2011年4月30日土曜日

ライムの香り

寝ているあいだに
あなたのからだに
何度も波がやってきて
連れ去ろうとしたので
目覚めたとき
あなたは疲れきっていた

こんなこと一度や二度ではないだろう

リビングのテーブルについたあなたは
無理やり笑ってくれたけど
ぼくはどうしたらいいのか
わからなかった

昼になって
あなたの手は
火に鍋をかけて
カボチャを煮
イワシを割いて小麦粉をまぶし
料理を作り始めた

大きなワイングラスに
金色の液体を注ぎ
ライムを絞って
さし出した

その一連の動きが
あらかじめ
決められていた
何かの美しい物語のように
僕の目の前にあった

ライムの香り
あなたの手から香ってきた
氷の上で
絞られたライムが見つめていた

2 件のコメント:

  1. 物語は、決まってた。
    不幸の手紙が竈にくべられた時から。
    波があなたをおそうことも。
    ライムの香りに包まれて、竈の火を使って、料理を彼のためにつくることも。

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  2. ももさんへ
    前の詩と繋げて読んでくださってありがとう。
    決まっていることがあるという感じは、安心につながることがあります。これは言葉を変えれば宇宙からの『愛』なのかもしれませんね。

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