2014年4月10日木曜日

未消化の映画

窓がガタガタ気が狂ったように
鳴ります
カーテンを開けると
異様に明るい列車がゆっくり走っていくのが
見えます
そのせいで
街の様子はかき消されて見えなかったのでしょう
記憶の中で
明るい列車が走る姿がリピートされます

私は明るい列車です
すでに人間ではありません
明るい列車になって
夜の線路を
海の方へ走ってゆきます
途中に山もトンネルもあるでしょう

窓がガタガタいっていますが
なんの どこの窓なのか 分かりません

私は腕を伸ばそうと
胃袋から肋骨を突き抜けて出します
指先に胃液と未消化のものが付着しています

私の計器は狂っています
後ろからもう一人の私がやってきて
なだめようとしましたが
背骨の方から腕を突っ込んだので
もうグチャグチャです

電車はねじれた線路の上を行きます
ねじれているからこそ
まっすぐ走れるのです

斜めに陽が差してきました
どこから始まっているのかわからない
透明な巻物です
そのフィルムに巻かれて
映画が上映され始めました
それを見始めたのも
また私のようです
私の視覚がそう言っていますから

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