2011年3月20日日曜日

被災した電車さん

津波にさらわれて
線路を外れ
原っぱに倒れている
あなたに
電気を送る電線はない

あなたを操った
運転手も車掌さんも
常連のお客さんの姿もない

あなたの中には
瓦礫と林の木
電線の切れ端と電柱の一部
屋根の瓦や襖の残骸
畑でてきかけた作物の茎と葉
本屋の看板
子供のオモチャ
それから海に帰り損ねたものたちが
入っている

おおらかなきみ
よろけんで受け入れ
彼らを救おうとしたのだろう

かつて きみは
颯爽と海辺の線路を駆け抜けてきた
もっと昔には
都会のビルの間や
新しく作られたトンネルを走ったこともあった

そんなきみが
いまは横たわり
動きだす気配すらない

こんなにゆっくり
星空を見上げたことがあっただろうか

きみは僕たちの問いに答えるように
小さな聞こえない声でこたえてくれる


クモハ

クハ

モハ ……

2 件のコメント:

  1. 電車は、いろんなところに連れて行ってくれました。
    ありがとう。
    おつかれさま。
    ありがとう。

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  2. 中村ゆき子2013年3月31日 3:25

    大きなお腹にたくさんの想いを包み込んで、
    電車に心があったなら
    線路脇のあの子の泣き顔
    手を振ってくれたあの人の笑顔
    立ち止まって見てるクロネコちゃん
    ホームから覗きこむやんちゃなボク
    色んな風景がスライドのように巡っているに違いない
    もしも瞼があったなら
    力の限り見開いて
    冷たくなった体を照らす星の数かぞえているでしょう
    やがて涙で数わからなくなるね
    誰も花を手向けてくれないけど
    せめて私から星のタッジーマッジーを捧げます

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