っていた
だがあの人の哀しい願いごとのように
その火は
いつまでも消え去ることはなかった

あの人は白黒写真のなかで笑っている
時代が繊細な色模様に彩られ
ノイズさえ音楽になったとき
あの人の叫び声は
人々が気づかぬ時に蒼空の彼方から
空に吊るされた高い高いブランコのように
やってきてはまた彼方目指して消えていった

それでも
時代の漆喰の壁に打ち付けられた〈?〉の形のねじ釘は
夕日にただあやしく光って
コトバでないものを語りかけてくる

その問いに私は頷いて
やはり
答えのコトバをもつことはなかった

——吉野弘さんを追悼して



✴︎酒田大火(さかた たいか)。1976年(昭和51年)10月29日に、吉野弘さんの郷里である山形県酒田市で発生した。

2014年1月20日月曜日

満月の次は?

君が向かう方向に
未来とやらが待ち構えているのか

待ち構えているものだから
すでに過去だといま君が言った

済んだことは全て過去にながれさるのか
いま思い出した過去は未来のビジョンだが

明日考える今日と3年後に考える昨日は
いまの私からどちらが近いのか

アラームのスイッチをいれ
予定を確認して
夢を見に螺旋階段を満月の方向へ上ってゆく

2014年1月19日日曜日

冷たい風にのせて

冷たい風にのせて
石の声を伝えよう
水の声でささやこう

冬の日差しを浴びながら
土の香りを懐かしもう
木々の戯れを見守ろう

私はこの地が好きだ
あなたと同じくらい

鉄瓶で湯を沸かそう
ナイフで鉛筆を削ろう
生きた証などなにも必要ない
ただ
いまを精一杯生きて
あなたを抱きしめよう

2014年1月18日土曜日

振り向いて、、、

声? 鳴き声?
が、したので、振り向いてみたら
田んぼの脇の 夜の道
暗がりから 何かの気配が
こっちを見てる

獣だろうか 人? 宇宙人?
森の黒い影の上に
たなびく 雲の上に
三日月

いつもより大きい

いつもより
時間が早く流れている

もう一時間も
ここで 振り向いて
様子をうかがいながら
つい 物思いに耽る私

きつねでございます
油揚げ

本当に 好きなんだ



2011年10月、北京市西部で撮影


2014年1月17日金曜日

曇り空の彼方に

わざと気づかないように
奥の方に仕舞ってあるもの
たまに目が合うと
コトバを失う

こわいかさえ分からないけど
なんだかヤバい気がして
触れずに来た
いままで ずっと

だけど いま取り出して
手にとって向き合わなければ
負けた気持ちで
生きていくしかない

そんなのいやだからと
自分に言い聞かせて
思いきって
蓋を開けた

わざと気づかないように
奥の方に仕舞ってあったもの
私はその中に引きずり込まれて
なにかが碎け散った

その破裂した音だけが
木霊して 羽音のように
バタバタと耳をかすめて
曇り空の彼方に飛び立っていく

2014年1月16日木曜日

どうしようもない子 〜少女編〜

平らで硬かった胸板に
柔らかなふくらみが育って
波打つようになった

制服を着替えるとき
空気がひりっとして
思わず 手のひらで押さえると
指のあいだから
はみ出して
押さえつけないで
痛い! と主張してくる

瞳は蒼空をうつして緑に萌え
流れる雲を追って灰色の哀しみを湛える

12歳の卒業式から
何日が経ったのか
指を折って数え
そしてその指を唇にもっていった

指が唇に触れているのだが
この感覚は
唇から来るものなのか
指から来るものなのか
それとも
どこか遠くからやって来たのか
分からずに途方に暮れる

私の唇は
小さなアンテナ
指はセンサー

私は大きくため息をついて
明るくない 未来のことも
考えていた

2014年1月15日水曜日

まっすぐな道を

足が痛いから
もう旅行なんかいかないと
不機嫌そうに言う母

家にいたほうが安心だし
行きたくないという

つれていってよ
また いつか
楽しい場所へ
ちょっと恥ずかしいけど

そこで
新しい 楽しい想い出を作って
土産に持ってかえろう

レンタカーを借りて
まっすぐな道を
どこまでも 走って

2014年1月14日火曜日

井の中のドングリ

いいもの持ってるね
いつどこでそろえたの?

あなたの周りには
ボクがほしいものばかり
そのまん中にあなたがいるのに
きょうも足早に立ち去ろうとする

いい香りがしている
サラダよりも新鮮だね

風下に立っていると
うっとり眼を閉じたくなる
引力は向かってくる
光を集めてくちびるが香る

あなたはそっぽを向いているけど
ピンク色
ボクは首ったけ
へのへのもへじ
井の中のドングリ

2014年1月13日月曜日

最初の一粒を 見つけたら

最初の一粒を
見つけたら
そうしたら
次から次へと
雪の粒が空から舞い降りてきた
いつの間にか
街じゅうが
雪の襲来に会って
黙らされていく

だれかが声を上げても
空の途中で
凍えて落ちていってしまう

今夜の雪は容赦ない
過去と現在(いま)をつなげようとしているのは
空がひとのコトバに飽き飽きしたから
そんなに私たちは
無駄口をきいてしまった

雪を見張るのを飽きてしまったあとも
雪は降り続いているだろう

海の中でヒトデが時計の代わりに回転して
時を計っているが
それは空と申し合わせをした訳ではあるまい

最初の一粒を
見つけてから
私は
いつかも こんなことがあったと気づきながら
口をつぐんで
コトバにならないように気を遣っていた

あまりにも
身も蓋もないではないか
もしコトバにしてしまったら
私はこの世の牢獄に閉じ込められて
生涯出ることができないかも知れないのだから

2014年1月12日日曜日

なんだかんだが たのしくて

なんだかんだが    たのしくて
きみといっしょが    うれしくて
おひさま    ポカポカありがとう
きみも    とにかくありがとう


絵 一之瀬仁美

2014年1月11日土曜日

どうしようもない子

どうしようもない子
その少年は
自分でも
どうして自分が人と違うことをするのか
普通のことが
普通にできないのか
わからない
いましがたも
飛び出して来てフェリーに
飛び乗ったばかりだ

強い海の風が
甲板の先端に立つ哀しげな少女を後ろから襲って
スカートの裾をなんども捲りあげて
少女は
パンティーのお尻を
その度ごとにさらけ出している

(少女はたぶんそれに気づいているのだ)
少年は高いデッキからそれを見て
独り占めしていたいと願っていた

悲しいことがあると…

悲しいことがあると
人は何をすればいいのだろう

少年は
いつまでもその
パンティーのお尻を見ていた
それは永遠に続く物語のようだ

海の強い風に
パンティーを捲らせて

(何かを忘れただろうか
少女は

きっと
そのことさえ
忘れてしまっただろう)

心では

何かと引き換えに

だが少年は
忘れない







どうしようもない子は
やがてオジさんになって
しみったれた自分をさすりながら
眼だけギラギラ輝かせている

少女は
なんどか暗い海に落ちたが
その度ごとに頭上に空を見て
波を蹴って上がってきた
そしてしたたかで情け深い母となり
どうしようもない子を育てている



2014年1月10日金曜日

薄い革袋

薄い革袋に
荷物をたくさん詰めて
やぶけそうになっても
耐えて
このままやっていきます

肉や骨
毛髪などが一緒くたです
もう
くたくたですが
なぜか
新鮮で
血がかよっているせいか
冬でも暖かいのです

薄い革袋のうえに
布をかけて
紐状のもので結び
定期券を持たせて
電車に乗せます

この
革袋を愛するひともいるのです
革袋はそのときほんのり染まり
甘美な香りに
酔いしれさえするのです

皮から湯気を発して

2014年1月9日木曜日

いないいないバー

ぴたっとキマルそのポーズ
その瞬間
ドキューン×3

素知らぬ顔
アンニュイ
不埒な女なの そうそう

今日は顔の半分マスクして
立ち姿
細枝に可憐な花弁

はんなりキメタそのポーズ
その瞬間
スポーン×3

猫なで声 かすれ声
いないいない
バー×3

ヴァーサス イケメンじゃない
におう におう
メン×3

2014年1月8日水曜日

まだ行ったことのない場所が


まだ行ったことのない場所が
写真の中から誘っている
私はここでこうして生きてきたと
愚痴まじりの味わい深い話を始める

ここ日本は
2014年1月。1週間前からの天気予報が当たって
夕方から雨になった。
耳が寒さの向こうに
聞き耳を立てているのは
寂しいからじゃなく
未来の友だちを捜しているのだ

その写真には
葉がすっかり落ちてしまって
だがもう間もなく芽吹きそうな
広葉樹
雨上がりの濡れた道
その向こうに
雲の小どもが遊びにきそうな池

私は
部屋に帰ってきて
何かを整理するつもりもなく
だだ思いや視線を巡らせ
部屋の中を行き来し
昨日の残りの麻婆豆腐を
暖めて食べた

まだ行ったことのない場所が
誘ってくれているのは
幸せなことだ
そんな場所が
まだ五万とあり
その数は死ぬまで大差なく減らないだろう

私は
まだ行ったことのない場所に
行きたいし行きたくない
だが
ただどこかに
まだ行ったことのない場所があることが
私を生かしている
と言うことができるのだ






2014年1月7日火曜日

そしてあんたは

愛するとは
裂けた傷口を癒すことだ と
あんたは言った

一緒にいると
周りの空気が淀んでくるよ と
あんたは言った

離れていると
あんたを恨みたくなるんだ と
あたしは言った

波風が立たないと
不安と絶望で眠れないよ と
あんたは言った

そして
あんたはいなくなった
嵐の夜が終わった朝の
金色の日差しの矢の中
あたしもいなくなった

2014年1月6日月曜日

星屑 落下星(らっかせい)

得意なことを自慢しているあなたの
眼の輝きが好き

苦し紛れのいい訳を探すときの
あなたの声が好き

海でも見に行くかと
ぶっきらぼうに誘うあなたが好き

階段をひとりで走って上っていってしまう
気遣わないあなたが好き

お前は何がほしいんだと
決めているくせに訊いてくるあなたが好き

あなたが好きで好きでどうしようもない
のぼせちゃってる私も好き

サンダルつっかけて
夜道に星屑 落下星 探しにいこう

2014年1月5日日曜日

忘れてはいけない

冷たい風にあたり
ぼやけた気持ちをしゃっきりさせます
小さな勇気を取り戻します

忘れてはいけないもの
それは
真空の夜空から見守っている星
春風を生む暗い海
あなたが作りだすことができる未来

覚えていてほしいこと
私たち出会えたこと
離れたあとも忘れない
あなたの手の温もりが残って
いまも私を励ましている

2014年1月4日土曜日

あなたと私

電車にとびのれば
すぐに生まれ育った街に行ける
そこには見慣れた道
街路樹
駅前のビル

まだ
あなたと私が一緒にいたころの
思い出が
影のように 遺ってる

もう一度出会いたいなんて言えない
あの頃の私たち
楽しすぎて
輝いていたから

いまは静かに時を
やり過ごしている
その時を
美しい色に染め上げたくて

暮れ行く街
遠く 道の見えなくなるあたり
まだ
あなたと私
ふざけながら
歩いていそうで

2014年1月3日金曜日

足りない気持ちに包まれて

太陽と風の香りがする
ベッドに顔をうずめて
透明な涙を零してみたら
滴はすぐに
見えなくなった

部屋に舞う埃の小宇宙
フッと吹き飛ばして
どの靴を履いて出かけようか
考えてみた

君は遠くて近いから
君はやさしくて残酷だから
ボクは君と無関係に
生きていく

さよなら
さよならをおそれた
愛しい時間たち
もう君がいなくても
足りない気持ちに
包まれて 寄り添って
生きてゆける

2014年1月2日木曜日

夜を待つ朝は

夜を待つ朝は
無骨な薬缶の冷めた水の心

なんのために
生まれてきたのか

思春期は遠く過ぎ去ったのに
青春の蹉跌は
錆びて胸に刺さったまま

心臓が鼓動を打つたびに
これでもか、これでもか、と
痛みを投げかけてくる

夜は眠るもの
朝は希望を抱いで外に飛び出すものと
オトナは教えてくれたけど
むしろ 夜の闇の中にしか
希望は見出せないと今 感じてる

なんのために生きているのか
自己満足のためなのか
それとも他人を満足させるためなのか
そもそも意志や思いなどは無関係なことなのか
大事なことは
口を開けて待っていても
学びようはなかったのだ

夜を待つ朝は
無骨な薬缶の冷めた水の心

2014年1月1日水曜日

君の磁石

君の磁石はいい磁石かい?
何を引き寄せるというのだ
どこまでも渡ってゆける鉄の舟か
太古ににちりばめられた無数の恒星か

俺の磁石はいい磁石はかい?
何を弾き飛ばすというのだ
悪い連中が抱え込んだくすんだ名誉か
夜な夜な取り出して眺める不安と恐怖か

君の磁石はいい磁石かい?
何を預言するというのだ
大事なひとを即座に見分ける秘伝の術か
悪魔に出会わない藪の中の一本の小径か

俺の磁石はいい磁石はかい?
何を言いよどむというのだ
短い命が絶えるまでの残り時間か
悦楽と幸福を得るための生け贄のリストか

磁石は引き寄せ弾き飛ばし
預言し言いよどむ
人の胸の上で
踊り狂って光を反射して

2013年12月31日火曜日

あなたへ

暗くて寒い部屋
胸のところで缶ジュースみたいに
絶望を握りしめて
息を潜めているあなた
私は
あなたのことばかり
考えています

あなたにも
うれしさにみちあふれた
日々がありましたね

私にもありました

不器用なあなたは
大事なことを
いつも後回しにしないと
その大事さが分からなかった

幸せを放っておいて
人の幸せを願うという贅沢を
たくさんして
そんなに不幸に浸かってしまった

今度はあなたが
幸せになる番です
幸せをつかんだ人の
真似をしても
悪いことはないのです

私もそうしたいと
思っています

2013年12月30日月曜日

たとえられた風

海の向こうから
潮風の香りの手紙がとどく
はりがねの形の平仮名が
洒落た置き物のような漢字をつないで
ほどけぬように
カタカナでとめてある

あなたの見慣れたイニシャルは
渡り鳥が羽を休める場所
私もなんどか
あなたにとまって
羽を休めた

そんなこともあった

地球の違う場所では
朝と昼と夕方と夜とが
それぞれの場所を覆っていて
みな
違う言葉で挨拶をしたりするが
黙っている場合もある

そういう私も
いま黙って
手紙が来るのを待っている

手紙というたとえをまとった
なつかしい
春の風が

2013年12月29日日曜日

てにしたしゅんかんに

てにしたしゅんかんに
あわくきえてしまうものがある
てにしなければよかったと
くいてももうおそい

ずっとてにしたかったものなのに
ずっとおいもとめてきたものなのに

どうしてそれは
きえてしまうのか
てにしては
いけないものだったのか

ほんとうはわたしは
きづいている
わたしがそれを
ほしいとねがうちからが
わたしには
いちばんだいじなものだったと

それがこころにあったとき
わたしのこころは
つよかった

みたされることをまちこがれる
つよいおもいで
わたしはいつもみたされていた
わたしとともにいた
だいじなじかん

2013年12月28日土曜日

初めて知るだろう

あなたの前ではずんでいた白い鞠
私がポケットに隠し持っていた光るパイプ

あなたの髪が匂い立つ真昼のスコール
私の胸で渦巻く怪鳥の羽ばたき

あなたのものと
私のものを
一緒くたにして
たき付けに
くべてしまえ
その穴に
その竃の火に

やがて湯がたぎるだろう
湯に その辺の生命をそのまま投げ入れて
私たちは夜の間中
魔除けのダンス

やがて明け方の太陽が
夕焼け空を背景にしていると
初めて知るだろう
初めて知っただろう

2013年12月27日金曜日

日々の扉

もう気づくことはない
そんなふうに 思うことはなくても
毎日が新しいことの連続だった日々は
いつのまにか別世界を描いた絵のようだ

もう誤ることはない
そんなふうに 考えはしなくても
いつも間違った道に迷い込んでいたあの頃は
かさぶたとなってすでに消えた傷口のようだ

もう「いいひと」にはならない
そんなふうに 決意しなくても
すぐに人を信じてしまう性格は
皮膚に刻まれた曲がった笑い皺のようだ

もう私は私から抜け出したい
そんなふうに 望みはしなくても
そう願った日々の重い扉は
とっくに開け放たれていて出入りは自由だ

2013年12月26日木曜日

なみは

なみはさらう
りくちのものを
そのてにしたものを
うむをいわさず
ひきつれて

なみはつつむ
うつくしいもの
そうでないもの
おんどやいろさえ
同化して

なみは話す
太古と未知のはなし
いみのない繰りごと
その声がこきゅうと
まざりあったあとも

なみはしる
せつなのかがやき
むごんのよげん
なみだがかくまった
ちいさなこえも

なみはあそぶ
ほしとゆきをうずまいて
あさとよるを
ひとつにして
ふところに深海をかかえて

なみはありつづける
わたしがせかいから
しょうめつしても

2013年12月25日水曜日

見知らぬだれかが

心がつかれたら
重荷をいったん脇に置いて
ひと息つきましょう

ぎすぎすした衣を脱いで
日向ぼっこでも
してみましょう

好きな人と過ごした
きらめく日々を
思い出してみましょう

無垢な魂の
わがまま勝手な力を
体の芯に感じてみましょう

そして
あなたのように
心がつかれたひとのことを
見知らぬだれかが
どこかで
心配して祈りを捧げているのだと
信じてみましょう

それは全く
本当のことなのだから

2013年12月24日火曜日

気取らない幸せ

幸せをそっちのけにしておいて
それに気づかない人が多い

そしてそれに気づいたときには
もうその幸せはそこにない

メーテルリンクさんが教えてくれたのは
まだ学校に行く前のこと

ルビー色の気取ったカクテルが   いま
気取らない幸せを教えてくれた

もう学校も出て街をふらついている私に
君の居場所はそこではない   と

2013年12月23日月曜日

ケーキの入った箱を

ケーキの入った箱を
落としてしまいました
やっと手に入れた
大事なケーキ

ケーキは箱の中で
大けがしてしまったでしょう

私の顔からは
笑みがきえました
そのかわりに
涙がとまりません

あなたを守れなくて
ごめんね

強くなりたいと
願った夜

2013年12月22日日曜日

私の中に

泥水の中に落ちた
大事なもの
私の手を引いてくれたから

我に返った

太陽の光を跳ね返して
眩しかった

私の
大事なもの
泥水の中で
輝いていた

泥水の中から
私は
拾い上げた
泥でよごれてしまったけれど
それは
もっと大事なことを
話してくれた
私の中に
残った
その 輝き

2013年12月21日土曜日

記憶

あなたの顔は
なつかしい村

私はそこで
暮らしてた

泉の水で喉を潤し
水鏡でいい顔を作った

防風林をかき分け
砂浜に転がり遊んだ

小高い山に登り
しっとりした驟雨を浴びた

洞窟を覗き込み
コウモリのねぐらを見つけた


あなたの声は
到来(アリバダ)の知らせ

波打ち際に
一万の亀たちが上陸した

月は姿を隠し
影は命を満たした

私はあなたを縛り
あなたは一切の夜の記憶をほどいた

2013年12月20日金曜日

少年


みんなのまえでうたった暗い歌
聴かせたくない人がいた
強いものの陰に隠れ
弱い者をみていた弱い自分
寂しさのうえに横たわり
夢の中で遠くまで出かけた
自分の中の宇宙が自分を介して
外の宇宙と相談している
木の机に刻まれていた知らない人の名前
人差し指が覚えているそのなつかしい人

2013年12月19日木曜日

少し背伸びを

白い椅子に
空気が座っている
ほおづえをついて
私の話を聴いている

もうだいぶ長い時間が過ぎた
私は
さっきとまた同じ話をしている

空気が
あくびした
私は席を立って
改札口へ向かった

カードをかざすと
そこから数字が抜かれて
小さくなった

肩をすぼめていた私は
すこし
背伸びをしてみた

2013年12月18日水曜日

きいろいくまさん

きいろいくまさん
わらっているよ
ひとりぼっちで
ソファーにすわって

きいろいくまさん
なかないでね
わたしもひとり
ゆうごはんはパン

きいろいくまさん
どこかにいこう
だれもこれない
かなたのさとへ

きいろいくまさん
つかれてねむる
わたしもねむる
ほしぞらがいっしょ

2013年12月17日火曜日

ほしいもの

いま食べるための
ひときれのパン
いま喉を潤すための水
いま伝えなければならないことを知らせるコトバ
それをささえる勇気

私はほしい
パンでなくてもいい
水でなくても
コトバでなくても
勇気さえなくてもいい

いま
私がここに生きていくために
必要なもの

それがあれば
宇宙からの問いを
問いのまま受け入れることの大事さを
忘れることはない

流れる水さえ
止めることができる
一枚の写真に収まってしまったように
宗教画の一部となってしまったように
私は風景の一部に
積極的に加担する

黄金比のポーズさえキメて

2013年12月16日月曜日

きょうのぼく

いきているかちがない
しんだほうがましなぼく
しぬかちもない
いきているほうが
なみかぜがたたないぼく

いのちをつながない
かくんやいえもつがない
たちきるぼく

わるいせけんには
だまされてばかり
いいひとをまもれない
むりょくなぼく

ごみのかちもない
にさんかたんそをはいしゅつするぼく

はやくつちとまじって
しょくぶつになりたい
あわれでみにくいぼく

しょくぱんをたべるとき
おいしいとかんじる
そのことをだれかに
プレゼントしたい
きょうのぼく

2013年12月15日日曜日

しにゆくひとは

きょうは、谷川俊太郎さんの誕生日。毎年それを祝い詩を書くのですが、
この詩は違います。


しにゆくひとは


しにゆくひとは
すんでいる
にごりすぎて
すみわたる

みなもになにかをなげいれても
なみはたたず
なにもかもをしまいこむだけ

おともきこえてこない
この世でノイズを聴きすぎたので
もう音はたたない
ただかすかな色彩が
ゆうぐれて
漂ってくる

しにゆくひとは
方向音痴になっていく
三半規管も不要であるから
回路を切ったのだろう

走馬灯のようなおもいでが
走馬灯のように回る
意味が重なってしつこくなっても
意味は無意味に行きついたので
自由だ

しにゆく人が
死にゆきつくまで
あとどのくらい時間があるのか
答える神様はいない

死にゆく人は
死にゆく人になりきり
世間をつんざいて
血潮で線を描く

道に喩えることができる
無粋な比喩は
苦いくすりのように
何かに効き目がある

とは
言えないだろう

2013年12月14日土曜日

奇跡というもの

奇跡は何食わぬ顔をして
あんパンを食べている
ところで
そのあんはうぐいす色であった

奇跡はハッとして
帽子に手をやった
鳥のフンかとおもいきや
なんと金貨だった

奇跡は青空に
軌跡を描いて
行くべき道を
教えてくれたこともある

奇跡なんか起きたことがない
と言っている人がいるが
なんと滑稽なのだろう
気づかないなんて


☆蛇足

(奇跡はあまりに
ありがたがられるので
ありふれた格好で
ドアががたっと開くの待っている

ドアが開いたら
やさしい日差しが
あるいは
微かな風邪が
頬に触れるだろう

そのとき・・・・)

2013年12月13日金曜日

ほしいものができたら

ほしいものができた
買うことはできない
ほしいもののことを
ずっと考えている
ほしいものは変わらずに
そこにある
私は少しずす変わっていっていて
ほしいものは
気配を変えない
落ち着いている
瞑想しているのだろうか
あるいは眠っているのか
私の瞼は重たくなってくる
私はその場所から姿を消す
夢のなかでは
知り合いの女が
腹から血を流してもがいている
近くにその元恋人が立って
真っ二つに割れたiPadで
病院を検索していたがその過程で
ほしいものをみつけ
そちらに夢中になってしまっているようだ
私は女に
大丈夫だからと言って
女のことを気遣いつつ
助けたいと願った
私はこの女をほしいと思うと同時に
ほしいものリストに追加した

2013年12月12日木曜日

あなたがこのよにうまれて

あなたがこのよにうまれて
よろこんだひとはいたが
かなしんだひとはいなかった

あなたがかなしみのなかにいるとき
くうきはバリアをつくって
あなたをまもろうとした

あなたがこのよにうまれて
やがてあなたはめをひらき
うつくしいものをみた
いいかおりをかいだ

それはあなただけのものだ
いま
まちにながれはじめたおんがくも
よくきいてみるといい
それは
あなたのためだけに
かなでられている
おんがくだ



わたしはおもっている

2013年12月11日水曜日

花をだいていた女の子

はなをだいていた
おんなのこ
いつのまにか
じぶんも
おはなになっていました
みんながくちぐちに
きれいだと
いいました

はなをだいていた
おんなのこ
かれていく
おはなも
だいじにしました
みんながくちぐちに
あわれだと
いいあいました

はなをだいていた
おんなのこ
じぶんは
きれいじゃないと
ないていました
みんなはくちをつぐんで
ひとことも
こえをかけませんでした

はなをだいていた
おんなのこ
かれしが
きれいだよと
まいにちきすをしました
みんなはくちぐちに
おにあいだと
いいました

はなをだいていた
おんなのこ
はなの
たねを
まきました
みんなはどんなはなが
さくのか
めをとじてかんがえました

2013年12月10日火曜日

だからとにかく

こそこそと
みちのはじをあるけば
どろみずにはまり
こえをたてずに
ちかづくとちゅうで
ころんでたおれ

みようとすれば
そこにはもうなく
さわったときには
やけどしたっけ

のぼっていくと
みちはなく
くだっていけば
がけからおちた

わたしはさいきんこんなぐあい
だからとにかく
だいじょうぶ

2013年12月9日月曜日

本物

コンサートが終わり
一つの家族が薄暗い道を歩いている
命のかたまり

音楽はしつけ糸
靴はクッション
まとったユニクロのウルトラライトダウンは
隠し事を欺く

足取りは恋心の成れの果て
夜の星空は
寒い風に散る涙を映した偽物

2013年12月8日日曜日

ゆらゆらゆれて

ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています
うごくもののうえ
かわりゆくかたち
うまれてくるもの
きえさってゆくもの
ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています

ゆらゆらゆれる
しんきろうのまどから
みわたします
せかいは
やはりゆらゆらゆれて
そこにたつ
ひとはふらふらしています

ふらふらしながら
どこかに
たよるものがないか
めをまわしてさがしています

2013年12月7日土曜日

鉛筆で

私の考えは
鉛筆で書く
文字を書き間違えるように
考えもよく間違えるから

私の思いは鉛筆で書く
書き終わった途端に変わるから
きらいな人も好きな人に変わるから

私の未来は鉛筆で書く
あなたが消して書き直せるように
未来は独り占めできないだろうから





絵 一之瀬仁美

2013年12月6日金曜日

いつまでもここに

いつまでも
ここにすわっていたい
この席に

いまは
駅前の
クリスマスのイルミネーションを借景に
珈琲の香りが漂い
ほどよく賑わっている
今ふうのカフェだが
まわりのひとが
すべていなくなり
たてものに蜘蛛の巣が張り巡らされ
壁は剥げ落ち窓は割れ
寒風が吹きこんでも
街が廃墟となり
行き交うひとが皆無となっても
私は
この席に
すわっていたい

私の思いは
強く不変であるに違いない
私はいたい場所に
いたい
それが私の抵抗だから
それが私がいる意味だから

2013年12月5日木曜日

あやまち




あやまちをくりかえし
いきてきた
いきてきたといま書いたのも
またあやまち

あやまちにあやまちをかさね
あやまちの塔が建つ

あやまちの塔を自ら破壊して
あやまちの道をひきかえして
あやまちの川のほとり
誤って正しいことを
水にながす

あやまちで
日が暮れて
あやまちの夢にめをさまし
誤った名を呼んで
ふたたび眠る

あやまちをくりかえし
いきつづける
くらしをよくしようとする
だがくらしはよくならない
すべてがあやまちだから

あやまちの躯を
正しいもので染め
正しさというもので染め
中身も
ねこそぎ入れ替えなければ

それでも
あやまちをおかすだろうが
あやまちには
気づかなくなるだろう