2011年10月17日月曜日

あなたの唇は濡れている

あなたの体に触れていると
花の香りに包まれる

どんな花が香っているのか
目を閉じて想像しながら
月の明るい海に漕ぎ出す

近くで波音はするが
海は静まっている
小さな船は
めまいを起こしそうな揺れを続けるが
あなたと私はしっかりと結び合って
酔うことも受け付けない

たしかなお互いの感覚を
確かめるだけだ

遠いような近いような
未来のような
懐かしい景色の中にいるような
今までにない想いが
とどまって波打つ

あなたは
揺れが収まるタイミングで
小さく声を漏らし
喉の奥に仕舞い込む

私たちは目を開けているのか
瞑っているのかも分からないまま
どこかへ進もうとしているが
同じ場所を行ったりきたりするばかりだ

あなたはずっと
私の腕に長い指を巻きつけてつかまったまま
疲れることも知らないようだ

どこかで
鳥が飛び立ったような気がして振り向くと
それは
あなたの胸から
たったいま飛び立った
透明な鳥だった

月の光の反射で
その輪郭だけが
空に上っていった


matsuzakiyoshiyuki@gmail.com

2 件のコメント:

  1. 今日は、唇が濡れているんですね^^

    月の明るい海に浮かんでいるような気分になりました。
    透明な鳥は、祈りの象徴でしょうか。

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  2. 人は海から命をもらったから、
    濡れていないと命が枯れる。
    でも、水の中では生きられない。
    やっかいな生き物ですね。

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