2012年4月19日木曜日

詩になることば

詩になる前のことばは
とてもいい

詩にならずに
消えて行ってください

永遠にとどめようとしないで
消え去る自由を
繰り返しいつまでも
与え続けてあげてください

季節がめぐり
やがてまた新しい花びらが
何かを語ろうとしているが
その前に立って
私は言葉をなくしている

それは自然なことだ
古い言葉が濾過されて
おいしくなって
湧き出てくる

詩人はその脇に立って
その水を飲むといい
言葉ではないもので
喉を鳴らして

2012年4月18日水曜日

埃ゴミの主張

私ははエッジのない
埃ゴミのひとつ
まちに立つ建物にだってひとつひとつ物語がある
東京の空は狭いといわれるが
鳥たちは飛び回る自由を持っている
私は
誰が捨てたかも知れず
自らの自由を持たない路上の埃ゴミ
謝る必要もなく
媚びる場面もこない
雨の日にいちばん低い場所から
街を眺めよう
望みではないが
いま言えるのはそのくらい
以上

2012年4月17日火曜日

あなたと僕

あなたがジャンプするから
僕は跳ばずにいられる
傷だらけになっても
あなたは立ち上がるから
僕は布団を体に巻いて潜っている
勝手口や玄関であなたは押し売りを撃退するから
僕はあなたを盗み見して中心を熱くする
あなたはバーのカウンターで強いお酒を何杯も飲む
僕は眼を閉じたあなたのからだをゆっくりと舐めまわす

夜の間に貯水池の水は誰かが飲み干してしまったらしい
あなたは酔いつぶれて寝ているし
その傍らで
ぼくは干からびている

街中が騒いでいるが
ふたりとも
いつまでたっても
起き上がる気配がない

2012年4月16日月曜日

シャワーで流せる

パンを焼きましょう
海を見に行く前に
でもそのまえに
手紙を書きましょう
石鹸で手を洗ってから
(爪の間もきれいにしましょう)

苦しいことは
砂浜に行った時に
遠くに放り投げましょう
(できれば暗い気持ちと一緒に
人の頭に当てないように注意して)
(散歩の犬が駆けていった後で)

いつでも何かをする前に
何かをしなくてはならないから
し終えたらすぐ準備しましょう
(追い立てられる前に)
(なんて
これは嘘)

(約束はあなたを縛るから気をつけて)
パンツを脱いでから
シャワーを浴びましょう
気に入った香りのSOAPを手に

電話して泣くのは先にすませておけば
もう電話が鳴っても出なくてもいいから
気分よくシャワーで流せます

涙では流せなかったものも
シャワーで流せるもの
クラシカルな恋バナも

2012年4月15日日曜日

それはミの音
好きな音
優しいけれど
突き放してくる

一人で
部屋に引きこもっている時
思い出すのは
あなたが発するミの音

混じりけのない
ミの音に
あなたの言葉が乗って
震えながら
私のところにやってくる

紙で作った帆掛け舟のように
私を喜ばせるために
私を欺いて
私の耳の奥へと進んでいく

2012年4月14日土曜日

私の机を照らすのは

デスクランプに照らされている
デスクの周りの闇
一人の少年が椅子に座り
何かを書いている

長い時間そこに座っているが
苦闘しているようだ
その様子が表情から読み取れる

何を書いているのか
何を悩んでいるのか

完成の兆しがないまま
いつの間にか
みるみる少年の体は透明になり
大きな破壊音がして
ついにはデスクも闇も消え
私の中にそれらは
のりうつるように
入ってきた

そのため
いま私はデスクライトの明かりを消して
パソコンをシャットダウンした


私の机を照らしているのは
漏れいるLED街灯のわずかな光だけだ

2012年4月13日金曜日

その果物が

その果物がなぜ美しいのか
ありふれた木の器や
織物が敷かれた古いテーブルや
窓から差し込む光が
なぜ美しいのか
私は彼女に尋ねてみたくなった

なぜ
美しいのだろう

それで私は
彼女に電話を掛けている
答えはきけるだろうか

彼女は出ない
彼女は大学に勤めている
学芸員の資格を持っている

何かきけるはずだ

だか
きけたのは
電話にでることができません
というアナウンスばかり

その繰り返し

答えは自分で考えなくてはならないのか
彼女もまた
なぜ
美しいのだろう

美術館に飾られた
一枚の静物画のように

2012年4月12日木曜日

身代わりにぼくが死んでも

身代わりにぼくが死んでも
あなたには分からない

ぼくはただ身代わりになって
ひとりで勝手に死ぬだけだから

この命は軽いから
世界のバランスは変わらない

一雨降れば
いつもと同じ空を見上げられる

ぼくは軽いものに憧れていた
みんながダイエットするように
ぼくは命を燃やしてしまおう
すっきりして気持ちいいだろう

だから身代わりにぼくが死んでも
ぼくは幸せなのだ

周りの人は
風に舞うぼくを
手のひらをかざして
受け止めようと戯れる

もう
日差しは夏の予感をのせて
汗ばむほどに強いのだ

2012年4月11日水曜日

知っている人

なにか必要な手続きを
忘れていたり
気づいていなかったりしている気がする

去年
生暖かい雨の夜に
私が踏んだ
あの花びらと
お別れする手続きもしていない

ほかにも
ある

たくさん
やらなかったことが

やらなかったことの影に
やったことは隠れてしまっている
私は
なにかやったことの
結果なのか
それとも
やらなかったことの結果なのか

誰に聞いたらいいのか
分からない

きょうの雨の雫にか
発射予定のミサイルにか

それとも
私自身が
答になろうとしているのか

この雨に
何を紛れさせていいのか
いけないのか
知っている人がいたら
教えて欲しい

知っている人のことを
知っている人がいたら
教えて欲しい

2012年4月10日火曜日

何も持っていない
大きな空っぽが持ちきれなくて

何も感じない
体の範囲が広くなりすぎて

なにもしない
自然に動いてゆくから

期待はなくもないがありもしない
私は私であるがあなたとの境目はない

私は絶望しない
何かが溢れているから
いつも
変わっていっているから
あなたは
私のことが見えないだろう
それゆえ気に留めないだろう
そのとき
私はあなたの中にいて
あなたと共に呼吸しているから

2012年4月9日月曜日

古ぼけた色彩の

僕は後ろを向いて謝りたいんだ
謝ることを許してもらえますか

あなたは先に行ってしまっているかもしれない
そこは もう もぬけの殻になっていて
ただ古ぼけた色彩の景色が占領しているだけかもしれない

だけど
たった今まで漕がれていたブランコが
まだ止まれずにうごいているのはなぜだろう

誰かが名残り惜しんで
思い出しているのだろうか

僕は後ろを向いて謝りたいんだ
謝ることを許してもらえますか

僕は繰り返し誰かに尋ねている
帰ることはしないで
この場所から
舗装された路を森が侵食してきて( し返してきて)、晴れているのに路面は湿っぽい。
左右は崖。木の向こうや道の彼方に青い海が時々見える。水の流れる音が重なってざわざわといっている。
人も通るが風や日差しや動物も通る。
灯台に行く路は舗装されていないが、自動車や自転車が日に数十台は行き来する。
路はその上を人に利用させ、車のタイヤに踏まれることが最も負担となっている。路は表面が破れれば、もとの森の一面を覗かせようとする。

いつかこの路を(または森と路とを)、よろめきながらも逞しく歩いて行く男の姿を見たことがある。服は破れて露出した膚は土にまみれて日に焼けて黒く、汗が滴っていた。彼は生命力にあふれていたが、まもなく力尽きてしまうのだろうか。気迫だけが彼を前進させているようだったが、行く手には広大な森があるばかり。人の住んでいる場所は逆方向にある。
僕は後ろを向いて謝りたいんだ
謝ることを許してもらえますか

2012年4月8日日曜日

藁ぶき屋根の家の窓枠

藁ぶき屋根の家の窓枠は
焼きをいれたブナの木
はめ込まれた硝子は
透明度が低く
月の光を乱反射して
室内に
光の溜まり場をつる

昼と夜とはどちらが静かなのだろう
ここにいると分からなくなる
道は
滅多に車を通さないし
人が行き交うことさえ珍しい

音を発するものは
どんなものなのだろう

涙を流すとは
どんなことなのだろう
質問する相手もいなくて

2012年4月7日土曜日

見送り

見送り

お見送りをしているね
何を見送っているんだい?
その人ではなく
自分にさよならしたんだね


さよなら

さよならしないほうが良かったと
思っているんだね

その気持ちとは
いつさよならするの?


しつこい

しつこい人は嫌われる

思っているんだね
いつまで思っていたら
気がすむの?



    -意地悪な詩 シリーズ

2012年4月6日金曜日

ささいな話

あなたを褒めたくて電話したのに

悪口を言ってしまった

会いたかったのに

電話だけでこと足りてしまった

いつも大好きだったのに

嫌いになってしまった

次に電話するとき

なにがどうなってしまうのだろう

そのことを別の人に相談したら

好きになってしまった

2012年4月5日木曜日

muddler

あなたの名前を知ってから
私はあなたを縛ることに夢中だ

誰かが誤って
持ち去らぬよう
呪(まじな)いをかけて
繋ぎとめる

鎖は結ばれていないが
あなたを見つけ出すその目印は
なんということか私を拒絶する

いつの日か
あなたの下肢に食い込みしがみついた
貞操帯の血筋か

気遣いなく
カチャカチャと音を立て
淀んだ心にマドラーを弄ぶ

2012年4月4日水曜日

それは帰り道だった

笑いながら夜道を歩いていたんだ
それは帰り道だった
いや 行き道だったかもしれないが

月がやけに明るく照らしていて
濃いブルーの影を作っていた
沼のほとりの柳の木の横を通った時
花の開く音がしたかと思ったら
少し遅れて香りがやってきた
鈴の音も聞こえてきた

前方からは
ハイヒールを履いた背の高い女性が
銀色のブラウスを光らせて
胸をゆさゆさ揺らしながら
足早に突進してきた

私の傍を通りすぎる時
女は泣いているのだと私は気づいた
すると私の眼からも
大粒の涙がポロポロとこぼれて道に落ちた

大事な宝物を
すべて捨ててしまったような気分に襲われたから
私は
笑いながら夜道を歩いていたんだ
それは帰り道だった
いや 行き道だったかもしれないが

2012年4月3日火曜日

(きょうの感じ)

逆さまから笑顔をみて
ノリウツルぞー
かえるの頭をこすり付けて
雨風を弾き飛ばすぞー
あしたはタワシの風が吹く
茎の上で九九を唱える
てんとう虫と暁見つめ
忍び寄るぞー

2012年4月2日月曜日

豊かな私のため/「私」性調査2012にご協力下さい

〈『私」について、いくつでも「そうだ」と思うことを丸で囲んで下さい〉

●回答欄

大事なことをみんな忘れてしまう
簡単な計算ができない
もたもたしていて切り替えが遅い
心の中で愚痴ばかり言っている
自分を慰めるのが好き

惰性で生きている
自分を棚にあげて偉そうなことをいう
優しいふりして衝突を恐れるだけ
大事な問題ほど解決しない
脛を齧っている

勇気がないのに吠える
うそつき
都合の悪いことを隠す
好きなことだけはやる
努力を惜しんでいる
現実から逃避する

人を傷つける
苦し紛れにとんでもないことを言う
何度も過ちを繰り返す
他力本願
無理なことを言う
懲りない
人の気持ちがわからない



・・・ありがとうございました。
これからの「豊かな私」づくりに活かさせていただきます。

2012年4月1日日曜日

ニートのアイディア

雨が降った
傘がなかったので
軒下で雨宿りした
遊び人

彼は名刺をもっていたが
そこには所属する会社名や職場の名は
記されていなかった
彼は仕事をしていなかったし
どこにも所属をしていなかった
名刺はいわば〈遊び用〉の名刺だったから
そこにはニックネームとメアド
気にいったイラスト
それに携帯ナンバーだけがあった

彼は雨が小降りになるのを待ちながら
思案した

そして突然  
そうだ!

思いついた
自分は
この建物の傘下に入ったのだと

見上げると
そこは立派な
我が国を代表する会社だったから

2012年3月31日土曜日

湿ったところ

くちびるがくっつきそう
相手が目を閉じた
私は目を閉じているのだろうか
くちびるにくちびる
湿った舌から押し出される息
擦れる産毛
ファンデの香りに
めまいがしそうになる
腕はどうなっているだろう
腰の周りの衣服は
肉体の躍動と呼吸と
どうせめぎ合って
感覚器官を刺激しているのだろう
舞台の上を回りながら
二人きりになって
遊んでいるのだろうか
責任は誰がとるのか
後戻りできない罪は
どこに紛れ込ませれば
忘れられるのだろう

2012年3月30日金曜日

不安な花束

その森の入り口には
出口と書いてある
中に踏み入れると
道案内はない

道に迷ったと気づく時に
ちょうど日が落ちることとなっている

不安な気持ちが
花束になって
二本の腕に抱えられている

2012年3月29日木曜日

誤魔化された今日

誤魔化すのが当たり前になってしまった人が
もう誤魔化していることも忘れてしまった
誤魔化された人はまだ誤魔化され続けていたから
何事も変わらなかった

誤魔化している人は
誤魔化していることによって誤魔化されている人から
誤魔化していると指摘されないので
誤魔化していることに気付けずに
そのうち誤魔化していることのほうが
耐え切れずに真実に変容していった

誤魔化している人は
誤魔化しながら
誰かに誤魔化されたいと
心の奥で望んでいたが
干からびた心の厚い壁に阻まれて
その思いはただ朽ちてしまった

誤魔化している人が増えると
なにが誤魔化しているといえるのか
やがてますます判りにくくなってゆき
誤魔化していないことが誤魔化しのようにさえ目に映り
私たちは自分たちを信用できなくなっていった

最初にごまかした人は
もう誤魔化しの輪っかから抜け出し
西方浄土と天国の間の地の果てで
酒を酌み交わしながら洋菓子を食べながら
周りの人々と高みの見物を決め込んでいた

という夢が
誤魔化し誤魔化されることに飽き果てた
私に見られていた

2012年3月28日水曜日

言葉をなくしたら

夕方の景色と出会って
言葉をなくした

言葉をなくしたら
べつの
言葉をなくした人 と繋がったような
気がした

さっきまで
言葉を持って
きょうも
外を出歩いて
言葉を投げ合っていた

運動会でやった
競争のように

言葉をなくしたら
心の底に
言葉の泉があることに気がついた

言葉をなくしたら
また
言葉が自分の中に溜まり始めて
溢れてくることが分かった

綺麗な言葉が
湧いてくるように
したい


2012年3月27日火曜日

問い Lesson 1

あなたが過去の日の自分を見る時
未来から今のあなたを見る人がいる
私が未来の日の自分を見ようとする時
過去から今の私を見る人がいる
私があなたを見ようとする時
あなたは私の方を向いて
そこに誰の姿を見たのか
あなたが未来と過去の自分に出会う時
あなたはそれぞれに向かい何を語るのだろうか

2012年3月26日月曜日

知り合ったばかりなのに

知り合ったばかりなのに
ことばも少ししか通じないのに
小さな竹の林の前で立ち止まると
2人は2つのモバイルフォンのカメラで
黙って写真を撮っていた

それまでに何をしてきたのか
これから何をしようとしているのか
竹の林は影に映していたのだろうか

知り合って
すぐにさよならしたけれど
竹の林は
いつまでもそこにただ立って
気まぐれに時のあやとりをしている

2012年3月25日日曜日

簡単な質問に

それを持ったままでいいですか
そのまま
持っていくのですか

春風が強く吹く
海岸からあなたの部屋につづく道を歩けば
日差しには
もう汗ばんでしまいそう

靴も
夏のものに履き替えたくなってきて・・・

まだ
持っているのですか

その
簡単な質問に
なぜか
正面から
答えることが
できなくて・・・

2012年3月24日土曜日

まわり唄

葱もって踊れよ
草喰って唄え
水飲んで眠れよ
紐巻いて結べ

煙たてて怒れや
すかしてかわせ
飲み込んで忘れろ
繰り返して遊べ

2012年3月23日金曜日

博物誌的なりんりんの考察

りんりんは
やさしい眼をしている
その眼は
世間にある美しいものを見つめる

それは例えば
博物館に展示された青磁
つややかな
白い肌の陶磁器
古代の人の装飾品や埋葬品
ー新しいのものより光を通しにくい筈なのに、なぜ、こんなに美しく清楚なのだろうー

彼女は夜
パソコンでアニメを観る
映画やドラマを観る
隣の国の音楽を聴く
その歌詞には
いつか学んだ
まだ知らない言葉が散りばめられていて
貝殻のようにそれを選んでは
拾い集めた

生まれ育った街からこの街にやって来て
博物館を開館する仕事に関わった
それは
何に喩えることができるだろう

かんがえると
答えが見つかる前に
いつも眠ってしまう

美しいお棺に入って
星の巡る気配を天井に感じながら

2012年3月22日木曜日

彼は待っている

こんもりした木立の周りの道を
ぐるりと回って行けば
きっと彼がいる

いつか
焚き火の煙が登っていくのを
見たことがある

静まり返った夜に
眠れずに
胸のときめきを抱えていた時
木立の向こうから
彼の声が聞こえてきたこともある

こんもりした木立の周りの道を
ぐるりと回って行けば
きっと彼がいる
彼はひとりで
あなたが到着するのを待っている

あたりまえのような
顔をして

デパートの真ん中にスケートリンク!

北京のカフェでゆったりライチティー

2012年3月21日水曜日

不公平な世の中が

不公平な世の中が
手招きしている

迷っているね
不公平なことが
いっぱいあったと
思い出しているのかな

ほら
そうしている間に
また一人になってしまった

そのほうが
よかったんだね

蓋に蓋して

地面に蓋をして作ってある
地下鉄に乗って
あなたはさらに
蓋をしようとしているね

蓋はいくつあったら
足りるのかな

2012年3月20日火曜日

むこうのせかいに

するするっと
ぬけていこうよ
すきまをね
ちかみちをね

くるくるって
まいてしまおう
イヤホンのコードと
はしるのにじゃまなしっぽ

くりくりって
くりぬいちゃえば
ビーだまおさめるく ぼみ
むこうのせかいをみるためのあな

2012年3月19日月曜日

未来からの手紙

古いメールに
返事を書いた

古いことは無視して
今来たメールに応えるように

そしたら
すぐに返事が来た

3年後のあなたから

あなたはもう
いつのまにか
3年後にいってしまったのですね

2012年3月18日日曜日

失われた庭

失われた庭は
失われることで
永遠を呼び込んだ

いま
私は その永遠と
戯れて
身を沈める

失われた庭に
風が吹き
太陽がめぐる
鳥のさえずりと
虫の声が
交互に響く

静寂は
私の見つめる彼方に
ひっそりとしている

失われた
庭の場所には
新しい家族が住んでいる

私は
遠く離れて
永遠の庭を
勝手気ままに呼び寄せる

2012年3月17日土曜日

詩人と二人、街道を東へ

詩人を乗せて街道を東へ
詩人は余計なことを喋らない
詩人は詩人にとって大切なことを話す
詩人は自分と世間との関係を大事にしている
だがその自分は世間と分け隔てなく存在することも知っている
詩人の眼は車窓から外を見ているのだろうか
それとも窓枠の水滴が跡を引いて流れる様子か
時々私は詩人の方を見る
すると詩人は前を向いているが
私に目配せして話してくれる

詩人は今ここにいるが
詩人にとっては「今」はどこにあるのだろう
詩人は最近出たエッセイ集の話を私としているが
詩人は私とだけ話しているのだろうか

私はくれかけた休日の街道の混雑の中をすり抜けながら
前照灯をつけたりスモールにしたりしながら
時々ワイパーの速度を調整しながら
詩人と話をする

詩人の撮った映像は
物の見方が特別だと
私は気づいたと私は話す
そして
いままでは思想や書き方が特別だと想っていた
私もその思想や書き方は似ているので
とても近いと感じていた
しかし
本当はそうではなく
見方自体が違うと気付いたんです
と話す
詩人は無意識な領域が
特別かもしれないというようなことを話す
私は納得して嬉しくなる

沈黙して
話し始めるのは
カフェにおけるPAと音場設計の話
プロジェクターの価格と進化と購入方法の話

沈黙すると
次に話し始める話が
まったく別系統の話になるのは
詩人が私の話にあわせてくれているからだ

詩人は
ワイヤレスのPAシステムを
自宅で私に見るように勧めたが
のろのろ運転で自宅に到着すると
一人で建屋の中に入っていった
私は
ワイヤレスのPAシステムの
取扱説明書を受け取った
800メガヘルツ帯は
果たして使えるの゛たろうか
もう売っていないはずだか

そういえば
ソフトバンクが獲得したというニュースの中に
補償料を払うという一文があった

私は一人で車を運転し始めたが
私はまだ
詩人と話していた
詩人は家で
食事を摂っているにちがいない
私も食事を摂ろう

詩人が嫌いだと言っていた蛸は
私も好きではない
そのことは
誰にも話したことがない

詩人との会話は
完結せずに
始まりも終わりもなく
日本語の海の中で
泳ぎ続ける

雪解け水が流れこむ海で
暖流と寒流の間で
天の川と太陽を頭上に置いて

2012年3月16日金曜日

無口な さよなら

さよならさんが
ドアの外に立っていと
ドアを開けた次の瞬間に
さよならさんの顔を
見てしまうことになる

すると
それで
すべては終わってしまうのだ

だから
よくよく用心して
さよならさんと
出くわさないように
ドアを開けなければならない

春風の音が
ドアを叩き
出会いの予感と共に
ドアを開けると
そこには
よく
さよならさんが立っていることがある

さよならさんは
無口だ
何も語ることはない
さよならさんの顔には
何も書いていない
さよならさんが
声を発することもない

そういうことだ
黙して語らず
すべてをすでにしらしめているのだ

その
すべてのなかにさえ
美しい希望のかけらがあるというのに
そのことを口にするものはいないのだ

2012年3月15日木曜日

oblaat関連の新しい動き


2012年3月14日の日経MJ新聞に掲載されました↓

http://tanikawakensaku.com/topics/oblaat/#info15

夜は友だち

あなたが一人でいる時
密やかな気配を感じたことがあるだろうか

それは
あなたに寄り添う
夜という友だち

星の衣装を纏って
あなたの隣にひっそりと座っている

部屋が明るい時
あなたは友だちがいることに気づかない
明かりを消して
薄暗がりをボーッと眺めていると
その
気配と共に
友だちの姿は見えてくる

先に挨拶してくるのは
決まってその友だちの方だ
あなたは
いつも忘れてしまうが
その友だちは
決して怒ったりはしない

だから
たまにでいいから
哀しみを抱いて
部屋のドアを開けて
帰ってきて欲しいのだ

それは
ちっとも哀しいことではないと
知ることができるし
それによって
あなたはまた
友だちの元を離れて
強く生きていくことができるのだから

2012年3月14日水曜日

転がりゆく人

坂道の途中で電話を掛けた
すると上から
誰かが転がり落ちてきた
電話に夢中だった私は
ひょいとよけて
話を続けていたのだが
電話の相手が
何かあったのか と尋ねてきたので
私は正直に
誰か人が転がってきたからよけた
と 答えた
相手は
それは大変だ と言ったが
私との話に夢中だったので
転がってきた人のことはそれ以上話さずに
元の話題に戻った

転がってきた人は
転がりながら考えていた
この世は絶望的な情況だ
このままなにも気にせずに
転がっていよう と

だか
まさにその時
坂の終点に到着してしまった

ああ
なんという
それにしても
それにしても青い空だ!

2012年3月13日火曜日

駅までの道は


靴音が自分の前を歩いていく。他人の靴音ではない。自分の靴音だ。坂を上るとき、私は自分の靴音が自分を追い越して、前のほうで鳴っている錯覚から抜けだすことができない。
そういえば、いつか、学校の授業中に先生が言った。視覚より聴覚のほうが尊いんです、格が上。神さまにキコシメスって言うでしょう?  と。真面目な私はそれ以来、目に見えるものより聞こえるもののほうが大事に思えてきた。自分の発する音が自分という「本体」から分離して、坂を上るときには前のほうに行ってしまっているのはそのせいかもしれない。

☆ ☆

駅までの道を
靴音響かせて歩く
上り坂のまっすぐな道
車が沢山通っている
人々が行き交っている

駅までの道は
にぎやかな道
それでいて孤独な道

駅までの道は
繰り返す道
日常の上を
通り過ぎようとする道

駅までの道は
妄想の道
いけないことが
浮かんでは燃え上がる道

駅までの道は
雨が降ると
傘が行き交う道
大事な事をしにいく道

駅までの道に
抱きしめられる
駅からの道で
そっぽを向かれた後に
駅までの道は
たしなめてくる

駅までの道は
昨日までとは違う道
駅までの道は
昨日とすこしも変わらない道

駅までの道は
永久に世間話をする
駅までの道が
冷たい手で握手を求めてくる

駅までの道は
もう通わない道
二度と歩かない道
二度と振り向かない道
帰り道と一緒に消えていく道

2012年3月12日月曜日

出会いたい人

天井の画を見上げるあなたを
盗み見する

私はあなたから
盗んでばかりいる

与えたものなど
なにもない

それでもあなたは
私を連れだす

そぼ降る雨の中を
陽気に喋りながら
きょぅも何かを見つけに行く

私には
なにも見つけられないが
あなたは
見つけているようだ

私は祈りたい気分になる
あなたと
また
出会えますように


まだ別れていないけれど
もう出会った後だけど
また
出会えますように

2012年3月11日日曜日

おしえてください

死んだのは
誰のせい?

死んだのは
私のせい

誰かに殺されるのを
許してしまった
私のせい

飼いならされた
私も
いつか誰かに
殺されるでしょう

いや
もう
殺されてしまっているかもしれません
もしそうなら
誰か
「死んでいるよ」と
おしえてください

質問 2

桜の花びらは
何枚?

知っていたけど
訊いてみた

あなたの答えが
ききたくて

2012年3月10日土曜日

うっかり

次に会ったら
気持ちを伝えよう

あなたのいる前で決意した

やべっ!
もう伝わってしまったみたいだ

あなたのいる方向

私のいる方向に
いつも煙が来る
とあなたは笑う

煙だけじゃない
私の視線も行く

秘密のある場所

あなたが
話してくれないこと

それが
あなたの秘密

会話が避けて通る道を
今度一人で歩いてみよう