2011年11月7日月曜日

鈴木さん

授業が終わって

急いで塾に来た

鈴木さんはまだ来ていない

蛍光灯がまぶしい

 

鈴木さんは

ほかにいないような

清楚で色気の在る人だ

白いブラウスが蛍光灯の光で

輝く

うっすらと肌が透けて見える

 

鈴木さんの後ろに座るとき

心は膨張して

ほとんど鈴木さんに吸い取られる

 

授業の先生の声がたまに遠のき

森の中で

花の香りを嗅ぎ

小雨に打たれる

 

おしゃべりするみんなの声は

風の音

葉っぱがざわめき

空に雲が流れる

 

さようなら

鈴木さん

なにもいわないまま

あなたとは

ずっと会わなくなった

いまもどこかにいるのだろうか

それとも

幻のように

消えてしまったのか

 

1 件のコメント:

  1. 今日は、ホームルームが順調に終わったから、
    塾には早く着いた。
    佐藤くんが、息せき切って教室に入ってきた。
    こっそり誰かを探している。
    私のことなど、教室の備品の一つとしか思っていないかのように、まるっきり関心はない。
    つむじのところの髮の毛がはねている。
    佐藤くんが誰を探しているか、私は知っている。

    生徒が集まりだし、授業が進む。
    私の目には、鈴木さんと、佐藤くんのところにだけ、スポットライトが当たっているように見える。

    鈴木さんが来なくなって、じきに佐藤くんも、塾に来なくなった。
    暗い教室では、先生が発している音声だけがよく聞こえた。

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