2011年12月28日水曜日

絶望の谷には何も落ちていない

絶望の谷には何も落ちていない
孤独の影さえ見ることができない
日は暮れかかり
どんよりと冷たく湿った空気が忍び寄ってくる
カビのにおいが立ちこめて
逃れるすべがないことが知らさる

体の向きを変えれば
少しは景色が変わるが
もう前に見た景色は忘れている

いつからここにいたのか
迷い込んだのか追い立てられたのかも分からない

心臓の鼓動と息の音はしているが
その数を数えることはできない
星は出ているのだろうか
ここは屋外のようだが
なぜ空が見えないのだろう

立ち尽くしているより
歩いていた方がいいのだろうか
靴紐がほどけているようだ

耳を澄ますと
静けさに圧倒されそうになる
何という轟音だろう
体の中を甲高いエンジン音をうならせて
黒い輸送機が飛行していく
戦地から帰るのだろうか

目を閉じても
何も変わらないのは何故だ

小学校の授業を抜け出して
掛けていった裏庭の花壇のミツバチが
この世界を想像しているのだろうか

誰かが誰かを呼ぶ声が
上空を通過する
私の名前を呼ぶ人は居ないのか

何らかの変換装置が作動して
私には届かないだけなのか

1 件のコメント:

  1. 中村ゆき子2012年12月25日 2:25

    そこは絶望の谷なんかじゃないんですよ。迷い混んだわけでもなく貴方が自らやって来た場所です。立ち竦んでのぞきこんているだけだから上から見えないんです。その谷に飛び込んだら掬い上げてもらえるのに。目を閉じても何も変わらない、呼ぶ声も聞こえないのはあなたが変換装置のスイッチを壊したから。
    谷に飛び込んだら心のonとoffの スイッチを壊そう。

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