下を向いて歩いていたら
そのこの横顔が
逆光の中で
いきなり光ったんだ
一瞬のことだったけど
シルエットは形のいい鼻の輪郭と
ふっくら盛り上がった唇を浮かび上がらせた
小さな光の欠片となった前歯は
夜空の星になろうとして飛んでいった
暮れかけた商店街は
落ち葉の雰囲気もして
足音にカサカサという音が混ざる
あの落ち葉は何日かまえに
わたしの肩をトンと叩いて落下した落ち葉だろう
商店街に人は多くも少なくもなく
冬のやや冷たい風が吹いている
そのこの額は
頭に優しい髪を湛え
体はそのこをいろんなところに連れ回してきたが
たぶん仲良くやっているのだろう
不穏さはなく
心地よさが湧き出ていた
笑顔はその一つの表現だろう
下を向いて歩くのはやめたいと
ずっと願ってきたが
いつのまにかすっかり慣れてしまい
目には動く灰色の道しか見えなかった
方向さえ決めれてやれば進んで行く道に
特別な思いもかけず
ただ単調になりかけていた
だかあのこの横顔が
逆光の中で
光ったとき
カラー写真が心に焼き付けられたんだ
薄暗い商店街の道は
私の心を映して
あかんべーをして
灰色の舌を晒しているが
その上を
慌ただしく人は通りすぎ
あのこは
いつまでも止まっている
動くことを私の心が許さないからだろう
だが間もなくその壁は破られ
動き出すだろう
と
これはまだ願いにすぎないのだが
薄暗い商店街のそのこの横顔が発した肉弾は
私の弱った心を間もなく打ち砕き
景色は動き
輝き出すにちがいない
それを見てみたい
岩陰から
こっそりと
できれば
だんだん堂々と
動き出す、そのときを楽しみにしています。
返信削除そして…私も前を向いて、歩いていきたいです。