2014年1月11日土曜日

どうしようもない子

どうしようもない子
その少年は
自分でも
どうして自分が人と違うことをするのか
普通のことが
普通にできないのか
わからない
いましがたも
飛び出して来てフェリーに
飛び乗ったばかりだ

強い海の風が
甲板の先端に立つ哀しげな少女を後ろから襲って
スカートの裾をなんども捲りあげて
少女は
パンティーのお尻を
その度ごとにさらけ出している

(少女はたぶんそれに気づいているのだ)
少年は高いデッキからそれを見て
独り占めしていたいと願っていた

悲しいことがあると…

悲しいことがあると
人は何をすればいいのだろう

少年は
いつまでもその
パンティーのお尻を見ていた
それは永遠に続く物語のようだ

海の強い風に
パンティーを捲らせて

(何かを忘れただろうか
少女は

きっと
そのことさえ
忘れてしまっただろう)

心では

何かと引き換えに

だが少年は
忘れない







どうしようもない子は
やがてオジさんになって
しみったれた自分をさすりながら
眼だけギラギラ輝かせている

少女は
なんどか暗い海に落ちたが
その度ごとに頭上に空を見て
波を蹴って上がってきた
そしてしたたかで情け深い母となり
どうしようもない子を育てている



1 件のコメント:

  1. 中村ゆき子2014年1月12日 0:07

    悲しいことがあると
    悲しいことがあっても
    人は何にもできない
    ひたすら時間が過ぎてくのを耐えるだけ
    思うようにいかない悲しさ
    わかってもらえない悔しさは
    似てるようで違う
    だけどどちらも独りよがり
    心の奥に潜り込んだあなたの言葉
    ぼんやり想いだしながら
    遠いいつかになるのを
    待つしかない

    返信削除