津波にさらわれて
線路を外れ
原っぱに倒れている
あなたに
電気を送る電線はない
あなたを操った
運転手も車掌さんも
常連のお客さんの姿もない
あなたの中には
瓦礫と林の木
電線の切れ端と電柱の一部
屋根の瓦や襖の残骸
畑でてきかけた作物の茎と葉
本屋の看板
子供のオモチャ
それから海に帰り損ねたものたちが
入っている
おおらかなきみ
よろけんで受け入れ
彼らを救おうとしたのだろう
かつて きみは
颯爽と海辺の線路を駆け抜けてきた
もっと昔には
都会のビルの間や
新しく作られたトンネルを走ったこともあった
そんなきみが
いまは横たわり
動きだす気配すらない
こんなにゆっくり
星空を見上げたことがあっただろうか
きみは僕たちの問いに答えるように
小さな聞こえない声でこたえてくれる
クモハ
クハ
モハ ……
電車は、いろんなところに連れて行ってくれました。
返信削除ありがとう。
おつかれさま。
ありがとう。
大きなお腹にたくさんの想いを包み込んで、
返信削除電車に心があったなら
線路脇のあの子の泣き顔
手を振ってくれたあの人の笑顔
立ち止まって見てるクロネコちゃん
ホームから覗きこむやんちゃなボク
色んな風景がスライドのように巡っているに違いない
もしも瞼があったなら
力の限り見開いて
冷たくなった体を照らす星の数かぞえているでしょう
やがて涙で数わからなくなるね
誰も花を手向けてくれないけど
せめて私から星のタッジーマッジーを捧げます