孤独の影さえ見ることができない
日は暮れかかり
どんよりと冷たく湿った空気が忍び寄ってくる
カビのにおいが立ちこめて
逃れるすべがないことが知らさる
体の向きを変えれば
少しは景色が変わるが
もう前に見た景色は忘れている
いつからここにいたのか
迷い込んだのか追い立てられたのかも分からない
心臓の鼓動と息の音はしているが
その数を数えることはできない
星は出ているのだろうか
ここは屋外のようだが
なぜ空が見えないのだろう
立ち尽くしているより
歩いていた方がいいのだろうか
靴紐がほどけているようだ
耳を澄ますと
静けさに圧倒されそうになる
何という轟音だろう
体の中を甲高いエンジン音をうならせて
黒い輸送機が飛行していく
戦地から帰るのだろうか
目を閉じても
何も変わらないのは何故だ
小学校の授業を抜け出して
掛けていった裏庭の花壇のミツバチが
この世界を想像しているのだろうか
誰かが誰かを呼ぶ声が
上空を通過する
私の名前を呼ぶ人は居ないのか
何らかの変換装置が作動して
私には届かないだけなのか
そこは絶望の谷なんかじゃないんですよ。迷い混んだわけでもなく貴方が自らやって来た場所です。立ち竦んでのぞきこんているだけだから上から見えないんです。その谷に飛び込んだら掬い上げてもらえるのに。目を閉じても何も変わらない、呼ぶ声も聞こえないのはあなたが変換装置のスイッチを壊したから。
返信削除谷に飛び込んだら心のonとoffの スイッチを壊そう。