2011年3月24日木曜日

別のものが宿る

何かの形にみえるが
そこには別のものが宿っているといっておこう
それが何であれ だ

そのことを知らずに近づけば
しっぺ返しを食ってしまう

例えばそれは大きな圧力釜の形をしているが
本当は200年以上前に戦火で焼けた掛け軸だ
日輪と一人の人物が描かれていた

また隣にあるプールは
砂漠に落ちてきた隕石のかけらだ
有名なサハラ砂漠に埋まっている
いまも埋まったままだが
そこに宿って顔を出している

その近くにあるまた別のプールは
中国 唐の時代の瀟洒な門だ

海岸線の形をしているものは
娼婦エレンディラのガーターベルトだ

そのガーターベルトには
いま数学の教科書が宿っている
数学の教科書には
ニューヨークのスタンドで1980年に売られたプレッツェルが宿っている
という具合だ

あの日
沿岸に大きな津波がやって来てから
この世は大きく変わってしまった
あらゆる形あるものに
別のものが宿っていった

宿ることで
よく変わったものもあれば
あまりよく変わらなかったものもあった
だが 悪くなったものは
わずかだった

何かの形に見えるものが
別の何かに宿られる世界ができていったとき
その大きな動きに
人々はあまり気がつかなかった
いや 気付けなかった

気づいた人は思った
なぜこんなことになってしまったかわからない
証明のしようがない

そこで詩人は詩を書いた
詩は少しずつ広がっていった
詩人に何が宿っているかは
語られていない

2 件のコメント:

  1. 詩人には、無限の世界が宿っていると思います。

    返信削除
  2. AKIRAさんへ
    詩人の役割はなんでしょうか。大きな災害と、そのなかで権力を守ろうとして権力に奉仕している一握りの人間の様子を見ていると、すこし分かってきたような気がします。

    返信削除