2013年6月18日火曜日

M式節食法


たとえば
ものを食べるときに
甘いものの間に苦いものを挟むと
より甘いものがおいしくなる
さらにそれを繰り返していると
苦いものもおいしくなる
際限のない食の快楽

口の中は常においしさを感じ
飽きることがない
これが
私が発見した
人が「デブへの道」と向かう法則である

すなわち
甘いものの間に苦いもの(茶など)を挟まなければ
味覚はすぐに飽きて
食欲は失せる

そしてこの理論を応用したのが
飯とおかずを混ぜて食べるという
ダイエット方法である
これを私は「M式節食法」と名付けた

例えばカレーライスなどは
カレーとライスは言うに及ばず
薬味類もペースト状にしてすべてをミキサーに掛ける
ちょうど離乳食のような見た目となる
これをぬるい温度で水や茶を摂取せずに
飽きるまで食べる

そのようにすれば
ダイエットに苦しむことはない
食の歓びから解放され
快適に太らない生活を送れるだろう

私が言うのだから
間違いはない

2013年6月17日月曜日

あなたの瞳が深く鎮んでいるので



あなたの瞳が深く鎮んでいるので
私は雨粒に仕立てて
明るい窓に無数にばらまいた

瞼が痛くなるほど逆光で眩しい
滴は光を溜め反射し透過させて
無言に一番近いやり方で話しかけてくる

私は答えの意味を
どう伝えていいのかたじろぐ
あなたはもうため息を長く小さく吐いて
どこかへ歩き出そうとしている




6月の湿った小さなノイズが絶え間ないこの世界で
入射角が違う光線同士のように
交わることはないから

片手で耳を塞いで
聞き耳を立て
息の音 心臓の鼓動と
周囲からくる波長を重ねよう

そうすれば
滴たちの一つが共振して落下し
何かの始まりを告げてくれるかも知れない


2013年6月16日日曜日

お前とお参り


お前と
お参り
大回り

お前は
前に
自前の
絵馬を
もって
後ろで
世迷い言

お前の
前の
名前と
いまの
名前の
名字
大違い

後ろの
お前
前から
変だ
だから
迷わず
前を行く

お前と
お参り
大回り
大雨降って
前のめり

2013年6月15日土曜日


私がいなくなった
あなたが知ってるあの場所にはいない
もう私は別の場所にいる
誰も訪ねてくることができない場所
そこは細い隙間だから
間に挟まってしまっているから
偶然搔き出してもらうまで
私はあなたの前に現れない
ここは暗くて埃っぽい場所
私はあのとき写真に閉じ込められた魂

メールしたら


メールしたら
返事が来た
親切な
悪魔から

もう一度出してごらん
でも
きみの大切なあの人は
もうそこには
いないよ

2013年6月14日金曜日

つむじ風をつくって

つむじ風をつくって
あの人に伝えたよ
あの人が気づかない
私の思い

あの人の思いが
霰になって降って来たよ
私が知らなかった
あの人の思い

2013年6月13日木曜日

美しい世界

あの人の愛はなくなってしまった
もう私に向けられる愛はないのだ

猜疑心が周りじゅうの人の心に芽生えて
誰もが私を嫌い疎まし思うようになった

ずっと続けてきた仕事も私を嫌い
あっさりと私を手放した

集いの場にも呼ばれなくなり
あらゆる友人知人からの誘いもこない

おまけに皮膚がただれ
歯も抜け落ち
悪夢にうなされ
精神を病んだ

錆びた自転車はパンクして
歩く方がましになり
食品は消費期限がくるまえに
カビたし腐ったりもした

物陰から小蝿が湧き上がり
雨漏りもひどく
エアコンも壊れ
自分自身が不快指数の塊になった

思い出のなかに愛を探し歩いても
磁石のように弾かれて
見つけることができない

一人で座り心地の悪い椅子に座り
片目だけ開けてコーヒーを飲んでいる
生きていることの幸せに涙しながら
それでも美しくあり続けるする世界に驚嘆しながら

2013年6月12日水曜日

スリットいりの景色

スリットいりの景色が
一日に何度も切り替わる

きみが笑い声を高めるたびに
古い景色は粘着質のものに
まきとられていく

二度と現場に立ちあがることができなくなった
古い景色は
夕日に滲ませた泣き顔を
カラカラに乾かして自らの不遇を紛らわしている

それだから
私の毎日には
点眼が必要だ

何処かで高みの見物を決め込む
不適な友だちにさえ
合わす顔がみつからないから
この景色の中では

2013年6月11日火曜日

赤ちゃんをつくる

赤ちゃんをつくりましょう
私たちの赤ちゃん
聖なる夜に
命を呼びましょう
あらゆる穢れを
星の光で浄めて
奇跡のスパークを
閉じ込めましょう

過去と未来の時の流れを
あの 霧に霞むあたりで
併せましょう
世間の雑音を
音楽に変えます

魔窟に棲む妖怪たちも
今夜は祝福のため
静かにしているでしょう

雲の上に溜まった
神の涙は
温かい雨に変わります

あなたは
白いシーツの上で
輝いています
花の香りを放ち
畝っています

その曲線のぜんまいが勢いよく拡がり
私はそのバネの躍動ね中に
深く潜ってゆきます

朝は
あんなに遠かったのに
ガラス瓶のように
もう
窓辺に置いてあります

いつの日にかみた
あの花束を抱えて
あなたと出会った時のように
何もしらない顔をして

2013年6月10日月曜日

やぶか

やぶかとんできて
はりさした
やぶかはりさして
ちをすった
やぶかちをすって
ちょっとよっぱらった
やぶかちょっとよっぱらって
めがまわり
わたしはたいておとした
やぶかはたかれてちをだした
ちをだしながらじめんにおちた
やぶかやぶかだとじぶんではしらぬまま
しんでいった
しんだことさえきづかずに
やぶかいきていたことさえきづかぬに

2013年6月9日日曜日

詩ではないけれど

母が手術を受けることになった
成功しますように
痛くありませんように
前よりも元気になりますように

神様の前に立つ時
ふと思い出した時
いままで
強い母としか思っていなかったその人を
初めて弱いところもある人なのだと気づいた

私は私の方が弱い人間だと
ずっと思ってきた
だから
いままで
照れてばかりで
いたわったことはなかった

その母が
病気に挑もうとしている
細くなってしまった脚に力を込めて
恐怖に耐えることもあるのだろうか

麻酔がうまく効きますように
目覚めたら
やさしい私 が
そこにいられますように




2013年6月8日土曜日

空海という猫











初めて「空海」という名の猫を見たのは
昨日のこと

古いアルバムに書き込まれていたその名の上に
行儀よく座って
こちらを見ている

写真だから
動きも
鳴きもしない
永遠に春の長閑な陽の下で
白黒写真のまま
そこに座っているのだろう

今はもう亡いその人から
空海という猫がいたことを聴かされたのは小学生の頃
ある日気づくと
いつの間にかその猫はいなくなってしまっていたという

1951 と銀文字の年号が刻まれた
そのアルバムの中で
私に見つけられるのを待っていたのか
いつの間にかいなくなってしまったひとが
今はもうない家の奥にひっそりと仕舞っていた
その布貼りのアルバムの中で

2013年6月7日金曜日

アイディアなんて








アイディアなんて価値はないさ
ある日、アイディアを出すことに疲れて彼は言った

ここ数日
いくつものすばらしいアイディアが浮かんではきたけれど
それらは彼が記憶し あるいは さらにふくらまそうとする前に
彼方へと消えていった 跡形もなく

アイディアは浮かんでは消えてゆくものなのだ
もう彼はそれを追いかけない
そして
もう
アイディアの気配さえ
彼は無視をするのだった

梅雨と真夏の間の季節に
どんよりした空一面の雲の真ん中に
太陽が豆電球のように見えているが
あのちっぽけな太陽のおかげで広い地球上はこんなに明るい
そんなことが実際にあるのだ

関係ないことかもしれないが
彼はお腹を空かせてそんなことを考えていた
そしてカレーでも食べようかと思っている
気をつけないと
彼は週に10遍もカレーを食べてしまう

マルチタスクの脳みそのデスクトップは案外狭く
そのせいで
いろんなことを同時には考えられない


2013年6月6日木曜日

願い事


祈らないと
祈りは通じる

だから
祈らなくていい

鈴蘭の鈴を鳴らして
願をかけているのは
祈ることを知らない
雨の粒

きのうやんだ雨は
もうどこにいるのか分からないが

願い事は
天に届いたのだろうか

2013年6月5日水曜日

女の時間


それは霊障(れいしょう)ですわ と
煤(すす)けた女が神妙な顔で言った

最も苦手とするタイプであることが
相手にも悟られていることだろう

その明白なバレバレの状態が
なんともはしたなく感じられ
彼は冷笑して後ずさりするしかなかった

「霊障に冷笑か」

笑えない駄洒落を彼は口ごもり
煤けた女のまえで
成り行きを見守るしかなかった

タイミングよく
鳶が ピヨールルーン
と啼いて合いの手を入れた

今始まったばかりの
この対話
彼にとっての最も長い日となるだろう

女との出会いにピンを売って
黄色い糸で同心円を描く
私の時間

それはまた不幸にも女の時間でもあるのだ

2013年6月4日火曜日

冷たい何かを舐めながら


オフィスには半分ほどの従業員が残っていた
きょうはベースの照明を点けない日なので
夕日のオレンジ色の強い光線が開け放たれたブラインドの向こうから
遠慮なく差し込み
フロアは雑然とした影絵の世界となっている

白い薄手のブラウスを着た女子社員Kの胸は
ブラジャーのレース模様のふくらみまで
透かして夕日と反対側に影まで作っている
そわそわした男子社員は横目でそれを盗み見て
ごくりと喉の音を立てた

セクションの長の女性は
高学歴の才媛だがまっとうな恋人が作れず
妻子持ちの取締役部長の影の女を務めている
それは公然の秘密というのだと誰かから聞いたが
彼女自身はもう誰かに知られても仕方ないと思っている

新卒で入社し4年目を迎えたR嬢は
この4年間で5人の男子社員と関係を持ったが
喫煙室でそのうちの何人かと偶然一緒になると
その度に
何人もの男に求められてセックスする妄想を巡らせ
秘かにエクスタシーを覚えている

夕日はやがてくれてゆき
それぞれの机の上にデスクライトのLEDの冷たい光と
モニターの画面が輝き始める

私にはそれが不吉なものに見えてしまう
例えば死者たちをあやつり
この世を滅ぼす指令を映し出す光に
あるいは
世の人の心をかき乱し野獣へと変身させる光に

私は冷たい滑らかな何かを舐めながら
舌先でそう思う

2013年6月3日月曜日

この世に「奇跡」というものがあることを
忘れて暮らしていた
いや
たまに机の引き出しの奥から
いつか好きな人に貰った大事なプレゼントを取り出すように
そのことを思ってみたりしたことはあったけれど

だか
奇跡は
自分の日常とは無関係だと
いつの間にか思い込んでいた
そうするしかなかったから
私には過酷な暮らしの日々が訪れては消えて行ったから
そこには奇跡は気配さえ現わさなかったから

しかしその日
ハンバーガー屋で安いコーヒーを飲みながら
久しぶりに普段考えないことを考え
普段思わないことを思い描いている自分にハッと気づくと
隣にもう忘れていたリアルな奇跡の顔があった
奇跡は 久しぶり! と言わんばかりに私を見ていた
私は焦り奇跡のことを思い出そうとしたが
脳みそをフル回転すると同時に
奇跡のことを思い出した

2013年6月2日日曜日

体育館前にはスピーカーが設置されていない
手抜き工事のせいだ
体育着を着た男子小学生が5人いる
こちらからは見えているが
彼らにはこちらが見えない

旧校舎の中には
危険がいっぱいあるが
誰もそのことには気づかない

逃げなければならないと
私は知っているが

2013年6月1日土曜日

追いかける私


私の視界は
目の形に切り取られているのかな

前髪が空の上にある

私は
私の形に空気を切って
あなたがいる場所へと移動してゆく

あなたは私の心をみて
曇っているね と言う

私は
聴覚の可聴域を微妙に変化させながら
あなたの声を経験と照合し
何が言いたいのかを類推する

その間
瞬きを多めにする

あなたは私の応答を聴かずに
体重を移動させ前へと歩き始める

私は涙腺を若干開いて
瞳の渇きを癒し
あなたの後を追いかける

2013年5月31日金曜日

囚人列車は私だけをのせて


坂道の途中
石垣の割れ目に根を張って咲いている白い花
きみは私より
清くたくましい

私はきみの横を通り過ぎて
言い訳をしにいく

わずかな給料の余力を使い果たして手に入れた
言い訳に添えるお詫びの品を脇に抱えて

電車とバスと徒歩で1時間
休日の太陽を背中に受けて
背中を丸めて歩いていく

私はなんて小さい人間なんだ
電車のつり革に手錠をかけられ
囚人列車は私だけをのせて
トンネルに入っていく




2013年5月30日木曜日

女三人 それはだれ?


もんもんもんもん もんもんもん
空がふやけた 霧雨だ

もんもんもんもん もんもももん
女三人旅に出た

もんもももんもん もももんもん
へのへのもへじが笑ってる

ろんろんろんろん ろんろろろ
ろろろろろんろろ 誰ですか

ろんろろろんろん ろろんろろん
ろろろろろろろ ももんがです

2013年5月29日水曜日

愛について


あなたが病んでいる時
私はその重さと釣り合う雲

あなたは長閑な雲の様を眺めて
ふと足を止め
深呼吸をしてみたくなる

私が痛みに耐えている時
あなたはそれを打ち消すリズム

私は歌いながら体を揺すり
痛みの鼓動を逆手に取って
快楽に変える

あなたが悲しい時
私は空の器

あなたは私に何も期待しないまま
私の言葉を受け入れ
信じもしないまま
言葉のベッドで眠ってしまう

空には星が瞬き
地には心地よい夜の闇が
訪れているだろう


2013年5月28日火曜日

ナポリタンとサイダー

学食にはいつも幽霊がたむろしている
昼飯時の混み合う時間帯には
生きている人間と死んでいる人間がダブって存在しごった返してしまうので
なにかの〈るつぼ〉となっているが
先ほどから彼が何の〈るつぼ〉か
的確な言葉を思い出そうとしているがいっこうに思いだせない
     その間にも
     詩は進行する
     いつか言い表したあの言葉!
行ったり来たり
行ったり来たり
である

飛行機が遅れたため
東京からこの大阪の大学にやって来る電車の車中で
彼には既に目的の四分の一が達成できないことが分かっていた

それで少し焦ってはいた
大学のある駅で降りると
駅の出口は大学からは一番遠い位置に位置していたので
さらに彼は駅の出口から一番遠い車輌に乗っていたので
     最悪だ〜! と
我が身の不幸を嘆かずにはいられず
だからつい足早に投げやりに歩き始めた

十四(しいすう)という名の駅にあるその大学の学食は地下にあり
二階までの吹き抜けの構造になっている
食堂の周囲には内階段から繋がる渡り廊下があり
さらに螺旋階段を通じで二階の廊下に繋がっていた

彼はエレベーターホールから学食へ行くエレベーターに乗ろうとしていたが
何階に行けばいいのか分からず混乱していた
いくら考えても分からない
答えが見出せない
そのうち上へ行くエレベーターがやってきて
彼は乗り込みB1ボタンを押した

エレベーターから降りると
そこは学食より1メートルほど下の床だったので
五段分の半端な階段を上り
上り過ぎたので一段下がり
奥のカウンターに近づいていった

ナポリタンとサイダー

おそらくこれが
きょう彼が初めて人間に発した言葉だった

そして
その声はいつまでも木霊していた
まるで彼を責めるように
まるで彼を愛するように

夕方の学食で
彼がいなくなった後
幽霊たちがお酒をチビチビやりながら
その彼の声を繰り返し歌っていた

ナポリタンとサイダー
ナポリタンとサイダー

2013年5月27日月曜日

初心者として


死者が来て
するめを炙っている
そのよこで
柱時計が時を刻んでいる

カチ カチ カチ カチ ・・・

時を刻む音が
板張りの床に響くたびに
心臓はリズムを乱されそうになる

お隣さんで赤児がなきだした
ラジオからは流行り歌
たぶん間違えずに律儀に歌い終えてくれるだろう

私は目を閉じて
あなたとのことを考えていたが
いろんなことが入れ替わり立ち替わり心を占領しようとするので
ついにあきらめて放っておくことにした

いつものことだ
日が暮れて暗くなり
公務員が帰路につく
あるいは酔って飲み屋のはしごに出かける

きょうという日は
はじめてのことだ

毎日その日を初心者として
生きなければならない
私は声を上げ
おどけて助けを呼ぶしかないだろう
死んだあの人に

2013年5月26日日曜日

男子だけ全員集合!


男子だけ全員集合!

そう号令が掛かったので
私はそこへ行って
腰を下ろした

女子はどこかで
何かをしているのだろう
なにか秘密めいたことなのだろうか

でも きっと
いつかまた
女子と一緒になれるだろう

そんなことを思った日から
あっという間に
長い長い年月が過ぎ
私はずいぶん歳をとった

男子だけ全員集合!

そして またもや
号令が飛び交う
私は号令の声がする方へ行き
腰を下ろした

膝小僧を抱えて
あの時と同じように

未来創作から電子ブックが出版


このブログから2冊の電子ブックが発売されました。日記のように好き勝手に綴ってきたので、本人がいちばん驚いているのではないでしょうか。掲載にあたり、推敲をきちんといたしました。Kindleのアプリでお読みいただけます。どうぞよろしくお願いいたします。




2013年5月25日土曜日


葉が風に揺られて
夜のあいだに降った雨の滴が
地面へと落ちていく

家がいつ建ったのか
彼は見ていなかったが
その窓の外には巨木があり
秋にはドングリの実を屋根に降らし
枕に顔を埋ずめながら
いつも遠くにそれを聴いたいた

秋は深まるたびに
彼を冬へといざなった
何回の季節替わりを
いったい憶えていることだろう

彼は滴のことも知らない
それはほとんど音を立てずに
地面に達し
土に浸みていったから

彼の学校は住宅街を10分ほど歩いたところにある

彼の部屋の机が
いつどこで作られ
彼がどういう経緯(いきさつ)で使うことになったのか
彼が知らないうちに
その机は廃棄物となり
どこかへと運ばれていってしまった

この机を
彼に使わせた彼の父さえ
もうこの世にはその姿がない

滴は
土に浸みたのちに
どうなったのか
だれか知っているだろうか

空に上り
雨となって降り注いで
またここに訪れているのだろうか

木の机の上に
リンゴ印のコンピューターを置き
彼は今 何かを書いている
ペン差しには鉛筆もあるが
彼はキーを叩いている

その音が
ほかのどの音にも喩(たと)えようがないことに
すこしだけ
いら立ちながら

2013年5月24日金曜日

5月24日


やさしい夜の風
この夜を清める月の光
鳴ることなく黙っている電話

部屋の中で時を行き来する思い
群衆にまぎれこみしかし交わることのない人びと
四角くそびえるビル

鉄路を行く汽車
ちらちらと瞬く波
誰も載せていないベッド

丸くなった鉛筆の先
街角で待っている人
5月24日
二度と訪れない今日の日

80,001、これからも

ページビューの合計が80000を超えました。
日記のような一筆書きの詩を
こんなに沢山、長きにわたり見てくださってありがとうございます。
思いがけなく、すばらしいパブリッシャーとの出会いがあり、ここから電子書籍も生まれました。
これからも、いや、これからは、もっと楽しんでいただけるよう意識してやっていきたいと思います。
どうぞこれからもよろしくおねがいいたします。

2013年5月23日木曜日

おとなの罠

吹きすさぶ風
揺れているものは何?

いつからああして
揺れているのだろう

人知れず
夕闇に飲み込まれてゆく
ゆれているもの

降り始めた
冷たい雨
湿っているものは何?

きょうも湿り
明日には乾いて
笑っていられるのだろうか

夜に湿るもの
じっとりと
言い訳をいわないのが
おとなの約束?
それとも

おとなの罠?

鍵穴


したいことがない訳ではない
したいことを無視している訳でもない
したくないことばかりが山を成して行く手を塞ぎ
しなければならないことが張り巡らされ
したいけれどできないことが礫となって飛んで来る

歩くこともままならない
止まれば砂塵に襲われ
逃げればスコールが付いて回り
叫べば雷鳴に打ち消され
黙れば静寂に呑み込まれる

したいことがない訳ではない
ここから抜け出て
したいことをしなければ
しなければと思わずにしなければ

したいことは
向こうに行っても
死体とならずに
生きているだろうか

不安が影を伸ばし
くっきりした輪郭を作る
そのなかの光る一点に
鍵穴がある

2013年5月22日水曜日

心の隙間


心の隙間に何もない
心の隙間を埋めるもの
売っていたなら買ってこい
心の隙間を埋めたいが
そうは問屋がおろさない

心の隙間が軋んでる
心の隙間を癒すもの
どこかで奪って盗ってこい
心が泣くのをとめたいが
ますます侘しさつのってく

心の隙間がつんざける
心の裂け目を縫うミシン
知らん顔して手に入れろ
心を取り繕いたいが
心は空に消えていく

2013年5月21日火曜日

ルビールビー

ルビールビー
白い日々
ルビールビー
君の夢
ルビールビー
無限へと
ルビールビー
回ってる
ルビールビー
夢の中

もう何度もやっているのに

もう何度もやっているのに
いつも新しいことだと感じられるのは
毎回新規のファイルが生成されるからだろうか
長く生きていると
部屋中ファイルだらけになり
足の踏み場もなくなるから
時々ごっそり処分しなければならない

だか
処分の時を見極めるのは
難しい
気づいた時にはすでに考えすぎているから
さらに考えすぎればすぎるほど難しくなっていく

愛は執着し
片道切符は帰ることを邪魔して
捨て身で挑んでくる

大事なものたち
生まれ変わり新しい衣装を纏い
私の感じやすい部分を慰めて欲しい

見えない星の光ほどのかすかな眼差しで
見返して視線を結ぶから

2013年5月20日月曜日

欲ばりチキンちゃんへ

欲ばりチキンちゃん

自分が得することばかり考えていると
損をすることが分かったから
他人のことも考えることにしたけど
ちょっと待って
やっぱりそれは自分が得するためじゃない?

怖がりチキンちゃん

広い世界に出ていきたいのに
広い世界がとても怖くて
他人のせいにして気を紛らわしているけど
ちょっと待って
広い世界はキミの頭の中には収まらないよ

見ない振りのチキンちゃん

窓ガラスに付いた雨の滴も
狭い道を歩いている見知らぬ人も
母乳を吸わせる母親の顔も
いまここにあるもの
キミと同じかけがえのなさで存在しているよ


2013年5月19日日曜日

私はここに


何を訊いてみたいのか分からない
ただ私はここにいて
感じるままに過ごしている
風を見て飛び立つ鳥のように

何をすればいいのか
訊かれると
分からなくなる
本当にしたいことは
もう
とうにやっていたから

だから私はここにやって来たのだ
よく分からないけど
たぶん

余計なことは考えないでいい
余計なことを考えないでもいいことも
考えないでいい
そう思い
着慣れた服を着て
出かけてゆく
いつもの道を歩いて

気がつくと
いつも来るこの場所に
立っていた
何もも持たずに
当り前のような顔をして
立っていた

2013年5月18日土曜日

ありえないことは


ありえないことは
ありえないはずだとしんじていたが
ありえないことは
あっというまに
ありえることにかわる

かわってしまったありえないことは
もうありえないことではなくなり
ありえることになってしまっているので
ひとびとはあたふたしたり
あきらめたり
うらみごとをいう

ありえないことは
もうこのよにはいないので
あのよから
こどもをみまもっている

ありえないことのこどももまた
ありえることに
りっぱにそだつだろう

2013年5月17日金曜日

幸せの味


白い砂山の上の月
婆ちゃんと見たのは
いつのことだったんだろう
夜の明るさを知ったあのとき

あたたかい風をまだ頬が憶えている

きょうも仕事を終え
混雑したハイテンションの陰気な電車の箱の中に自ら飛び込んで玄関に帰り着き鉄のドアを開けて椅子に倒れ込むとしばらく心は幼い頃に飛んでいた

立ち上がり
冷蔵庫から卵を取り出し
冷や飯の上で割った

婆ちゃんは戦争で大事な人を失くし
涙と血の味がする卵かけご飯を
幸せと不幸を思いながら噛みしめては
喉に搔き込んだと言っていた

私の卵かけご飯は
ただ幸せの味がしているけれど

2013年5月16日木曜日

戦乱の大地へ


木の実を採る
そこに実がなっていれば
木いちごを栗を
柿や梨を採る
そして土を堀り芋を取る
魚を蟹を岩魚を鮭を捕まえる
海苔を若布を集める
黍(きび)や粟や葱やゴーヤを採る
山羊の乳を搾り
椰子のジュースを飲む

生まれた場所の
生まれた季節の香りが
帰趨本能に囁きかけ
粗末な崩壊しかけた家に
私を呼び戻すが
そこには既に家はなく
何事も見る影がない

いや
多くの血と涙が流されて
見たいものは痛み
見られることを嫌っている

誰かがここにいたはずだ
愛すべき誰かが
目を輝かせて何かの夢を語り
それは希い望みとなって
私を生かすのに一役買ってきた

きょうも人びとは
戦争の代わりにテロを
テロの代わりに金儲けをやっている
またはテロや戦争や
核戦争の計画をしている

自然がが与えてくれるものを
我が物顔で人工化して
新たな争いをする機会を待っている

子に母乳を与えながら
あなたは何を狙っている?
その子が生き延びる世の中は
どんな色の花が咲き乱れ
どんな生き物たちの血が流されている?

私は言葉で問う相手を見つけられず
言葉を捨てて
生まれた場所
戦乱の大地へと
問いかけに戻ってゆく

2013年5月15日水曜日

和やかな息


禿げた頭に産毛のように白い毛が生えているが
そこに陽の光たちが集まって
昔ながらの遊びをしている

禿げた頭は
誰のものか?
それは問題ではなく むしろ
あとどのくらいそれが続くのか
頭の主はそのことに気づいているのか
そのことの方が問題だ

なぜって
そこには
永遠 や 幸せ や
よく歌や占いの中にでてくるものたちがが
あふれているから

ははあ
それには
とうの本人は
気づいていないらしい

知らせてあげようかな

禿げた頭のそのひとは
でも いったい何をしているんだろう
犬を散歩させるみたいに
他者をよろこばせることばかりに熱心なようにみえる

それがわかって
私もいま
和やかな息をしているようだ