2011年6月9日木曜日

いま

みにくいアヒルの子は
白鳥になれて よかったね

私はみにくいまま
おとなになってしまった

とりえのない人間
飛ぶこともできず
仲間からも疎まれ
一人で部屋にいる

空の彼方に群れて消えていく美しい鳥を見上げては
きょうも大きく溜息を吐く
お寺の鐘が人生を弔おうとしている

自分の下にあるものだけが
自分の友だち

地面の草とか
影とか
零した涙
瓶の蓋
タバコの包装紙

でも
こんな私にだって
愛をくれた人がいた

優しいことばをかけ
握手してくれた人がいた

愛の代償を返す力はないかもしれないが
どうにかしてなにかを返そうと思う

働きの悪い脳みそを励まし
チャンスをうかがいながら
計画を考える


いま
生きている

1 件のコメント:

  1. 白鳥にも、白鳥なりの苦労があるかもしれませんよ。
    美しいものは羨ましく思えるけれど、
    実際のところは、分からないのです。
    でも、どうしても他人が良く見えてしまうのが、
    人間の性というものですね。

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