2013年5月23日木曜日

鍵穴


したいことがない訳ではない
したいことを無視している訳でもない
したくないことばかりが山を成して行く手を塞ぎ
しなければならないことが張り巡らされ
したいけれどできないことが礫となって飛んで来る

歩くこともままならない
止まれば砂塵に襲われ
逃げればスコールが付いて回り
叫べば雷鳴に打ち消され
黙れば静寂に呑み込まれる

したいことがない訳ではない
ここから抜け出て
したいことをしなければ
しなければと思わずにしなければ

したいことは
向こうに行っても
死体とならずに
生きているだろうか

不安が影を伸ばし
くっきりした輪郭を作る
そのなかの光る一点に
鍵穴がある

2013年5月22日水曜日

心の隙間


心の隙間に何もない
心の隙間を埋めるもの
売っていたなら買ってこい
心の隙間を埋めたいが
そうは問屋がおろさない

心の隙間が軋んでる
心の隙間を癒すもの
どこかで奪って盗ってこい
心が泣くのをとめたいが
ますます侘しさつのってく

心の隙間がつんざける
心の裂け目を縫うミシン
知らん顔して手に入れろ
心を取り繕いたいが
心は空に消えていく

2013年5月21日火曜日

ルビールビー

ルビールビー
白い日々
ルビールビー
君の夢
ルビールビー
無限へと
ルビールビー
回ってる
ルビールビー
夢の中

もう何度もやっているのに

もう何度もやっているのに
いつも新しいことだと感じられるのは
毎回新規のファイルが生成されるからだろうか
長く生きていると
部屋中ファイルだらけになり
足の踏み場もなくなるから
時々ごっそり処分しなければならない

だか
処分の時を見極めるのは
難しい
気づいた時にはすでに考えすぎているから
さらに考えすぎればすぎるほど難しくなっていく

愛は執着し
片道切符は帰ることを邪魔して
捨て身で挑んでくる

大事なものたち
生まれ変わり新しい衣装を纏い
私の感じやすい部分を慰めて欲しい

見えない星の光ほどのかすかな眼差しで
見返して視線を結ぶから

2013年5月20日月曜日

欲ばりチキンちゃんへ

欲ばりチキンちゃん

自分が得することばかり考えていると
損をすることが分かったから
他人のことも考えることにしたけど
ちょっと待って
やっぱりそれは自分が得するためじゃない?

怖がりチキンちゃん

広い世界に出ていきたいのに
広い世界がとても怖くて
他人のせいにして気を紛らわしているけど
ちょっと待って
広い世界はキミの頭の中には収まらないよ

見ない振りのチキンちゃん

窓ガラスに付いた雨の滴も
狭い道を歩いている見知らぬ人も
母乳を吸わせる母親の顔も
いまここにあるもの
キミと同じかけがえのなさで存在しているよ


2013年5月19日日曜日

私はここに


何を訊いてみたいのか分からない
ただ私はここにいて
感じるままに過ごしている
風を見て飛び立つ鳥のように

何をすればいいのか
訊かれると
分からなくなる
本当にしたいことは
もう
とうにやっていたから

だから私はここにやって来たのだ
よく分からないけど
たぶん

余計なことは考えないでいい
余計なことを考えないでもいいことも
考えないでいい
そう思い
着慣れた服を着て
出かけてゆく
いつもの道を歩いて

気がつくと
いつも来るこの場所に
立っていた
何もも持たずに
当り前のような顔をして
立っていた

2013年5月18日土曜日

ありえないことは


ありえないことは
ありえないはずだとしんじていたが
ありえないことは
あっというまに
ありえることにかわる

かわってしまったありえないことは
もうありえないことではなくなり
ありえることになってしまっているので
ひとびとはあたふたしたり
あきらめたり
うらみごとをいう

ありえないことは
もうこのよにはいないので
あのよから
こどもをみまもっている

ありえないことのこどももまた
ありえることに
りっぱにそだつだろう

2013年5月17日金曜日

幸せの味


白い砂山の上の月
婆ちゃんと見たのは
いつのことだったんだろう
夜の明るさを知ったあのとき

あたたかい風をまだ頬が憶えている

きょうも仕事を終え
混雑したハイテンションの陰気な電車の箱の中に自ら飛び込んで玄関に帰り着き鉄のドアを開けて椅子に倒れ込むとしばらく心は幼い頃に飛んでいた

立ち上がり
冷蔵庫から卵を取り出し
冷や飯の上で割った

婆ちゃんは戦争で大事な人を失くし
涙と血の味がする卵かけご飯を
幸せと不幸を思いながら噛みしめては
喉に搔き込んだと言っていた

私の卵かけご飯は
ただ幸せの味がしているけれど

2013年5月16日木曜日

戦乱の大地へ


木の実を採る
そこに実がなっていれば
木いちごを栗を
柿や梨を採る
そして土を堀り芋を取る
魚を蟹を岩魚を鮭を捕まえる
海苔を若布を集める
黍(きび)や粟や葱やゴーヤを採る
山羊の乳を搾り
椰子のジュースを飲む

生まれた場所の
生まれた季節の香りが
帰趨本能に囁きかけ
粗末な崩壊しかけた家に
私を呼び戻すが
そこには既に家はなく
何事も見る影がない

いや
多くの血と涙が流されて
見たいものは痛み
見られることを嫌っている

誰かがここにいたはずだ
愛すべき誰かが
目を輝かせて何かの夢を語り
それは希い望みとなって
私を生かすのに一役買ってきた

きょうも人びとは
戦争の代わりにテロを
テロの代わりに金儲けをやっている
またはテロや戦争や
核戦争の計画をしている

自然がが与えてくれるものを
我が物顔で人工化して
新たな争いをする機会を待っている

子に母乳を与えながら
あなたは何を狙っている?
その子が生き延びる世の中は
どんな色の花が咲き乱れ
どんな生き物たちの血が流されている?

私は言葉で問う相手を見つけられず
言葉を捨てて
生まれた場所
戦乱の大地へと
問いかけに戻ってゆく

2013年5月15日水曜日

和やかな息


禿げた頭に産毛のように白い毛が生えているが
そこに陽の光たちが集まって
昔ながらの遊びをしている

禿げた頭は
誰のものか?
それは問題ではなく むしろ
あとどのくらいそれが続くのか
頭の主はそのことに気づいているのか
そのことの方が問題だ

なぜって
そこには
永遠 や 幸せ や
よく歌や占いの中にでてくるものたちがが
あふれているから

ははあ
それには
とうの本人は
気づいていないらしい

知らせてあげようかな

禿げた頭のそのひとは
でも いったい何をしているんだろう
犬を散歩させるみたいに
他者をよろこばせることばかりに熱心なようにみえる

それがわかって
私もいま
和やかな息をしているようだ



未来創作をごらんの方へ


いつも、ありがとうございます。
私は去年の6月ごろから、原子力災害で苦しむ福島県に何度も出向き、私が詩を書くことで、なにかできることがないか、役に立てないか、いつも考えていました。そんな中、福島の写真家の花の写真に毎日詩を付け始め、その活動は被災した方を招いてのコンサートへと発展しました。作曲・ピアニストの谷川賢作さんに出演をお願いして、1月に、花と詩と音楽のコンサートを開催しました。そんなご縁から、賢作さんと、花をモチーフとした歌を作ることになり、何度もやり取りをして、ここにようやく「ここは花の島」が完成しました。皆様にご報告するとともに、多くの方に歌っていただけますよう、ご紹介させていただきます。楽譜もご必要な方にお渡ししています。

マツザキヨシユキ


ここは花の島  作曲・谷川賢作  作詞・マツザキヨシユキ

一枚の花びらを
日差しに透かして見てる
それはいつかあなたと見た
朝焼けの海

一枚の花びらを
指先に置いて見てる
それはいま生まれたあの子の
こわれそうなてのひら

大切なもの守りたいと
願ってここにいる
ここは 美しい島 
花の島

季節は巡り
春も夏も
歌ってる 美しい島


一枚の花びらを
唇に当ててみてる
それはきょう初めて知った
あこがれの恋

一枚の花びらを
風にあそばせてみてる
それはなぜ やさしく誘うの
透き通った涙よ

大切なひと守りたいと
願ってここにいる
ここは 美しい島
花の島

季節は巡り
秋も冬も
呼びかける 美しい島

ここは花の島
美しい島
Lu・・・

2013年5月14日火曜日

だいじなひとをめぐる詩


だいじなひとが
死んでしまったらどうしよう

朝 小鳥のさえずりが
遠くから聴こえていた

ベッドから半身 起き上がると
喉のあたり
涙が溜まっていて
いまにもあふれようとしていた

明るい外の景色から
カーテン越しに
日の光が入ってきていた

だいじなひとが
死んでしまったらどうしよう

取り返しのつかないことをして
おとなに叱られた記憶が
回り始める

起きて
だいじなひとのことを考えなければ と
急いで机の前に座った

あの日から
もうずいぶん歳月が流れ
だいじなひとは
もう いなくなっていた

2013年5月13日月曜日

やっぱり 草加


仮想 かどうか 
うかうか するな
やっぱり そうか
仮装 火 土か
やっぱり 草加
家相 華道家
火葬 過度 羽化
鵜 飼うか 擦る 菜
やっぱ 理想家
や! パリ 僧か

2013年5月12日日曜日

爽やかな仕事

仕事が私を探していた
そんな風にして出会った仕事だ

だから私はこの仕事を
ただ一生懸命やる
ただそれだけのことだ

爽やかな気分でいられるのは
困難がないからではない
嫌な人間に会わなくてすむからでもない

爽やかでいよ! と
仕事が私をそうさせているからだ

2013年5月11日土曜日

イカしたたこ焼き

たこ焼きに絡み合うソースは自慢の逸品
マヨネーズとかつお節に合わせて
イカした踊りは
阿波踊りを彷彿とさせるいやらしさ
蛸はますます出ていきにくくなり
肉にタッチ交代の要請メール
そこに明石からイカした蛸さま登場
あわや淡路の泡となるのか
元いた蛸の運命やいかに

2013年5月10日金曜日

永遠に解決しない


夏の日の陽炎の彼方に
立っている人がいる

黒い人影だ
一人
いや二人

いや一人や二人ではない
何十人 何百人
いや
いつのまにかそれはひとつの群れをなして
何千人
数えきれない群衆
こちらに歩いて来る

見つけなければよかった

錯覚だろうか
錯覚であってほしい
暑さのせいで 私は
オカシクなってしまったのだ

群衆はどよめいて左右に揺れながら
乾いた土を大きく舞い上げている
土?
そんなものあっただろうか
舗装された道の脇にはビルや家が建ち並んでいる

顔が見えない
姿を見ることができない
群衆の中からたまに
人影が立ち上がるだけだ

唸り声とも叫び声とも
経を読む声ともつかぬ音が
車輪や足音に混じって聴こえて来る

女の子が壊れかけた人形の片腕を
無造作に握り
ぶらぶら振りながら群衆の影の中に沈んだ

あれは私が知っている少女だろうか

まだ太陽は高いのに
背後から夕日が射して
長い影が揺れ始めた

何のために
向かってくるのか
問いかけることはできない
心の中で叫び訊いてみるが
おかまいなしだ

時間は普通に流れているのだろうか
道ばたの草花が
風に抗って揺れているのが分かる

群衆は近づいてきているはずなのに
いつまでたっても影のままだ

もう長い時間が経ったようでもあるが
まだ一瞬が過ぎただけのようにも思える

私の日常生活はたしかに私の周りに存在している

鳩が背後で戯(おど)けたように鳴く
私は鳩は嫌いだ

私はこの出来事を誰かに話すのだろうか
それとも
すぐに忘れてしまうのだろうか
意味が分からない出来事

過ぎ去る訳でも
遠ざかる訳でも
襲ってくる訳でもないこのできごと

その渦中にいて
友人たちは
何かに熱中しているのだろうか
私の一大事は
何事もない一コマのように
永遠に解決しないでいるというのに



2013年5月9日木曜日

戦争に行った

首がもげたぬいぐるみの胴体が
野原に転がっていました
だれも触ろうとする者はいません
ただ
雨 虫 植物 空気 霧 土埃 光の粒子だけが
触れました

そこに一緒に留まろうとするもの
去ろうとするもの
みな 
触れた経験を持って
思っていました

持ち主は
戦争に行ったのだと

2013年5月8日水曜日

その人の居る場所


アパートの一室
箪笥の横
畳の上
錦糸の布に包まれ
白い器の中で眠る人

ああ もう「人」ではないのでしたね
でも
その人の名前は
よく憶えているし
その人によく似た人が
たまに ここを訪れ
布の中身を見たいとごねている

アパートの一室
箪笥の前に布団を敷いて
その人のそばで眠るまた別のその人
その包みを
土に埋めたいという

私は
穏やかなその話を
何度となくきいた
そして包みは
土に埋められることもなく
今も箪笥の横においてある

そして

遊び飽きた
オモチャの木馬みたいに
夕方の日差しのシャワーを浴びている

2013年5月7日火曜日

ブランコがひとりでに


ブランコがひとりでに揺れて
夕日が長い影を作ると
どこかに閉じ込められていたあの子が
やって来る

歳のはなれた姉の手を引いて

姉は悪い男に犯されてから
誰とも恋をすることができなくなった
恋の真似事をして
恋の気分を味わおうと何度も試みたけれど
それはいつもただの激しいセックスに溺れ
傷つくだけだった

だから
歳のはなれたミルクの匂いのする妹とは
気兼ねなくつきあえたのだろう

ブランコがキーキーと
音を立てる
諦めかけた悲鳴のように
か細いまま 叫び続けている

風も吹いていないのに
木の葉がしきりに
裏表になるのを繰り返している
何かの警告だろうか

ブランコがひとりでに止まり
夜が来て
もうここには誰の悲鳴も聞こえない

2013年5月6日月曜日

ゲルニカの画が

ゲルニカの画がモダンにアレンジされて
踊っている楽しげな人びとと馬たちの宴会だ
首がもげ血しぶきをあげる人はいない
黒 白 赤のよどみのない世界
泣く人の涙は巨大な黒い宝石
振り下ろす斧はホームランバッターのバット
ゲルニカの画の毒は抜かれてデザインされ
都会的なリビングの壁紙の前
誰も殺し合わない誰も告げ口しない憎しみさえも生まれない
ただゲルニカの記憶がうっすらと揺れDNAを活性化している
ゲルニカの画がモダンにアレンジされて
新しい恐怖を生む準備はもうできた
パブロピカソはハフロチカトと変わりない
くだらないだじゃれは風化しない
風化するのは風化しないもの以外のもの
ゲルニカの画がモダンにアレンジされて
沢山製造されて

2013年5月5日日曜日

ご破算の方法


偽物を彼は好む
そしてそれが本物だという
私は
マイナス×マイナスの掛け算の
答えを知った時のあの衝撃を思い出す

最後にゼロを掛ければ答えはゼロになる
これは使えると思った
そのご破算の方法も

2013年5月4日土曜日

夕焼け、夕焼け


夕焼け、夕焼け と唱えて
夕焼け色のベールが掛かる
釉薬は溶け沁み込み抱きしめる

夕焼け、夕焼け
言い訳 分け隔て

勇敢な戦士が
呆気なく命を落とす
命は舞い上がるか
地に沁み入るか消え去るか

夕焼け、夕焼け
今はない野原の夕焼け
廃棄物置き場の風に舞う埃
言い訳 捨て台詞
無神経

真紅の炎が
傍らに佇んでいるが
見つけられない人

夕焼けは 空を旋回して
遠ざかってゆく

夕焼け、夕焼け
ボールペンでスケッチした
夕焼け いい加減な紙の上
線の集合体

私に似合っている夕焼け
油の匂いがして
ダマになっている
もがき苦しんでいる

2013年5月3日金曜日

ブロッコリーの森の上

ブロッコリーみたいじゃない? 森。

TAKAはロープウエーから眼下を動いていく森に
私の視線を促して言う

ブロッコリーって、ぴったしじゃん?
おれ、前にここ、乗ったとき思った。
ブロッコリーみたいって、ぴったしだって。
うまくない?

うん、うまいうまい。いいね。
そうだよね、ブロッコリー。

ブロッコリー。たしかに、ブロッコリーに見える。

似ている。
ブロッコリーの森。
マヨネーズかけたくなったりしない?

車内ではこの観光地の歴史を説明している。
TAKAはくつろいで無邪気に口をあけて下を見ている。
私もだ。

あんね、降りたら、海の浜に行こう。海水浴場。
近くに食堂もあるから。

うん。どのくらい?

ブロッコリー、サラダにあるかな?
とも言おうとしてやめた。
だってサービス良すぎじゃん。

30分ぐらい。

ブロッコリーの森の上、
ロープウエーは通り過ぎ、
私たちの「時」もまた通り過ぎた。

2013年5月2日木曜日

初夏の夜に
見上げた窓に人の気配がある
閑静な住宅地のその家の住人は
そこで何かいい構想を巡らせている

落ち着いて仕事に取り組めること
私が長年ずっと求めて来たものが
ここにある

親は景色の中に我が子の気配を感じ
無言の幸せを噛みしめる

私は親ではない
子であるだけだ


駅に向かって歩くと
窓の中で
人影が動いた

振り向いて
我が事は前を向かねばと悟って



2013年5月1日水曜日

ぼくの経済圏

その日
ぼくの経済圏はぼく一人
食べたものが栄養となり
ぼくを明日も生き延びさせる

あの日
ぼくの経済圏は自宅そばの街並
桃色レンジャーが握手して
キャンディーくれた

ある日
ぼくの経済圏は日本国内
ニートが誤って偽札を製造しちゃって
一枚くれた

またある日
ぼくの経済圏は銀河系
まぶたを閉じて宇宙を見通し
近視の治療を試みる

いつか
ぼくの経済圏は掌の上
きみの作り話が小さな世界を
作っている

2013年4月30日火曜日

明るい唄を聴きたいのかい
暗い唄を聴きたいのかい

唄いたい唄は明るい唄かい
唄いたい唄は暗い唄かい

2013年4月29日月曜日

夜は訪れる

誰にも夜は訪れる
どれだけ明かりを灯しても
ありとあらゆる時計を壊しても
夜は訪れる
闇にすべてが包まれる
日照りで傷ついた傷がいやされる

そして
夜は立ち去る
行かないでと鎖で繋ぎ止めようとしても
横たわる涙の川で通せんぼしようとしても
夜は立ち去る
すべては白日の下に晒され
弱い者は干涸びてゆく

誰にも朝は訪れる
同じように
誰にも夜は訪れる
愛するあの人にも
憎いあの人にも

そして
私とあなたのあいだにも

2013年4月28日日曜日

私は東側の部屋に移った

父と母が建てた小さな家には
部屋が2つあった

一つは居間で
一つは2階の寝室

妹が生まれてやがて
部屋の数は増えた
1階のベランダだったところに
私の部屋ができた
しゃぼんだまを上げたベランダのところで
私は眠った

それからまた月日は過ぎて
父の書斎と私の新しい部屋ができた
私の部屋は2階の西側に作られた
妹には私がもと居た部屋をあてがわれた

それからまたしばらくして
部屋の数は増えた
母の部屋と物置部屋だ
2階の寝室だったところが妹がの部屋となった
私は新築の東側の部屋に移った

2013年4月27日土曜日

側面を磨いている

彼は側面を磨いている
真剣な目をして
側面は滑らかになって
だんだん光を
反射するようになる

側面を磨きながら
彼にはその磨き上がりが既に見えている

来る日も来る日も
彼はその場所で
側面を磨いている
決して
他の面を磨くことはない

彼が
側面を磨くことに
疑いを持っているかどうかは
誰も知らない

側面を磨き始めると
片時も目を離すことなく
側面を磨いていく

彼は
側面を磨くことと
切っても切れないことになっている
彼は
明日も
あさっても
私が見ていなくても
側面を磨いている

自分の命を人ごととして



自分の命を人ごととして
清く正しく 生きるんだ

侘び 寂び 哀しみ 素敵な日本で
苦労も 厭わず 苦痛に耐えて 世間に馴染んで
希望を持って 夢を描いて 
へこたれずに くよくよせずに
自信を持って 他人にやさしく 自分に厳しく
勇気を持って 挑戦しつづけ
反省しても 後悔せずに
一生懸命 あきらめないで
欺くことなく 正直に

自分の命を人ごととして
生きるんだ

生きた証に 何かを残し
いい気になって 死ねばいい

2013年4月26日金曜日

星の考え

隙間があったら
緑の草で埋めてしまいましょう
それが星の考え

緊張が続かないように
呪縛はほどいて
すべては水に流しましょう
水は山から川にして
あるいは一度空に持ち上げて
最後は海まで流しましょう
それが星の考え

人は進化し
進化の先端が尖り錆び
朽ちたら新しい芽ばえがあるでしょう
芽は根を張り空に向かい
子孫はその屍をたき火して
暖をとるでしょう
それは
星が
あずかり知らぬこと

でもそれはすぐに
星の考えとなった

がれきになって

「がれき」という言葉について
どれほどのことを考えただろう

がれきとは何か
なぜがれきなのか
昔のがれきと今日のがれきとの差異とはなにか
がれきと名付けられたがれきの気持ちはどんなものか

がれき 瓦礫 ガレキ GAREKI
がれきが語りかけてくるその声に
耳を傾ける
いつまでもがれきであるそのあるがれきは
がれきのなかでも筋金入り

がれきに身分制度はあるのか
参政権はあるのか
学歴や出身地は関係あるのか
芸術や文学に精通しているのか
家族はあるか

がれきに訊いてみる
がれきの表示を確かめる
安全基準を見直し不法投棄を取り締まり
転校移民難民を受け入れる
がれきのぬくもりに顔をうずめる

がれきにまじり
闇夜に考える
詩は終わりにして
がれきになって
うずもれて睡ろうと
せめて今夜は
蛍光灯の明かりは消して

2013年4月25日木曜日

あなたは誰が好き?

秘密にしようとすると
つい 口走ってしまう

そのくせ
言おうと思っていたことは
忘れてしまう

憶えておきたい大事なことは
つまらないことに押し出されて見えなくなり
忘れてしまいたいことは
シミになってしぶとく居座る

私はあなたが好き
あなたは誰が好き?

訊いてみたかったけれど
あなたは私に
「あんたなんかきらいだ」
会うなり
いきなり宣(のたま)った

2013年4月24日水曜日

振り返らずに生きるのだ

きょうも新しい日が始まった
きのうまでの自分は消去した
振り返らずに生きるのだ
のうてんきにやるべきことをやっていく
思い出の宝物は燃料にして

2013年4月23日火曜日

自分が出てこない

季節は一進一退で
入れ替わっていく

人は
おやすみなさい とさっき言って眠ったのに
もう おはよう と言っている

だが その間に
昔むかしの夢を見た

自分が出てこない夢だ

2013年4月22日月曜日

詩のメモ

もうずいぶん沢山眠ってしまったものだと
布団から半身起き上がり
目を凝らして暗闇の時計を見ると
まだ1時間しか経っていなかった

頭が痛いので
やることがあったけれど
もう少し眠ることにした

2、3時間眠っておき上がってみると
10分しか経っていなかった

それから約4時間眠って
眠りながら詩を考えた
時間に関する詩だ
起きてメモを取り
それからまた1時間ほど眠った

起き上がると
そこは自分の部屋のベッドだった
書いたはずのメモは
どこにもなかった


2013年4月21日日曜日

誰かと繋がっていることが

誰かと繋がっていることが
鮮明に分かる時がある

時に 身じろぎもしないで
深夜の寝台列車の揺れを
共有している

いや
共有しているのは
深夜の寝台列車の揺れではなく
地を這っていく感情だ

月に冷やされて
キキ キーと
金属質の摩擦音を発するその感情

射的場の的に向けて
息を合わせて
玉を打ち込むときの
苦い唾

2013年4月20日土曜日

蕎麦をすする音

ぬるい場所に冷たい雨が降って
キノコが夜に育ちます
人はもう発狂寸前ですが
むしろそれは正常だと言わねばならぬでしょう

雨はいろんなことを「なかったこと」にして
雨天のため中止という看板が雨に濡れています

かわいいあの子という人が
箱詰めにされサイズを測られ宅急便の荷物になって
濡れた道を運ばれてゆきます
河合その子とは関係ないでしょう
かわいいあの子は私が継続的に好きな人です

夜の帳というのがあると噂された町には
少し前の時代のナウい人びとが往き来して
ちょっとした喧噪です
闇市で売っていそうなラジオも鳴っています

妄想の畑でキノコ雲が夜に育ちます
私は深呼吸して湧き水を飲み干し
鳥の形をしていない鶏肉を炒めます
昆布の揺れる海鳴りに耳を澄まします

老詩人は昨日から日本海の島へわたり
自ら作った詩を朗読し
気分よく酩酊して布団に入り目を瞑りました

ある線路脇のビルの一室では
コンビニの蕎麦が食べられようとしています
その間
世界は
蕎麦をすする音に置き換えられてしまうことも
知らないで

2013年4月19日金曜日

あなたの悩み


あなたを苦しめる
冷たいあの人は
あなたのそばから
いなくなることはない

あなたを悩ませる
いやらしいあのひとは
あなたの心から
立ち去ることはない

あなたが大すきな
愛しいあのひとは
さよならを
いつ切り出そうか
迷ってる

2013年4月18日木曜日

青空へ


自転車をこぐ音は
きみがやってくる音

背中から近づいて
すぐ脇を追い越していく

空から小鳥が
眺めていたって

教室の窓から見える
通学路の並木道

なんど通ったのだろう
きみのこと追いかけるように

窓から小鳥が
歌っていたって

この町の空の上
風とともに
季節は巡り
きみはここを出て行く

空から小鳥が
眺めていたって

小さい私たちの
大きな未来

仰ぎ見れば
涙の向こう
滲んで見えている
青空

2013年4月17日水曜日

そこだけあたたかい


こうしたらうまくいく
ということが
どうしても
やりたくなくて

うまく生きていくことから
どんどん
遠ざかってしまう
いやな性格

よく分かっている

あなたはあきれて
ため息をついていた
いやみをぶつけて背を向けて

でも
こうしたらうまくいく
ということは
つまらないことばかりで
あなたは私を見て
よく笑ってた
時に指を指して

私も一緒になって
笑ったけど
涙が頬で乾いて
そこだけが寒くて
そのあと
あたたかい指が
私の上に寄り添った

2013年4月16日火曜日

今年の冬は何もなかった
今年の冬は何もなかった
春にはきっと何かある
今年の冬は何もなかった
春にはきっと何かある

2013年4月15日月曜日

首をかしげてあなたを見るのは


首をかしげて
あなたを見るのは
そうじゃなきゃいけない
理由があるの

まっすぐ見ないのは
恥ずかしいからじゃない

私 鳥だから
正面から見るなんて
できないの

神様が
そこがいいよ って
いってくれたから


言葉じゃなくて
ハミングするのは
それがいちばんいい
そうおもうの

おしゃべりしないのは
嫌いだからじゃない

私 鳥だから

手紙を書くのも
できないの


パパ ママが
文字はいらない って
話してくれたから

2013年4月14日日曜日

宇宙の小石

上手に生きないと
幸せになれないと
知らされた日

私は自分に誓った
縁ある仲間を守るために
汚れ役も買って出ようと

傷つけたあの人に
いつかお詫びするために
何ができるのかと

自分の声しか
教えてくれる者はない
自分に語らせるのもまた自分
その自分を生かしているのは
私の中の宇宙の小石

2013年4月13日土曜日

泣き声が聴こえる


さきほどから
誰かが泣いている気配がしているので
あたりを見回してみているのですが
人影は見えません

それどころか
人が隠れられるような物陰さえないのです

虫か
鳥の声でしょうか
すすり泣くような
しかしあまり悲壮な感じのしないその声は

耳をそばだてると消え
しばらくすると
また聴こえてくる

まさか
私が泣いているのでしょうか

そういえば
きのう私は
大事な人に裏切られたのでした

2013年4月12日金曜日

どうしても必要

自分の重さで自分を支え
輪っかを抱いて
ベタベタを取り出させる

コトアルゴトニ
程よく回る

一人きりの真っ暗な夜には
ひときわ
思い出を語りたくなるので
涙に濡れ
吐く息で曇らせないよう
注意していなければならない

私は何度となく選ばれた
何度となく
姿を消した

某氏がいう

あなたが必要だと
透明なベタベタを取り出すことは
どうしても必要なことだと