月が一つ
闇空のてっぺんで明るく光っているだけなのに
海はその下に
煌めく光の路をつくり
プラチナで編み上げられた
ネックレスみたいに
海の胸元をゴージャスに飾っている
砂浜にいるのはきょうもあなた一人だから
その美しい光景も
ネックレスも
あなただけのもの
きっと誰かがくれたプレゼント
海の中に入っていくあなたは
自称 人魚
ぼくはそうは思わないけれど
泣き尽くして涙を枯らして
夜が白み始めると
あなたはここから去っていく
誰もいなくなった海は
波を手持ち無沙汰に打ちながら
一人で何かを語り続ける
答えなのか問いなのかは
分からない
もうどれだけの時間が流れたのかも分からない
あなたは
昼間
仕事場で汗をかきながら働く
何かをおし殺し
自分に言い聞かせて
そして
海に行ったことは
波の中に入って行ったことは
友人には話さない
海と約束をしたからなのか
それとも
自分が消えてしまったあとに
なにも残さないという
決意の表れなのか
この詩を書いている「ぼく」さん。
返信削除どうぞ「あなた」を見守ってあげて欲しい。
人魚と思って消えちゃわないように、「あなた」のSOSをキャッチしてあげてください。