2011年5月6日金曜日

いつのまにか

いつのまにか『命のバトン』を渡されていた

いつのまにか自分の命を守るプログラムを手に入れた

いつのまにか日が傾いてきょうも夕暮れがやったきた

いつのまにか知り合った人がどこかにいってしまった

いつのまにか大きな雲が形を変えて彼方へ消え去った

いつのまにか電話がかかってこない日々がつづいていた

いつのまにか体が古くなって皮膚が乾燥した

いつのまにか側で蛙の声が聴こえなくなっていた

いつのまにか愛する人のことを忘れようとしていた

いつのまにか遠くから小さな何かの音が鳴り続けるのが聴こえていた

いつのまにか寂しい気持ちが心に満ちていた

いつのまにか生きていることが自分のことであると気がついた

いつのまにかあの頃のコロッケが食べたくなった

いつのまにか「今」が立ち止まってこちらの様子を窺っていた

いつのまにか外出の時間が近づいてきた

いつのまにかカーテンの向こうの窓の外で星が瞬きはじめた

そして

いつのまにか私はいなくなった

2 件のコメント:

  1. いつのまにか、詩に飲み込まれてた。
    生まれたときは、死の匂いをしっていた。
    命のバトンを受けとって、
    たくさん悩んて、人生を謳歌して、
    何気ない日常を自然に生きて、
    明日が当たり前にくるはずだった。
    さりげなく、また、命のバトンが渡されてた。
    この、作品自体が命の躍動にあふれてます!

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  2. 人生や人の存在の哀感を描きたかったのです。

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