2011年6月2日木曜日

私は夢見て…

私は古い家

建物なので
あなたのところへゆくことはかなわい
ただ思いをこめて念じるだけだ
私の隣には古い寺があり
今時はツツジの香りが立ち込めている
掃き清められた庭は
どこから見ても美しい
ツツジの香りの良さを
あなたに届けたい
そう願って私は念じる
あなたがやってくるように
ところで
私には
一人の男が住んでいる
私を手入れし磨き上げているうちに
若い一人の娘が
やってくるようになり
すぐに男と結ばれた
娘は海からやって来たのだ
娘は私に触れてうっとりとさまよい
冷たい木の表面で熱を冷ましながら
眠った
私の木肌はツヤを増し月光と愛を交わした
寒い朝には
男と娘は
寝床の中でいつまでも夢見ていた
私も夢を見た

私も
私を包む者たちも
静かに聞き耳を立てていた
男と娘は
無口になって
思いを巡らせた
その行く手に
私は佇み手招きをした
男と娘は
私の中にいた
娘が海へ
帰っているとき以外は
私の中にいた

4 件のコメント:

  1. この前、消えてしまった詩ですね。
    また出合えて良かったです。

    古い家の気持ちを考えると、切なくなります・・・。
    庭は、もうすぐ紫陽花の色に染まりますね。

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  2. 男は、確かに人間の男なのでしょう。
    娘は、女とは表現されずに、若い娘とされているのは、
    人間かどうかは、あまりどうでもいい
    純な存在のように感じます。
    そういうものを、包含する「私」は。。。

    進化する、このシリーズ、次も楽しみです。

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  3. マツザキヨシユキ2011年6月3日 10:04

    Pollyさんへ
    消えた詩がパソコンの中から出てきました。どうして?
    でも、憶えていてくださって、うれしいです。ありがとう!

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  4. マツザキヨシユキ2011年6月3日 10:08

    ももさん
    あいかわらず深い読みです
    書いた本人より、面白い世界を見ています。
    詩っておもしろい。

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