2012年3月17日土曜日

詩人と二人、街道を東へ

詩人を乗せて街道を東へ
詩人は余計なことを喋らない
詩人は詩人にとって大切なことを話す
詩人は自分と世間との関係を大事にしている
だがその自分は世間と分け隔てなく存在することも知っている
詩人の眼は車窓から外を見ているのだろうか
それとも窓枠の水滴が跡を引いて流れる様子か
時々私は詩人の方を見る
すると詩人は前を向いているが
私に目配せして話してくれる

詩人は今ここにいるが
詩人にとっては「今」はどこにあるのだろう
詩人は最近出たエッセイ集の話を私としているが
詩人は私とだけ話しているのだろうか

私はくれかけた休日の街道の混雑の中をすり抜けながら
前照灯をつけたりスモールにしたりしながら
時々ワイパーの速度を調整しながら
詩人と話をする

詩人の撮った映像は
物の見方が特別だと
私は気づいたと私は話す
そして
いままでは思想や書き方が特別だと想っていた
私もその思想や書き方は似ているので
とても近いと感じていた
しかし
本当はそうではなく
見方自体が違うと気付いたんです
と話す
詩人は無意識な領域が
特別かもしれないというようなことを話す
私は納得して嬉しくなる

沈黙して
話し始めるのは
カフェにおけるPAと音場設計の話
プロジェクターの価格と進化と購入方法の話

沈黙すると
次に話し始める話が
まったく別系統の話になるのは
詩人が私の話にあわせてくれているからだ

詩人は
ワイヤレスのPAシステムを
自宅で私に見るように勧めたが
のろのろ運転で自宅に到着すると
一人で建屋の中に入っていった
私は
ワイヤレスのPAシステムの
取扱説明書を受け取った
800メガヘルツ帯は
果たして使えるの゛たろうか
もう売っていないはずだか

そういえば
ソフトバンクが獲得したというニュースの中に
補償料を払うという一文があった

私は一人で車を運転し始めたが
私はまだ
詩人と話していた
詩人は家で
食事を摂っているにちがいない
私も食事を摂ろう

詩人が嫌いだと言っていた蛸は
私も好きではない
そのことは
誰にも話したことがない

詩人との会話は
完結せずに
始まりも終わりもなく
日本語の海の中で
泳ぎ続ける

雪解け水が流れこむ海で
暖流と寒流の間で
天の川と太陽を頭上に置いて

1 件のコメント:

  1. 詩人の目の中、すべてのものを詩になっていましょうねえ^^

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