陽炎の向こうに蜃気楼が現れ
その彼方にオーロラの光がたゆたう
地面を見つめていた私は
手にしていた文庫の詩集を手のひらで丸めて
現実のロープにつかまろうとしていた
足元に霧が流れ
何かの音が木霊し
小高い山の頂が
浮き沈みする
あれはいつのことだっただろう
時の流れを無視した不確かな記憶が
目を瞑っていない瞼の奥で渦巻いて
挙動不審にさまよっている
私は手にした詩集の1ページを開く
そこには詩を編み出そうとしている人物が描かれている
誰なのかは分からない
本を閉じてまた開くと
そこには詩が刻まれているだけだった
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