2011年4月24日日曜日

ソナチネの木

ソナチネの木というのが
この世のどこに
あるだろうか

その枝には
解説されていない
いくつもの物語が
葉のように茂っている

葉のように
というのは
どれも
木の枝に付くのに
ちょうどいい大きさだから

それゆえ
どこからか風が吹いてきても
軽く受け流して
ただちょっと揺れたり
震えたりするだけなのだ

もっとも古い葉は
もう千年以上も前に生まれ
そこに付いているという

ソナチネの木にも
季節というものはやってくる
やってきては
過ぎてゆく

季節変わりに
物語の葉たちはその様相を変える

ぐんとおおきくなるもの
誰かに摘み取られてしまうもの
誰かの解説にあずかって消え去るもの
季節とともに旅立っていくものたちがいるからだ

ソナチネの木が
いつからそこにあるのかは
だれも知らない
いつ生まれたのか
どうやってそこに運ばれたのか

いや
その木の存在さえ
見ることができない者さえいる

だが
ソナチネの木は
いまも
多くの葉をたたえ
日々小さな変化をしていく

4月も終わりに差し掛かったいま
夏に向けて
その葉を青々と空にかかげている



2011年4月7日
岸田衿子さんの詩の永遠と
魂の冥福を祈り

2 件のコメント:

  1. 目をつぶり、耳をすまして、
    ソナチネの木をみてみました。
    音が聞こえなくなってきて、青空に豊かな葉を茂らせた木が
    ありました。
    風に葉をゆらし、それでいて、生命を超えた存在。
    新鮮な葉の香がしました。

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  2. 詩は読み手の想像力とあいまって成立するものですね。
    茨木のり子さんの名著「詩のこころを読む」で、岸田さんの短い詩がいくつか紹介されていますが、この本は、詩の多義性を教えてくれます。茨木さんの詩に対する愛と思想が、詩の鑑賞の方法を示してくれます。
    おすすめです。

    ももさんのコメント素敵ですね。

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