2012年6月12日火曜日

石畳の道

石畳の道
歩きにくい石畳の道
走り出したいけれど
ここは石畳の道

石畳の道は
古くからあるこの街の
道から路へと通じる途

走る人もあったが
容易に足をくじいてしまう
意地悪な道

未知へと続いているのか
知らんぷりで
手を取り合って歩くと
広場の外れの塔のところで
途切れてしまう道

石畳の道は
足音を響かせて
なかなか眠りにつかない道
何も語らずに
聞き耳をたてている
好奇心あふれる道

石畳の道は
いつまでもここにあるのか
私が戻るときに迎えてくれる
優しい道

2012年6月11日月曜日

僕は詩をやめるかもしれません

僕は詩をやめるかもしれません
いつも悩んでいます
または基本単語600語だけで書くとか

屋久島に初めて一人で行ったときに
島の海岸をぐるっと巡る道をレンタカーで走りながら
僕はその時も詩をやめようかと考えていました

詩は何故かいつも僕のそばに居ましたが
僕は詩がそばに居るだけで満足でした
気が向いたらすぐに詩を味わうことができたからです

何処かの町の食堂でポカンとして頼んだ定食を待っていた時
壁の棚に設置された古びたテレビから
いきなり詩の朗読が聴こえてきて 僕は
自分が知っているその詩がこうしてテレビで読まれることが
とても嫌でした

詩は皆のもの とよくいわれますが
僕は自分だけで楽しみたかったのです
しかし詩を楽しんだあと その詩の良さを
なるべくたくさんの人に知ってもらいたいと願いました
そして僕は 自分が書いた詩も合わせて知って欲しいと
願いました

自分の好きなものを
他人が紹介するのを受け入れるには
高いハードルがあるのだと知りました

会社で働いている時
僕は詩を仕事にしたいと思っていました
誰もがそうして競い合えば楽しいと思い
詩を無理やり仕事の場に挿入しました

詩は自由で
変幻自在 神出鬼没
しかも食べ物のように味わってもなくなりません
永遠に存在しつづけるかのようです
僕は食うに困っても
詩があることで命は死なないのだと勘違いさえしました



2012年6月10日日曜日

永遠につづいていくキスだった


掛け算の九九ができなくてもひとつひとつかぞえることができる
漢字の読み書きができなくても
挨拶の言葉をはっきり言うことができる

あなたは
あなたの前にいる人の気持ちを受け止めると
いつもお祈りをする
このひとの夢がかないますように と

余りお喋りは上手じゃなくても
役立たずの言い訳に時を費やすこともない

天使がやってきたとき
あなたはうれしそうにキスをした
それは
とても自然で
永遠につづいていく
キスだった

2012年6月9日土曜日

やっかいなあなた

悔しさは薬になる
あなたは夕日に向かって諦めた顔をしている
いまは挑まないのだろう

苦い果実を齧って
何かを企もうとしているが
気づいていない

自分のことなのに
冷たい視線で見つめたきり
突き放して
足の指で弄ぶだけ

2012年6月8日金曜日

何も知らずに死んでゆけ

食べ物はある
捨てるほどたくさん
だが
お前に渡すことはできない
お前は黙って死んでゆけ

この食べ物には
微量の毒が入っている可能性があるから



救助隊もある
彼らを雇うためのカネもある
だが
お前を助けに行くことは出来ない
お前は黙って死んでゆけ

お前の命など
見知らぬ名前ほどの価値しかないのだから



情報はある
みんなのカネで手に入れた情報だ
だが
お前に渡すことはできない
お前は知らずに死んでゆけ

お前はすぐに
パニックを起こすから



私たちに
それは任せておけ

そして 何も知らずに
死んでゆけ

もしうまくいけば
何も知らずに
生きてゆけ

2012年6月7日木曜日

幸せになると

幸せになると
不幸な人のこころが
見えなくなるから
お前は幸せになるな

ある朝
天使が私の前に舞い降りてきて告げた

幼い私にはその意味がわからなかったから
私はそんなお告げなどすっかり忘れて
長い年月を過ごした

ある朝
あの時の天使が
またやってきた

私は突如思い出した

そんな私に天使は告げた

不幸せになると
幸せな人のこころが
見えなくなるから
お前は不幸になるな

だが私にはその方法がわからなかったから
私はそんなお告げなどすっかり無視して
今までどおり不幸な人のこころの傍らで
暮らすことにした

2012年6月6日水曜日

やりすごす日々

街の模型の上 を 歩いているとカタカタ ウーンと唸り 電車が 走っている
夕方の風は 昼の空気のよどみを 押し去ろうと している
工場の煙 調理の油っぽい煙 車の排気ガス
街には 灯りが点ろうとしている
巨人の 私
足の踏み場もない街の上空の空気を吸いながら
ゆっくりと 視線を 旋回させる

あのこも あのひとも 知らないあの人も いやなあいつも 
がんばっているあの素敵なひとも
街の 大地の上に 頼りなげに 着地して
今を過ごしている

ひときわ 高い 塔が ライトアップされ
街の中で シンボルを 主張している

待っている 相手が 来ないのは
私が 待ち合わせ場所に いないから なのだろうか
それとも
待ち合わせ場所が
変わってしまったからなのだろうか

もう
夜になろうとしている
毎晩毎晩 ご苦労さま なことだ

むかし
「お呼びでない?  こりゃまた、失礼しました!」
っていうギャグが 繰り返し 聞こえてきたが
世の中は 呼ばないのに来るもの で満杯だ

巨人の私は 上空で 考える
呼ぶ人が 少なすぎる
待っているばかり の 人が
多すぎる
待っているだけでは駄目だ と いいながら
来る日も 来る日も
ただ 待っている

そのくせ
待っているものが来ても 気にもとめず
やりすごしてしまうのだ

俊太郎&DiVa こころの旅 観に行きたい


2012年6月5日火曜日

苦しんでいる人に

「もうだめかもしれません」
と心のなかでつぶやいて
絶望を抱えて苦しんでいるね

だれが
「もうだめかもしれません」って
言っているの?

その人に
あなたから
話しかけてあげて!

「あなたはそう思っているかもしれないけれど
私はそう思わないよ」って

だって
苦しんでいる人がいたら
いたわらなくちゃね

お互い様だから
あなたが苦しい時には
私がそばに居て
あなたをいたわるから
私が苦しい時には
あなたがそばに居てね
詩がからっ風になって吹いているが
誰も気に留めていない

その詩は私の詩なので
私だけが気にしている

私は分かりにくい生き方をしている
だから私が書く詩は
時々からっ風になってしまう

好きな女の人にまとわりついた布は
ほどけそうだが
詩の謎はこんがらがるばかりだ

2012年6月4日月曜日

メロンパンは私に

私の目の前にあったはずの食べかけのメロンパンが
消えている
誰が食べたのだろう

死にたい と
検索窓に打ち込んでから
読みたいものを探し始めたら
死ぬ前の準備 とか 嫁に殺された俺がさっそうと登場 とか
変なものがたくさん出てきた
しばらく探しまわっていると
あるカウンセラーのページに行き着いた

その文章には
見たくない言葉がなく
ページをめくると挨拶ができなかった少年の話が紹介されていた
少年はなぜ挨拶ができなかったのか
そこにはこう書いてあった

「人に挨拶をすることと、死んでいく父親に挨拶していないこととが、重なり合っていたんですね。つまり、さよならを言わない限り父は、自分の中に生き続けていることになるわけです。
 父に挨拶をし終っていないんだから、他人に挨拶なんかできっこない。挨拶をしてしまうと、父が本当に死んでしまうから、遠くに行ってしまうから・・・。
 でも、こうした気持ちや感情は、頭の中で一瞬の無意識のうちに作られてしまうことなんです」


私は立ち上がって数歩歩き
訳もなく壁にかかっている鏡をのぞきこんだ

くちびるの左下に
メロンパンのカケラがついていた
メロンパンは
やはり自分が食べたのだ

2012年6月3日日曜日

負担なく帰りたい

連れてくるのかな
猫も
連れてくるのかな
ふたり
ナナとビスケット

あのひと

連れてくるのかな
連れられてくるのかな

ライラックの咲く坂道
バッグ振り回して
登ってくるのかな

猫の鳴き声聴こえたら
あのひとの
泣き声と
間違ってしまいそう

青空に雲は流れ
ビルとビルの間に
この季節らしい風が吹く

そろそろ
自分の部屋に帰ろうかな
あのひととの待ち合わせは
6年前

もう地名も番地も変わってしまった
あっ
そういえば
自分の部屋も
今は新しい駅で降りなければ
負担なく帰ることは出来ないのだ

2012年6月2日土曜日

縄をかけてくる人

都合の悪いことは忘れてしまっていたので
心は重たいままだった

都合のいいことは小脇に抱えていたが
賞味期限が切れてねっとりとしている

太陽消毒を試みるが
効いているかどうか判断する者が居ない

私は
電車の駅に住んでいるが
きょうも発車ベルの音で目覚める

(電車はいつも立ち去ってばかりなので
ここは仮の宿なのだろう)

とところで私には添い寝する人がいないが
私の首に縄をかけてくる人はいる
冷たかった風ガタンゴトンとうるさかっった電車の音
錆とガソリンの漏れる匂いがした軽自動車
遠い
見知らぬ湖に向かって走った道
まだ何も知らない男と女
道を覆う木々と葉っぱ

2012年6月1日金曜日

私は走って

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

クールな吟遊詩人は
次々乗り物をとっかえひっかえ
夜昼なく駆けめぐり
この地球の縄張りと罠を探索する
レアアースより必要なもの
人の心より価値あるものがある  と

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

遊び飽きた 湘南女は
ボランティアに活路を見つけて
今度は国境を股にかけて井戸端会議
夜にダンスを教え
酔いつぶれて星を見ながら
眠れない夜をあわれに眠っている

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

私は走って告白しちゃう
あなたはドタドタ走って答えなければならない

2012年5月31日木曜日

林間学校の美術館

そこに美しいものがあったけど
君がいたから
美しいものは確かに僕たちをとりまいていたけど
君がいたから
僕は君にばかり気を取られていた
美しいものはずっと前から
そこにあったけど
君は今しか僕の目の前のそこにいないので
僕も今しか君に近づけない気がしたので
美しいものは単なる背景として
君と僕との舞台になってもらって
僕たちはそこから立ち去ることにした
景色は蝶になって頭上を旋回した
風が魔法の粉をそのシーンに振り掛けた

2012年5月30日水曜日

故郷の星の道へ

ペンの先からインクが出て
紙に文字が現れる
その文字は
昨日の夜空の星座からやってきたのだ

星座は
いま
欧州辺りの上空にあり
地上に光を落としなから
震えているだろう

だか現れた文字は
ブラックホールと似ていて
私は安心していることができない

その黒い穴に
吸い込まれたら
どうなってしまうのだろうか
(反対側に抜ける通路はあるのだろうか)

インクケースは
無数の宇宙を濃縮してその重さに耐えている
私は自転車の籠に
バッグを放り入れて
故郷の道へと漕ぎ進む
故郷の星の道へと

2012年5月29日火曜日

もうすぐ殻を

それは夢なのね
古びた夢なのね

新しい夢と
交換しないのね

新しい夢が
見つからないのね

古びた人になったのね
もうすぐ殻を
捨てるのね

2012年5月28日月曜日

自ら光らない私

夕暮れの街に
灯りが  ポツリポツリ
グレーの斑模様の空は
自ら光る 地球の被せ物

海中の海月(くらげ)
川べり 草叢の蛍
大地を渡り歩く稲妻

自ら光らない
あの月と同類項の私に
どうか光る力を与えてください

2012年5月27日日曜日

ふたたびあなたと、みたび太陽と

あなたは太陽の言葉を受け取って
その言葉通りに振舞っている
私は明るく生命力に溢れたあなたに釘付けになり恋をしている
あなたの後ろにはいつも太陽が輝き
あなたが吸収した水分を蒸発させ肌を露出している
あなたは昼間中
笑いながら話をして相手の手を握って話題の渦中へと引きずりこむ

夜になると
あなたは月が反射した太陽の言葉を読もうとするが
鏡像になっているので頻繁に読み違えてしまう
その言葉はたまに呪文のように意味不明だが何かのパワーを宿している
私はあなたに再び魅了され不眠のまま
気だるい朝を迎えることを繰り返し
それはあなたを仲介した太陽への返事のように思われてくる

2012年5月26日土曜日

古びた絵

新しい街の新しい部屋に
飾られた一枚の絵は
何度めの引っ越しだったのだろう
その絵は箱の中に押し込められたまま
一度も飾られずに
次の部屋へと引っ越したこともあった

描かれた時から
10年が経ち
光も
少しくすんだ

新しい部屋に飾られた一枚の絵は
この街の光を浴びて
輝きを取り戻すだろうか
あの日のあなたに尋ねたら
なんと答えるだろう

新しい街の新しい部屋に
古びた絵を壁に飾って
出かけていく
置き去りにした絵が
見送ってくれただろう

2012年5月25日金曜日

君と呼べる人は

僕は君が可哀想だと
思った事は無かった
君は自信過剰で行動派
何時だって元気で明るい
何でも思い立つと直ぐやる

だけど最近悩んだ顔をする

僕は君が苦しんでいても
大丈夫だと安心している
苦境をバネに頑張る
新しい世界を夢見てる
前向きに考えてくじけない

だけど最近笑わない

僕は君が何時までも
その場所に居ると思い込んでいた
いままでと同じように
太陽の光のように自然に
僕が声を掛ければ返事をする
いつも同じ繰り返し

だけど君はもう居ない

君と呼べる人は
もう居なくなった

2012年5月24日木曜日

山月記

最近仲良くなった奴が
窓をノックしてガタガタ鳴らす
夜昼構わず
大きな音をたてて

付近に住んでいるカラスたちも
驚いている
うるさいのは自分たちの専売特許だったから

そいつは自ら突風になり
髪を振り乱し
思いついたように
窓を鳴らす
気まぐれな連中もかなわないだろう

奴が窓を鳴らす時
階下で女が泣いている
窓枠に昆布や海藻が絡まって
月が見えないというのだ

女は自分が泣いていることを
周囲に悟られたくないので
奴がガタガタやっている時に重ねて
大きな泣き声をあげるのだ
その喚く様子は地獄絵図だ

奴は黙認しているのか
私は誰の味方もしないが
仲良くなったよしみで
奴を許している

奴はいつまで窓をガタガタやっているのだろう
私は嫌になると
ドアから外に出て
商店街をほっつき歩いた

すれ違うひとの顔を確かめながら
私の未来の妻はいないかと

2012年5月23日水曜日

よろこびをきいて!

からだのなかに
よろこびがはいりきらない
あふれそうになったから
かけだして
とびはねた
だれかにつたえたいけど
しってるひとがそばにいないから
なおさら
わいてくるよろこびがふえるばかりで
いきおいだけで
かけだして
とびはねて
さけんだ

ひとからみたら
へんなひとだ
でも
じぶんでは
どうしようもない
だってこんなに
うれしいから
いままででいちばん
きぶんがいいから

よろこんでいる
りゆうだって
ひとからみたら
つまらないことかもしれない

ああ
そんなひとはかわいそうだ

このきもちを
みらいのじぶんに
わけてあげたいよ
こんなにさいこうのことが
むかしおこったんだって
しらせてあげたい
きっとこれからも
なんかいも おこるとおもうよと
おしえてあげたい

おせっかいかな
ねぇ
みらいのじぶんさん
どうおもう?

2012年5月22日火曜日

すばらしいすみか

わるいひとが
もえている
くらいむらさきいろの
ほのおにつつまれて
たまに
しゅわしゅわ
ぱちぱち  と
おとをたてている

わるいひとは
もう
こえをだして
うまいことをいうことができない
なにもいうことができないから
だまって
もえて
はいになっていっている

わるいひとのほのおのまわりには
だれもあつまらない
きゃんぷふぁいやーや
かじかんだてをあたためるたきびとは
ちがうから

もえているわるいひとのひを
けそうとするひとはいない
わるいひとは
どくをふくんでいるので
ねつでやきつかされなくてはならない

このよには
もえないわるいひとも
かずおおくいる
わるいひとたちが
すくらむをくんで
わるいひとのしろを
まもり
みはりをしているから
だから
わるいひとは
もえるすんぜんに
なかまに
けしとめられることがよくおこる

ところが
さいきん
わるいひとのしろのしゅうへんのきおんがあがり
かんそうしてきて
いよいよ
いっきに
しぜんはっかするのではないか
ということがささやかれじめた

もし
わるいひとのしろが
しぜんはっかして
わるいひとがいっきにもえたら
みんなは
どうしたらいいのだろう

わたしは
しんぱいいらないとおもっている
あなたはどうですか
いっしょにはなしあって
いいすみかをつくりましょう
きれいなほのおが
ほしをこがすほどもえたつ
すばらしいばしょを

2012年5月21日月曜日

虫の鳴き声が止んで
鳥のさえずりが聞こえてきたら
ここは
もうすぐ朝になる
微かに塩辛い朝の風が吹いて来るのを
誰かがおくれ毛で感じるよ

どこにいても
人はいつかあった朝の記憶を
再生することができるから

澄んだ空気の森や
木の枝や空を映す麗しい水面がなくても
まぶたを閉じれば
都会の喧騒からだって
瞬間移動できる

あなたは朝なのに
夜のような暗がりに心を置いてきている

もしそのことに気がついたら
あしたは
心を持って
朝にやっておいで

この詩がその道になる
あなたの知らない一人の詩人が
あなたを愛している

2012年5月20日日曜日

詩があなたを

詩の始まりは東にあり
終わりは西にある
行は
北から南に伸びている

人は南の果てに行き着くと最北へ飛び
次の行へと暗黙のうちに導かれている

いまあなたがどこにいて
どこに向けて旅を始めるかは
あなたの自由だ

詩があなたを追いかけて
出会おうとしているかもしれない

2012年5月19日土曜日

椅子が知っている

その頃
椅子はただ椅子だった

小学校の椅子
駅のホームの椅子
野球場の椅子
自分の部屋の椅子
家のソファー
教会の長椅子
公園のベンチ
マクドナルドの椅子
縁側のロッキングチェア

どの椅子もただ
私の前で
椅子であるだけだった

私は
座り心地などは気に留めずに
ただ無心に椅子に座っていた

いま
思い出すと
いろんな座り心地があった
大人になってから
座り心地を気にするようになって
おのずと自分の心地のいい居場所に向かった

ものの価値やディティールが分かるようになったのだろうか
いや
ものの価値やディティールが分からなくなったのだ

心地のいいクッションに邪魔されて
木の硬さも自分の罪深い重さも

2012年5月18日金曜日

片付けられないものがある

どうして終わりにしたのか思い出せない
夢のお城
夢の街
いつまでも作って
いたかった
眺めて手にして
作って
住んで
いたかった

家族がもうやめなさいと言った
ご飯だから
箱にしまいなさい と

だが
私はしまわなかった
そのとき
終わりにしたのか
思い出せない
誰かが片付けてしまったのだろうか

いま
作ったものは
どこにあるのだろう
引越し荷物のダンボールを片付けながら
私は
片付けられないものがあることを
知っている

2012年5月17日木曜日

お弁当は好きですか

中学生のころ
学校ではお弁当を持って来ることになっていた

食べたくなかったので
持たされたお弁当は
毎日
あまり箸をつけずに持ち帰った
まずいわけではなく
その味は
いつで当たり前に
そばにあったから

食べなかったのは
気になることがあったから

家に帰ると
私は自分の部屋にこもって
考えごとのつづきをした
何を考えていたのか
言葉にすることはできない
そして
いつの間にか夜になる

お腹が空いた私は
何食わぬ顔をして
居間に行き
ご飯を食べた
いつもの味のご飯を

食べなかったお弁当の分も
たぶん食べた
成長するために
食べた

今は
何のために
お弁当を買って来て
食べているのか
分からない

2012年5月16日水曜日

引っ越し

深くしぶとく根を張ってしまわないうちに
自分で引っこ抜け
自分を

大地の
囚われの身になるにはまだ早い
風を捕まえてどこへでも飛んで行け
戻りたくなったら
戻ればいいのだから

昨日の荷物を解く前に
きょうも引っ越して行け

2012年5月15日火曜日

〈タイトルなんかない〉

錆びた缶からだけど
カランコロンと
いい音を出すね

あなたはコロンを素肌に叩いて
いい音を出した

私は
錆びついた感覚器官を
どうしたらいいかな

油をさして
ジタバタ転げ回ったら
丘の上の夕日の沈む海が見られるかな

2012年5月14日月曜日

兎と

兎を追いかける
兎を捕まえるために

兎を捕まえると
私に新たな課題がうまれる
兎をどうするかという
進行形の課題だ

兎を撫でる
兎を撫でると
兎が落ち着きなく体をよじる
私は兎と一体になって
自然に動きたいと思う

兎は普段見せない様子を見せる
私は驚きながら
もっと他のことが起こらないか期待する
兎は兎の匂いを発する
私は兎の匂いに包まれながら
先に進むか後退りするかを考える

兎は元気に細かく動く
私はうでに力を込めて
兎の体制を変えようとする
兎はなにか別のことを考えている
私は兎の思考の中で泳ぎまわる

兎は疲れを知らない
私はさらに泳ぎ続ける
兎の満足はいつまでもきりなく満たされない
私は兎に殺されてしまうのか

兎は無垢な様子で白い毛に包まれている
私もまた
白い毛に包まれてしまう

それのため
兎をもっと外から見ることが出来ない
溺死寸前のまま
私はゆるやかに流れていく
いつの間にか自然に出来た
沼の水面を

2012年5月13日日曜日

詩の効用についてのメモ

詩人は一編の詩を用いて
世間に負けそうな一人の子どもを
救おうとしている

故に詩は
絶望をうたわない
絶望に差し込む一筋の光をうたっても

詩は
一人の子どもの傍に佇む
佇んで
いつも見守っている
その子が心ないいたずらや身内の凶器で傷つけられたとき
さりげなく視界の中に現れて目配せをする
そして言葉のバリアで覆って傷を癒してしまう

詩は
当たり前のように存在しているが
その本当の姿を
人は説明できない
詩に出会った者だけが
詩の姿を知り
詩を書く者だけが
それを詩によって伝えることができる

だから
詩の効用は辞書には載っていないし
薬局でも処方していない

2012年5月12日土曜日

プールの日

水面がそこら中で光を乱反射するので
僕たちの顔は皆まだらになっている
塩素が加えられた冷たい水に漬けられて
熱い躰も柔らかい皮膚も抵抗していたが
水着が先に降参して防御することをやめて
体を明け渡したので
僕たちは裸同然で感染しあっていた
それを誤魔化すために奇声をあげたりしながら

更衣室は男女別々だったはずだ
ここでは一緒の水に入って
交わらない誓いを牽制した
ひとときを至近距離で
時には接触して過ごした
それは刹那のように
幻となって放課後の机の上で
干からびようとしていた

女子と男子はあやふやに分離して
個別に交じり合うことを促した
古典の教科書の影で
指で空気を切り指揮をして
空気さえ味方につけて

2012年5月11日金曜日

怖い靴下

洗濯したての
破れた靴下が怖い
履いたら
捨てるのか と
詰め寄ってきたから

破れたところから
足の甲が覗き
かさついているのが見える

脱いで
手に嵌めてみたら
見慣れた素材と色だが
穴から手をだそうとすると
伸びながら裂けていった

大地の切れ目から
血が噴射して
叫び声を上げた

ゴムが喉元を締め付ける

洗濯したてのいい香りのまま
死んでもらおう
また生まれ変わってくるのか
どんな命として?
誰のもとに?

2012年5月10日木曜日

空の記憶 メモ

人の中に生き物は何種類いますか
植物の種もありますか
魚や鳥はどうしていますか
獣 爬虫類 両生類もいますか

地球の中に生き物は何種類いますか
地球と生き物の血球はどちらが丈夫ですか

地球上に立てられた
動く塔
自動車 飛行機
死んで動かなくなった生き物が
燃やされてエンジンを動かす
植物が作った有機物が
ダイヤモンドとなって
人の膚の上で光る

人の子孫は墓の上に立つ
上空を鳥が飛び
胸の中で血潮が渦巻く
赤色から青色へ天空の星が流れ
誰が見下ろしているのか
仰ぎ見ているのか分からなくなる

2012年5月9日水曜日

連休しない人

かれは毎日働いているので
休日がない
だから
テレビのキャスターが「連休の最終日です」
などと言うと そのたびに いちいち
「だれが連休やねん」と
関西人でもないのに関西弁風に心のなかでつぶやき
いちいち`ぶったまげる'

そしていつも次に`連休'に働いている人 のことを思う
沢山の人が`連休'に働いているのに
どのマスコミも「連休の最終日です」を連呼し
彼らの働きを認めない
彼らはなんとも思わないのだろうか
彼らの存在は無視されて当然なのか
もう慣らされてしまってなんとも感じないのか

かれは
`連休'に働きながら
世間の不器用さを嘆かわしく思う
建前を守り続けて守ろうとしているものは何か
誰か知っている人がいるはずだ

きっとその人は
連休の最終日に
連休を始めさせようとしている


2012年5月8日火曜日

風が言っていました

風の身長を知っていますか

風の姿は見えないから
知らないと
お喋りすることはできません

風だって
ちゃんと目を見て話さないと
怒って吹き荒らし
言葉は風に舞うばかりだから

目の辺りを見つめて
ゆっくりと
わかりやすく話さなくてはなりません

もし
風とおしゃべりすることが出来れば
人はもっと幸せに近づくことができるでしょう


風が言っていました





2012年5月7日月曜日

自分の場所で

イチョウの木
立っている

自分の場所で
緑の葉をいっぱいに茂らせて

イチョウの木の横
通り過ぎて駅に向かう
行き交う人をよけながら

毎日
たくさんの人やモノを
よけている
けれど
自分がいる場所には
自分だけがいる

イチョウの木は
黙ったまま
葉をゆすり
いま笑ったのか
私を見下ろして

いや
笑ったのは自分の方

2012年5月6日日曜日

詩人リモコン

詩人くんをリモコンで飛ばすのはおもしろいですか。
飛ばすときは飛行機に乗せるのですね。
彼はどこにでも行かせられるのですね。
二足歩行もうまいし、喋りも達者ですね。
五感が備わっているばかりか、第六感も使えるのですか。
詩人くんは上りより下りのデータが太くなっているのですね。
A.I.も詩人レベルまで行っているのですか。
彼の取材能力はすごいものですね。
リモコンと関係なく動いているみたいです。

あなたは部屋に居ながらにして詩人くんを操作して
世間を渡り歩かせ、世界を見て、詩人をやっているのですね。
いいことを考えましたね。
いつからですか?
えっ、自然にそうなったって?
詩は、どちらが書いているのですか。たまには合作したりして……
詩人くんは文句を言いませんか。
あっ、別荘で休ませるのですか。ねぎらいの会を開いて。
そして、たまに入れ替わってみるのですね。

2012年5月5日土曜日

美しいものは

美しいものばかりを
見せてくれるあなた

美しいものばかりだと
落ち着かない私

美しくないものの中に
美しいものが見つけられるか

美しさにそっぽを向かれながら
美しくないものを見る
なんと美しいのだろう

2012年5月4日金曜日

なんどでも

饒舌に語れ
話したいことなどなくても
話すことがあなたの存在に価値を与え
私を納得させ
何かを冷やす

語るに落ちよ
繰り返す日々に句読点を打て
物語の結末だけ述べよ
あらゆる話にオチをつけよ
人にはレッテルを貼れ

動きを停めたものたちが
エネルギーを蓄え
正解者の頭上で弾けるのを待っている
だからクイズにして問え
答えのある森羅万象を
血へどを吐きながら
なんどでも

2012年5月3日木曜日

やくたたずの かれ

かれはなにももっていない
やくにたつものは
みんなひとにあげてしまった

やくにたたないものばかりをもっているかれは
やくたたずとよばれた

かれもまたじぶんをやくたたずとなのった
かれにみかたはいなかった
かれはやくたたずなうえに
あいきょうがなかったから
やさしさもおくびょうをかくすためだけにあったから

かれにはかみさまもいなかった
かみさまにしたねがいごとは
いつもたいていかなわなかったから

だがかれはぜつぼうということばをしらなかった
とおいむかししっていたようなきもするが
いまはまいにちがぜつぼうばかりだったから
そこがきじゅんでそれいじょうわるくならなかったから

かわりばえしないまいにちは
みかたによっては
しあわせにかんじられた

これがやくたたずのかれの
いまのじょうたいであるが
かれにあいたくなったら
かれのぶろぐをけんさくしてみるといい
そこにはかれのぷろふぃーるとともに
やくにたたない詩が
まいにちのせられているだろうから

2012年5月2日水曜日

意志の人

僕というのは愛称です。名前ではありません。
僕が精神病になると喜ぶ人がいるので、僕は精神病になりません。
僕が不幸になるといい気分になってお祝いをする人がいるので、僕は不幸にはなりません。
僕が再起不能になるとほっとして枕を高くして眠る悪党がいるので、僕は再起不能になりません。


僕は深夜に部屋で考えています。思っています。
僕はなぜすべきことをしないのかと。
しなくていいことばかりをして、すぐにすべきことをなぜ先送りにするのかと。
僕はしなくていいことをすぐに止め、「すべきこと」に取り掛からなくてはならないだろう。
だが僕が「すべきこと」を始めたとき、僕の主人は「すべきこと」になり、体はすべて乗っ取られるだろう。
その時いままでの僕はどこに行ってしまうのだろう。
それが怖いからなのか、それとも別に理由があるのか、その答えを僕はまだ知らない。求めるすべも分かっていない。


僕は際限なく食べ物を食べる。一日に何度も、深夜でも朝でも。
時間帯と回数は関係なく。食べたいものがあってもなくても。
食べることでお腹を満たし、自分の体が自分の重しになって動けなくなるまで食べ続ける。
そして動けなくなったところで、それを無理やり動かして行動をはじめる。
すると意志の力が感情を上回り、僕は意志の人となっていく。
意志の人となった僕はドアを開けて外に出ていく。風を切って歩く。


意志の人は帰宅するとき、その意志はなくなっている。
僕は意志の人ではなく、ただの愛称であるただの僕となっている。
手には買ってきた食べ物が入った袋を持っている。
袋の中にはよそよそしい商品が生々しい食べ物に変化して入っている。
この食べ物はもうすぐ僕のなかに蓄積され重しに変化する。
重しは僕が意志の人になるために必要だが、意志の人になる効用はまだわかっていない。

2012年5月1日火曜日

おまけとして言うと

きのう昼ドトールで200円のアイスコーヒーを飲んだ。夕方、560円のアイスコーヒーを飲んだ。そのあと、夜、120円のアイスコーヒーをコンビニのイートインのコーナーで飲んだ。きょうは、いま、340円のアイスコーヒーをのんでいる。190円のアイスコーヒーはサンマルクカフェ、200円のアイスコーヒーはドトールで飲むことができる。Macなら120円。一時期はチケットショップに25円から50円でMacのコーヒーチケットがあった。先週の関西出張では、ベローチェ、スターバックス、丸福、マエダ、上島、その他(名前は忘れたが)のカフェで、アイスコーヒーを飲んだ。日本の色々な地域、世界の都市(北京、ニューヨーク、ロンドン、ベネチア、ミュンヘン、トロムソ、パリ、オスロ、ボローニャ、フィレンツェ、バンクーバー、バンコク、台北、大連、グアム、サイパン、ハワイ、スロバキア、モスクワ、ミラノ)で、アイスコーヒーを飲んだ。アイスコーヒーと砂糖とミルク、ストローは仲良しだ。おまけとして言うと、アイスコーヒーは私とも仲良しだ。

2012年4月30日月曜日

夜眠る方法 の習作

たとえば目を瞑ると見えてくる森の中の一本の木は
高度な生命装置であると言ってよい
葉脈が張り巡らされているその様は
幼児の絵のようにいびつで自由奔放だが
きちんと葉は葉として生き永らえ
その与えられた役割を果たしたのちに
枯れて地面に落ち次の生命を育む要素となっていく

どこからどこまでが自分の生命と言えるのか
その疑問を差し挟む暇もなく
生き物たちは生きて死に
他者の生に命を混じえ響き合い歩をすすめる

一枚の葉と葉脈
今はただ母なる木の一部として
陽の光を受け風に湿気を発している
雨の日には雨粒を受け止め
風が吹けば身を翻してささやきを伝える

人である私は木の傍らを過ぎ去り
いつか木のことを頭の中に思い浮かべては
その美しさの訳をこねくり回す

木より粘土に近い私は
地面の近くで泥と一体となって
やや明るすぎる夜を眠る
体の中にある眼を見開くことはせず

2012年4月29日日曜日

心を容れる器をください

心を容れる器をくださいって言ったら
〈心が器でしょ。器を器に容れるの?〉
と言われてしまった。それでちょっと沈黙してしまったんだ。
彼女は器をくれる代わりに彼女が焼いたパンを出してくれた。そのパンの美味しいのなんのって。何もつけなくても、小麦と炎の香りがして、幸せな気分になってしまった。
そして彼女は唐突に音楽をかけた。心地よい音量で。左右のスピーカーから違う音が聴こえてきて、私はその場からどこかに飛んでいっでしまいそうになった。
私は、でもやはり、心を容れる器が欲しいと望んでいた。

私ごとでもいいから、器にいれて、タンスの上のほうにでも、しまってくれないか。

クラシカルなモダンなロマンチックなロハス風

彼女は立っていました 第二草稿

傘をさすほどの雨ではありませんでした
さびしさを胸に詰めて
彼女は用もないのに
人ごみの中に立っていました

お遊戯の踊りをするみたいに
時々体をひねり
控えめなステップを踏みました

女友だちたちは
いまごろどこで遊んでいることでしょう
満たされないと悟った彼女は
ここに立っていることにしたのです

誰かが声をかけてくることもあるでしょう
いかがわしいところに連れて行かまうかもしれません

でも彼女は気にしない
気にできない
彼女はただ立っていることに 全力だから
なぜ立っているのか
分からないから

夕闇が夜の空気を連れてきて
彼女のさびしさは
胸をはちきれさせます
そのせいで
息が苦しいけれど
まだ彼女は立っています

彼女が去ったあと
その場所には
今度は彼女の胸から
溢れ出したさびしさが立っています
次に立つ人を
選別するために
眼差しを路上に投げかけて