授業が終わって
急いで塾に来た
鈴木さんはまだ来ていない
蛍光灯がまぶしい
鈴木さんは
ほかにいないような
清楚で色気の在る人だ
白いブラウスが蛍光灯の光で
輝く
うっすらと肌が透けて見える
鈴木さんの後ろに座るとき
心は膨張して
ほとんど鈴木さんに吸い取られる
授業の先生の声がたまに遠のき
森の中で
花の香りを嗅ぎ
小雨に打たれる
おしゃべりするみんなの声は
風の音
葉っぱがざわめき
空に雲が流れる
さようなら
鈴木さん
なにもいわないまま
あなたとは
ずっと会わなくなった
いまもどこかにいるのだろうか
それとも
幻のように
消えてしまったのか
今日は、ホームルームが順調に終わったから、
返信削除塾には早く着いた。
佐藤くんが、息せき切って教室に入ってきた。
こっそり誰かを探している。
私のことなど、教室の備品の一つとしか思っていないかのように、まるっきり関心はない。
つむじのところの髮の毛がはねている。
佐藤くんが誰を探しているか、私は知っている。
生徒が集まりだし、授業が進む。
私の目には、鈴木さんと、佐藤くんのところにだけ、スポットライトが当たっているように見える。
鈴木さんが来なくなって、じきに佐藤くんも、塾に来なくなった。
暗い教室では、先生が発している音声だけがよく聞こえた。