詩人の傍らを静かに時間が流れている
それは本流ではなく支流だ
秋の小川だ
あの有名な
春の小川という唄が
この秋の小川を作りだしたことを
詩人は知っている
知ってはいるが
そのことについては黙っている
そう決めている
それは詩の世界の裏事情だから
詩人は黙って
秋の小川の音を聴き
冬の凍った小川のことを考えている
今年
夏の小川は渇水のため
川は干からびていたので
来年の夏の小川のことも本当は気になり始めている
詩人は自分の打った文字を見ながらいつも想う
詩の一行は
長くなると川になってしまう
川になると
水滴に戻るのは一苦労だ
雲になるよりも難しいのではないか
一日中
ぼんやり景色を眺めながら
詩人は成り行きのことを考える
私はどこに流され何に
還ってゆくのか
秋の小川はきっと
ささやきかけて
教えてくれるのではないか
言葉ではない方法で
0 件のコメント:
コメントを投稿