2014年5月11日日曜日

ことばでないものでかたるもの

ことばでないものでかたるもの

公園の錆びたベンチの上で
行きずりの風と一緒

目に入ってくる
下弦の月

ツツジが薄暗がりで色鮮やかに
たむろしているのは
いまの私たちとおなじ

誰もいない場所で語ること

原宿駅のホームにせり出した
神宮の杜の緑
その幾千枚の葉

ことばでないものでかたるもの
涙をこぼさずに眠りについたもの

さっき
表参道で行き交っていた人の群れ
ぬるい空気をかすめて
上空を飛来する
尖った鳥の嘴

2014年5月10日土曜日

逃げた鳥

小さいころ
私が窓を開けて逃がしてしまった
妹の鳥が
森林の上空をさまよい飛んでいる

恨み言を言っているのかと思ったら
もうそんなことは言っていないよ
という

ほんとはずっと心配だった
きみのこと
だれにも言わなかったが
わすれることもなかった きみ

いま
太陽の下で
紙に書いて告白します
窓から逃げていったきみの生きる道は
どんなにか
変わってしまっただろう

私が窓から逃げ出したのは
きみのことがあったから
帰る窓は
なくなてしまったけれど
きみが恨んでないと知って
私もきょうから
恨み言を言わずに
生きてゆける

このまちの上空を
さまよい飛んで


こまったもんだい

いぬをハグするおんなのひとが
いぬにかおをなめられている
きれいにけしょうをしていたが
はげてしまっている

わたしは
みてみぬふりをする
わたしはあんなになかのいいひともいなければ
いぬもねこもいない
あのなかのよさは
どこかいたいたしいとかんじてしまうから

ひとしきり
なめられおわったおんなのひとが
わたしにちかづいてきて
あいさつをする

さめたあいさつだ
わたしは
けしょうがはげたはだを
いたいたしくおもうが
おんなのひとは
それをきにしているようすがないので
わたしはじぶんだけがきをつかっていることに
いらいらしてくる

しかしかおではわらっているので
わたしはきっといやらしいにんげんになってしまっているのだ

なんということだ
いぬをはぐして
かおをなめられるおんなのひとのおかげで
わたしは
こころがくもってしまった

どうしたらはれるのだろう
いっこくもはやくおんなのひとからはなれて
すきなジェラードでもぺろつくか

あ まてよ
ジェラードのきもちにわたしいっしゅん
なってしまった
ああ
こまったものだ

2014年5月8日木曜日

ゆめのなか

ねむるとき
むねのなかが
そわそわして
それがいやだから
ずっとおきてあそんでいたいのに

だれかが
わたしを
ひきずりこんで
むねのなかが
そわそわして
わたしが
どこかへ
いってしまう

いきなりみえたのは
みおぼえのあるばしょ
だけど
みんな
いつもとどこか
ちがってる

わたしが
どこかからわたしをみている
これはゆめのなかなのか
たしかめてみたら
どうもゆめではないような
きがしてしまう

おきたあとに
かんがえてみると
やっぱりあれは
ゆめのなか

ゆめのなかのわたしは
わたしのなかで
ねむってしまったんだ

きっとねむるとき
むねのなかが
そわそわしたでしょう


2014年5月7日水曜日

か行の歌

きってをはって
てがみをだした
きっとへんじは
こないでしょう

きっぷをかって
このまちにきた
きみとは
けんかばかりです

きいてほしくて
でんわをかけた
きらわれそうで
すぐきった

きつねのこども
きままにさんぽ
きいろいこすもす
コンコンコン

2014年5月6日火曜日

アミーゴ シルブプレ

アミーゴって
ぼくは いった
いみは わからないけど

ごろにゃーごって
コジイが いった
ぼくには
いみは わからないけど

シルブプレって
ぼくは わらいながら いった
ぴちょぴちょぴーって
ピーニョがいつものように いった

ごはんできたわよって
ママがきて いった
ぼくは
いただきますって
スプーンをもっていった

テレビが
うたをうたってた
おちゃわんが
かちかちっていった

2014年5月5日月曜日

おさるのべんとう

おさるのべんとう
なかみはなあに
のぞいてみよう
おいしそう

しろいごはんに
おかかにうめぼし
こげめのついた
たまごやき

ぼくのべんとう
おやつはなあに
らっぷにつつんだ
ばななはんぶん

おさるとおなじ
だけどおさるは
まるまる1ぽん
ぼくははんぶん

さびしいな
さっちゃんの
うたといっしょだ
おさるはいいな


2014年5月4日日曜日

森の化石

森が白い球を隠し持っている
初夏の日
私はそれに気づいた

森は青い空を背景に
森のような顔をして
佇んでいる
(森は自分が森ではないと
 自ら思おうと努力していた)

森は
人の眼を信じていないので
高をくくって
堂々と なし崩して
白い球を高く掲げている

森は油断し
木々に注意をうながすこともしない
昔はそうではなかったのだが

森は淡い夢を見ている
その白球を
あの恐ろしい強打者めがけて投げ込むことを
投げ込まれた白球は打者が翻弄する隙間もないほど速く
おそらく音速で捕手のミットに収まる

その一部始終を
私は目撃するだろう
森は完全に敗北するだろう
森としての役目は
その時終わる
森の木々は
もうただの木の一本一本となり
化石とともに
地に横たわる道しか残されていない

2014年5月2日金曜日

名もない命として

空気が閉じ込められた
一粒の氷
グラスの中で揺らすと
心地よい音がする

私も
心地よい音で
鳴りたいと思う

遠い雷雲から落下した滴が
地を這って希った果てない夢を
この喉で受け止めて
声にしたい

星空の電波で
この星の人に伝えたい
人としてではなく
名もない命として

2014年5月1日木曜日

ビルのガラス窓に映った雲が
流れていく

あの雲は友だち
雨を降らさない雲は
何のために漂っている?

私たちを見下ろして
気分がいいだろう
きっと自分の小ささを感じて

大志を抱いているだろう

2014年4月30日水曜日

ともだちにしよう

ちからをもてあますより
なにかいいことにつかいたい

いらいらするより
みかたをみつけていっしょにてきにいどもう

うつむいてふさぎこんでも
あしもとのちいさなはなからパワーをもらおう

すぎたひびはにどとこない
これからくるひびをともだちにしよう

2014年4月29日火曜日

はなびらのかげに かくれて

はなびらのかげに
かくれて
めをつむり
こわいことが
おわるのを
まっています

すると
いいかおりが
わたしに
しらせてくれます
もう
こわいことは
おわった と

わたしは
めをひらいて
はなびらのかげから
でていきます
でんでんむしが
うしろから
ながめています

こわいことはもうおわり
そこには
いいかおりのくうきが
あるだけです
わたしは
はなはつよくて
すごい とおもいました

でも
ちいさなはなのたねが
まだ わたしのぽけっとのなかで
めをつむってふるえていました

2014年4月28日月曜日

ミミナガペンギンがとおせんぼしていた

ミミナガペンギンがとおせんぼしていた
ぼくはオナラをしにあっちへいきたいのに
オナラはひっこんでしまった
そしたらミミナガペンギンがしゃっくりしはじめた
ぼくはくまざさのあはっぱで
ミミナガペンギンのみみをこちょこちょした
するとミミナガペンギンはのたうちまわって
わらうのをこらえてた
うえのほうからおならのおとがきこえた
ペリカンきょうだいがそらをとんでいた
ぼくはしゃっくりしたくなったが
がまんした

2014年4月27日日曜日

友だちとけんかした日

ベランダに放ってあった古い木の椅子と
1年ぶりに咲いたチューリップが
気持ちよさそうに
いっしょに日差しを浴びている

いつの間に
仲良くなったの?

言葉をしゃべらないものどうし
どうやって仲良くなったの?

友だちとけんかした日


2014年4月26日土曜日

心のなかに

心のなかに
空を取り込んだ
目を瞑ると
そこに青空が広がり
ゆっくり息を吸うと
雲が風に流れはじめた

静かにしていると
時間も佇んだ

頭をを回すと
宇宙が転がって
夜の星と昼の太陽が渦巻いた

心のなかに
自分もとりこんだ
見渡す限りの草原を駆けて行き
丘から世界を見渡した
地平線が空と地との境界を記していた

心を手にとって
柔らかさを確かめた
少し固かったので
揉みしだいて柔らかくした

頬が緩み
目から涙が落ちた

舌先で波が打っていた
海鳥が飛び交い
私は小舟を海に浮かべ漂よった

心の空に
花火が打ち上がった
昼間なのに
まばゆい光の輪が広がった

2014年4月25日金曜日

階段を降りたところに

           」
          」
         」
        」
       」
      」
     」
    」
   」
  」
 」


ある夕
急な階段を降りたところにあなたは立っていた
私が声をかけようとしたら

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
あなたはサッシを開けて庭の細い道を
うさぎのように逃げていった

あれから
あなたの姿を見ない

 )))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))

同じような毎日が続いた

私は再び
階段を降りてあなたを見つけようとしたが

階段を見つけることができなかった

2014年4月24日木曜日

こわい ねむりおとこ

ひとのゆめにでてきて
ねむってしまう
ねむりおとこ

ねむりおとこが
でてくると
みたひとは
ねむれなくなる

それは
ねむりおとこは
ねむりおとこをみたひとのかわりに
ねむってしまうおとこだから

だが
ねむりおとこをみたひとは
おきているとき
ねむりおとこのことを
おもいだせない

ねむりおとこは
みたひとがねむらなくても
みたひとのかわりに
ねむってしまう

たまに
ねむりおとこが
どこかにでかけると
ねむりおとこをみたひとは
ねむれる

ねむりのさかを
きゅうこうかして
ねむりにおちてゆく

そして
ねむりおとこのことを
おもいだして
こわくてふるえる

ねむりおとこが
かえってきませんように
といのる

いのりながら
ゆめをたてつづけにみる

そして
めをさます

いや
はんたいだ
ほんとうは
いま
ねむりにおちたのだが
それに
きづくことはない











ここにある
ねむりおとこの
しゃしんが みえますか



2014年4月23日水曜日

きんぎょ

みていたの?
きんぎょ
ひかるあぶくの
ネックレスくれるのね

しってたの?
きんぎょ
ないてたとき
よこむいてくれてたよね

はなそうよ
きんぎょ
こいをしたら
わすれてしまいそうだから

2014年4月22日火曜日

何食わぬ顔をして

あいさつを
きちんとしなさい

何度となく言われてきた

ひとにやさしくしなさい

猫なで声で
つらそうな人に話しかけたりした

人に迷惑をかける生き方だけは
してくれるな

意味は分からなかったけど
はい、と応えて頷いた

ものごとを悪い方向に
考えちゃいけない

狭く考えればいいのか

目上の人も
そうでない人も
私に意見を言う

言われた瞬間
私はそれが何を意味しているのか
分からないことが多い

けれど
なんとなく誤魔化しながら
答えがないまま生きている

いい気になるなよ

うれしいことがあった時
父が言った

悲しい別れがあったとき
私は涙を抑えて
何食わぬ顔をして
いつもの道を歩いて行った

2014年4月21日月曜日

ごほうびのくも

つらいことにもよくたえてきた
ごほうびに
もくもくした
くもをあげよう

このくもは
あなただけの くも
みんなには ないしょだよ

あしたのあさ
めをさましたら
くもは あなたのの
こころのなかで
ただよって うえから
あなたをながめている

かなしいときは
あめをふらして
あなたを バリアにとじこめてくれる

しんじるかい?
しんじなくてもいいけど
ごほうびのくもは
もう そこにあるよ

2014年4月20日日曜日

あひるのかたち

わたしのこころは
あひるのかたち
すいへいせんを
かかえてる

わたしのゆめは
あひるのかたち
はねをひろげて
ひかってる

わたしのみらいは
あひるのかたち
きいろいくつで
はしってく

2014年4月19日土曜日

みんながあつまると

みんながあつまると
じぶんかってにできない
ひとりでいれば
すきなようにできる

みんながあつまると
さわがしくなる
ひとりでいれば
だまっていればいい

みんながあつまると
いばるひとがでてくる
ひとりでいれば
いばるひとはいない

みんながあつまると
そうだんばかりする
ひとりでいれば
きめなくてもいい

2014年4月18日金曜日

右目くんと左目さん

右目くんと左目さん
見える景色も少しだけ違う

私の中に
二人は いるのね

右目くんと左目さん
仲良しですか

けんかしたら 私が仲裁
いたしましょう

2014年4月17日木曜日

心の声

心の声が
不意に言ってくる
「おい 自分よ」

心に
睨まれて
私は身動きができないことを
心に悟られまいとする

「おい
 誤魔化せやしないぞ」

心は強気で
きょうは言いたいことを言うようだ
なにを言い出すかには興味がある

「おい
 お前は物事をよく考えず
 いつも誤魔化す
 だから
 いつもどうしたらいいか
 わからないまま
 時間だけがすぎる」

そうだ
私は結論を出すのが嫌いだ
それは怖いからだ

「だが俺は知っているぞ 
 自分が出したい答えを」

それは何なんだ

「それは自分で
 考えることだ」

いつの間にか心は
自分に混ざってしまって
いつものように
見えなくなった

2014年4月16日水曜日

秘密の小石

いらなくなったものを
焚き火にくべて燃やしています

焚き火の炎に包まれて
秘密はもう秘密ではありません
握りしめられた手のひらには何もなく
わずかに汗をかいているだけです


秘密は燃え尽きて
消えていってしまいました

でも
私に心に
小石のように
何かが残りました

それは
なにげないものなので
ふだんは邪魔にならないでしょう

けれども
たまに
私自身が邪魔なのではないかと
思わされるのです

2014年4月15日火曜日

俯いたままでいいから

これから死ぬまで
過去だけで生きていける
彼女はそう思ったが
梢で渦巻く風は違うよと言った

思い出の中の私は
眩しいほどに輝いている
息を殺して感じていたが
石畳の靴音は知らん顔した

明日も私は
途方に暮れているだろう
だが思わぬ幸運が
彼女に飛びつこうとしていた

だから
少し早起きして
身支度をして
好きだった場所に
歩いて行くんだ
俯(うつむ)いたままでいいから

2014年4月14日月曜日

わたしは じまんしたい

わたし

じまんしたい

どんなことでも

じまんしたいこと みつけたら

じまんしたくなっちゃう

だからじまんする

なんで    あなたはじまんしないの?

じまんするってきもちいい

みんながほめてくれるから

ほめてくれそうなことばかり

わたし

じまんしたいんだ

やりたいこともやるけど

やりたくないことも

ほめられたいから

がまんしてやる

なんで    あなたはやらないの?

2014年4月13日日曜日

きみの砲弾

優しい笑顔に武器を隠して
いっせいに砲撃しようと狙っている
きみを愛するものから引き離したものに向けて
きみは甘い吐息の毒よりも効き目があると信じるその砲弾を
打ちこもうとしている

きみの甘い吐息の毒をかすめて
砲弾は飛んでゆくだろう
きみを愛するものから引き離したものに向けて
甘い吐息の毒を微かにまとって

優しい笑顔に武器を隠して
きみは得意になっている
それはきみの素晴しいところだ
砲弾など何の役にも立たないことを
疑おうとはしない

そのしなやかな腰に張った帆や
衝撃を吸収する肉体のほうが
どれほど敵を殲滅するのに役立つことか
きみは頓着ない

優しい笑顔に武器を隠して
いっせいに砲撃しようと狙っている
時は文字盤の上で刻む
きみの時は少しずれているのか
たまに早くなったり
止まってみえるのだけれど

2014年4月12日土曜日

その 透明な ・・・

頭のてっぺんからつま先まで好きなひとが
疑いの眼差しで私を見ている
私にはちゃんとした理由があるから と
私は自分を落ち着かせようとしている

初めて同じ部屋で寝た夜のことを
私は思っているが
君はどうやって帰ろうか
考えている

君の胸と私の胸とを合わせて
背中を両方の手のひらで
激しく撫でて愛してるよと伝えた

いま車を運転してきた君の
助手席で
私は君をつなぎとめるために
色々と画策した

ロービーで君を待っていると
君が来ないのではないかという不安が
私をいらだたせる

私は悪いことをしているかもしれない
無理やり君にいうことをきかせようとしている

だが君は来ない
降りだした雨の向こうに
走り去ってしまうのか
そんな
悲劇的な画が
私にはに似合っていると
君は私の悲壮な出来事を楽しみながら言いそうだ

私は君を信用などしていない
だだ好きなだけだ
君は私を好きではない
ただ無理やり繋ぎ止めて欲しいだけだ

二人の間に
理解し難い謎が
透明な丸い水晶球のように落ちている
その魅力に囚われてしまったことだけ
私達は一緒だった

2014年4月11日金曜日

みあげたわたし

ゆうひがオレンジいろにひかりながら
しずんでゆきます
わたしのかおを
したから
てらそうとしています

わたしは
ちきゅうにいると
ちいさいから
わたしは
したからなにかをされることに
なれていません

わたしのなかまたちも
みなちいさいから
ここでいきていくことには
くろうしています

たとえば
やまやビルやいえのやねや
そこいらじゅうにはえているきや
でんしゃのつりこうこくだって
わたしをみおろしているのです

わたしはみおろされることになれているから
したからみあげられると
おちつきません

わたしはうえからよぶこえに
「はい!」とおおきくへんじをして
じめんをふんで
かけてゆきたいのです

2014年4月10日木曜日

未消化の映画

窓がガタガタ気が狂ったように
鳴ります
カーテンを開けると
異様に明るい列車がゆっくり走っていくのが
見えます
そのせいで
街の様子はかき消されて見えなかったのでしょう
記憶の中で
明るい列車が走る姿がリピートされます

私は明るい列車です
すでに人間ではありません
明るい列車になって
夜の線路を
海の方へ走ってゆきます
途中に山もトンネルもあるでしょう

窓がガタガタいっていますが
なんの どこの窓なのか 分かりません

私は腕を伸ばそうと
胃袋から肋骨を突き抜けて出します
指先に胃液と未消化のものが付着しています

私の計器は狂っています
後ろからもう一人の私がやってきて
なだめようとしましたが
背骨の方から腕を突っ込んだので
もうグチャグチャです

電車はねじれた線路の上を行きます
ねじれているからこそ
まっすぐ走れるのです

斜めに陽が差してきました
どこから始まっているのかわからない
透明な巻物です
そのフィルムに巻かれて
映画が上映され始めました
それを見始めたのも
また私のようです
私の視覚がそう言っていますから

2014年4月9日水曜日

あの場所

あの場所に何もかも置いてきたまま
あの場所のことを忘れていた

あの場所に少しずつ埃が降り積もり
少しずつゴムの張力はなくなり
生々しい思い出も少しずつ風化した

あの場所を知る人はいなくなり
あの場所からつながっていた糸も切れた
あの場所を守る人は年老いて
何かをする意欲はなくなった

あの場所は黙って
世間から遠ざかってゆくのを受け入れ
小声で悲鳴を上げるだけだった

ある日
きのうからきょうになろうとする頃
私の内側にあの場所が現れ
狭い階段の先に古い畳の続きの部屋が見えた

長い間私はその場所のことを忘れていた
だがそこは私の部屋だった
愛する人とのつらい思い出も置いてあった

私にどうしろというのだろう
その場所の地図もなければ行き方も分からない
あの場所は幻ではないのだろうか

そう思えば思うほど
あの場所は扉を開けて
私の心の穴にその口をポッカリと重ねて
すべてを飲み込もうとした

そして
飲み込んだあとにあの場所は消え
もう誰も
思い出すことさえできないのだ

2014年4月8日火曜日

とがってるきみ

よそいきのふくのせい?
きみのかたが
とがってる
きみはくちびるもとがらして
かわいいえがおを
ふりまいてる
もったいないよ
ぼくにだけ
みせてよ
そのえがお
とがらしたくちびる
とがったかた

きみはやさしい
すてきなひと
おこったかおも
みてみたい
ねえ
おこったかおを
してみて
ぼくにだけ
こっちをむいて

2014年4月7日月曜日

えだ

なにもしらない
おとうさん
なんでもしってる
おかあさん
ふたりをみてる
ぼくとねこ
それをみている
まどのえだ

2014年4月6日日曜日

記念日

死にたくなるような日々の数々も

日差しに暖められて起こされた沈みゆく朝も

絶望を一人で抱えたような顔して

さまよっている午後も

かたときも離れずきみを守ってきたもの

それがどこから来たのか

きみはしらないまま生きている

轟音とともにきみの脇を走り去ってゆくダンプ

カミソリの刃がスッと血の線を引く

きょうは記念日

きみと私がきょうを生き抜いた

2014年4月5日土曜日

星屑

アイスコーヒーが喉から沁みて
全身を一つにまとめようとする
星屑が見えないところで箒ではかれている
光の粒がまぶたの裏に集まってくる
それを水の流れが眺めている
私は息を止めて
命の在り処をたしかめようとする

2014年4月4日金曜日

あの なんでもない

あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻ることができない

あの
なんでもない
意味のない風景の
一コマに戻りたい

あの
なにも思わなかった
忘れてばかりの日々に
帰るように

あの
命とおなじ重さだった体に
帰るように

あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻りたい

前も後ろもない
流れない時間の
真ん中へ
入っていきたい

2014年4月3日木曜日

だれかが心を

黙って静かにしていたら
だれかが心をノックした

気のせいなんかじゃありません

心の扉をあけてみた
すーっと風が吹き込んだ

泥棒入ってこないかな

ゆったり椅子に座ってた
時は行列作ってる

いったいどこへ行きますか

星の明かりが灯ったら
幸せなこと数えます


数えるうちに いなくなりま

2014年4月2日水曜日

未来のことを

不幸せだと思っていた
幸せだった日々

いま
まいにち苦しんでいるが
これからきっともっと苦しくなる
苦しみのなかに
幸せはあるだろうか

あったら
おしえてほしい
なにかの合図をしてほしい

私はまじまじと
幸せをながめて確かめてみよう
ざらざらした背中をなでてみよう
他人行儀な幸せは
私になじんでくれるだろうか

私は幸せを大事にしよう
幸せに好かれるように
友達の苦しみも一緒に
未来のことを夢見たりして

2014年4月1日火曜日

道路を封鎖しています

私は数十人の仲間とともに
道路を封鎖する活動をやっている
権力の横暴に慣れきった人々を覚醒させ理不尽な世の中を少しでも良くするため
国道の大通りから別の大通りを結ぶ200メートルほどの道に
立ったり寝たりして人間バリケードを作っている
この活動は何人かの住民と通りがかりの人によって自然に始められた
私が加わったときにはもう近隣の学生や商店主やOLやサラリーマン、公務員、警官などあらゆる職種の人間が参加し
すでにもう今と同じ規模だった
参加者は日替わり、時間帯で入れ替わりこの場所を「守って」いた
この道路封鎖の型破りなところは
警察を模した検問形式で通過しようとする者に話を聞き
最後には「通してしまう」ことだった
道の中間点では10人ほどがスクラムを組んで路上に横たわり
半固定状態でそこを守っていたが数分おきには立ち上がり「検問」が済んだ車両を通した
私は近くの高台のマンションの9階に住んでいた
夕方になると私はその部屋に帰り
全面がガラス張りの南側の窓から果てしなく広がる海を見た
右方向の空を真っ赤に染めて沈んでいく太陽を見ると
高揚感がこみ上げてきて誰かと分かち合いたい、とその度ごとに願ったりした
道路封鎖が始まりしばらく経つと
いつもその道を利用するドライバーには「慣れ」が見られ
すぐに通してもらえるだろうとたかをくくり、低速で強引に「検問」を押しのけて突っ込んでくる者がいた
私は立ちはだかりなぎ倒されるのを覚悟で「検問」にのぞんだ(ある時は都バスの前に立ちはだかったが押し倒され危うく命を失いかけたが、10人の仰臥位スクラムの人たちがそれに無言の抗議をして反日に渡って都バスを立ち往生させた)
「検問」の内容は挨拶や日常会話や問いかけや自らの吐露だった
決まりはなく時に1時間に及ぶこともあった
ある女子の高校生は相手にすまなそうに自分の気持ちを話して相手を和ませたし
ある公務員は相手の仕事をねぎらいつつ道路封鎖の意義をといた
道路封鎖は美しい情景だ、とに私には見えた
200メートルの道に夜が来て街灯が灯ると
仲間たちはだんだんと入れ替わったが夜の参加者は少なく、10人に満たないこともあった
雨が強い日などは仰臥位スクラムは1人か2人の時もあった
明け方近くに私が参加すると雨に打たれた仲間が救急車に担ぎ込まれていることがあった
そしてこの活動は出入り自由、みな対等、平等でリーダーもなく決まりもなかった
そしていつまでも続くようだった
道路封鎖はこの道を利用して生活する人に不便さを与えたが
同時に夢と希望を与えた
封鎖する側もされる側も
その顔に人間の表情を取り戻していたのである
私は仲間と続けているこの活動を誇りにおもう
奇跡的に興り続けられているこの活動は未来の道標になるだろう
仲間の一人のジャーナリストがこの封鎖を記録し論述した
私もまた心にこの活動を刻んでいた
仲間の誰もが
そして目撃した人の誰もがそうしたように
そして誰かに語り始めた

2014年3月31日月曜日

きょうの印象

空の裂け目から血が滲んだような濃いオレンジ色の〈別の空〉が
私たちを覆い尽くそうとしている
もし一瞬でも覆われてしまえば
すぐさま窒息してしまうだろう

澱んだ湖がその空を映して
湖底深く抱え込んだマグマを混ぜ合わせようとしている
企てが地上のそこここで
虎視眈々と実行されようと狙われている

この世に冒険者がいなくなってから
ただ人は冒険者の模倣品を繰り返し送り出し続けている
それなのに
ひとは希望を抱くことさえ
いつのまにか拵えられた前世紀の柵の中でしかすることができない

空が群青色に移行し
地上を見下ろす無数の瞳が現れる
だがひとはそれを見ながらも気づくことができない
発せられたコトバは
翻訳され他国にも通じるコトバだ

幼児がテキストブックを開く
何かを知るためではない
知ることから遠ざかるために
幼児は学びの時間に沈んでゆく

もう救うことはできない
どんな手を差し伸べても
手は枯れた細く頼りない草の茎でしかなくなっているから

2014年3月30日日曜日

森のなかの会社

会社は3階建てで森のなかにある
上空から見ると正方形のタイルのようだ

そこには101人の人が働いているが
その内31人は別の会社に在籍している

建物の外装はコンクリートの打ちっぱなしで
内装もごく簡素であるが
間仕切りはしっかりとしている

1階から3階まで
見通しのよい幅広の階段でつながっていて
1,2階の階段踊り場からは下のフロアの突き当りにある正面の入り口を
ほぼ見渡すことが可能だ

会社にはめったに最終ユーザーたる顧客は来ない
そのためビルには立派な玄関はなく
ビルの正面のガラス扉を開けると
すぐにデスクワークをしている社員たちを見ることができる
当然受付嬢が着席している受付のようなものはない

私がいるフロアは3階だが
3階は大きなコモンスペースが中心に陣取り
それを取り囲むようにワークスペースが配置されている
コモンスペースはフレキシブルにその姿を変え
あるときはイベント会場に
またある時はプレールームに
またあるときは何の変哲もない日常的な会議室となる

建物の柱は皆コンクリートがそのまま露出していて
均等に整然と立っている
すべてのフロアの天井高もまた統一されていて
4メートル50センチメートルである
故に時折いま自分がどのフロアに居るのか
錯覚のため分からなくなることがある

建物の外周は
無人のプロムナードとなっていて
その美しさには誰もが驚愕する
柱の間に見られる風景は
緑を湛えた森と芝生の庭である
道はなく
そこだけが孤島のようであることを誰もが感じる

初夏をまえにしたその日
私は詩人の御徒町凧を招いて3階のコモンスペースで
夜を徹しての詩の朗読会を主催していた
すでに会を終え二人は何人かを伴って
私のワークスペースで思い思いの飲み物を手にしながら
詩についての話をしていた
その時
パイプスペース脇の物置から私を呼ぶ声がして
私は一人そこへ入っていった

中には物干しロープが張られ
私がきのう洗濯した洗濯物が干されていた
柱に取り付けられた配電盤を開けると
そこにはエアコンのスイッチがあり
私はそれを右にひねり
壁から突き出ている通風ダクトから勢い良く吹き出し始めた熱風に
洗濯物を押し当て乾かすことに全神経が集中していった

御徒町凧は階段を降りていった
私は何事もなかったようにもう案内している
「このフロアのこの辺りは提携会社の社員の人たちが仕事をしている」
などど自ら計画し実現したことを説明する
朗読会を終え朝のビルの中から感じられる外の気候は
この上なく爽やかだ
このビルで働く人の男女比は女子が約8割と多い
男は恋愛の誘惑の香りを感じ心がざわめくのが普通だ

社長
と呼ぶ声がした
御徒町凧と私は振り向いた
そこにはなんと
おかちめんこの仮面をかぶった
あの噂の美人秘書が立っていたのだ

2014年3月29日土曜日

ならないくちぶえ

くちぶえが
うまくふけない

あなたは
うまくふけるのに

でも
それはきらいなところ

くちぶえふくより
くちびるふさいで
ちからをこめて
だいてね

なみのように
ただよわせ
そらに
うつして

わたしは
ならないくちぶえで
きみを
たたえるから

2014年3月28日金曜日

春が

世間の隅っこにいるけれど
ここは世間の隅っこの真ん中

世間は賑わっているけれど
ここは世間から一番遠い場所

だれもが世間へ出かけていって
友をみつけて笑顔を見せ合う

世間の隅っこの真ん中には
だれもやってこない

世間の隅っこの真ん中には
一足早く
だが 静かな春がやってくる

2014年3月27日木曜日

やきもち

やきもちをやいても
いいですか

あなたをひとりじめ
したいの

それはわるいことではない
それはすてきなこと

だれかとあなたをわけあうなんて
ふじゅんだわ



やきもちをやいて
くれませんか

わたしをひとりじめ
してほしいの

それはきゅうくつなんかじゃない
それはかんじること

このむねのほのかなかおりを
おぼえてほしいの

2014年3月26日水曜日

トリは

トリが木の実をついばみます
ぼくはなにをついばもう

ぼくはケーキをついばみます
トリはなにをついばむの

トリはシュークリームを
ついばみます

ぼくはトリが大好きです
トリはだれが好きですか