2011年11月26日土曜日

なになに を しているあいだに


なになに を しているあいだに

なになに を しおえてしまった

 

先生が

構文の説明を始めた

 

かのじょが なになにをしているあいだに

かれは なになにをしおえてしまった

 

私は 

胸騒ぎが抑えられない

 

彼は

大丈夫なのだろうか

彼女は

このことを知っているのだろうか

 

かれが なになにをしおえたとき

かのじょはまだ なになにをしていた

 

先生は

別の言い方で繰り返す

 

なになに に

言葉を挿入するのだという

 

私は 言葉がうまく挿入できない

先生はかまわず

どんどん先へと進んでいく

 

じんせいは ひまつぶしのようなものだ と

かのじょはしんじていた

 

先生は次の構文の説明に入る

私はまだ前の構文に縛られている

 

それに

私はそう思いたくなくて

世界中に飛んでいったのだ

 

そこには確かな目的が有るはずだと

用事を拵えては出かけていったのだ

 

じんせいは はひまつぶしのようなものだ と

かのじょはしんじていた

 

先生は繰り返すが

信じることは暇つぶしの条件なのか

 

そこに何が有るというのだろう

 

廊下で鐘が鳴った

そして

教室から私たちは出て行った

 

そこに何が有るというのだろう

そこに何が無かったというのだろう

*
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2011年11月25日金曜日

三階建のバス

三階建のバスに乗っていると
橋をくぐる時に怖い
本当は四階建だけど
四階はほとんど棺桶状の仮眠スペースなので
慎ましくも三階建と自称しているのだ

リゾート地のホテルから幹線の駅までを走るが
市街地に入ると
その巨きさはひときわ眼を惹くから
やがて人々は箱舟バスと
ヘンテコな呼び名を与えた

その三階に秘書と同乗しているわけだが
もちろん昨夜は
一緒のベッドで一夜を過ごした

持って行った小さなカバンは
イタリアの空港で
衝動買いしたものだったが
朝 シャワーを浴びている隙に
秘書がゴミとして捨ててしまった

駅に着くと
さすがは一流のリゾートの駅という感じで
洒落た店が立ち並び
静かに賑わっていた
中には訳ありの旅行者もいるのだろう

私たちはマクドナルドに入り
コーヒーとアッブルパイを分け合って食べた

きょうはこの後
仕事があるのだ
三階建のバスが
そろそろ新しい客を
乗せ始めるころだ

そういえば
四階に乗っていた人は
どうしたのだろう
乗る時も
降りる時も
顔を合わさなかった
ただ気配だけが
頭上で蠢いていた

捨てられたカバンにしまっておいた
人には見せられない大切なもののことが
気になり出していた
カバンと一緒に
砕かれ
燃え尽きただろうか

三階建バスは
確かに
私たちを降ろしただろうか

2011年11月24日木曜日

静かな夜に


静かな夜に


してはならないこと


 


静かな夜に


してみたいこと


 


してはならない恋を


してはならない人と


 


してはならないように


してみたいなと


2011年11月23日水曜日

見ている


誰かが見ている


誰だか


分からないけど


ずっと見ている


 


なぜ見ているのかは


分からないけど


 


見ているあなたに


気づいてから


わたしは


あなたを見ている


 


あなたは


やっぱり誰かを見ている


2011年11月22日火曜日

中国の自転車

僕の中国の自転車は
ないんだ
僕の日本の
自転車はいま
日本に在るんだ
日本の自転車は
日本から乗ってこられなかったんだ
だから
日本の僕の
自転車は今ないんだ
中国の自転車はないんだ
日本に在るのは
乗ってこられなかった僕の
日本の自転車なんだ

自転車が歩く僕を
追い越していくけど
僕の
自転車ではないんだ
僕は道を歩いている
それは部屋に僕は帰りたいからだけど
知らないうちに遠回りをしてしまうんだ
自転車をさっきから僕は
思い出して
中国にないから
海を渡って乗ってくるのを想像して
僕はいるんだ
僕の自転車は
中国にはないから
日本に在る自転車は
日本においてきた
つかわれていない僕の
自転車なんだ

2011年11月21日月曜日

社長入門 -1-

どこの世界にも
例外はつき物だが
ここではそれを無視して
語り始めよう

社長は職業ではなく
性格である
だから目標でもなければ
結果でもない

社長の性格を持っているものが
社長になるだけだ

社長は一つの生き方だという人がいる
だが
一つの生き方として社長があるのであって
(社長でない者が)
いろいろな生き方の中から選択して
社長になるのではない

社長はハナから社長であり
社長以外の何者でもない
いってみれば
社長は純粋な生き物なのだ
社長は社長であることから逃れることができない
また社長でないものは
社長が形成する世界(宇宙もしくは小宇宙といつてもいい)の中心に
位置することは最後までできない
かなしいかな
そこに感情や夢や希望を差し挟む余地はない

さて
ここでは
世界に数多いる社長の中から
一人の社長を選択し
その社長に関してさまざまな事象を
検討してみたい
その社長は
社長族(ここでは、以下そう呼ぶことにする)の
中心に位置するわけではない
もっとも
すべての社長は多かれ少なかれ
多次元世界を形成しているので
その中心は求めることはできないが
文明社会(ことに自由主義経済社会)における
社長研究の初心者 乃至 一般市民にとっての
平準的な社長像を中心とするならば
異端 若しくは異境に在る ということができる
統計学を用いてさまざまな指標に照らしても
その主だったマークポイントはその事象を示している

なぜ
平準的な社長を取り上げないか については
追って示す(暗示も含む)こととするが
社長Σ(ここで取り上げる社長をそう呼ぶことにする)について
考察を進めていくと
そこに世界のあらゆる社長の謎を解く鍵ともいうべき
ある普遍的な事実に行き当たることに気づくだろう
すなわち
社長は職業ではなく性格であるという命題
そしてまたその周辺に
この命題を支えるべく
いくつかの柱が存在するということに

私感を述べれば
これは実に驚くべき風景である
今まで常識として扱われてきたものは
たちまち風化してしまうだろう

さあ
社長Σへの扉は開かれた
あなたは入る勇気が在るだろうか
社長族の世界に

私がご案内するとしよう
最後までお付き合いを願いたい
社長であるあなたも
社長でないあなたも

私は何を

寒い風が吹いてきた
水溜りは凍って
何もかもをあきらめている
 
寒い風が吹いてきた
私は黙って
月明かりの下 歩いていく
 
寒い風が吹いてきた
風を追いかけて
連れ立って落ち葉が行く
 
寒い風が吹いてきた
私は追いかける
耳元で誘惑する声はないけれど

 

2011年11月19日土曜日

バスが来るまで

バスが来るまで
話をしよう
バスがきたら
お別れ

走り出すバスを見送るのは
つらいことだ
もう二度と
約束して会うことはないから

つめたい蛍光灯の光に照らされた顔は
お化けのように青白い

いつか見た
ムンクの絵のようだ

そういえば
今日の月は欠けていて
青白い光を降らしている

涙を搔き出すにも
頼りない

何も話さないうちに
バスはやってきた

気がつくと
バスはもう何処かの駅に到着している

2011年11月18日金曜日

くすぐったいから


ありがとう

へんなことばだ

 

有難き幸せ

などと

お侍さんは言ったのだろう

 

ありが

十匹

いるのを想像した人は

実はほとんどいないだろうが

ありがとう

と言うとき

背中にありが這い回って

ちょっとくすぐったい

 

ほんとはとても

くすぐったい

 

これは

本当の話

 

ありがとうは

くすぐったいから

ありがたい

 

ありがたいのは

二人の間の
 
独特の間
 
 

2011年11月17日木曜日

覚悟


わたしに入門するには


覚悟が必要だ


そもそも


その覚悟を


何処かに置いてきてしまっているらしい


母親のおなかの中か


それとも


泣きながら通い始めた


幼稚園の道具入れの中か


家のそばの原っぱか


もう


烏に運ばれて


何処かに捨てられてしまったかも知れない


 


私は


わたしに入門するための


心の準備をする前に


梯子をはずされたままなのだ


 


何かがたりない


それは


ただの言い訳だろうか


 


わたしへの道は険しい


わたしの門はまだ見えてこない


夜も白々と明けてきた


窓を開ければ


霧のにおいが漂っている


 

私は


門を叩かなければならない


門を見つけて


覚悟を決めて


きょうこそ臨まなければならない


 


だか


まだそこにいたる道筋さえ


はっきりしていないのだ


2011年11月16日水曜日

わたし入門


わたしは


わたしに


入門したい


 


わたしとは


何なのか


わたしは


何のためにあるのか


いい わたしをみつけるには


どうしたらいいのか


わたしには


どのくらいのお金と時間がかかるのか


わたしを


上手く使いこなすにはどうしたらいいのか


 


人の役に立つ


わたしを作るには


どんな方法があるか


わたしを所持するために


届出や手続きをどこでやったらいいか


 


わたしは


早く


わたしに入門し


初級をクリアしなければならない


そして


はやく仕事に結び付けなければならない


もうすぐ誕生日が来る


 


それまでには


わたしは私の初級を取得し


中級の勉強を始めたい


もう何年も愚図愚図している


 


だれか


手伝ってくれる人はいないか


いい参考書を


教えてくれないか


 


夕闇の部屋で


わたしは考えながら鏡に向かっている


全身を映すことはできない


向きかえって


パソコンの電源を入れる


在り来たりな模様と文字が


浮かびあがる


 


私はわたしを検索してみよう


いくつかの情報が示されるはずだ


さあ


いまから勉強を始めよう


 


明日には


明日がやってくる日が


ある限り


いや


なにはなくとも


この私が望む限り


2011年11月15日火曜日

あなたは会ってくれますか

この森の葉っぱの数を全部数えたら
あなたは会ってくれますか
この海の水を全部飲み干したら
あなたは会ってくれますか
この宇宙にあるすべての星の灯りを消したら
あなたは会ってくれますか
それとも
私が消え去ったら
会ってくれますか

2011年11月14日月曜日

あなたのことを書くことができない

詩に
あなたのことを
書くことができない 

窓から月の光が入ってくるので
明かりを消して
あなたのことを
書こうとするけど

きらきら光る
街のあちこちちを眺めても
あなたをそこに置くことはできない

街灯の明かりから電線をたどって
あなたの部屋に尋ねていっても
あなたはひとり
アイロンかけをしているから
声をかけることもできない

衣服は過去の思い出を
浸み込ませているかもしれないが
そこに私の香りは混ざっていない

私は
言葉の通じない地で
学生と混じって生活している
あなたがつい最近まで
やっていたことを
私は経験を踏み倒して
後戻りして
やっている

あなたの後ろから
歩いていこうと決めたのは
夏の日
あなたの詩を書き続けて
書くことができないと思ったのは
きょう

十一月十四日の夜

2011年11月13日日曜日

つながる

パソコンの画面から
あなたが出たり入ったりしているのが分かる
つながっている人は
表示されるのだ

あなたと私が いまも
つながっていると思っている人はたぶんいないが
私のパソコンは
今でもつながったり
離れたりを繰り返していることを
告げてくる

私があなたを思うとき
あなたの姿はなく
あなたが
誰かとつながるとき
私もまた
あなたとつながる

ランケーブルは
もちろん
綱引きではないが
なにかを
手繰り寄せてしまう

2011年11月12日土曜日

まおのピーコ


まおのピーコが


にゃおのミケを


咥えて


かけていったよ


 


夕日の彼方


芝生の上を


 


まおのピーコは


にゃおのミケが


好きなんだ


それで


咥えて


かけていったんだ


2011年11月11日金曜日

行ってらっしゃーい

肩を トン と
叩かれた

振り返ると
一本の木が
月を背おって立っていた

僕を止めないで
寒い季節がくる前に
誰も行ったことのない場所へと
旅立つんだ

道先案内人は
よく知っている
ニャオに頼んだ

行ったてらっしゃーい
と声をあげたら
道の並木が木霊を返した

2011年11月10日木曜日

愛する人に

本当のことを教えてくれた人は
何食わぬ顔をして
誰かと話を続けている

本当のことを教えてくれて
ありがとう
私は何も持っていないけれど
あなたの荷物を持つことはできる

2011年11月9日水曜日

夢をみた

夢をみた
また続きがみたいと思った
でも
いつまでまっても
その続きは
みられなかった

夢をみた
もう二度とみたくない夢だった
でも
目を覚ますことが
できなかった

2011年11月8日火曜日

一番大事なもの

一番大事なものは何ですか
と 問われて
まじめに悩んだ
いつもそうである
一番大事なものなんて
あるのだろうか
そうやって
考え始めたら
いろんな大事なものが頭の中に現れては
こちらをキッとにらんで
消えていった
いつの間にか
日は暮れ
空には星が出ていた
幼いころと同じように
輝いて
そして
突然気づいたのだ
そんなことを
考えるのは
とても窮屈だということに
そして
一番大事なものが
見つかった

2011年11月7日月曜日

鈴木さん

授業が終わって

急いで塾に来た

鈴木さんはまだ来ていない

蛍光灯がまぶしい

 

鈴木さんは

ほかにいないような

清楚で色気の在る人だ

白いブラウスが蛍光灯の光で

輝く

うっすらと肌が透けて見える

 

鈴木さんの後ろに座るとき

心は膨張して

ほとんど鈴木さんに吸い取られる

 

授業の先生の声がたまに遠のき

森の中で

花の香りを嗅ぎ

小雨に打たれる

 

おしゃべりするみんなの声は

風の音

葉っぱがざわめき

空に雲が流れる

 

さようなら

鈴木さん

なにもいわないまま

あなたとは

ずっと会わなくなった

いまもどこかにいるのだろうか

それとも

幻のように

消えてしまったのか

 

2011年11月6日日曜日

あいつ

なまけもので

おっちょこちょい

ねぼすけで

くいしんぼう

こわがりで

ずるがしこい

おひとよしで

うたぐりぶかい

くわずぎらいの

ひゃっかんでぶ

なきむしけむし

ひとまねばかり

よくばりのごうじょっぱり

がんこでのんき

 

どこかにくめない

あいつは

きのう

しんじゃった

 
 
 
なにぬねの
さいきん ちょっと
なにぬねの
めっきり 元気が なくなった
なにぬねの
夜空の月は 変わらない
それは気のせい 
わからない
なにぬねの
どうでもいいこと
なにぬねの

2011年11月5日土曜日

なにもかも

なにもかもうまいくなんていうことはないのに、

なにもかもうまくいけばいいなとおもう。

なにもかもうまくいかないとおもっているひとは

なにもかもうまくいくことより

ほんとうはなにもかもうまくいかないことをのぞんでいるから

なにもかもうまくいかないことにまんぞくしている

というのは

わたしのしゅかんだが

わざわざそういうのは

ほんとうはきゃっかんてきじじつだとおもっているからであり

ちせいあるわたくしのそんざいをこうていしたいためで

なにもかもうまくいかないことにまんぞくしているひとと

たいさない

そのひとはわたしであり

わたしはそのひとである

なにもかもうまくいくひとと

なにもかもうまくいかないひとは

そうじけいでありいっしょである

なにもかもうまくいったときに

なにもかもをうしない

なにもかもうまくいかなかったときに

なにもかもをてにする

なにもかもはすべてであり

すべてであるものは

無である


 

*
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2011年11月4日金曜日

愛していると言えなくなっても

愛しているといえなくなったのは
本当に愛し始めたからだと
認めたくなくて
ふてくされて
11月のテラスで
アイスミルクティーを飲んでいる

風が吹くと
身を縮こめなければ
寒さを追いやれない
愛しているといえない自分は
つぼみを閉じているようだと思う
音楽を聞かせても映画を見せても
わずかに視線を動かすだけだ

愛する人は
目の前にはいない
愛する人は
気軽にメールしてくるけれど
ちっともうれしくなんかない

私は
愛していると いつか
言いたいんだ
愛しくれないあの人に
言いたいんだ

2011年11月3日木曜日

金魚には悪いけど

かばんの中にあった
ペットボトルのふたが取れて
底に水がたまっていた
たまった水の中で
教科書が
悲鳴を上げていた

教科書に載っていた
金魚が
逃げ出してしまったらしい

でも
大丈夫
僕は余裕で笑って見せた
金魚はかばんのなかから逃げられない

部屋に戻ったら
乾かして
また
本の一ページに
貼り付けよう

なかったことのように
せっかく逃げた
金魚には悪いけど

2011年11月2日水曜日

学校

黄色く色づいたいちょう並木が
慌てて飛び出した僕の目に入ったとき
慌てていた理由も忘れて
なぜか走り出さずにはいられなかった

どこに行くのかはっきりしないけれど
もう 思うままに
走り出していた
そんなに速く走っている訳ではないが
心は滑るように先走った

人が大勢
反対側から歩いてきたので
流れに逆らいながら
走っていった

どこまでも走っていった
息を切らしても
止まることはなかった

やがて
月がぼんやりと僕を見下ろし
黄色い葉っぱは
ますます黄色くなっていった

頭に
葉っぱが二枚落ちてきて
僕ははっとした
葉っぱに頭を触られたのは
いつ以来だろう

思い出すことができない
僕があのひとの頭の上に
落ちて
触ったときの感触も

2011年11月1日火曜日

パンダ娘とは呼ばないけれど

黒い帽子をかぶった鳥が居て
ぼくはパンダ鳥とよんでいる

白い鳥で
頭の部分だけ
帽子をかぶったように見える

鳥パンダに
教えてあげたい

そういえば
あのこもそうだ
パンダ娘とは
呼ばないけれどね

あっ
そういえば
ぼくも

2011年10月31日月曜日

じんせいは わからない

よいことをして
わるいこともして
よくもわるくもないことをして
どちらかわからないことをして
おとなになった

おとなになっても
よいことをして
よくないことをして
どちらかわからないことをして
ろうじんになった

じんせいは
むずかしい
じんせいは
おもしろくて
つまらない
あくびをしたら
しかられる

しかったひとも
あくびをしてる

2011年10月30日日曜日

寒い季節がやってくると

寒い季節がやってくると
コタツにいた猫が
黒焦げになって
塀の上を歩いている

寒い季節がやってくると
落ち葉に隠した
木の葉のお金が
白い煙を出しながら
小さな炎を灯して燃えてしまう

寒い季節がやってくると
散歩に行くのがいやになり
ついでに
愛する人を
迎えに行くのもいやになる

寒い季節がやってくると
寒がりのあなたが
暖をもとめてあいつに寄りそい
いつまでまっても
帰ってこない

2011年10月29日土曜日

試合

あなたは私の様子を窺って

質問の玉を打ち込んでくる

わたしは

しどろもどろになるが

必死にこらえて体勢をつくり

その玉を打ち返す

 

うまく打ち返せることもあれば

そうでないときもある

フェンスを越えて

通りがかりの人に拾ってもらうことも

しばしばだ

 

それでもあなたは

不意をついて

質問を打ち込んでくる

剛速球の質問は

打ち返すことができずに

地面にバウンドして

快音を立て後ろに流れていく

 

あなたはびくともしない

笑っているのか泣いているのか

なんともないのかさえ分からない

 

星屑が暗くなった空から

降ってくる

月がやさしく灯っている

 

あなたは

私を近づけない

あなは

私が近づくのを恐れながら

誰かを待っている

 

2011年10月28日金曜日

愛の練習

わたしはあなたをあいしています
中国人のえんこんさんが
食事時に
中国人のしゃおりいと
しゃおちょんに
日本語を教えている
さっきからなんども繰り返している
わたしはあなたをあいしています
ふたりは覚えるのに必死だ
わたしはあなたをあいしています
僕はすこしはなれた席で
それを聴いて頷いている
ふたりの発音はなかなかうまい
真剣にゆっくりと
一音ずつ発音するので
彼女たちの知らぬまに
愛が言葉に飛び乗ってやってきそうだ
それはたぶん
やっかいだ
愛がやってきたら
急いで窓を閉めるか
とりあえずソファに座らせて
どうするか考えなくてはならない
あなたはわたしをあいしていますか
こんどは疑問形が
僕の愛を探りに来た
隠さなければ
すき
不意打ちで
省略形もやってきた
すきですか
すきです
きらいですか
すきです
私は
窓を開けたり閉めたり
考えたり
忙しい
わたしはあなたをあいしていますか
おっと
これはむずかしい
はい
たぶん
あなたは私を愛しています



取締役

取り締まります
あなたを
きつく
やさしく
締め付けます
きのう
あなたは
よくないことをした
私が見ていないとおもっていたの?
私はこっそり見ていました
私は網を張って調べていました
それが私の役目だからそして
すべてを報告書に書きます
自分に都合のいいように
あなたの運命の一部は
私次第
あなたは知っているでしょう
私の愛の姿を取り締まる者と
取り締まられる者
表裏一体となって
これからも
どうぞよろしく
業績は
あなたしだい
来年度の計画も
中・長期目標も
私が認めれば思いのまま
あなたと私の将来は安泰
市場に適応さえすれば
市場に溺れても




2011年10月26日水曜日

いなくなった私に

あなたがこの世からいなくなっても
私はあなたを探し続けます
私がこの世からいなくなったって
あなたは
いなくなった私に
探されるでしょう

2011年10月25日火曜日

駆けてきた娘

走っていってしまいました
ぼくの手をほどいて
雲の流れる方へ
風の音がする
街の方へ

走ってきたと思っていたら
走っていってしまいました

2011年10月24日月曜日

やっぱり愛していたんだ

やっぱり愛していたんだ
それでも
やっぱり愛していたんだ
もう愛することはやめようと決めたんだ だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
あなたにも私にもいいことではないとわかっていた だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
とりためた写真は捨てられずに残っている
いつか捨てようと決めた だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
あなたより好きな人はきっと見つけることはできる
あなたより私にふさわしい人だって……だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
もう夢で見たことと現実に起こったこと
あなたの顔や仕草だって本当は忘れてしまっているのかもしれない
あなたのいやなところや可愛くないところだっていっぱいあったはずだ
だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
過去形と未来系が衝突して大破して
私は傷ついてたまに後ろ向きになって
もう早く忘れたほうがいいと何度も思ったんだ だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
愛していたいだけなのかもしれない
本当は愛していないのかもしれない
愛とは何か分からないのかもしれない
愛は刹那なのか永遠なのか
そんなこともわからない だけど
それでもやっぱり愛していたんだ
愛していたといわれて
愛する人はどう思うのだろう
破れたチラシが風に待ってまとわりついてきたくらいのことかもしれない
だけど それでもやっぱり愛していたんだ
勝手に愛していたんだ
誰かに忠告されても
ずっと会うことがなくなっ
その声もまなざしも忘れてしまっても
約束したいろんなことがおもい出せなくても
それでもやっぱり愛していたんだ
だけど
もうやめようと思うんだ
先が無いと思うから
それでもやっぱり愛しているんだ

2011年10月23日日曜日

資格試験

資格試験に落ちた記憶はないのだか
受かった記憶もないから
やはり資格は持っていなかったのだろう

あなたから
「あなたには資格がない」言われて
作り笑いしかできずに
課題を家に持ち帰ったけれど
あなたが家庭教師をしてくれない限りは
問題は解けそうもない

あたふたと困り果てて
いつものように疲れて眠ってしまった

しっかりした人なら
眠さに負けることもないのだろうが

あなたは
私を見通して
とっくに決めていたのだろう

この人は
私のパートナーになる資格はない

2011年10月22日土曜日

ただ愛してはいなかった

あの人は私の将来を一緒に考えてくれた
ただ愛してはいなかった
あの人は誕生日でもないのにプレゼントをくれた
ただ愛してはいなかった
プレゼントはひとつではなく沢山だった
ただ愛してはいなかった
熱が出たとき、あの人は看病してくれた
ただ愛してはいなかった
川べりの道を歩いて手をつないだ
ただ愛してはいなかった
またどこか行こうねと何度も約束をした
ただ愛してはいなかった
あの人は私を大事にし、やさしかった
ただ愛してはいなかった
あの人は私を喜ばせることが好きだった
ただ愛してはいなかった
あの人は私に大事にいているノートをくれた
ただ愛してはいなかった
あの人はいつも私に愛していると言っては抱きしめた
ただ私は愛してはいなかった

2011年10月21日金曜日

ただ愛してはいた

そのひとのことが好きなわけではない
ただ愛してはいた
そのひとに幸せになってほしいなんて思わない
ただ愛してはいた
そのひとと暮らしたいとは思わなかった
ただ愛してはいた
そのひとはほかの人と暮らしていた
ただ愛してはいた
そのひとは私をなじった
ただ愛してはいた
そのひとは時々発狂した
ただ愛してはいた
そのひとはときどき変な顔を見せた
ただ愛していた
そのひとはどこかに行ってしまった
ただ愛してはいた
そのひとは突然姿を見せたが挨拶もしなかった
ただ愛してはいた
そのひとは私を愛してはいなかった
ただ私は愛してはいた

2011年10月20日木曜日

なぜだかは わからないけど

遠くにいるあの人は
きっと私のことを
思ってくれている

私が思う分だけ
きっとあの人は
私のことを
思ってくれている

なぜだかは
わからないけど
私は
信じることができる

なぜだかは
わからないけど
私はあの人を
愛している

近況など

このページを読んでくださる方に感謝をこめて、ちょっと近況を書きます。ツイッターに書き込むには、とてもお金がかかるので、ここに書くことにします。フェイスブックに書き込む方法は見つかったので、よかったら、そちらも見てください。

私は、いま北京大学に留学生として来ていて、学校の宿舎に住んでいます。リビングとシャワー・トイレは三人共用ですが、寝室兼デスクの在るパーソナルスペースがあり鍵を掛けられます。
毎日、約四時間の授業に出席し、そのために約4時間の予習復習をしています。留学生はいろんな国の、いろんな年齢の人がいて、一緒の教室で勉強しています。15人ほどのクラスで、いい感じの人がそろっています。日本人も一緒になることがありますが、しゃべらないようにしているので、日本語はまったく使うことがありません。

北京大学はとても広くて美しいキャンパスですが、たまにスモッグに包まれます。そんな日は喉が痛くなる前に、部屋に帰って喉用のスプレーをひと噴きしてなるべく外に出ません。昔から喉が弱く、すぐ風邪をひきましたが、いまは、対処法がいろいろ見つかったので、風邪をひかなくなりました。
来週はアイスランド、日本からも詩人が来て、中国の詩人たちと一緒に、北京大学で詩の研究会があります。私も参加することになりました。

詩の勉強をすることや、その同志たちと何かができることはとても幸せです。
中国に来る詩人の一人に覚和歌子さんがいらっしゃいますが、先日、横浜のオブラートのイベントでご一緒しました。中国で再会できるなんて、素敵なことです。

中国に来た目的の一番は、中国の詩人たちと交流することにあります。友人の詩人、田原さんのおかげで、早い機会に中国の詩人たちと再会出来ることとは、ありがたいことです。

2011年10月19日水曜日

私の消しゴム

ひとつの消しゴムを
こんなに長い間
大事につかったことは
いままで
なかった

見慣れない文字を消し
かなわない絵空事を消し
空に浮かぶ雲を消し
書き損じた作文を消した

紙の上の世界が吸い込まれ
消しゴムのかすが取り払われると
新しい道のように
まぶしい光が反射していた

消しゴムを手に
私はきょうも
出かける

どこかに
行くために

帰る場所を
見つける旅を
思い描きながら

2011年10月18日火曜日

自分の胸に

明け方に悪魔が来た
私が眠るのを見に来た
悪魔に見られながら眠るなど
いままで
考えたこともなかった

悪魔は
本棚の隙間に隠れて
旧い詩集のように
私を見ている

私が悪魔を見ようとすると
悪魔はすかさず目をそらすので
恋人同士のように
親密にはなることはできない

悪魔は私が寝入ったあと
何をしているのだろう
訊いてみたい衝動に駆られるが
目を覚ましたとき
いつもそこに悪魔はいない
どこにいってしまうのか

自分の胸に
訊いてみよるとしよう

2011年10月17日月曜日

あなたの唇は濡れている

あなたの体に触れていると
花の香りに包まれる

どんな花が香っているのか
目を閉じて想像しながら
月の明るい海に漕ぎ出す

近くで波音はするが
海は静まっている
小さな船は
めまいを起こしそうな揺れを続けるが
あなたと私はしっかりと結び合って
酔うことも受け付けない

たしかなお互いの感覚を
確かめるだけだ

遠いような近いような
未来のような
懐かしい景色の中にいるような
今までにない想いが
とどまって波打つ

あなたは
揺れが収まるタイミングで
小さく声を漏らし
喉の奥に仕舞い込む

私たちは目を開けているのか
瞑っているのかも分からないまま
どこかへ進もうとしているが
同じ場所を行ったりきたりするばかりだ

あなたはずっと
私の腕に長い指を巻きつけてつかまったまま
疲れることも知らないようだ

どこかで
鳥が飛び立ったような気がして振り向くと
それは
あなたの胸から
たったいま飛び立った
透明な鳥だった

月の光の反射で
その輪郭だけが
空に上っていった


matsuzakiyoshiyuki@gmail.com

2011年10月16日日曜日

あなたは濡れていないだろう

あなたは濡れていないだろう
この雨の夜の中でも
あなたは雨を除け
濡れていないだろう

あなたはすでに濡れていたから
濡れるべきところは
濡れているたら
もうこれ以上濡れることはなかったのだろう

あなたは
乾いた笑いに湿り気をなじませて
絡み合う手をしっとりと結び
濡れた瞳で見つめているだろう

だから
あなたは
この雨に
濡れていないだろう

濡れている私をよそに
乾いていっているだろう


☆読んでくださっている方へ

ありがとうございます。
今、中国に来ていて、自分のブログを毎日見ることはできません。二週間に一度ぐらいは見られると思います。
ただしコメントが書き込まれた場合、コメントはすぐにメールで送信されてきますので、見ています。Pollyさん、匿名さん、メールで感想を送ってくださる方、ありがとうございます。
マツザキヨシユキ

2011年10月15日土曜日

そしたら雨が降ってきた

あなたのことを考えて
下を向いて歩いていた
そしたら雨が降ってきた

あなたのあなただけにしかないものを
その素敵さを思っていたら
いろんなことを忘れてしまい
そしたら雨が降ってきた

あなたと私は
うまく別れられたかな
私はそうは思っていない
あなたはあまり気にしていないだろう
最後は笑顔で手を振って
うれしい気持ちがあふれていたけど
それが最後だったのかな

そしたら雨が降ってきた
天気のことなど気にしていなかった
あなたのことを考えていたから
ほかのことはすっかり忘れて
街路樹や花壇が美しかったから
あなたのことを思っていた
そしたら雨が降ってきた

別れに涙は似合いすぎていて
私はなおさらかっこわるかっただろうから
笑顔で手を振る雰囲気で
じっさいとてもうれしくて
あなたもきっとうれしくて
それはとてもよかったな

あなたはその後どうしているの
私はなにかに弾かれたように
空を飛んで遠くの町にやってきた
時間は過ぎていったけれど
いまからまたあのつづきもできそうで
いろんなことが
ごちゃごちゃになって混じり合い
前後不覚
倒れこむ勢いで
足を出せば前に進む
乾いた石の歩道はさっきから
ずっと続いていた

目的地を目指して歩いているんだ
そしたら雨が降ってきた
雨は歩道を濡らしている
あなたは濡れていないだろう

愛しているといえなくなった日

愛しているといえなくなった日に
曇り空を見ている

道を歩くと
自分の靴音が控えめな音を立てて鳴っていることに
心地よさを感じる

これは
さびしい
悲しみのリズムを刻んでいるのだろうか

小さな鳥は
私が見ていることに気づくと
首をかしげて何かを考えているようだったが
すぐに飛びたって
見えなくなってしまった

すべてのことがなかったかのように感じるのは
感傷的な心のせいだろうか

私が歩いていくと
木々や芝生の庭が
前方からやってきて
後方へと去っていく

見上げるられた
木は
角度の変化に合わせて
葉っぱが膨大な情報量の映像を浴びせかけてくる
しかしそれは
ひとときのことだ

銅像の向こうを回り
その古い建物の入り口から中に入り
学生たちの間をすり抜けて
教室に入ると
さまざまな国からやってきた
おそらくはさまざまな事情を変えた人々が
かたことの言葉や
流暢な母国語でしゃべっている

私は
日本で生まれ日本で育った
マツザキヨシユキという名前の人間だが
いまは
ソンチーイーシンだ

ソンチーイーシン
あなたは誰ですか

あなたはなにを
したいのですか