2013年6月5日水曜日

女の時間


それは霊障(れいしょう)ですわ と
煤(すす)けた女が神妙な顔で言った

最も苦手とするタイプであることが
相手にも悟られていることだろう

その明白なバレバレの状態が
なんともはしたなく感じられ
彼は冷笑して後ずさりするしかなかった

「霊障に冷笑か」

笑えない駄洒落を彼は口ごもり
煤けた女のまえで
成り行きを見守るしかなかった

タイミングよく
鳶が ピヨールルーン
と啼いて合いの手を入れた

今始まったばかりの
この対話
彼にとっての最も長い日となるだろう

女との出会いにピンを売って
黄色い糸で同心円を描く
私の時間

それはまた不幸にも女の時間でもあるのだ

1 件のコメント:

  1. 中村ゆき子2013年6月6日 0:02

    二人の間をさまようマーブルエアー、
    ここから脱却する方法は二つ。
    でもあなたは黄色い糸で同心円を描いてしまったから
    もう既に女の時間に陥ってしまっている。
    だって煤けた女に話しかけているでしょう?
    「霊障って?」

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