2012年4月4日水曜日

それは帰り道だった

笑いながら夜道を歩いていたんだ
それは帰り道だった
いや 行き道だったかもしれないが

月がやけに明るく照らしていて
濃いブルーの影を作っていた
沼のほとりの柳の木の横を通った時
花の開く音がしたかと思ったら
少し遅れて香りがやってきた
鈴の音も聞こえてきた

前方からは
ハイヒールを履いた背の高い女性が
銀色のブラウスを光らせて
胸をゆさゆさ揺らしながら
足早に突進してきた

私の傍を通りすぎる時
女は泣いているのだと私は気づいた
すると私の眼からも
大粒の涙がポロポロとこぼれて道に落ちた

大事な宝物を
すべて捨ててしまったような気分に襲われたから
私は
笑いながら夜道を歩いていたんだ
それは帰り道だった
いや 行き道だったかもしれないが

1 件のコメント:

  1. きっと、女は気づいてほしかったんだ。
    優しくしなくてもいいから
    せめて、人も辛いことがあるんだってことを。

    返信削除