2012年10月20日土曜日

・・・・・・伝えたい

「ありがとう」ばかりではなく
「さよなら」と伝えてたい

霜の降る月の夜に
狐がすすきの間から
顔を出し
きょとんとしている
その時

「さよなら」ばかりではなく
「もう会えません」と伝えたい

円型の大地に
波打ちながら風が渡っていく
吹き違い
混じりあいつつ
地にはりついて

「もうあえません」ばかりではなく
「幸せを祈っています」と伝えたい

やがて雪が振り
この辺りは一面真っ白になる
その上を
足跡が縫っていく

「幸せを祈っています」ばかりではなく
「・・・・・・・・」と伝えたい

黒板に書いた文字を消したら
教室を出て行きましょう
また明日もやってきます
その時に気持ちがいいから

2012年10月19日金曜日

ひとりでに

ひとりでに
影が窓から入ってきて
パンを食べている

やりきれぬ
思いを食べているのか
しくしくと泣いている

ひとりでに
ドアが開いて
今度は主人が帰ってきた

見たところ
不漁だったらしく
ゴキゲンが斜め

やりきれぬ
悩み事は持ち越さない主義なので
ストーブに薪をくべて
焼いてしまう

こんがりと
焼けたパンを
木の皿にのせて
テーブルの上に置く

見たところ
焦げ目を隠して
積み重ねて
置いてある

ひとりでに
涙が出てきて
頬に線ができる

そういえば
去年も
おととしも
こんなことがあった

こんがりと
焼けたパンは
影が全部食べてしまい
もう残っていない

ひとりでに
眠ってしまった主人は
いつまた起きるのか
わからない

見たところ
日が暮れて
薄暗い窓の外に
白い月が出ている

やりきれぬ
やり場のない思いは
そういえば
見たところ
ひとりでに
どこかにいってしまって
帰ってこない

2012年10月18日木曜日

廃人のように暮らしているよ
僕は元気です

それも 関係ありません

秋の夜が 更けて
囁きかけて きます
遠くから 近くにやってきます
気が 遠くなるほどの
距離を 走って

あの夏に 叶えられなかった
願いごとの 理由が
今になって
はっきりと 分かって きます

日照り続きの 道に
雨が しみ込み

さまざまな 疑問が
答えを得られないまま
報われて いきます

割り箸の うえに
カマキリが 卵を産みます

公園の 向こうで
友達の 小さな 家が
火事になって 燃えています

季節は 寒くても 暑くても
関係 ありません
すぐに 過ぎていって しまうから

ここに 残っている ものは
過ぎゆく ことが できなくて
腐って 滅びることも できなくて
ただ 立ったり 座ったり 横になったりを
繰り返しています

新月から 2日目の 月が
雲の影から
覗こうとしていますが
それも 関係ありません

犬が 吠えていますが
あの犬は
きのう 友達の家に
おしっこを 引っ掛けていた 犬です

2012年10月17日水曜日

ちゃんと苦労する詩

工藤ちゃんが
苦労してる
工藤ナオちゃんが
尚 ちゃんと 苦労してる
工藤ナオちゃんの姉が
尚 ちゃんと 苦労してる やーねー
工藤ナオちゃんの姉が
屋根が漏って ちゃんと 苦労してる
やーねー もってのほか だね!
屋根が  たわんで  漏って 苦労してる
工藤ナオちゃんの姉が
屋根が たわんで 漏って 尚 ちゃんと苦労している 
やーねー やな 屋根やね  あかんで!
工藤ナオちゃんの 姉さん
尚 ちゃんと 苦労する 姉やね  もってのほか だね! 
屋根が 漏って やーねー やーねー
もってのほか だね! 
工藤ナオ ちゃん
直さんと ちゃんと 屋根 直さんと  あかんで!

2012年10月16日火曜日

難しい話

お腹が空いたら
私にごちそうしてくれますか
なんの義理もないと
あなたは思っているのでしょう
けれど
もしかしたら
義理はあったかもしれませんよ
前世とかに・・・
私にもよく分らないけれど
そういうことにして
何か私に食べさせませんか

「すきなものを
すきなだけどうぞ」
などと言って
大盤振る舞いしなくてもいいから
ほどほどに気前よく
食べさせませんか
そうしたら
あしたから
あなたと私
仲良くなるかもしれません
私はあなたにお礼を言います

だから
どうですか
私に何か
食べさせませんか
とりあえず
お茶を濁さず
答えてください

あなたがいつも食べるために
使っているお金を
少しだけ私に振り向ければ
それができるのです

どうでしょうか
無理な相談でしょうか
あなたにとっては
難しい話なのでしょうか

おなかがすくのがいちばんこまる

おなかがすくのがいちばんこまる
なにかをたべなきゃならないからね
たべたくないときどうしたらいい?
たべずにしぬのをまつべきなのか
たべたくなるまでまつべきなのか
おなかがすいててわからない

2012年10月15日月曜日

23時のラストオーダー

一人で入った
一人きりの不二家レストランの
美味しくないパフェは
何も知らなかったころの
血の混じった涙の味
塩素の香りのカットフルーツ
湿ったカビのようなシフォンケーキ
苦味だけが後味にのこるオレンジ
それを救うのは
無造作に丸くくり抜かれた小さなバニラアイス
喉と疲れた脳をほぐして
750円と刻印される
コンクリートで整備された都会の川のほとり
24時の閉店まで
どんな明日を描こうか

2012年10月14日日曜日

ろんろんろろろん

ろんろんろんろん
ろんろんろん
ろんろんろんろん

誰か いる?

ろんろんろんろん
ろんろんろん
ろんろんろろろん

はい います

ろんろんろんろん
ろんろろろ
ろろろろろんろろ

誰ですか

ろんろろろんろん
ろろんろろん
ろろろろろろろ

ももんがです




あなたはネコが
すきなのね

あなたのまわり
ネコばかり
足の踏み場も
ネコばかり
肩を持つのね
ネコばかり
重さをはかる
ネコばかり
この場を借りて
ネコばかり
ネコの上にも
ネコばかり
ネコの下にも
ネコばかり
苦しいときの
ネコばかり
ネス湖にいるのも
ネコばかり
寝込んでいるのも
ネコばかり

あなたはネコが
すきなのね

2012年10月13日土曜日

夢から覚める前に

夢から覚める前に
いそいでアイスカフェオレを喉に流し込んだ
まだほとんど飲んでなかったので

ベッドのうえで
きのうの宿題を思い出そうとしたが
どこに置き忘れたのか
どうしても思い出せない

青空にキンモクセイが香っていた
あの少し肌寒い日に
鉢合わせして出会ったあの人は
何をしているだろう

ぼんやり部屋なかを眺めたら
そこは自分の部屋ではなかった

2012年10月12日金曜日

ものうげなあのこ

すきまからのぞいてごらん
ほんとうのことがわかるから

こえをだしちゃいけないよ
みつかったら
つかまってかえれなくなる

あのこはうつくしいかおをしているが
おそわれていらい
ひがおちると
こころがおにになってしまう

じぶんでもきづいていないらしい

あのこのおおきなひとみは
うるんで
だれもがみとれるが
ときどきまっかにそまり
あいするものを
みつめころしてしまう

あいしてもあいしても
しらぬうちに
あいてをころしてしまう

そのきおくは
あさになるときえてなくなるから
あのこは
ちゃんとあいさつして
ひとびととうまくやっている

さあ
いま
すきまからのぞいてごらん
ものうげなあのこは
なにをしているとおもう?

2012年10月11日木曜日

おなかをすかせて

じんせいは おなかがすく
いっぱいたべたら
まんぷくになる
おなかがすいたら
なにかをたべる
なにかをたべると
なにかはどこへ?
なにかは
おなかのなかへいき
おなかをすかせて
きえていく
ぼくにはゴハンが足りないのです
もっとおかずも食べたいのです

2012年10月10日水曜日

すきなひとが

すきなひとが
となりでねむっています
あなたは
なぜかねむらない

あなたは
なにをのぞんでいますか
ほしいものが
あるのですね

ふたりは
ずっといっしょです
いままでも
そしてこれからも

あたらしいものが
ふるびて
やさしくなっていきます
うるさいことを
いわなくなります

そらは
うえにありつづけて
おちてきません
すいへいせんの
したにあるそらは
かくれたままです

あなたは
なににかくれていますか
だれかのかげにですか
それとも・・・

2012年10月9日火曜日

あなたはうつ病さえ

あなたは
あなたの優しい性格で
うつ病さえ迎えいれたのですね

あなたは
あなたの優しい性格を
失わないまま
少しずつ強くなって
たまに知らん顔で
辛いこともやってのけている

木綿の衣服を
じゃぶじゃぶ洗って
汚れをおとし
お日さまにさらして乾かして
いつの間にか身に纏って走り回っている

あなたのことが好き
あなたは
あなたの優しい性格を
周りの人につかっているが
誰につかったのかはもうわからない

それほど
無尽蔵につかい続けている

2012年10月8日月曜日

なつかしさを求めて

なつかしさを求めて
この丘にきたんだね
そういう顔をしているよ
暇人みたいだよ

2012年10月7日日曜日

詩の友だち

彼は詩の友だち
私がこうして詩を書いているとき
彼もまた詩の中にいる

詩は永遠の欠片のように
心に突き刺さっいる

夢の中で探し当てた
いい方向へと向かう道が
雲に覆われた月のせいで
見えなくなっているけれど

平気な顔をしているのは
信じているから
信じられる何かを

2012年10月6日土曜日

その香り

私はじっと座っているだけだった
座って花の香りを吸い込んで
うっとりと目を閉じていた

いや
目を閉じてはいなかった
私は
劇場の舞台に目をやって
心地良い歌声に心をさ迷わせて
浸っていた

暗転が暗闇を投げかけてくる
拍手が静寂を破って
あふれだす

私の胸を満たしたその香りは
記憶の中に沈んで
未来の明るい日差しを投射してくる

時は
劇場の微風を吸い込んで
ゆるやかに速度を早め
舞台の奈落の上空を渦巻いて
ただ爽やかに過ぎ去っていった

2012年10月5日金曜日

何度思ったことか

死んでお詫びしたいと何度思ったことか
死んでもお詫びできないと何度思ったことか
死んだらさらに迷惑がかかると何度思ったことか
死ぬより死んだ気になったほうがいいと何度思ったことか
死んだ気でやるのは死ぬより大変だと何度思ったことか
死ぬなんて口走る自分は死ぬに値しないと何度思ったことか
死んでも何も良くならないと何度思ったことか
死んだら誰かが喜ぶだろうと何度思ったことか
死んだら喜ぶ誰かのためにも死ねないと何度思ったことか
死んだふりして死なないのもいい手だと何度思ったことか
死なないふりして死ぬのは意味がないと何度思ったことか
死んだら死にたくない人の力になれないかと何度思ったことか
死ぬなら首を吊ったらどうかと何度思ったことか
死ななくてもいい人生はなんて素敵なんだと何度思ったことか
死んだら誰が葬式に来てくれるだろうと何度思ったことか
死んでも葬式はみすぼらしいだろうと何度思ったことか
死んだらまた生まれかわるのだろうかと何度思ったことか
死ぬよりいい途はないものかと何度思ったことか
死ぬ時何を思うだろうと何度思ったことか
死んだらあのひとはどう思うだろうと何度思ったことか
死なないで生きていこうと何度思ったことか
死なないでいるうちにいつか死ぬのだろうと近頃何度思ったことか

2012年10月4日木曜日

わたしはおまけ

わたしはおまけ
おとくなひとよ
ねだんはないし
すててもへいき
がっかりしても
そのときかぎり
じゃまにならずに
くっついている
ときたましゅやく
わきやくなのに
だいじにされる
だいじなゆめを
かかえていれば
ゆめをほっする
ひとがはぐする
たのしいよるよ
とわにつづけよ
だけどつづかぬ
ゆめあささめる

2012年10月3日水曜日

さよならは短いことばで

長い長いあなたとの
付き合いだったけれど
さよならは短いことばで
すませましょう

気持ちは変わらなくても
別れのときは
突然やってきます
それを望んでいなくても

自分のなかに
さよならしたい理由を
見つけようとしましたが
それさえ
なんだかとても
いいものに見えてきてしまうのは
なぜでしょう

きのうの大きくて明るい月は
きょうは雨雲に覆われて
あなたと私の心を隠しています

最後には抱きしめます
それは
無粋なことに違いないけれど
あなたもそれをきっと待っていると
私には信じられたから

あなたの胸が私の胸と交感して
鼓動を打ち
別れの時が来ます

もう会うことはありません
会いたくても
会うことはできません

長い長い付き合いでした

生きてきた時間よりも ずっと

2012年10月2日火曜日

安らぎを見つけようとしても

私には花を手向ける相手がいない
手向けるべき花束もこの世にはない
あの人はもうどこかへ行ってしまった

暗い森を照らす光は
もう月と星の光しか夜は残っていない
蝋燭の火も
街あかりもみんな消えてしまった

子鹿の鳴く声も
泉の湧き出る場所も
あの軽快な足音もどこにも残っていない

傍らに人は座っているけれど
尋ねてみても記憶の中に
地図も道標もなく
そこには多くの人々や生き物たちが
彷徨い迷っている

遠くの陽炎のゆらゆらの中に
毎日やってくる日常の安らぎを見つけようとしても
それは粒子となって微かにキラキラ光るだけで
海底の砂浜に沈んでいく

もう帰ることはできないのだ
立ちどまるできないように
進むこともできないのだ

2012年10月1日月曜日

木立の間の日だまりを

木立の間の日だまりを
ぼくに貸してくれませんか
小さな椅子を置いて
愛する人と
話をしたいから

風がめぐり
草花が香り
木の葉が見下ろす

人がやっと
寝転べるほどの
その場所を
太古からあったような
その場所を
貸してくれませんか

日がくれて
木々の天井の隙間から
かすかな光の星が
一つだけ見える
その場所を

2012年9月30日日曜日

みかこさん と いまの君

思い出コレクターの
みかこさんは
美しい過去が好き

どんな過去も思い出も
磨きあげて
大事なところは念入りにブラシをかけ
余計な凸凹は取り去って
飾り棚に並べます

並べるときに
関連する思い出も調べて
書き添えることもあります

そして
時々取り出しては
自分だけで観賞して
うっとりしています

友だちや
これから仲良くしたい人が現れると
みかこさんは張り切って
思い出を見せながら話をします。
その話を
誰もが面白がるものだから
みかこさんは得意になります
得意になり過ぎて本まで書いてしまいました

そんな
みかこさんの部屋は
思い出でいっぱいです

思い出だけでいっぱいなので
まだ思い出にならないものたちは
入ることができません

みかこさんは
いきのいい現在のことは
いまの君に任せっきり
いまの君は
みかこさんのパートナーです

片付けが上手で
考えることが苦手です
いまの君は
不要なものはとっておかず
磨いたり繕ったりせず
すぐに捨ててしまいます

みかこさんとは反対の性格なので
きっと仲良くできるのです

2012年9月29日土曜日

やっぱりきょうも

しょんぼりしてる
とんぼがとまる
しんみりしてる
しみじみおもう
よかれとおもい
おもいはうらに
すましてみても
すまされないし
ぐっすりねれば
ねるのはくすり
やっぱりきょうも
はったりばかり

2012年9月28日金曜日

そして秋

去って行く夏と
入れ替わりにやってくる秋に
挨拶をするために
詩を書かなければならない

しかし夏と秋の輪郭は
意外とぼんやりしていて
一部は混ざり合っているので
明確に分けて挨拶をするのは困難だ

夏は半ズボンの少年で
秋は少し年上の少女だ
ちなみに
冬は未婚の母で
春は幼女だ

夏くん
さようなら
よくやってくれた
おかげでたくさん汗をかいた
叶わなかった恋や
挫折した冒険は来年に持ち越すよ
夏くんには関係ないだろうけど
秋さん
聞こえたと思うけど
そんなわけで
傷跡が染みる
美しい紅葉でなぐさめておくれ
未婚のお母さんがたまに吐く冷たい息で
凍えるまえに
美味しい収穫物をいっぱい食べさせておくれ
セピア色の写真を眺めるより
いますぐ写真を撮るように
アドバイスをしておくれよ

夏くん
秋さん
二人が愛し合いながらも結ばれないことを
私はまえからしっているよ

だから
あの涙に滲んだような
オレンジ色の夕日を
きょうは長めに
灯していてくれないか

◇質問募集◇ 質問ごっこ

撮影 深堀瑞穂
詩人の質問箱
詩人に訊いてみたいことを、私が代わりにお答えします。他人の意見が参考になることがありますよね。詩人の意見は、役に立つかもしれません。・・・という趣旨で、あの有名な「谷川俊太郎質問箱」(ほぼ日)とは一味(だいぶ)違うものをやりたいと思います。この企画は、ある人から強く勧められてはじめますが、自分にとっては、自分が一番苦手なするところの「説明力」を鍛えるこになるだろうと期待しています。自分のぼんやりしたアイディアを他人様にちゃんと伝えるというのはとてもむずかしいことだと思うのです。しかもそれが、人のさまのためになれば・・・ということで、挑戦してみようと思います。

http://blog.livedoor.jp/matsuzaky/

2012年9月27日木曜日

流れる星が見られるかもしれない

小雨がふっている
高原に敷かれた鉄路を
列車が走っている
秋の始めのこの時期は
草木が色づき始めるために
緑色や青色系の鮮やかさを
放出してしまおうとしているので
空気は強く香っている
都市にはないいい香りだ
だがその香りは彼にとっては
無意味で意識されていない
昼下がりというにはしっとりと湿った明るい午後だ
視点は移動しているので
定まっていない
時に繰り返している感覚もある
空から眺めているイメージも混ざる

彼は列車のことはよく知らない
他動的に乗っているから
切符は拾ったものだ
目的地は知らずに乗っている
いつか来たことがあるという記憶に導かれてはいるが
何かの力に操られたのだ
だから
ただ乗って時を過ごし思考を巡らせている

まわりの皆の動きに流されて
駅に降りると
降車客たちが思い思いに散らばっていく様子が
綺麗だった
それを立ち止まって見ていた
雨は降っていない
空は晴れ夕暮れ時がやってきた
彼はどこに歩いて行くのだろう
夜は流れる星が見られるかもしれない

2012年9月26日水曜日

さわやかな朝

さわやかな朝だった
やるべきことは
すべてし終えた
それもあってさわやかな
朝だった

2012年9月25日火曜日

立入禁止地区

立ち入ってはいけない
ここから先は
そうやって
線を引けばすむ

それを決めた人間は
ここには居ない
ここには来ない
会食弁当を食べるのに忙しい

線のところには
雇われた人が待っている
雇われた人は
そこにいると
「雇われた人」からただの「人間」になっていく
家族やふる里ことを考えるから
雇った人が誰なのか
わからなくなってくるから
関係がなくなってくるから

誰が決めたのか
誰にもわからなくなっていく

神さまが
川で陸地に線を引いたことを
思い出す
その美しい線と比べると
人が作った線は
なんと殺風景なのだろう

その線が
何を奪っているか
奪っている人間は
何を守っているのか
誰にも分からなくなる








南相馬市
壊れたままの堤防
2012/09/19
筆者写す


不味い巨きな果実

見上げた空一面は雲
目蓋が眩しさのせいで痛い
この痛みは
どこからやってくるのか

頬が
目のまわりで居心地悪そうに
熟れ
やがて干からびるのを待っている
私の頭は
小鳥も啄むことのない
不味い巨きな果実である

2012年9月24日月曜日

愛しているといえないのには

愛しているといえないのには
いったいどんな訳がある

どんな訳もありません
あるのはただのいい訳ばかり

2012年9月23日日曜日

水の中の水滴

水に包まれた水滴を取り戻すために
水の中へ入っていった
空気の卵を産みながら
脚をバタバタして
潜っていった

水の底にも水があった
上下関係がわからなくなって
引力に尋ねた
耳の中にも水が入り
鼓膜の内側から押し返そうとしていた

水は
温もりをを奪おうとしていないことに
気がついた
温もりを与えようとして
水の約束の境界を越えようとしていた

魚が近づいてきて
疑問符を置いて行ったように見えたが
死んだ釣り針だった

深い眠りから目覚めようと
自分の住所を調べようとして
電話して尋ねようと試みているが
雑音が邪魔してうまくいかないのは
無念が人々から切り離されて
そこに置いていかれているからだと
昼夜が分からない海底で悟った

悟るための力は
懐かしいある人が与えてくれた
そう思うことと
願うことは一緒だった
ありがとう

私は私であるままで
でんぐり返しした
水の中の水滴を蹴って
卵を産みながら

2012年9月22日土曜日

取り壊される校舎に

草花が窓の向こうに咲いている
街はなくなってしまったのに
人々の思いは
この場所に自分たちの懐かしい姿を投影する

泥に覆われた場所も
大事な思い出が置いてある場所
その目には
泥は見えていて見えていない

一番大事なものは
すでに持っている
すべてを失ったあとも
大事なものはすでに持っている

窓から入ってくる風が
楽しそうに教室を舞う
友だちや知り合いと
話をしよう

どんな話でもいい
校舎に聞かせてやろう

































岩手県立高田高校 旧校舎
陸前高田市 
2012年9月20日筆者写す



 

2012年9月21日金曜日

消えた幽霊

顔を洗い終わったら
幽霊が、タオルを差し出して立っていた
ありがとう、幽霊
あなたは何を望んでいるの?

いいえ
望みはありません
あなたの願いを叶えたいのです

そういうと
幽霊は消えて行った
私も
少しして
消え始めた
お話にはつづきがあります
先を読み進めてみませんか

2012年9月20日木曜日

八幡宮にて

お尻を向けないで

階段の途中で息が切れて
立ち止まった

あなたは元気で
なんでも良く知っているように
一人でスタスタ行ってしまう
かわいいワンちゃん
頭を撫でてあげる
お尻を向けないで!

階段を上ったらなにがあるの?
願い事が叶う場所?

かわいいワンちゃん
夕日がもう落ちそうだよ

あなたはいままでもう一人のワンちゃんと
向かい合って
ずっと何を待っていたの?

質問する私に質問で返してくるのは
そう聞こえるのは
なぜかな?

いつか教えて
かわいいワンちゃん
あなたのその口で
噛みついてもいいから


2012年9月19日水曜日

夢の世界へ

今夜は眠らないでください
私のために
ただ起きていてくれればのです
なにをしていてもいい

私のことを忘れていてもかまわない
あなたの好きなことをやって
たまに宙にただよう空気を眺めて
起きていてください

私はきょう
大事なことを決めます
心の振動を停めて心臓の真ん中を
突き刺します
自分のあやふやな気持ちに
死んでもらいます

あなたは
どこかにいて
知らないうちに
それに立ち会うことになります

だからどうぞ
眠らないでいてください
夢の世界に
行かないでいてください

2012年9月18日火曜日

あれ以上の味

小学生のころ
リゾートホテルの居酒屋のカウンターで
冷やし中華を注文した
ふやけた麺に干からびた錦糸卵
甘酸っぱいうす味のぬるいスープ
まずさに驚いて
食べなくていいか   と訊いた

また別の日
客船のプールサイドバーのカウンターで
チーズ&クラッカーを注文した
なぜ値段がこんなに高いのか
疑問に思いながら食べた
いままで食べたことのない美味しさに
感動して
お代わりしていいか   訊いた

あれから長い月日が立って
あの人はもういない
あれ以上の味にもまた
出会ってないのだ

2012年9月17日月曜日

愛する人を愛し続ける

むずかしいことは分からないが
見捨てられたことは分かった

見捨てて また 救いに来て
でもやっぱり 見捨てて
見捨てないふりをして
見捨てる

忘れた頃に
また 救ってやるぞと 思っているらしいが
そう言ってくるが
救いには来ない
救いにきた例(ためし)はなく
来るのは 救いではなく
伝令そして
 
何らかの「処置」や「措置」

だから
救われると 思っていてはいけない
救って貰う必要はない
自立しているのは手前のほうだから
相手を見越して
受け取れるものだけは きちんと受け取って
お礼は言わず
なんの感情も表す必要はない

学校で教えてくれたことは
みんな嘘っぱちだ
お礼など言ってはいけない
無償の愛にだけ感謝すれば良い

むずかしいことは分からないが
簡単なことは分かる
沢山の人が見捨てられた
見捨てる側は自分さえ見捨てているのだから
もともと見捨てる価値さえない
だから何も期待してはならない
期待しなくていい

だから
見捨てられた人は一人ひとり
自分の場所にたって
見捨てた者のことなど
忘れてしまえばいい
もともとなかったように
思い出さなくていい
心の平静を取り戻して
自然と一体になればいい
つまらないことから開放されて
愛する私と共に居ればいい
私たちに救いは必要ない
必要なのは
愛する人を愛し続けること
その気持ちを持ち続けること

2012年9月16日日曜日

今はない野原に向かって

木々に手が届きそう

列車の窓から
手を伸ばしてみる
電柱や電線はない
ディーゼルで動いているから

口を開けると
空気が口に飛び込んでくる
ついでに
胸の奥まで吸い込んだ

いい空気だ

雨上がりの線路が
楽しそうに鳴っている

荷物は少なめ
でも
お弁当は持っている

人目を気にして車内を見たら
楽しそうな人と眼があった

皆んな楽しそう
そういうことにしておこう

カタッ カタッ 歯切れのよい 
いい音を立てて
列車は走る

もうすぐ夏は終わるけれど
心のなかでは
夏が始まろうとしている

白い帽子でも買って
今はもう行くことができない野原に向かって
ひとりで駆けていこう

おととし 2010年12月23日木曜日に書いたもの


眼差しを留めるもの

誰も自分のことなど解ってくれない
そんな眼差しが
道端の枯葉を見つめていた

枯葉は思った
木に茂っていたころ
同じ瞳がわたしを見上げていた と

雨が降り
風が吹いて
星が綺麗な夜に
枯葉は木から落ちた

枯葉が居なくなったところに
小さな空ができた

その空は
孤独な眼差しに満たされるのを
待って木に引っかかっている

2012年9月15日土曜日

学校に行きたくなくても

学校に行きたくなくても

行かなくては という気持ちが強かったせいで
行きたくない気持ちは匿れてしまい見えなかった

そんな時
どんな気持ちで学校に行っていたのか
鉄面皮のような心で歩いていったのか

何かの気持ちに別の気持ちが匿れてしまい見えないこと

眠りながら考え事をしている時
たとえば
思いが上へと昇っていき
心が放置されてしまう時
体と心は思いが戻ってくるのを待っているしかない

カルカヤという草が紅く色づいているのを
Facebookの画面で見たら
秋の訪れを教えてくれたけれど
Facebookの画面の光の点は先生か季節の伝道師なのだろうか

自分の中のセンサーも季節の移り変わりを感じていたけれど
その画面に多くの人が秋の来訪の話題を書き込んでいた

ドアを叩く音がした
誰かが拳で叩いているのだろう
その音が響いている
その音は心もノックする
心は砕けてしまわないか
それとも心もドアをあけるのか

2012年9月14日金曜日

大切な人

近くにいる
大切な人を
大切にしようと
思っているんだね

思っている
だけなんだね

2012年9月13日木曜日

秋の小川

詩人の傍らを静かに時間が流れている
それは本流ではなく支流だ
秋の小川だ

あの有名な
春の小川という唄が
この秋の小川を作りだしたことを
詩人は知っている
知ってはいるが
そのことについては黙っている
そう決めている
それは詩の世界の裏事情だから

詩人は黙って
秋の小川の音を聴き
冬の凍った小川のことを考えている

今年
夏の小川は渇水のため
川は干からびていたので
来年の夏の小川のことも本当は気になり始めている

詩人は自分の打った文字を見ながらいつも想う
詩の一行は
長くなると川になってしまう

川になると
水滴に戻るのは一苦労だ
雲になるよりも難しいのではないか

一日中
ぼんやり景色を眺めながら
詩人は成り行きのことを考える
私はどこに流され何に
還ってゆくのか

秋の小川はきっと
ささやきかけて
教えてくれるのではないか
言葉ではない方法で

2012年9月12日水曜日

頭の中に充満しているもの

頭の中に
何かが充満し
逃げ場を探している

皆んながそのことに
かかりっきりなので
いろんなことが手薄になる

トーストを食べている途中で
ハチミツを取りに行ったまま
戻らないあの人は
いま
電車に揺られて
乗り換えるのも忘れて
とうとうどこにも辿りつけなかった

頭の中に充満しているものを
順番に退出させ
その行列を見ていたら
眠っていることも忘れて
用事のある先に電話をしていた

相手は驚いて
私は誰かを尋ねていた

2012年9月11日火曜日

スキマナクウメテシマワナイデ

スキマナク ウメテシマワナイデ
クウキ ガ ナクナッテシマッテ
イキグルシイ デス

イキガデキナイト
アナタガウマレタ コノ キセツノ
ハナノカオリ モ
アメノアトノクウキノカオリモ
カゼガハコンデクル トオイウミノカオリモ
ムネニ スイコムコトガデキマセン

ムネハ イイカオリヲ
モトメテイマス
ワタシノココロトオナジデス

アナタガ イナクナッテ
モウ イチネンイジョウガ タチマシタ
ワタシニトッテ トテモトテモ ナガイジカンガ
スギマシタ

コレカラ ナンドモ キセツハヤッテキテ
ソノタビニ ワタシハ トシヲトルノデショウ

スキマナク ダレカガ ウメヨウトシマス
アナタト ワタシノアイダノ カラッポノ クウハクヲ
ダカラ イキグルシイノデス

ワタシヲ ミタシテ シマワナイデ
ワタシハ スキマヲカカエテイタイノデス

カエラヌアナタヲ マツタメデハアリマセン
ナンノタメカハ ワタシニモ ワカラナイノデス

2012年9月10日月曜日

みんなが言わないことのほうを

明るいほうがいいと
みんな思っているのかな
 

暗いほうがいいと
思わないのかな

暗いほうがいいよ

元気なのもいいけど
おとなしいほうがいい

偉そうに見えるより
侘(わび)しくみえたほうがいい
自信がなさげで ひねくれていて・・・

そのほうが好きだ って
誰かが言っていた

みんなが言うことだけじゃなく
言わないことのほうを
聞いたほうがいい





そこに置いて
 
暗い顔をして

雨上がりの

緑の

木々を見ているね

暗い気持ちを

そこに

置いて行きたいと

思っているんだね