2011年5月21日土曜日

月のネックレス

月が一つ
闇空のてっぺんで明るく光っているだけなのに
海はその下に
煌めく光の路をつくり
プラチナで編み上げられた
ネックレスみたいに
海の胸元をゴージャスに飾っている

砂浜にいるのはきょうもあなた一人だから
その美しい光景も
ネックレスも
あなただけのもの
きっと誰かがくれたプレゼント

海の中に入っていくあなたは
自称  人魚
ぼくはそうは思わないけれど

泣き尽くして涙を枯らして
夜が白み始めると
あなたはここから去っていく

誰もいなくなった海は
波を手持ち無沙汰に打ちながら
一人で何かを語り続ける
答えなのか問いなのかは
分からない
もうどれだけの時間が流れたのかも分からない

あなたは
昼間
仕事場で汗をかきながら働く
何かをおし殺し
自分に言い聞かせて

そして
海に行ったことは
波の中に入って行ったことは
友人には話さない

海と約束をしたからなのか
それとも
自分が消えてしまったあとに
なにも残さないという
決意の表れなのか

1 件のコメント:

  1. この詩を書いている「ぼく」さん。
    どうぞ「あなた」を見守ってあげて欲しい。
    人魚と思って消えちゃわないように、「あなた」のSOSをキャッチしてあげてください。

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