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2011年4月15日金曜日

想定外の計画

瓦礫の山
という慣用表現
瓦礫が積み上がってできた山のこと

瓦礫が見渡すかぎり続いている
瓦礫の道
瓦礫の荒野

一面の
瓦礫の海
そのなかで
小高くなっている
瓦礫の丘
瓦礫の崖

瓦礫の荒野

人が生き埋めになっているかも知れないのは
瓦礫の家
死んでしまった
瓦礫の墓

瓦礫の山から
人を助けるのは
救出劇
これは慣用表現

自然災害は四字熟語

災害報道
報道特別番組
いまはもうない
緊急報道特別番組

普段の体制

瓦礫の下で
テレビを観ている人はいないのだろうか
電気も来ない
電波を信じる?

瓦礫を撤去
閉鎖された遺体安置所
風評被害
出荷制限
避難指示
計画避難

魚を値切る
魚を取らない
稲を作付しない
株主代表訴訟を恐れる
働く場所がない
家族を失った
知人を失った
見つけられない

はやりの言葉が
慣用表現になっていく

想定外
想定外の計画

2011年4月10日日曜日

6次元にて

美味しいアイスコーヒーを
ありがとう
自然な笑顔が素敵です

本をかき分けて
カウンターの席で
アイスコーヒーを飲んだ

みんなが持ち込んだ
本を販売して
地震の被災者に全額を送る

色紙の看板は
谷川俊太郎さんの筆文字
売り上げを入れる募金箱は
谷川さんが持ってきた古い革のバッグ
ひょっとしたら谷川徹三さんのものかもしれないという

谷川夢佳さんは毎週のように
おじいちゃんの家から本を持ってきて
手伝っているそうだ
その様子が目に浮かぶと
自分も頑張らなければと思う

穂村弘さんは昨日きて
一箱置いて行った
その箱は出されたアイスコーヒーの隣に置かれていて
わたしに語りかけた
わたしはその中から本を買い
募金箱のバッグにいれた

混み合ってきたので
店をでることにした

外に出ると
中が恋しくなった
こんなことは
久しぶりだ

ありがとう
6次元

2011年4月5日火曜日

最高指令

原発の必要性を訴えるために
この際
計画停電を効果的にやらなければならない。
産業も病人も生かさず殺さずが方針だ。
多少の犠牲は出てもいい。
悲痛な面持ちでお詫びすればいい。
消費者心理を掴み
ニュースをコントロールして
エキセントリックな人々も利用して
悲劇を演出し
カッコつけたがりの権力者をうまく使いこなし
我々の組織を守らなければならない。
今までそうしてきたように。
我々の必要性を認識させ、
成長しなければ苦労の意味がない。

我々は産業界のエリートだ。
かつて銀行を国民の負担で救ったように
我々も救われるべきだ。
責任をとってやめなければならない者たちは
決して見捨てることはしないから
ここをうまく乗り切って
次のステージで好き好きやってくれ。

具体的には
秘密組織を発足したので情報を集約し
戦略を立て指示をくだす。

事故の影響が幅広いので
撹乱に使う情報と
ヤバイ情報の出し方が勝負だ。
さあ
取りかかれ。
これが最初の作戦だ。

---そうして
いつものように
資料が配られる

2011年4月4日月曜日

あなたのほう

待ち合わせの約束をしたまま
忘れてしまった日

取り返しのつかないことばかりが
思い出される

涙が枯れ果てた夕日のベランダで
傷ついたのは自分ではないことに気づいた

待ち合わせをしたまま
忘れられたのは私のほう

そのことを覚えていたのは
あなたのほうだった

2011年4月2日土曜日

寄付をする人

大きなお金を寄付するとき
彼は幸せな気分ではない
誰かと何かを共感できるとは
思っていない
彼の目的は共感ではないし
ましてや感謝されようなどもど思ったことはないのだ

彼は寄付を済ませたあと
いつでも孤独になる
云い知れぬ寂しさに襲われ
しばらくは黙して悶絶する
彼が得たものは
このような時間なのだ

だが
彼はその孤独こそが
一番大切なものだといつからか知るようになった

引き合う孤独の力が
宇宙を形成し
人は愛について語りさえする 
 
宇宙が彼を包み
彼は自分の考えたことが
記憶という海から溢れ出し
銀河を流れ去っていく様子を見る

もはや
どこに視点があるのか分からなくなる

所在無げな彼のポストに
乱れのない文字で記された
一通の礼状が届き
指先がその冷たさに出逢った


☆ この連は著名な詩の表現を引用しました

2011年3月31日木曜日

雨の遣い

あなたは外でつらいことがあって
その小さな部屋に逃げ帰ってきた

ベッドの上に体を投げ出したまま
動けなくなってしまった
シャワーを浴びたいのに
じっとして自分を癒すしかなかった

窓の外で雨が降り出したが
気づく様子もない

その雨は私が遣いにやったのだ

あなたは
雨の音を聴きながら
それが何であるのか認識できない

幸せだったあの頃の
遠い歌声が
聴こえているような気がしているだけだ

2011年3月30日水曜日

子どもたちへ

海から魚の女の子がやってきて
町は海の底に沈んでしまった
女の子は人間になったかな

このあとの世界は
君たちがすきなように作るといい
絵を描いてみて!
僕が大人たちを説得するよ

どんな町を作りたい?

2011年3月29日火曜日

ノノノノノ
ノノノノノノノノノノノノノノノノ


のののののののの

nonononononono
nononononononoノノノノノ
ノノノノノnono

あなたは私が間違っているという

ラジオにのせて

夕暮れ時に...........

ノノノノノノノノ
針葉樹の葉の
ノコギリ

ノノノノノノノノ

ノノノノノノノノノノノノノノノノ
ノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノ

2011年3月28日月曜日

夜はおやすみ(私の願い)

人命救助だって
夜はおやすみ
記者会見も
記者クラブも
監督官庁も
夜はおやすみ

眠れないのは
あなたとわたし
そして
人が操れないもの

電車だって
会社だって
役場だって
夜はおやすみ
でも本当は

働いている人がいる
起きている人がいる
眠れない人がいる

でも
誰かが蓋して

夜はおやすみ

ニュースは時々目を覚ます
再放送はボタン一つ
ニュースライターは夢の中で
徒競走

大事なことは
朝になるまで知らないことにします
そのほうが都合がいいこともあります

夜はおやすみなさい
それが大人の約束

どうか
朝には目覚めますように
明日こそ できごとを先送りしませんように

2011年3月27日日曜日

念のため 見殺しに

念のため
この辺りの野菜は廃棄してください
10年食べ続けると
健康を害するおそれがありますもので

念のため
乳児に水を飲ませないでください
どうしても必要な場合は
大丈夫ですので飲ませてください

念のため
避難地域を広げます
いつ帰れるかは
わかりませんが

念のため
この辺りには近づかないでください
生存者は
見殺しにする方針です

2011年3月26日土曜日

ソファに坐って寛いでいる人

さっきからソファに坐って寛いでいるあの人は
ここが自分の部屋だと思い込んでいるらしい

煙草を吸い
ツマミを次々と口に運び
ビールを美味しそうに飲む
その態度は
あまりに堂にいっているので
私のほうが他人の家に来ているような錯覚に襲われる
出前でも注文しそうな勢いだ

大きなあくびをした

あの人には
私が居ることが分かっていないのだろうか

わたしは透明人間ではないのに
あの人はあの人の日常をそのまま抱えて
この部屋に来ている

わたしは
わたしの日常をかき集めて
勝負しなければ と思えてくる
そうしないと
私の存在のほうが希薄化してしまう

しかしなぜこんなことになってしまっているのだろう
いくら考えても思い当たるフシがない
いつの間に来たのだろう
なぜ 私は気づかなかったのだろう
第一 私はいま何処にいるのだろう
ソファの後ろのパソコンのところか

いいや
パソコンは付いているが
私が居る気配がない

そのとき
耳鳴りのようにサイレンが鳴った
まただ
と思った瞬間 
汗のようなものがタラタラと
床に流れ落ちた

2011年3月25日金曜日

友だちがやってきた

友だちがやってきた
一人ぼっちの夜に
まえぶれもなく
突然やってきた

いつの間にか
傍らに立っていた
やさしい表情で
言葉もなく微笑んだ

私も言葉を発しなかった
ただ友だちの眼を見つめた

気がつくと
友だちの手を握っていた

しっとりとして
あたたかかった

2011年3月24日木曜日

別のものが宿る

何かの形にみえるが
そこには別のものが宿っているといっておこう
それが何であれ だ

そのことを知らずに近づけば
しっぺ返しを食ってしまう

例えばそれは大きな圧力釜の形をしているが
本当は200年以上前に戦火で焼けた掛け軸だ
日輪と一人の人物が描かれていた

また隣にあるプールは
砂漠に落ちてきた隕石のかけらだ
有名なサハラ砂漠に埋まっている
いまも埋まったままだが
そこに宿って顔を出している

その近くにあるまた別のプールは
中国 唐の時代の瀟洒な門だ

海岸線の形をしているものは
娼婦エレンディラのガーターベルトだ

そのガーターベルトには
いま数学の教科書が宿っている
数学の教科書には
ニューヨークのスタンドで1980年に売られたプレッツェルが宿っている
という具合だ

あの日
沿岸に大きな津波がやって来てから
この世は大きく変わってしまった
あらゆる形あるものに
別のものが宿っていった

宿ることで
よく変わったものもあれば
あまりよく変わらなかったものもあった
だが 悪くなったものは
わずかだった

何かの形に見えるものが
別の何かに宿られる世界ができていったとき
その大きな動きに
人々はあまり気がつかなかった
いや 気付けなかった

気づいた人は思った
なぜこんなことになってしまったかわからない
証明のしようがない

そこで詩人は詩を書いた
詩は少しずつ広がっていった
詩人に何が宿っているかは
語られていない

2011年3月23日水曜日

マイページ

¥眠って

眠って起きることと
死んで生まれることは
どれほどの差があるのだろう

毎日目を覚まし
今日をどう生きようかと思案し
床に就く時
あやふやに
きょうへの思いと
明日の予定が混ざり合う

死んでゆく時
きょうまでの過去を振り返り
自分の死後に思いを寄せる

瞼に祭りの列が通り過ぎる
喜びを湛え苦悩を祓いながら
だが次の瞬間には
祭りの列の中で鳴り物をならし
舞を舞い
見物の人に愛想を振りまき
カメラに納められる

毎日眠り
毎日生きる
この役目を毎日担当して
マツザキヨシユキ46年4か月



¥ドングリ

ドングリとお魚で
ドングリトット
という



¥いつの間にか去っていった友

樹々の筆先ミドリ
キギノフデサキミドリ
という
誰も超えられない
初夏の峠のような言葉をのこして

きみが友であったことに
今初めて気づいた
2011/3/23


¥おさるさん

おさるさん
とんで行って助けてよ
籠を担いで
助け出しておくれよ
友だちを
小田原提灯ぶらさげて
暗い道を行っておくれ


¥僕の詩は

僕の詩は
もっとオトナにならなければ
ならないにだろうか


¥行方が分からない

不安はサーチライトにならない
不満は燃料にならない
心配は愛情にならない

この足で歩き
あなたを見つけ出したとき
郵便が届くように
愛が来る
誰から届いたかは知れずに

2011年3月22日火曜日

朽ちて美しくなろうとしている

朽ちて美しくなろうとしている
深く身を沈め
永遠に近づこうとしている

陽ざしも 夜の冷気も
遠くから聞こえてくる音も
潮風の香りも
人が戯れる音も
食べ物の味も
どれも同じものであると
初めて気づいたのだ

だが
その気づきもまた
同じものの一つだ

気づかないものとも
同じなのだ

もう言葉は存在しない
すべての差異が埋められてゆく
このような安定は初めてだ

誰もここにはこない
近くにいるのに
なんと遠いことだろう

朽ちていくことは
生まれていくこと
ただ
その時間の流れを
計るモノサシは
この世に存在しない

波音は繰り返し
語りかけてくる

去ったものたちは
すべてに同化して
言葉で伝えるべき物語はない

2011年3月20日日曜日

被災した電車さん

津波にさらわれて
線路を外れ
原っぱに倒れている
あなたに
電気を送る電線はない

あなたを操った
運転手も車掌さんも
常連のお客さんの姿もない

あなたの中には
瓦礫と林の木
電線の切れ端と電柱の一部
屋根の瓦や襖の残骸
畑でてきかけた作物の茎と葉
本屋の看板
子供のオモチャ
それから海に帰り損ねたものたちが
入っている

おおらかなきみ
よろけんで受け入れ
彼らを救おうとしたのだろう

かつて きみは
颯爽と海辺の線路を駆け抜けてきた
もっと昔には
都会のビルの間や
新しく作られたトンネルを走ったこともあった

そんなきみが
いまは横たわり
動きだす気配すらない

こんなにゆっくり
星空を見上げたことがあっただろうか

きみは僕たちの問いに答えるように
小さな聞こえない声でこたえてくれる


クモハ

クハ

モハ ……

2011年3月18日金曜日

懐かしい場所へ

何故か懐かしい と 思ったので
そう通信した

ルートは波形(なみがた)をしている
それが最短距離なのだ

進むために燃料は要らない
いってみれば
そう希うことで進むことができる

光の速さを殊更に意識しなくてもいい
光は違う種類の人間だ

いくつもの集落が
粒状の
光の小山として見える
そう通信した

山はいくつもある
音はほとんどしない

音を出さないのは
神様の声を聞くためだと思われる

かれらはそれぞれに
崇高に生きようとしているのだ

わたしは汚れたものだな
これは通信しなかった

明るい天体の向こうに回りこむと
小さな天体は光に邪魔されて見えなくなった

しかしそこには
あたたかい島があった

島には波が打ち寄せ
人々が穏やかに暮らしているようだ

波間から水にもぐると
水の粒が光に向かって昇っていった

青い空が水の底にもあった
鮮やかな色とりどりの貝やサンゴが星のように光っている

2011年3月17日木曜日

命は 失われていない

私は大きなものを失った

私は大きなものを失った


私は大きなものを失ったけれど

それは

自分の命ではない
あのひと
でも、ない

あのひとの
命、でもない


私は大きなものを失った

私は大きなものを失った


私は大きなものを失ったけれど

それは
失っても
仕方のないものばかり



あのひとは
大きなものを失った

あのひとは
大きなものを失った


あのひとは
大きなものを失ったけれど

それは
命、ではない


数えられない命が
去っていった

数えられない命が
去っていった


数えられない命が
去っていったけれど

それはあのひとから
失われた訳ではない


私は大きなものを失った

私は大きなものを失った


私は大きなものを失ったけれど
それは
失われても
仕方のないものばかり


あのひとは
あのひとたちは
大きなものを失った

あのひとたちは
大きなものを失った


あのひとたちは
大きなものを失ったけれど
それは
命ではない

命は
去っていっただけ
命は
失われていない


失ったものは
仕方のない
ものばかり

失ったものは
仕方がない
ものばかり

命は
失われていない
去っていっただけ


命は失われていない

どこかに
去っていっただけ


去っていっただけ
どこかに

だれ

だれかいませんか


声が空気をノックする


だれかいませんか


ぼくは
なんども
目を覚ます

だれか
いませんか


その声を
聞き逃すまい
その声の主を
やり過ごすまい


空き地の横の
砂利道を
一緒に歩いた
きのう



きょうは
その
あした


きのうは
きょうの
きのう




おとといの
あした



小学生の
名札

名前



書いてある
滲んでいる


書いた名前


名前








涙を
飛ばした
海の風



つめたい


まぶしい
日差し










なにが
できますか



なにか




できますか







なにが









やがて

積もる




きれいな

結晶



綿





かたち





まっすぐ


でも
ゆらめく







あの日





雪の









サカナ




きこえる



さあ