私は古い家
建物なので
あなたのところへゆくことはかなわい
ただ思いをこめて念じるだけだ
私の隣には古い寺があり
今時はツツジの香りが立ち込めている
掃き清められた庭は
どこから見ても美しい
ツツジの香りの良さを
あなたに届けたい
そう願って私は念じる
あなたがやってくるように
ところで
私には
一人の男が住んでいる
私を手入れし磨き上げているうちに
若い一人の娘が
やってくるようになり
すぐに男と結ばれた
娘は海からやって来たのだ
娘は私に触れてうっとりとさまよい
冷たい木の表面で熱を冷ましながら
眠った
私の木肌はツヤを増し月光と愛を交わした
寒い朝には
男と娘は
寝床の中でいつまでも夢見ていた
私も夢を見た
夜
私も
私を包む者たちも
静かに聞き耳を立てていた
男と娘は
無口になって
思いを巡らせた
その行く手に
私は佇み手招きをした
男と娘は
私の中にいた
娘が海へ
帰っているとき以外は
私の中にいた
この前、消えてしまった詩ですね。
返信削除また出合えて良かったです。
古い家の気持ちを考えると、切なくなります・・・。
庭は、もうすぐ紫陽花の色に染まりますね。
男は、確かに人間の男なのでしょう。
返信削除娘は、女とは表現されずに、若い娘とされているのは、
人間かどうかは、あまりどうでもいい
純な存在のように感じます。
そういうものを、包含する「私」は。。。
進化する、このシリーズ、次も楽しみです。
Pollyさんへ
返信削除消えた詩がパソコンの中から出てきました。どうして?
でも、憶えていてくださって、うれしいです。ありがとう!
ももさん
返信削除あいかわらず深い読みです
書いた本人より、面白い世界を見ています。
詩っておもしろい。